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第17話 闘争
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一口二口に闘争と言っても、色々な種類が在る。
何も拳で殴り合うだけが闘争ではない。
激論を交し、罵倒し合い、意見を戦わせるのだって立派な闘争。国家間では戦争の火種に成る事だって在る。
個人戦レベルで暴力はいけないと解っているのに。
どうして母体が大きくなると、戦争にまで発展するんだろう。不思議で仕方が無い。
引き抜き勧誘、買収、賄賂、搦め手、談合、謀略。
闘争の切っ掛けにも成る手段の数々。
これらを逆手に本命を倒す。それがとても難しい。
発展する争いを抑え、可能な限り2次被害を少なく。
それが一番正しい道筋。しかし犠牲は、不可避だ。
早朝にマッサラを出発し、ロロシュの孫娘と救出者を纏めてカメノス隊に運んで貰った。
孫娘以外はノイツェへ預け、孫娘を匿う潜伏先を複数用意した上で内一つで保護。
輸送中に一時意識を取り戻して再度意識を失う。
かなりの衰弱が見られ、現在は静養中。
午後に王都組と合流した後、カメノスの豪邸に招かれ、事業展開の話を進めていた。
そしておやつ時。どうしても会いたかった人物が現われてくれた。
「初めまして。スターレンと申します。商会名はストアレンと名乗っています。ロロシュ殿」
「噂通り、若いのだな。眉唾だとばかり思っていた。こちらのはサルベイン。三十後半にも成って子も設けず、嫁を放って遊び惚ける不出来な方の息子だ。話は私がする」
あの子の叔父の方が来たなら、まだ受け入れ体勢が万全ではない証拠。
「酷い言われようですが、私は置物。お気になさるな」
丁寧な対応の2人を握手で出迎えた。
名前:ロロシュ・アル・ミラージュ
特徴:タイラントの大商人
名前:サルベイン・ミラージュ
特徴:大商人の次男坊。実益主義者。無類の女好き
目立つ情報は無い。自分で探れってか。
玄関前での挨拶からの案内は、勿論カメノス邸の執事。
「別室のご用意が在ります。どうぞこちらへ」
上座にロロシュとサルベイン。上下席にカメノス。
カメノスの対岸が俺とフィーネ。
たったの5人で10倍の人数は入れそうな、母屋から離れた別邸の地下大会議室を贅沢に使わせて貰った。
金持ちぃ。
外部からの対視認性、遮音性も考慮した部屋。
これから話す内容が内容だけに有り難や。
5人分の紅茶を並べ終わった執事に。
「呼び鈴を鳴らすまで。誰一人部屋に近付けるな。例えヘルメン王でもだ」
「畏まりました」
出入り口が閉め切られた。やっと一息付ける。
「急な対応、済まなかったな。カメノス」
「ロロシュ殿から謝罪の言が聞けるとは。明日は嵐ですかな。…冗談はさて置き、これからどうされますか。昨日にスターレンから聞いた時は耳を疑いましたが」
「うむ。説明を始める前に…。スターレン君」
「はい。何でしょう」
「これまでの行いを謝罪する。そしてシュルツを救い出してくれた事、何よりも感謝を」
上から下に頭を下げるロロシュ。
カメノスとサルベインが驚きの表情を浮べていた。
公爵様が頭を垂れる事自体が異例中の異例。
「お止め下さい、ロロシュ殿。それでは話が前へ進みません。今後、良好な関係が築ければ結構です故」
「人としての区切りだ。感謝を」
「でしたら。もー固っ苦しいの止めません?腹の探り合いしてる場合じゃないんですよ。後3週もしない内に塵屑フレゼリカが来ちゃうんで。共闘、して貰えますよね?」
「な…」
我が妻以外は呆然。
我に返ったロロシュは大声で笑った。
「これは愉快。噂通りの男だな、君は。そうだな。その通り、無い腹を探っている場合ではなかった。共闘だとも」
「良かったです。この歳で肩凝りに悩みたくないんで。ラフに行きましょう」
またロロシュは笑っていた。
「シュルツちゃんはかなりの衰弱が見られましたが、目立った外傷は無く、水も飲んでくれたので身体は心配無さそうでした。後は精神面だけですね」
「そうか、それは何よりだ」
「少し粗末な服を着せて、都内の別の場所で静養して貰ってます。直ぐに引き取られるなら、場所も案内出来ます」
サルベインの片眉がピクリと動いた。
何に引っ掛かったんだ?面倒臭いなぁ、もう。
ロロシュは平然としている。このまま進めよう。
「…それは後程聞こう。こちらの塵掃除が終わってからになる」
折角軌道修正出来たのに、サルベインが突然口を挟んだ。
「それよりも。そこの女。その仮面は父に対して失礼。今直ぐ外し給え」
「…黙れ、サルベイン」ロロシュが睨み付ける。
「は?」傍聴に徹していたフィーネも呆れ顔。
「あんた、さっき置物だって言ったよな。守れないなら、出てって貰えます?」
「何だと?どうせシュルツも、お前が盗賊と結託して金で取り戻したのだろ。あの魔人を屠れる者など…」
本命はそっちかよ。素人じゃないんだから、フィーネを出汁に使うなバカ。
ごり押しタイプはこいつだったか。
「黙れと言っている!」
ロロシュに怒られ、やっと黙った。何なんだよこいつ。
面倒に拍車が掛かった。スムーズな話が出来ると思っていたのに…。
少しだけフェイク入れるか。
「金で解決出来たなら寧ろいいじゃないですか。カメノスさんにも化物の説明はして在ります。
あの場に居た盗賊は全滅させましたので、直ぐには王妃にまでは情報は伝わらない。その魔人を倒したかの、信じる信じないの話は別にして貰えません?」
フェイク1。
「父上は気にならないのですか?何十と言う兵で押さえつけいた化物を、どうして倒せたのかを」
実物を見た事はあるんだな。
「論拠をすり替えるな。お前の興味が在るだけだ」
サルベインは苦い顔をして俯いた。
「サルベインさんは納得行ってないみたいなんで。先に俺から説明始めます。済みません、ロロシュさん」
「いやこちらこそ済まぬ。こんな者を連れて来てしまった私が馬鹿だった。少しでも、君から学んで欲しいと欲を出してしまった。先に進められよ」
サルベインが眼をひん剥いてるが、無視。
「では。あれを倒せた理由は簡単です。あれが押し込まれていた同じ檻に、弱体化を促す魔道具が在りました。俺は悪運だけはとても強い人間です。駆け付けた仲間と共に盗賊たちと同士討ちしていた隙を突いたに過ぎません」
フェイク2。
「それはどんな物だったのか言ってみろ」黙れよ。
「貴方が兵を引き連れ、討伐して頂けるのなら。何時でもお渡ししますよ。しかし、戦いもしない貴方にどうして明かせる。聞けば、貴方も殺されますよ!」
「…」
こいつ口弱いなぁ。
ロロシュは徐に席を立ち、サルベインの頭頂髪を鷲掴みに扉まで無言で引き摺って行った。
「痛い!父上!」
「帰れ、邪魔者が!!」
最後はケツを蹴り上げ、部屋の外に放り出した。
「これを邸の外まで出せ」
「父上!」
呼ばれた数人の警護が、戸惑いながらもサルベインを連行した。
「大変失礼した。静かになった所で、進めて欲しい」
「勘弁して下さいよ、もう。今の情報が漏れ出たなら、恨みますよ」
「熟慮する。彼奴は暫く鎖にでも繋いで置こう。これ程まで馬鹿だとは信じたくなかったが」
ここまで沈黙を守っていたカメノスも。
「私も外した方が宜しいですかな。どうも持ち得る情報だけでは話に付いて行けそうにない」
「いやカメノスはここに居ろ。お前も、もう既に戻れない位置に立っている」
「それは、どう言う…」
「先ずは聞こうではないか。彼の真実の話を」
「真実の?」
冷めた紅茶を頂いた。酸味が増した香りの中に広がる円やかなシナモンの風味が利いている。落着くわぁ。
…優雅に茶を啜ってる場合じゃないよな。
「こちらこそ、無い傷を隠す仮面は失礼でしたね」
フィーネが仮面を外し、机上に置いた。
「どうにもあの殿方の目が嫌らしく感じたもので」
「おぉ…、これは」
「何とも…。これは彼奴に見せなくて正解だ。また別の話で掻き乱される所だった。スターレン君、続けてくれ」
場が落着いた所で。
「狙われているのは、俺たち夫婦です。お二方やご家族をここまで深く巻き込む積もりはありませんでした。その点は申し訳ありません。
先程話した魔道具などは在りませんでした。ただ化物の身体が所々腐っていて弱っていたのは確かです。
次に同じ物か、それ以上の完成体に複数で責め入られたのなら、今のタイラントでは、武で打ち勝つ事は非常に難しいと思います。
勿論俺は全力で王妃の暴挙を止める所存ですが、自分一人ではどうにもなりません。
そこを是非ともご協力願いたい」
「この老体の命なら、好きに使ってくれて構わぬ」
「…」カメノスは頷けない。
「俺の出生に付いては、既にご存じだと思いますので割愛します。
母を毒殺され、俺たち家族まで私物の様に扱う王妃に、反旗を返そうとしたのは完全な私怨。
ラザーリアで諜報活動を進めて行く内、王妃自らが管理する何かの実験設備が王城地下深くに在る、と言う所までは掴めていました。ですがその確証を得る前に、俺はマッハリアから逃げ出し、今に至ります」
続く沈黙の中で、過去を振り返る様に語り続けた。
「王妃の見えない檻から逃れ、こちら南を選んだのは、王妃と繋がりが在る北の帝国では何も得られないと考えての事。
知識の薄い大陸西側や、女神教が色濃いロルーゼも選択から除外した結果です」
紅茶を一口啜る。
「ここまでの情報を繋ぎ合わせ、昨日倒した化物を加味すると。王妃が帝国と取引している武器の真の姿が見えて来ました。
それは、強き教会聖騎士の身体に、世界各地から取り寄せた魔物の肉体を移植合成した、生体兵器。
多少の暴論はご容赦下さい。ですがそれが真実です」
「何ら不思議はない。その化物。それの存在を知る我々は魔人と呼んでいる。
ラザーリアに呼ばれ出向いた際に、王妃に自慢気に見せられたからな。それらを放たれたくなくば、従えと脅してきおった」
カメノスとフィーネは黙する。
「製造方法は未確認ですが、未だ討伐されない各地の魔物と女神教団の動きを見れば明らか。
帝国に流れつつあるそれら兵器。どうやらそれを使い帝国は世界制覇に向け動く。これは闇市での情報なので、信用性は低いですが、初手はロルーゼとなる見込みです」
「東…。帝国は英雄ベルエイガの家系を、最初に排除しに行くのだな」
「はい。確率は非常に高いかと」
止めに入ったのはカメノス。
「待て。ロルーゼは女神教の総本とも呼べる国。教団幹部のフレゼリカが造った兵器で、どうして叩く」
「そこが大きな謎でしたが、教団も一枚岩ではないと考えれば簡単。今現在、女神教徒の一部を使い襲わせている事実を加味すれば、教会の暗部と王妃。その後ろに大きな反発組織が居ると考えられます。
本当に帝国が立てば、その時に教団は割れます。しかし戦争が一度起きてしまえば、もう止められません」
「話は理解出来る…。ロロシュ殿、私はそこに、どう関わっているのだ。許されるなら、この身を退きたい。他国同士の戦争を止めるなど、私には無理だ。戦火が世界に広がると言うなら尚更」
「カメノスよ。お前の所で造られている薬品の何かが、魔人製造の、根幹の一部を担っているとしてもか?」
「な!んと…」
「お前はその責任も取らず、逃げ出し果てる阿呆なのか。私はその様な者ではないと思っていたのだがな。水竜様を捨て、敵へ寝返るのか…。残念だ」
「無い!断じてそれは無い。いやしかし…。どれだ…」
種類の事かな。
「何を、どれだけマッハリアに送ってるんですか?答えられる範囲で教えて下さい」
「取引量で多い物で浮かぶ限り…。純度の高い酒。海水から塩を造る際に出る分離水。柑橘系果実の皮の粉。食用に向かない酢。などの品目が在る」
カメノス先生の記憶力凄えな。
ロイドちゃんの同時通訳が頭に響いた。
それを、さも自分で思い付いたかの様に説明する。
「純度の高い酒、酸度の強い酢は消毒液の原料。
分離水は凝固剤にも使われる物。
果物の皮の粉は、物の腐敗を遅らせる効果が在る。
怪しいのは…それ全部ですね…」
「何と言う…。どうしてその様な知識を持っておるのだ」
「さぁ?自分でも不思議です」天から降って来るんで。
サポート有り難う、ロイドちゃん。
「いいえ。私は向こう側の世界を覗いただけですので。
…覗き魔の力も使い方次第ですね」
見れるのかよ…。まぁ今はいいや。
「人体と魔物との合成方法は不明ですが、今上がった物の組み合わせで、魔物の死骸を長期保存させる溶液を作成は可能です。混ぜて、はい完成ではないので、まだまだ知らない工程が在りそうですが」
「詰り…、私は知らぬ内に。兵器製造に手を貸していたのだな」
「最初の切っ掛けは違ったのかも知れません。お馬鹿な王妃の事です。長寿の魔物を利用し、長生き出来る薬でも開発しよう、とでも考えたのかも…。フィーネ、気分悪かったら退出してもいいよ」
隣で悲痛な表情を浮べる彼女を気遣った。
「…大丈夫。最後まで聞く」
強いな。本当はとても辛い筈なのに。
ロロシュが問う。
「現時点で兵器製造の供給元を断つとどうなる」
「激怒した王妃が、大軍引き連れてカメノスさんを脅しに掛かるでしょうね。しかも、大抵の魔物の遺体は手中に収めている段階です。今更元を断って回るのは無駄。物理的にも不可能。世界は広いですから」
「私は、どうすれば良いのだ…」
「まずは何品目か。出荷量を少しだけ絞って様子を見ましょう。製造が難しい物で、季節柄の所為に。品質を保つ為と言えば納得せざるを得ないでしょ。
どの道塵は向こうから来ます。それ以上遅れる事は在りません。精々が見られて困らぬ程度に工作するしか」
「…ふむ。段階的に調整を促そう」
「見事な推察だ。虚言を並べるだけの法螺吹きではないと確信したぞ」
褒められちゃった。サポート無けりゃ、只の屑なのに。
「本当にあの塵を倒す為なら何だって。形振り構ってる余力は在りませんので。…所で、お二人はこちらのフィーネの事をどの程度ご存じですか?」
「西方の何処かの国から来た、上級冒険者をも凌駕する力が持つとか」
「私も同じ様な認識だ」
「そうですか…」
机上にナプキンを敷き、フィーネと目を合わせた。
「少しだけ机を汚します」
右手で隠しナイフを取り、左の甲をカットして見せた。
「何をしているんだ」
「実演が一番信じて貰えると思いまして。フィーネ」
「うん」
薄く流れる血元に、フィーネの手が重ねられた。
淡い光に包まれる事は無い。
体力ゲージが増える訳でも無い。
綺麗な高音が響きはしない。
それでも傷口は綺麗に塞がった。
傷口を拭いて見せ付ける。
「何と」
「教会の暗部が狙っているのは、類い希なる身体能力と共に、恐らくこの治癒の魔法の力。召喚士の力です」
「私の故郷の村は。その改造を施された聖騎士を引き連れた、暗部の集団に滅ぼされました。
両親や、村人の遺体も持ち去られた可能性が在ります。逃亡に必死で最後まで確認はしていません」
怒りに震える彼女の手の汚れを拭う。
「ありがとう。自分で出来るから」
言葉を失った2人に。
「何処まで行っても人間は欲望に満ちた、浅ましい生き物です。こんな傷薬と同程度の力しか無いと言うのに。
事は本大陸だけに留まらず、魔王が討伐された50年前よりも以前から始まっていると考えています。
俺たちからの話は以上です」
今度はこちらから頭を垂れた。フィーネもそれに倣う。
「どうか何卒。私たちにお力添えを」
「どうするのだ、カメノス。お前が辞するなら、我々だけでも動く。敵に付くならば容赦はせぬぞ」
「これで即決出来ぬは商人の恥。薬が売れても、その作り手まで潰されては大損だ。私も存分に助力しよう。ただ私では動き辛い面も在る。そこは容赦願いたい」
「それで充分です」
2人の確約を得られた所で。
「さて暗い話はここまで!お時間が許すなら、もう少しお話しませんか?」
「話とは」
「楽しい商売のお話ですとも。好きでしょ?2人共」
笑い出す3人の脇で、苦笑いを浮べるフィーネ。
「しよう。是非ともしようぞ」
「ならば場所を変え、酒席を設けませんとな」
カメノスが陽気にハンドベルを振り鳴らした。
「私は先に帰るね。遅くなってもいいけど。浮気だけは許さないから」
「仙石承知!」敬礼ポーズで応じた。
「何それ、もう」
笑いながら仮面を着け直すフィーネを、ロロシュが引き留めた。
「一つ頼まれて欲しい」
「何でしょう。お酌は私の仕事では」
「違う。メメット隊のゴンザに、明日の昼前に我が邸に来いと伝えて欲しい。私と話が出来る状況ならば」
「解りました。必ず伝えます」
娘さんの話か。お互いの遺恨が無くなるといいな。
別邸の玄関前での別れ際。
フィーネの肩を掴んで、振り…。返せなかったので前に回り込んでキスをした。
「俺はフィーネを救う。必ず。頭でも腕でも全部使って。
だから辛い時は辛いと言って欲しい」
「うん。期待しないで待ってる。あなたを守るのは、私だけどね」
俺よりも男前やんか!
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「実に眩しい男だな。彼は」
初めて聞く大老の声は、主の一人を指し、そう評した。
「はい。その通りに」
フィーネ嬢から伝えられた連絡に従い、見張りを交代した俺は、公爵家大老ロロシュの邸宅に赴いた。
この門の前で払われた五年前。あの時行く手を阻んだ煌びやかな門は、今度は拒絶をしなかった。
ロロシュ邸本館の大きな執務室。
待ち受ける彼が、スターレンを評した後。
「アンネの墓へ行く。付いて参れ」
「はい」
本館と別館との間の奥に在る箱庭。
彼女が好きだった白い鈴蘭が一面に咲き誇った場所。
その真ん中を貫く回廊の先に、彼女の墓は在った。
「何の土産の用意も在りませんが、祈りを捧げても宜しいでしょうか」
「そうしてくれ」
「アンネ・アル・ミラージュ ここに眠る」
死後に爵位が付与されていた。別段珍しくはないが…。
「老い先短い老人の我が儘だと許せ」
「私には何も言えませんので」
立ち尽くすロロシュの隣で、跪き右手を胸に当てた。
一生来られないと思っていた場所に、スターレンは導いてくれた。
これ以上無い感謝を述べ、漸く嘗ての恋人に再会出来た気がした。
「アンネが飛び出して、十年にも成るのか。娘が冒険者を志す前からの話だ。マッハリアの王妃フレゼリカから縁談話が持ち込まれたのは」
「王族との?」
「そうだ。マッハリアとの交易路を幾つか独占させてやる代わりに、第二王子に娘を差し出せとな。
私ですら一度も会った事も無い王子との政略婚。
既に次期王位は第一王子に内定。第二にならと、好条件に目が眩んだ私は、娘の意見も聞かず受けてしまった」
「…」
貴族同士の縁談ではなかった。
アンネも詳細は語ってくれなかった。そうだったのか。
「娘は話を聞いた翌日には家を飛び出し、何度捕えても嫌だ嫌だの一点張り。遂には家名を捨てる。出来ないのなら目の前で死んでやるとまで言い出した。
娘の意志は固いのだと悟り、漸く折れた私は破談を申し入れ、一旦縁談は白紙に戻った。
それで終われば、善かったのだがな」
「王妃は諦めてはいなかった…」
「スターレンから王妃の人物像は聞いておろう。
真にあのままの女だ。独占欲の塊。それに気付いた時には全てが遅かった。
成長した王子が改めて会いたいと言っていると。
その知らせが届いたのが五年前。
あの討伐隊遠征が始まる一週間程前になる」
「…」
「当時、王妃の本性を見抜いていなかった私は。
愚かにも、娘は冒険者になり、深い恋仲の男も居ると伝えてしまった。それがこの結果を招いた」
「あの遠征に、王妃が加担していたのですか」
何と言う事だ。
「お前を排除すれば娘が手に入るとでも考えたのだろう。
加担する処か、敵の増援まで施しおった」
「私一人を害する為だけに…。どうして彼女を、止めなかったのですか」
「勿論止めた。口では解らぬと、それまでの様に根回しを完璧にした積もりだった。…しかし娘は参加した」
「誰かが彼女に」
「王妃が放った密偵だ。
遠征隊の出発直前に伝えられたのだと思う。
私が娘の参戦を知ったのは、出発してしまった後。
救援隊を編制するのにも手間取った。
こちら側にも内通者が居る。最高位の権力でも申請が通らぬ事態に出会してな」
まだ内通者は居る。
その存在はスターレンも指摘していた。
「もっと早く、王妃の本質に気付いていれば。
もっと早く、お前との仲を認めてさえいれば。
後十年早く、スターレン君が生まれていれば。
後悔とは、実に皮肉な物だな」
「…」
力無く俯くロロシュに、返せる言葉が見付からなかった。
あの日、彼が浮べていた表情の意味を理解した。
渡したい物が在ると、執務室まで戻ると。
奥の部屋から小さな陶磁器の円筒を持ち出してきた。
「それは…」
「人間は灰だけになると、こうも小さくなる物なのだな」
彼女の遺灰。
水竜教では法要が終わった頃に、南の海に散骨するのが上流層の一般作法だとの認識が在る。ロロシュはそれを手放さなかった。
「受け取れません」
「これから王都は嘗て無い程に荒れる。この邸も例外ではない。娘を、静かな君の墓に埋めて欲しい。
何時の日か、お前に善き人が現われたなら、私の代わりに散骨してくれ」
断るにも断れない。
「…解りました。そのお役目。志かと」
「それとこれをお前に託す」
差し出されたのは上質な小箱。
中には、深緑の宝石を遇った首飾りが一つ。
「これは?」
「我が妻の形見の品。何時か娘が結婚した時に渡そうと思っていた品だ。水竜様の御石、アクアマリン。妻の家系に代々受け継がれた品。正直扱いに困っておった。
それをどうするかはお前が決めよ」
困ったな。
盗掘の恐れが在る以上は墓には埋められない。
「お預かり、致します」
商業ギルドの金庫にでも預けるか。
次の時間が差し迫り、従者が退出を催促しに来た。
「最後に一つ。私から質問させて頂いても?」
「何だ」
「私の事は、恨んではいないのですか」
「勿論恨んでおる。勝手に婚姻を決めたなら、真っ先に私の所へ来るべきであったろう。この私に恐れを為したか」
「ええ…、はい…!」
思わず心根が漏れてしまった。慌てて口を塞ごうにも両手が詰まっている。
「正直な男だ。娘はお前の何処に惚れたのか解らぬぞ」
「今ならスターレンに似たのかも知れません」
薄く笑うロロシュを見て、漸く安堵した。
「何よりも今は、シュルツの保護の件を頼む。直接私か母親のメリヤンヌが行くまでは、例えシュベインにも居場所を教えるな。解ったな」
メリヤンヌとの名には聞き覚えは無いが、スターレンにそのまま伝えれば良いのだろう。
「解りました。スターレンにそう伝えます」
満足そうな笑みを浮べるロロシュに見送られ。
鈴蘭を一輪だけ頂いて、豪邸を立ち去った。
心労が溜まる。五年前と比べ、頭頂も随分と薄くなった。
天の何処かから、アンネが見て笑ってくれるならそれでもいいかと割り切った。
昼中に、共同墓地の管理者の許可を得。
彼女の灰壺を埋め、花を添えた。
「君が守りたかったこの国を、どうか上から見守っていてくれ。君が支えてくれたこの命。ここで散らしてしまっても許して欲しい」
もう二度とは会えぬ恋人に、本心を告げる。
俺はこの恩に報いなければならない。
商業ギルドに向かう足を止め、シュルツを匿っている屋敷へと向かった。
路地を複雑に回り、充分に追手が居ないと確信した上で、ある施設の中を通って抜けた先。
そこは急遽カメノスが用意した屋敷。
貴族や上位者が絶対に立ち入らない区画内。
屋敷の玄関の扉を、合図通りに叩いた。
中にはカメノス隊から選出された四人の護衛と、メメット隊のメンバー数名。スターレンの姿も在った。
丁度良かったと、彼に声を掛けようとした時。
向こうから声を掛けられ、別室へと通された。
「生きて帰って来れましたね」
「正直、斬首刑も覚悟していたがな。何とか和解出来た。お前には感謝しかない」
「俺は何もしてませんよ。それより、何か在りました?」
「改めてシュルツを頼まれたのと、ロロシュ当人か、母親のメリヤンヌが聞きに来るまで、居場所は誰にも教えるなと言伝を依頼された」
「メリヤンヌ?彼女の母親はメリアード…。ふーん、そっかぁ。やっぱりまだ居るんだ」
「何がだ」
「ロロシュ陣営側に、まだ裏切り者が居るって事ですよ」
「お前らの遣り取りはよく解らんな。情報ならカメノス側からでも漏れるだろ」
「問題は漏れるかどうかじゃなくて、彼女の肉親の名前を変えたって所です」
「詰り?」
「親族の中に居るって事です。うわー面倒臭いなぁ」
それはこちらの台詞だが。
「恐らく父親のシュベインか、叔父に当たるサルベイン。サルには昨日布石を打ち込みました。その点はロロシュさんも流していたので了解済。問題は父親かぁ」
「カメノス側は放置でいいのか?」
「人の口を塞ぐのには限界が在ります。俺たちは漏らさない前提で言えば、必然的にカメノス側から出た事になるんで、それはあちら側の責任です。それらを踏まえた上での人選なので、そこは信用しましょう。
仮に敵にバレても、カメノスさんなら別の場所も用意してくれてます。絶対に」
「そう言う物か。そっちは任せた。俺たちは誰に何を聞かれても答えなければいい」
「その通り」
「彼女はどうしてる。そろそろ起きたか?」
「起きるには起きたんですがね。どうもまだ男を見ると怖いらしくって。さっきフィーネに来て貰って漸く落着いた所です。特性シチュー食べて回復中です」
「そうか。話はまだ出来んか」
「フィーネが居る内なら挨拶位は大丈夫だと思います。一応俺たちの顔は覚えておいて貰わないと困るんで」
「それもそうだな。今日は挨拶だけにしよう」
屋敷は三階建てだが、逃走も予期して一階の最奥の部屋にシュルツを置いた。
スターレンに続いて、ノック後に部屋に入った。
目覚めたシュルツと初めて顔を合せる。
ほぼ初対面の筈だが、彼女は俺の顔を見るなり。
「ひっ!」
持っていた陶器のカップを床に落とし、逃げる様にベッドのシーツに潜り隠れてしまった。
「どうしたの、シュルツちゃん?あの人怖い?」
フィーネ嬢が駆け寄り、丸くなる彼女の背中辺りを擦って宥めた。
「ヤダ!あの人だけはヤダ!」
ん?何故だ。
「起きてる時に会うのは初めての筈だが…」
「そ、その人!私の…。私のお尻、ゴシゴシしたの!!」
室内に激震が走る。
河辺で下を洗った時に、彼女は一時起きていたのか。
スッと音も無く、フィーネ嬢が立ち上がる。
「いや待て待て待て!先程拾ってきた命。ここで散らす訳には行かん。
あれは、そうだ事故だ。下が汚れたままで運ばれては不憫だろうと。スターレンに押し付けられたんだ」
あの場で完全に起こしてしまっては、あの惨状を真面に見てしまう。緊急避難的措置だ。
「何て事させたの!」
「えー。でも俺がやったって知ったら、フィーネ絶対怒るじゃん」
「そりゃ怒るけど!」
「やっぱ怒るんじゃん。隊の中では一番紳士なゴンザさんらいいかなって」
痴話喧嘩に移ったので放置しよう。それがいい。
「ま、また出直す。忘れてしまえ」
部屋を出ようと、最後の挨拶を投げた時。
中から少しだけ顔を出したシュルツと目が合った。
もう来るなと言われるのかと身構えたが。
「今…、ゴンザって、言ったの?」
「確かに、俺はゴンザだが」
「あの…、叔母様の婚約者の?」
「君は、アンネの事を覚えているのか?」
急に流れが変わった。
首を横に向けると、フィーネ嬢がスターレンを引いて部屋を出て行く所が見えた。
俺を残してどうする!
「叔母様は家に戻られた時、寝所の枕元で沢山のお話をしてくれました。お母様よりもずっと楽しいお話を…」
「楽しい…話?」
「村を困らせる強い魔物を、苦労して倒したお話とか。
旅先で出会った変な人のお話。
異国の山の奥地で見付けた花がとても綺麗だったお話。
恋人は堅物で融通が利かない冒険者だとか」
最後以外は少しばかり話を盛っている。
アンネも含め、俺たちはそれ程広範囲には動けなかった。
オークの収穫隊に加わった時も、檻の外側の補助に徹していた。相手にしたのは精々が低位の魔物。
彼女は、外の世界に焦がれていたのだ。
「どうして、泣いているの?」
気が付くと俺は立ったまま、涙を流していた。
不思議なものだ。墓の前では我慢が出来たのに。
「どうしてだろうな。自分でも解らんよ」
「泣きたいのは…。私の方だよ?」
「違いない」
幼齢に見えて、利発な子だ。
相当傷付けてしまった。反省しても手遅れだが。
「おじさんの事は、薄く記憶が在る。叔母様の葬儀の日に門の前で、凄く泣いていた…」
「恥ずかしい所を、見られていたんだな」
また顔を引っ込められた…。
「違う!その意味じゃない。何と言うか、済まなかった」
何も見ていないと言えば嘘になる。
「…責任を、取って…」
流した涙も何処かへ消えた。
「せ、責任とは」
「私のお婿さんになって」
「ば、馬鹿な!」
今度は怯えさせてしまった。
「済まない。急に大声を出してしまって…。しかし、人には言って良い事と悪い事が在る。今のは後者だ」
「子供扱いしないで」
実際子供なんだが、どうしろと言うのだ。
「君の歳は幾つだ」
俺はいったい何を聞いている!
「十二歳」
見た目で感じたよりは上だった。
しかし女性が成人を迎えるのも十六。
今に手を出せば俺は立派な犯罪者だ。
「まだ成人までに四年も在る。その間に善き出会いも在るだろう。三十過ぎにも成るおじさんを困らせないでくれ。
ロロシュ様に今度こそ殺されてしまう」
「お爺様がお許し下さればいいの?」
「ご両親にも何と詫びれば…。違う、論点をずらすな」
今のは日頃スターレンに鍛えられてなかったら危なかった所だ。商談に於いて、ペースを握られたら負ける…。
これは、商談なのか?
「私に善き出会いは在りません」
「どうしてそう言い切れる」
「マッハリアへの、次の貢ぎ物は。この私だと…」
一瞬、シュルツにアンネの姿が被った。
烈火の怒りに任せ、近場の物を壊してしまおうと傾き掛けたが、スターレンの講義を思い起こして踏み留まった。
論戦では、怒りに振れて冷静さを失った方が負ける…。
「…その話は、誰から」
「お父様が仰っていました。叔母様だけでは終わらないかも知れないと」
当然ロロシュも気付いている。だからこそ俺にアンネの話を聞かせた。
アンネで失敗したら、次はシュルツ。
人質から解放されても、今度は政略結婚の道具。
詰まる所、これは生贄。タイラントを保護してやる代わりに差し出せと…。
「今はゆっくり休みなさい。問題が在るなら、きっとあのスターレンが何とかしてくれる」
「先程に。スターレン様からも伺いました。両親との再会が遅れても良いなら。策を考えてくれると」
スターレン。君と言う男は何処までも。
「それは良かった。彼を信じて損は無い。あのロロシュ様もカメノス様も認めた男だ。…それでも不安なら。君に一つ良い物をあげよう」
道具袋の中から小箱を取出し、中を見せた。
「それは?」
「ロロシュ殿の妻。君のお祖母さんの形見の品。アンネと俺が結婚していたら、彼女に託された筈の品だ」
「ゴンザさんはいいの?」
「俺には、彼女との思い出がいっぱい在る。これを持っていれば、アンネとお祖母さんがきっと助けてくれる。
君に託した方が、彼女も喜んでくれると思う。
だから俺には不要だ」
「…有り難う。お祖母様と叔母様の、形見…」
「その首飾りを、着けさせて貰えないだろうか」
「…お願い、します」
彼女は半身を起こすと、小さな背中を向けてくれた。
長い髪を寄せ、細い首に白銀色の鎖を繋ぐ。
振り返る彼女の胸に輝く深緑の青色。
少し滲み掛かっていた色が、鮮やかに輝いている様に見えた。気の所為かも知れない。
何か力を宿す宝石は、持つべき所有者の元に帰ると聞く。
「やはり君がそれの所有者だ。大切にしてくれ」
「はい。何だか、眠くなって来ました」
「休むといい。ここは何処よりも安全だ」
横になった彼女に、シーツの上から毛布を被せた。
リビングで他の仲間と共に待っていた、スターレンに声を掛けた。
「スターレン。今まで俺は、お前の話を心の何処かで疑っていた。
半ば冗談だと思い、馬鹿にして来た面も在る。しかしお前の話した言葉に、現実が少しずつ積み重ねられ。今では疑う事の方が馬鹿らしくなってきた」
「それって、褒めてるんですか?」
他の仲間も、カメノス隊の面々も注目している。
「その人の皮を被った外道を、今直ぐに、この手で始末してきた場合どうなる」
「それは盛大な愚手です。一時期は俺もその手を考えました。でもそれをやってしまうと、何も止められないし誰も救えない。戦争開始の時期が早まり、マッハリアだけでなく帝国の目もタイラントに向いてしまいます」
「なら!ならばどう止める。俺たちは何をすればいい。
あんな少女に、戦争を止める道具に成ってくれとでも言うのか!」
スターレンは少し考え、言葉を発した。
「カメノス隊の皆さんが居る前で、余り話したくはなかったですが。
王妃フレゼリカは、生体兵器の開発と共に長寿の力まで欲しています。どう言う意味か、解りますか?」
「わから…」
「あの女は、この世界の全てが欲しいんです」
世界の全て?次の言葉が出て来ない。
場に居合わせる全員が、彼の言葉に驚きを隠さない。
更に続けられた言葉。それは誰しもが忌み嫌う言葉。
「人の身を越えて、魔王に成ろうとしているんです」
「生かしておいては魔王。殺しても戦争。いったい、どうすればいいんだ…」
「希望は在ります。ほんの僅かですが。
未完成の生体兵器と合成技術。
消された勇者と聖剣の行方。
放置されている西の大陸と前代魔王の遺骸。
魔物や任意の人を弱体化可能な魔道具。
どれか一つ。切り崩す事が出来れば、王妃の野望は潰えます」
荒唐無稽な話に上塗りされ、思考が追い付かない。
「私は、どうすれば良いのでしょうか…」
振り返ると、そこにはシュルツが立っていた。
俺の怒鳴り声で起こしてしまったんだ。愚かにも。
スターレンは彼女の前に歩み寄ると。
「大丈夫。任せとけって。
水竜様と、優しい方の女神様は、必ず何処かで見守っていてくれる。
全部が上手く行かなかったとしても、切り札は在る」
「切り札?」
「俺だけが持つ。最強のカードがね」
フィーネ嬢がスターレンの後頭部を軽く叩いた。
「イタッ!お星が見える…。傷付いた少女を前に、格好良く決めてるとこなのに」
「皆さん。最後のだけは冗談なので、気にしないで下さいねー」
「今度の王妃の来訪。そこが、大きな分岐点。
今後の世界の命運を分ける、と言っても過言じゃありません。
そこで王妃をある程度満足させてお帰り頂く。
次の手札を掴み取るまでの時間を稼ぎたいと考えます。
それで俺が考えたのが、
地獄のグルメツアー天国行き、です!」
どうだ参ったかと、スターレンは両手を腰に据えてカカカと笑い飛ばした。
カメノス隊の面々も笑う。
「いや済まない。馬鹿にしてる訳じゃないんだ」
「内の団長から。何を見ても聞いても、疑うな、耳を塞ぐな、驚くなと言われている」
「しかし、真逆ここまでとはな…」
「俺たち四人を無下に信じろとは言わん。だが口は堅いと自負はする。暫くは、外で酒は飲めそうにないがな」
「助かります。少しでも情報が漏れたら終り。
これは命懸けの情報戦でもあります。
王妃向けの料理の考案と試作。
宮中晩餐会の前までには、タイラント王家の方々にも試食して頂かないといけません。
流石に俺の手料理では、王妃も手を付けない。
そこは王宮料理番にお願い出来る様、ロロシュさんに頼んでおきました。
考えられるだけの料理を並べて食わせ、世界を壊しちゃったら、二度と食べられなくなるよと教え込むんです。
謂わば、これは世界の命運を賭けた、餌付け」
最後にトームがぼやいた。
「さっきまでの緊張感返せよ」
全く以てその通りだと思う。
何も拳で殴り合うだけが闘争ではない。
激論を交し、罵倒し合い、意見を戦わせるのだって立派な闘争。国家間では戦争の火種に成る事だって在る。
個人戦レベルで暴力はいけないと解っているのに。
どうして母体が大きくなると、戦争にまで発展するんだろう。不思議で仕方が無い。
引き抜き勧誘、買収、賄賂、搦め手、談合、謀略。
闘争の切っ掛けにも成る手段の数々。
これらを逆手に本命を倒す。それがとても難しい。
発展する争いを抑え、可能な限り2次被害を少なく。
それが一番正しい道筋。しかし犠牲は、不可避だ。
早朝にマッサラを出発し、ロロシュの孫娘と救出者を纏めてカメノス隊に運んで貰った。
孫娘以外はノイツェへ預け、孫娘を匿う潜伏先を複数用意した上で内一つで保護。
輸送中に一時意識を取り戻して再度意識を失う。
かなりの衰弱が見られ、現在は静養中。
午後に王都組と合流した後、カメノスの豪邸に招かれ、事業展開の話を進めていた。
そしておやつ時。どうしても会いたかった人物が現われてくれた。
「初めまして。スターレンと申します。商会名はストアレンと名乗っています。ロロシュ殿」
「噂通り、若いのだな。眉唾だとばかり思っていた。こちらのはサルベイン。三十後半にも成って子も設けず、嫁を放って遊び惚ける不出来な方の息子だ。話は私がする」
あの子の叔父の方が来たなら、まだ受け入れ体勢が万全ではない証拠。
「酷い言われようですが、私は置物。お気になさるな」
丁寧な対応の2人を握手で出迎えた。
名前:ロロシュ・アル・ミラージュ
特徴:タイラントの大商人
名前:サルベイン・ミラージュ
特徴:大商人の次男坊。実益主義者。無類の女好き
目立つ情報は無い。自分で探れってか。
玄関前での挨拶からの案内は、勿論カメノス邸の執事。
「別室のご用意が在ります。どうぞこちらへ」
上座にロロシュとサルベイン。上下席にカメノス。
カメノスの対岸が俺とフィーネ。
たったの5人で10倍の人数は入れそうな、母屋から離れた別邸の地下大会議室を贅沢に使わせて貰った。
金持ちぃ。
外部からの対視認性、遮音性も考慮した部屋。
これから話す内容が内容だけに有り難や。
5人分の紅茶を並べ終わった執事に。
「呼び鈴を鳴らすまで。誰一人部屋に近付けるな。例えヘルメン王でもだ」
「畏まりました」
出入り口が閉め切られた。やっと一息付ける。
「急な対応、済まなかったな。カメノス」
「ロロシュ殿から謝罪の言が聞けるとは。明日は嵐ですかな。…冗談はさて置き、これからどうされますか。昨日にスターレンから聞いた時は耳を疑いましたが」
「うむ。説明を始める前に…。スターレン君」
「はい。何でしょう」
「これまでの行いを謝罪する。そしてシュルツを救い出してくれた事、何よりも感謝を」
上から下に頭を下げるロロシュ。
カメノスとサルベインが驚きの表情を浮べていた。
公爵様が頭を垂れる事自体が異例中の異例。
「お止め下さい、ロロシュ殿。それでは話が前へ進みません。今後、良好な関係が築ければ結構です故」
「人としての区切りだ。感謝を」
「でしたら。もー固っ苦しいの止めません?腹の探り合いしてる場合じゃないんですよ。後3週もしない内に塵屑フレゼリカが来ちゃうんで。共闘、して貰えますよね?」
「な…」
我が妻以外は呆然。
我に返ったロロシュは大声で笑った。
「これは愉快。噂通りの男だな、君は。そうだな。その通り、無い腹を探っている場合ではなかった。共闘だとも」
「良かったです。この歳で肩凝りに悩みたくないんで。ラフに行きましょう」
またロロシュは笑っていた。
「シュルツちゃんはかなりの衰弱が見られましたが、目立った外傷は無く、水も飲んでくれたので身体は心配無さそうでした。後は精神面だけですね」
「そうか、それは何よりだ」
「少し粗末な服を着せて、都内の別の場所で静養して貰ってます。直ぐに引き取られるなら、場所も案内出来ます」
サルベインの片眉がピクリと動いた。
何に引っ掛かったんだ?面倒臭いなぁ、もう。
ロロシュは平然としている。このまま進めよう。
「…それは後程聞こう。こちらの塵掃除が終わってからになる」
折角軌道修正出来たのに、サルベインが突然口を挟んだ。
「それよりも。そこの女。その仮面は父に対して失礼。今直ぐ外し給え」
「…黙れ、サルベイン」ロロシュが睨み付ける。
「は?」傍聴に徹していたフィーネも呆れ顔。
「あんた、さっき置物だって言ったよな。守れないなら、出てって貰えます?」
「何だと?どうせシュルツも、お前が盗賊と結託して金で取り戻したのだろ。あの魔人を屠れる者など…」
本命はそっちかよ。素人じゃないんだから、フィーネを出汁に使うなバカ。
ごり押しタイプはこいつだったか。
「黙れと言っている!」
ロロシュに怒られ、やっと黙った。何なんだよこいつ。
面倒に拍車が掛かった。スムーズな話が出来ると思っていたのに…。
少しだけフェイク入れるか。
「金で解決出来たなら寧ろいいじゃないですか。カメノスさんにも化物の説明はして在ります。
あの場に居た盗賊は全滅させましたので、直ぐには王妃にまでは情報は伝わらない。その魔人を倒したかの、信じる信じないの話は別にして貰えません?」
フェイク1。
「父上は気にならないのですか?何十と言う兵で押さえつけいた化物を、どうして倒せたのかを」
実物を見た事はあるんだな。
「論拠をすり替えるな。お前の興味が在るだけだ」
サルベインは苦い顔をして俯いた。
「サルベインさんは納得行ってないみたいなんで。先に俺から説明始めます。済みません、ロロシュさん」
「いやこちらこそ済まぬ。こんな者を連れて来てしまった私が馬鹿だった。少しでも、君から学んで欲しいと欲を出してしまった。先に進められよ」
サルベインが眼をひん剥いてるが、無視。
「では。あれを倒せた理由は簡単です。あれが押し込まれていた同じ檻に、弱体化を促す魔道具が在りました。俺は悪運だけはとても強い人間です。駆け付けた仲間と共に盗賊たちと同士討ちしていた隙を突いたに過ぎません」
フェイク2。
「それはどんな物だったのか言ってみろ」黙れよ。
「貴方が兵を引き連れ、討伐して頂けるのなら。何時でもお渡ししますよ。しかし、戦いもしない貴方にどうして明かせる。聞けば、貴方も殺されますよ!」
「…」
こいつ口弱いなぁ。
ロロシュは徐に席を立ち、サルベインの頭頂髪を鷲掴みに扉まで無言で引き摺って行った。
「痛い!父上!」
「帰れ、邪魔者が!!」
最後はケツを蹴り上げ、部屋の外に放り出した。
「これを邸の外まで出せ」
「父上!」
呼ばれた数人の警護が、戸惑いながらもサルベインを連行した。
「大変失礼した。静かになった所で、進めて欲しい」
「勘弁して下さいよ、もう。今の情報が漏れ出たなら、恨みますよ」
「熟慮する。彼奴は暫く鎖にでも繋いで置こう。これ程まで馬鹿だとは信じたくなかったが」
ここまで沈黙を守っていたカメノスも。
「私も外した方が宜しいですかな。どうも持ち得る情報だけでは話に付いて行けそうにない」
「いやカメノスはここに居ろ。お前も、もう既に戻れない位置に立っている」
「それは、どう言う…」
「先ずは聞こうではないか。彼の真実の話を」
「真実の?」
冷めた紅茶を頂いた。酸味が増した香りの中に広がる円やかなシナモンの風味が利いている。落着くわぁ。
…優雅に茶を啜ってる場合じゃないよな。
「こちらこそ、無い傷を隠す仮面は失礼でしたね」
フィーネが仮面を外し、机上に置いた。
「どうにもあの殿方の目が嫌らしく感じたもので」
「おぉ…、これは」
「何とも…。これは彼奴に見せなくて正解だ。また別の話で掻き乱される所だった。スターレン君、続けてくれ」
場が落着いた所で。
「狙われているのは、俺たち夫婦です。お二方やご家族をここまで深く巻き込む積もりはありませんでした。その点は申し訳ありません。
先程話した魔道具などは在りませんでした。ただ化物の身体が所々腐っていて弱っていたのは確かです。
次に同じ物か、それ以上の完成体に複数で責め入られたのなら、今のタイラントでは、武で打ち勝つ事は非常に難しいと思います。
勿論俺は全力で王妃の暴挙を止める所存ですが、自分一人ではどうにもなりません。
そこを是非ともご協力願いたい」
「この老体の命なら、好きに使ってくれて構わぬ」
「…」カメノスは頷けない。
「俺の出生に付いては、既にご存じだと思いますので割愛します。
母を毒殺され、俺たち家族まで私物の様に扱う王妃に、反旗を返そうとしたのは完全な私怨。
ラザーリアで諜報活動を進めて行く内、王妃自らが管理する何かの実験設備が王城地下深くに在る、と言う所までは掴めていました。ですがその確証を得る前に、俺はマッハリアから逃げ出し、今に至ります」
続く沈黙の中で、過去を振り返る様に語り続けた。
「王妃の見えない檻から逃れ、こちら南を選んだのは、王妃と繋がりが在る北の帝国では何も得られないと考えての事。
知識の薄い大陸西側や、女神教が色濃いロルーゼも選択から除外した結果です」
紅茶を一口啜る。
「ここまでの情報を繋ぎ合わせ、昨日倒した化物を加味すると。王妃が帝国と取引している武器の真の姿が見えて来ました。
それは、強き教会聖騎士の身体に、世界各地から取り寄せた魔物の肉体を移植合成した、生体兵器。
多少の暴論はご容赦下さい。ですがそれが真実です」
「何ら不思議はない。その化物。それの存在を知る我々は魔人と呼んでいる。
ラザーリアに呼ばれ出向いた際に、王妃に自慢気に見せられたからな。それらを放たれたくなくば、従えと脅してきおった」
カメノスとフィーネは黙する。
「製造方法は未確認ですが、未だ討伐されない各地の魔物と女神教団の動きを見れば明らか。
帝国に流れつつあるそれら兵器。どうやらそれを使い帝国は世界制覇に向け動く。これは闇市での情報なので、信用性は低いですが、初手はロルーゼとなる見込みです」
「東…。帝国は英雄ベルエイガの家系を、最初に排除しに行くのだな」
「はい。確率は非常に高いかと」
止めに入ったのはカメノス。
「待て。ロルーゼは女神教の総本とも呼べる国。教団幹部のフレゼリカが造った兵器で、どうして叩く」
「そこが大きな謎でしたが、教団も一枚岩ではないと考えれば簡単。今現在、女神教徒の一部を使い襲わせている事実を加味すれば、教会の暗部と王妃。その後ろに大きな反発組織が居ると考えられます。
本当に帝国が立てば、その時に教団は割れます。しかし戦争が一度起きてしまえば、もう止められません」
「話は理解出来る…。ロロシュ殿、私はそこに、どう関わっているのだ。許されるなら、この身を退きたい。他国同士の戦争を止めるなど、私には無理だ。戦火が世界に広がると言うなら尚更」
「カメノスよ。お前の所で造られている薬品の何かが、魔人製造の、根幹の一部を担っているとしてもか?」
「な!んと…」
「お前はその責任も取らず、逃げ出し果てる阿呆なのか。私はその様な者ではないと思っていたのだがな。水竜様を捨て、敵へ寝返るのか…。残念だ」
「無い!断じてそれは無い。いやしかし…。どれだ…」
種類の事かな。
「何を、どれだけマッハリアに送ってるんですか?答えられる範囲で教えて下さい」
「取引量で多い物で浮かぶ限り…。純度の高い酒。海水から塩を造る際に出る分離水。柑橘系果実の皮の粉。食用に向かない酢。などの品目が在る」
カメノス先生の記憶力凄えな。
ロイドちゃんの同時通訳が頭に響いた。
それを、さも自分で思い付いたかの様に説明する。
「純度の高い酒、酸度の強い酢は消毒液の原料。
分離水は凝固剤にも使われる物。
果物の皮の粉は、物の腐敗を遅らせる効果が在る。
怪しいのは…それ全部ですね…」
「何と言う…。どうしてその様な知識を持っておるのだ」
「さぁ?自分でも不思議です」天から降って来るんで。
サポート有り難う、ロイドちゃん。
「いいえ。私は向こう側の世界を覗いただけですので。
…覗き魔の力も使い方次第ですね」
見れるのかよ…。まぁ今はいいや。
「人体と魔物との合成方法は不明ですが、今上がった物の組み合わせで、魔物の死骸を長期保存させる溶液を作成は可能です。混ぜて、はい完成ではないので、まだまだ知らない工程が在りそうですが」
「詰り…、私は知らぬ内に。兵器製造に手を貸していたのだな」
「最初の切っ掛けは違ったのかも知れません。お馬鹿な王妃の事です。長寿の魔物を利用し、長生き出来る薬でも開発しよう、とでも考えたのかも…。フィーネ、気分悪かったら退出してもいいよ」
隣で悲痛な表情を浮べる彼女を気遣った。
「…大丈夫。最後まで聞く」
強いな。本当はとても辛い筈なのに。
ロロシュが問う。
「現時点で兵器製造の供給元を断つとどうなる」
「激怒した王妃が、大軍引き連れてカメノスさんを脅しに掛かるでしょうね。しかも、大抵の魔物の遺体は手中に収めている段階です。今更元を断って回るのは無駄。物理的にも不可能。世界は広いですから」
「私は、どうすれば良いのだ…」
「まずは何品目か。出荷量を少しだけ絞って様子を見ましょう。製造が難しい物で、季節柄の所為に。品質を保つ為と言えば納得せざるを得ないでしょ。
どの道塵は向こうから来ます。それ以上遅れる事は在りません。精々が見られて困らぬ程度に工作するしか」
「…ふむ。段階的に調整を促そう」
「見事な推察だ。虚言を並べるだけの法螺吹きではないと確信したぞ」
褒められちゃった。サポート無けりゃ、只の屑なのに。
「本当にあの塵を倒す為なら何だって。形振り構ってる余力は在りませんので。…所で、お二人はこちらのフィーネの事をどの程度ご存じですか?」
「西方の何処かの国から来た、上級冒険者をも凌駕する力が持つとか」
「私も同じ様な認識だ」
「そうですか…」
机上にナプキンを敷き、フィーネと目を合わせた。
「少しだけ机を汚します」
右手で隠しナイフを取り、左の甲をカットして見せた。
「何をしているんだ」
「実演が一番信じて貰えると思いまして。フィーネ」
「うん」
薄く流れる血元に、フィーネの手が重ねられた。
淡い光に包まれる事は無い。
体力ゲージが増える訳でも無い。
綺麗な高音が響きはしない。
それでも傷口は綺麗に塞がった。
傷口を拭いて見せ付ける。
「何と」
「教会の暗部が狙っているのは、類い希なる身体能力と共に、恐らくこの治癒の魔法の力。召喚士の力です」
「私の故郷の村は。その改造を施された聖騎士を引き連れた、暗部の集団に滅ぼされました。
両親や、村人の遺体も持ち去られた可能性が在ります。逃亡に必死で最後まで確認はしていません」
怒りに震える彼女の手の汚れを拭う。
「ありがとう。自分で出来るから」
言葉を失った2人に。
「何処まで行っても人間は欲望に満ちた、浅ましい生き物です。こんな傷薬と同程度の力しか無いと言うのに。
事は本大陸だけに留まらず、魔王が討伐された50年前よりも以前から始まっていると考えています。
俺たちからの話は以上です」
今度はこちらから頭を垂れた。フィーネもそれに倣う。
「どうか何卒。私たちにお力添えを」
「どうするのだ、カメノス。お前が辞するなら、我々だけでも動く。敵に付くならば容赦はせぬぞ」
「これで即決出来ぬは商人の恥。薬が売れても、その作り手まで潰されては大損だ。私も存分に助力しよう。ただ私では動き辛い面も在る。そこは容赦願いたい」
「それで充分です」
2人の確約を得られた所で。
「さて暗い話はここまで!お時間が許すなら、もう少しお話しませんか?」
「話とは」
「楽しい商売のお話ですとも。好きでしょ?2人共」
笑い出す3人の脇で、苦笑いを浮べるフィーネ。
「しよう。是非ともしようぞ」
「ならば場所を変え、酒席を設けませんとな」
カメノスが陽気にハンドベルを振り鳴らした。
「私は先に帰るね。遅くなってもいいけど。浮気だけは許さないから」
「仙石承知!」敬礼ポーズで応じた。
「何それ、もう」
笑いながら仮面を着け直すフィーネを、ロロシュが引き留めた。
「一つ頼まれて欲しい」
「何でしょう。お酌は私の仕事では」
「違う。メメット隊のゴンザに、明日の昼前に我が邸に来いと伝えて欲しい。私と話が出来る状況ならば」
「解りました。必ず伝えます」
娘さんの話か。お互いの遺恨が無くなるといいな。
別邸の玄関前での別れ際。
フィーネの肩を掴んで、振り…。返せなかったので前に回り込んでキスをした。
「俺はフィーネを救う。必ず。頭でも腕でも全部使って。
だから辛い時は辛いと言って欲しい」
「うん。期待しないで待ってる。あなたを守るのは、私だけどね」
俺よりも男前やんか!
---------------
「実に眩しい男だな。彼は」
初めて聞く大老の声は、主の一人を指し、そう評した。
「はい。その通りに」
フィーネ嬢から伝えられた連絡に従い、見張りを交代した俺は、公爵家大老ロロシュの邸宅に赴いた。
この門の前で払われた五年前。あの時行く手を阻んだ煌びやかな門は、今度は拒絶をしなかった。
ロロシュ邸本館の大きな執務室。
待ち受ける彼が、スターレンを評した後。
「アンネの墓へ行く。付いて参れ」
「はい」
本館と別館との間の奥に在る箱庭。
彼女が好きだった白い鈴蘭が一面に咲き誇った場所。
その真ん中を貫く回廊の先に、彼女の墓は在った。
「何の土産の用意も在りませんが、祈りを捧げても宜しいでしょうか」
「そうしてくれ」
「アンネ・アル・ミラージュ ここに眠る」
死後に爵位が付与されていた。別段珍しくはないが…。
「老い先短い老人の我が儘だと許せ」
「私には何も言えませんので」
立ち尽くすロロシュの隣で、跪き右手を胸に当てた。
一生来られないと思っていた場所に、スターレンは導いてくれた。
これ以上無い感謝を述べ、漸く嘗ての恋人に再会出来た気がした。
「アンネが飛び出して、十年にも成るのか。娘が冒険者を志す前からの話だ。マッハリアの王妃フレゼリカから縁談話が持ち込まれたのは」
「王族との?」
「そうだ。マッハリアとの交易路を幾つか独占させてやる代わりに、第二王子に娘を差し出せとな。
私ですら一度も会った事も無い王子との政略婚。
既に次期王位は第一王子に内定。第二にならと、好条件に目が眩んだ私は、娘の意見も聞かず受けてしまった」
「…」
貴族同士の縁談ではなかった。
アンネも詳細は語ってくれなかった。そうだったのか。
「娘は話を聞いた翌日には家を飛び出し、何度捕えても嫌だ嫌だの一点張り。遂には家名を捨てる。出来ないのなら目の前で死んでやるとまで言い出した。
娘の意志は固いのだと悟り、漸く折れた私は破談を申し入れ、一旦縁談は白紙に戻った。
それで終われば、善かったのだがな」
「王妃は諦めてはいなかった…」
「スターレンから王妃の人物像は聞いておろう。
真にあのままの女だ。独占欲の塊。それに気付いた時には全てが遅かった。
成長した王子が改めて会いたいと言っていると。
その知らせが届いたのが五年前。
あの討伐隊遠征が始まる一週間程前になる」
「…」
「当時、王妃の本性を見抜いていなかった私は。
愚かにも、娘は冒険者になり、深い恋仲の男も居ると伝えてしまった。それがこの結果を招いた」
「あの遠征に、王妃が加担していたのですか」
何と言う事だ。
「お前を排除すれば娘が手に入るとでも考えたのだろう。
加担する処か、敵の増援まで施しおった」
「私一人を害する為だけに…。どうして彼女を、止めなかったのですか」
「勿論止めた。口では解らぬと、それまでの様に根回しを完璧にした積もりだった。…しかし娘は参加した」
「誰かが彼女に」
「王妃が放った密偵だ。
遠征隊の出発直前に伝えられたのだと思う。
私が娘の参戦を知ったのは、出発してしまった後。
救援隊を編制するのにも手間取った。
こちら側にも内通者が居る。最高位の権力でも申請が通らぬ事態に出会してな」
まだ内通者は居る。
その存在はスターレンも指摘していた。
「もっと早く、王妃の本質に気付いていれば。
もっと早く、お前との仲を認めてさえいれば。
後十年早く、スターレン君が生まれていれば。
後悔とは、実に皮肉な物だな」
「…」
力無く俯くロロシュに、返せる言葉が見付からなかった。
あの日、彼が浮べていた表情の意味を理解した。
渡したい物が在ると、執務室まで戻ると。
奥の部屋から小さな陶磁器の円筒を持ち出してきた。
「それは…」
「人間は灰だけになると、こうも小さくなる物なのだな」
彼女の遺灰。
水竜教では法要が終わった頃に、南の海に散骨するのが上流層の一般作法だとの認識が在る。ロロシュはそれを手放さなかった。
「受け取れません」
「これから王都は嘗て無い程に荒れる。この邸も例外ではない。娘を、静かな君の墓に埋めて欲しい。
何時の日か、お前に善き人が現われたなら、私の代わりに散骨してくれ」
断るにも断れない。
「…解りました。そのお役目。志かと」
「それとこれをお前に託す」
差し出されたのは上質な小箱。
中には、深緑の宝石を遇った首飾りが一つ。
「これは?」
「我が妻の形見の品。何時か娘が結婚した時に渡そうと思っていた品だ。水竜様の御石、アクアマリン。妻の家系に代々受け継がれた品。正直扱いに困っておった。
それをどうするかはお前が決めよ」
困ったな。
盗掘の恐れが在る以上は墓には埋められない。
「お預かり、致します」
商業ギルドの金庫にでも預けるか。
次の時間が差し迫り、従者が退出を催促しに来た。
「最後に一つ。私から質問させて頂いても?」
「何だ」
「私の事は、恨んではいないのですか」
「勿論恨んでおる。勝手に婚姻を決めたなら、真っ先に私の所へ来るべきであったろう。この私に恐れを為したか」
「ええ…、はい…!」
思わず心根が漏れてしまった。慌てて口を塞ごうにも両手が詰まっている。
「正直な男だ。娘はお前の何処に惚れたのか解らぬぞ」
「今ならスターレンに似たのかも知れません」
薄く笑うロロシュを見て、漸く安堵した。
「何よりも今は、シュルツの保護の件を頼む。直接私か母親のメリヤンヌが行くまでは、例えシュベインにも居場所を教えるな。解ったな」
メリヤンヌとの名には聞き覚えは無いが、スターレンにそのまま伝えれば良いのだろう。
「解りました。スターレンにそう伝えます」
満足そうな笑みを浮べるロロシュに見送られ。
鈴蘭を一輪だけ頂いて、豪邸を立ち去った。
心労が溜まる。五年前と比べ、頭頂も随分と薄くなった。
天の何処かから、アンネが見て笑ってくれるならそれでもいいかと割り切った。
昼中に、共同墓地の管理者の許可を得。
彼女の灰壺を埋め、花を添えた。
「君が守りたかったこの国を、どうか上から見守っていてくれ。君が支えてくれたこの命。ここで散らしてしまっても許して欲しい」
もう二度とは会えぬ恋人に、本心を告げる。
俺はこの恩に報いなければならない。
商業ギルドに向かう足を止め、シュルツを匿っている屋敷へと向かった。
路地を複雑に回り、充分に追手が居ないと確信した上で、ある施設の中を通って抜けた先。
そこは急遽カメノスが用意した屋敷。
貴族や上位者が絶対に立ち入らない区画内。
屋敷の玄関の扉を、合図通りに叩いた。
中にはカメノス隊から選出された四人の護衛と、メメット隊のメンバー数名。スターレンの姿も在った。
丁度良かったと、彼に声を掛けようとした時。
向こうから声を掛けられ、別室へと通された。
「生きて帰って来れましたね」
「正直、斬首刑も覚悟していたがな。何とか和解出来た。お前には感謝しかない」
「俺は何もしてませんよ。それより、何か在りました?」
「改めてシュルツを頼まれたのと、ロロシュ当人か、母親のメリヤンヌが聞きに来るまで、居場所は誰にも教えるなと言伝を依頼された」
「メリヤンヌ?彼女の母親はメリアード…。ふーん、そっかぁ。やっぱりまだ居るんだ」
「何がだ」
「ロロシュ陣営側に、まだ裏切り者が居るって事ですよ」
「お前らの遣り取りはよく解らんな。情報ならカメノス側からでも漏れるだろ」
「問題は漏れるかどうかじゃなくて、彼女の肉親の名前を変えたって所です」
「詰り?」
「親族の中に居るって事です。うわー面倒臭いなぁ」
それはこちらの台詞だが。
「恐らく父親のシュベインか、叔父に当たるサルベイン。サルには昨日布石を打ち込みました。その点はロロシュさんも流していたので了解済。問題は父親かぁ」
「カメノス側は放置でいいのか?」
「人の口を塞ぐのには限界が在ります。俺たちは漏らさない前提で言えば、必然的にカメノス側から出た事になるんで、それはあちら側の責任です。それらを踏まえた上での人選なので、そこは信用しましょう。
仮に敵にバレても、カメノスさんなら別の場所も用意してくれてます。絶対に」
「そう言う物か。そっちは任せた。俺たちは誰に何を聞かれても答えなければいい」
「その通り」
「彼女はどうしてる。そろそろ起きたか?」
「起きるには起きたんですがね。どうもまだ男を見ると怖いらしくって。さっきフィーネに来て貰って漸く落着いた所です。特性シチュー食べて回復中です」
「そうか。話はまだ出来んか」
「フィーネが居る内なら挨拶位は大丈夫だと思います。一応俺たちの顔は覚えておいて貰わないと困るんで」
「それもそうだな。今日は挨拶だけにしよう」
屋敷は三階建てだが、逃走も予期して一階の最奥の部屋にシュルツを置いた。
スターレンに続いて、ノック後に部屋に入った。
目覚めたシュルツと初めて顔を合せる。
ほぼ初対面の筈だが、彼女は俺の顔を見るなり。
「ひっ!」
持っていた陶器のカップを床に落とし、逃げる様にベッドのシーツに潜り隠れてしまった。
「どうしたの、シュルツちゃん?あの人怖い?」
フィーネ嬢が駆け寄り、丸くなる彼女の背中辺りを擦って宥めた。
「ヤダ!あの人だけはヤダ!」
ん?何故だ。
「起きてる時に会うのは初めての筈だが…」
「そ、その人!私の…。私のお尻、ゴシゴシしたの!!」
室内に激震が走る。
河辺で下を洗った時に、彼女は一時起きていたのか。
スッと音も無く、フィーネ嬢が立ち上がる。
「いや待て待て待て!先程拾ってきた命。ここで散らす訳には行かん。
あれは、そうだ事故だ。下が汚れたままで運ばれては不憫だろうと。スターレンに押し付けられたんだ」
あの場で完全に起こしてしまっては、あの惨状を真面に見てしまう。緊急避難的措置だ。
「何て事させたの!」
「えー。でも俺がやったって知ったら、フィーネ絶対怒るじゃん」
「そりゃ怒るけど!」
「やっぱ怒るんじゃん。隊の中では一番紳士なゴンザさんらいいかなって」
痴話喧嘩に移ったので放置しよう。それがいい。
「ま、また出直す。忘れてしまえ」
部屋を出ようと、最後の挨拶を投げた時。
中から少しだけ顔を出したシュルツと目が合った。
もう来るなと言われるのかと身構えたが。
「今…、ゴンザって、言ったの?」
「確かに、俺はゴンザだが」
「あの…、叔母様の婚約者の?」
「君は、アンネの事を覚えているのか?」
急に流れが変わった。
首を横に向けると、フィーネ嬢がスターレンを引いて部屋を出て行く所が見えた。
俺を残してどうする!
「叔母様は家に戻られた時、寝所の枕元で沢山のお話をしてくれました。お母様よりもずっと楽しいお話を…」
「楽しい…話?」
「村を困らせる強い魔物を、苦労して倒したお話とか。
旅先で出会った変な人のお話。
異国の山の奥地で見付けた花がとても綺麗だったお話。
恋人は堅物で融通が利かない冒険者だとか」
最後以外は少しばかり話を盛っている。
アンネも含め、俺たちはそれ程広範囲には動けなかった。
オークの収穫隊に加わった時も、檻の外側の補助に徹していた。相手にしたのは精々が低位の魔物。
彼女は、外の世界に焦がれていたのだ。
「どうして、泣いているの?」
気が付くと俺は立ったまま、涙を流していた。
不思議なものだ。墓の前では我慢が出来たのに。
「どうしてだろうな。自分でも解らんよ」
「泣きたいのは…。私の方だよ?」
「違いない」
幼齢に見えて、利発な子だ。
相当傷付けてしまった。反省しても手遅れだが。
「おじさんの事は、薄く記憶が在る。叔母様の葬儀の日に門の前で、凄く泣いていた…」
「恥ずかしい所を、見られていたんだな」
また顔を引っ込められた…。
「違う!その意味じゃない。何と言うか、済まなかった」
何も見ていないと言えば嘘になる。
「…責任を、取って…」
流した涙も何処かへ消えた。
「せ、責任とは」
「私のお婿さんになって」
「ば、馬鹿な!」
今度は怯えさせてしまった。
「済まない。急に大声を出してしまって…。しかし、人には言って良い事と悪い事が在る。今のは後者だ」
「子供扱いしないで」
実際子供なんだが、どうしろと言うのだ。
「君の歳は幾つだ」
俺はいったい何を聞いている!
「十二歳」
見た目で感じたよりは上だった。
しかし女性が成人を迎えるのも十六。
今に手を出せば俺は立派な犯罪者だ。
「まだ成人までに四年も在る。その間に善き出会いも在るだろう。三十過ぎにも成るおじさんを困らせないでくれ。
ロロシュ様に今度こそ殺されてしまう」
「お爺様がお許し下さればいいの?」
「ご両親にも何と詫びれば…。違う、論点をずらすな」
今のは日頃スターレンに鍛えられてなかったら危なかった所だ。商談に於いて、ペースを握られたら負ける…。
これは、商談なのか?
「私に善き出会いは在りません」
「どうしてそう言い切れる」
「マッハリアへの、次の貢ぎ物は。この私だと…」
一瞬、シュルツにアンネの姿が被った。
烈火の怒りに任せ、近場の物を壊してしまおうと傾き掛けたが、スターレンの講義を思い起こして踏み留まった。
論戦では、怒りに振れて冷静さを失った方が負ける…。
「…その話は、誰から」
「お父様が仰っていました。叔母様だけでは終わらないかも知れないと」
当然ロロシュも気付いている。だからこそ俺にアンネの話を聞かせた。
アンネで失敗したら、次はシュルツ。
人質から解放されても、今度は政略結婚の道具。
詰まる所、これは生贄。タイラントを保護してやる代わりに差し出せと…。
「今はゆっくり休みなさい。問題が在るなら、きっとあのスターレンが何とかしてくれる」
「先程に。スターレン様からも伺いました。両親との再会が遅れても良いなら。策を考えてくれると」
スターレン。君と言う男は何処までも。
「それは良かった。彼を信じて損は無い。あのロロシュ様もカメノス様も認めた男だ。…それでも不安なら。君に一つ良い物をあげよう」
道具袋の中から小箱を取出し、中を見せた。
「それは?」
「ロロシュ殿の妻。君のお祖母さんの形見の品。アンネと俺が結婚していたら、彼女に託された筈の品だ」
「ゴンザさんはいいの?」
「俺には、彼女との思い出がいっぱい在る。これを持っていれば、アンネとお祖母さんがきっと助けてくれる。
君に託した方が、彼女も喜んでくれると思う。
だから俺には不要だ」
「…有り難う。お祖母様と叔母様の、形見…」
「その首飾りを、着けさせて貰えないだろうか」
「…お願い、します」
彼女は半身を起こすと、小さな背中を向けてくれた。
長い髪を寄せ、細い首に白銀色の鎖を繋ぐ。
振り返る彼女の胸に輝く深緑の青色。
少し滲み掛かっていた色が、鮮やかに輝いている様に見えた。気の所為かも知れない。
何か力を宿す宝石は、持つべき所有者の元に帰ると聞く。
「やはり君がそれの所有者だ。大切にしてくれ」
「はい。何だか、眠くなって来ました」
「休むといい。ここは何処よりも安全だ」
横になった彼女に、シーツの上から毛布を被せた。
リビングで他の仲間と共に待っていた、スターレンに声を掛けた。
「スターレン。今まで俺は、お前の話を心の何処かで疑っていた。
半ば冗談だと思い、馬鹿にして来た面も在る。しかしお前の話した言葉に、現実が少しずつ積み重ねられ。今では疑う事の方が馬鹿らしくなってきた」
「それって、褒めてるんですか?」
他の仲間も、カメノス隊の面々も注目している。
「その人の皮を被った外道を、今直ぐに、この手で始末してきた場合どうなる」
「それは盛大な愚手です。一時期は俺もその手を考えました。でもそれをやってしまうと、何も止められないし誰も救えない。戦争開始の時期が早まり、マッハリアだけでなく帝国の目もタイラントに向いてしまいます」
「なら!ならばどう止める。俺たちは何をすればいい。
あんな少女に、戦争を止める道具に成ってくれとでも言うのか!」
スターレンは少し考え、言葉を発した。
「カメノス隊の皆さんが居る前で、余り話したくはなかったですが。
王妃フレゼリカは、生体兵器の開発と共に長寿の力まで欲しています。どう言う意味か、解りますか?」
「わから…」
「あの女は、この世界の全てが欲しいんです」
世界の全て?次の言葉が出て来ない。
場に居合わせる全員が、彼の言葉に驚きを隠さない。
更に続けられた言葉。それは誰しもが忌み嫌う言葉。
「人の身を越えて、魔王に成ろうとしているんです」
「生かしておいては魔王。殺しても戦争。いったい、どうすればいいんだ…」
「希望は在ります。ほんの僅かですが。
未完成の生体兵器と合成技術。
消された勇者と聖剣の行方。
放置されている西の大陸と前代魔王の遺骸。
魔物や任意の人を弱体化可能な魔道具。
どれか一つ。切り崩す事が出来れば、王妃の野望は潰えます」
荒唐無稽な話に上塗りされ、思考が追い付かない。
「私は、どうすれば良いのでしょうか…」
振り返ると、そこにはシュルツが立っていた。
俺の怒鳴り声で起こしてしまったんだ。愚かにも。
スターレンは彼女の前に歩み寄ると。
「大丈夫。任せとけって。
水竜様と、優しい方の女神様は、必ず何処かで見守っていてくれる。
全部が上手く行かなかったとしても、切り札は在る」
「切り札?」
「俺だけが持つ。最強のカードがね」
フィーネ嬢がスターレンの後頭部を軽く叩いた。
「イタッ!お星が見える…。傷付いた少女を前に、格好良く決めてるとこなのに」
「皆さん。最後のだけは冗談なので、気にしないで下さいねー」
「今度の王妃の来訪。そこが、大きな分岐点。
今後の世界の命運を分ける、と言っても過言じゃありません。
そこで王妃をある程度満足させてお帰り頂く。
次の手札を掴み取るまでの時間を稼ぎたいと考えます。
それで俺が考えたのが、
地獄のグルメツアー天国行き、です!」
どうだ参ったかと、スターレンは両手を腰に据えてカカカと笑い飛ばした。
カメノス隊の面々も笑う。
「いや済まない。馬鹿にしてる訳じゃないんだ」
「内の団長から。何を見ても聞いても、疑うな、耳を塞ぐな、驚くなと言われている」
「しかし、真逆ここまでとはな…」
「俺たち四人を無下に信じろとは言わん。だが口は堅いと自負はする。暫くは、外で酒は飲めそうにないがな」
「助かります。少しでも情報が漏れたら終り。
これは命懸けの情報戦でもあります。
王妃向けの料理の考案と試作。
宮中晩餐会の前までには、タイラント王家の方々にも試食して頂かないといけません。
流石に俺の手料理では、王妃も手を付けない。
そこは王宮料理番にお願い出来る様、ロロシュさんに頼んでおきました。
考えられるだけの料理を並べて食わせ、世界を壊しちゃったら、二度と食べられなくなるよと教え込むんです。
謂わば、これは世界の命運を賭けた、餌付け」
最後にトームがぼやいた。
「さっきまでの緊張感返せよ」
全く以てその通りだと思う。
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