お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏

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第73話 休暇準備色々

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昨日の夕方の出来事は忘れ。

日課を終え、新ケージの使用感を訓練し、スマホをアローマやシュルツに持たせて邸内で遊んでみた。

ケージの中のNo.2は「99」を指したまま動かない。

「この数字は、%ではないな」
「1日単位でもない。ならなんだろね」

No.3のシュルツ。
「凄いです!お二人が隣に居るみたいです!」

No.4のアローマ。
「アローマも居ります。声だけが送られる…。
謎は深まるばかりですが、楽しいですね」

「硝子面を指先で横に撫でてみて」

シュルツ。
「光が三つ見えます」

アローマ。
「これが今、起動をしている道具の数と位置でしょうか」

「アローマさん正解。シュルツは午前中時間ある?」

「全く御座います!」その言い回しは…。

「なら色々試したいから。今からシュルツ拾って
自宅に戻るね」

「「はい!」」

シュルツを拾って自宅へ戻った。

リビングで4人と1羽。更にNo.1を起動。

位置表示画面で基本的な操作方法を説明。

タップと長押し。ダブルは無かった。

フリックとスワイプ。

ピンチ。ドラッグは無し。

シェイクとターンも無かった。


「必要最小限に留めた感じだね」とフィーネが評した。

タップで各光の号機番号が数秒間表示。
長押しで所持機体からの距離が出た。

フリックは画面端だとページが変わる。
通話画面と地図表示。

地図画面上ならスワイプも可能で自由に動かせる。
数秒放置が続くと自機が中心に戻る。

ピンチせずとも自機を中心に一番距離が離れてる機体まで画面内に収められて表示。

「ピンチイン…まさか」

ピンチインを繰り返すと、最大で5大陸表示にまでになってしまった。

「「「「「!?」」」」」

「ベルさん…。殆ど歩いてる。
自分で見て回った場所が予め入ってるんだ」

「だったら…。
歯抜けの部分は自分の目で見て来いって事で、行くとそこがより鮮明になるのかな」

「なら英雄様は、誰も踏み入った事が無いと言われる北の大陸の内陸まで一度は入ったのですね」

「恐らく。それだと俄然興味が湧いて来るな。
北の大陸」

「そそられますねぇ。いったい何を見たのか」

「行った場所場所で。クワンに持たせて上空から見て貰えば…ほぼ全域網羅も可能…になるのか」

「クワッ!」

「壮大なお話過ぎて付いて行けません。取り敢えずお茶を淹れますね」

「ねぇスタン。この99…長押ししたら詳細出たよ」
「お?…年数!?これって99年間持つのかよ」

「一生物ですね」

「いや、電源オフにしとけば更に伸びるから。
数世代先まで引き継げるぞこれ」

はぇ~。溜息しか出ませんわ。


アローマの紅茶とシュルツのクッキーを頂きながら
ちょっとクールダウン。

「これの機能が凄すぎる。陛下に説明するのが嫌だな」
「絶対に1台置いてけって言われちゃうね」

「上司に常に居場所が把握されるのは嫌だ」
「私も嫌」

「この3台目はシュルツ一択だな」
「だね」

「良いのですか!?」

「タイラントの代表者に任命致します!」
「はい!」

「最後の1台は予備で確保するとして
後渡せるのは2人位だな」

「有力候補としてはペリーニャちゃんかな」

「シュルツ。貴重品ポーチの予備って作れる?」

「後…三個は在庫の材料で作れます」

「これ用に。今度アッテンハイム行く時…
休暇終わりまでに頼んでいい?」

「お安い御用です。クワンティのチョーカー改良の件と合わせて頑張ります!」


それから通話画面に戻り、機能解説。

下方のリストから個別番号をタップすれば個別通話。
全体に戻る時はオールをタップ。

応答と退出。言うまでも無い。

スピーカーモードのオンオフ。守備範囲は要勉強。

電源とマナーモードのオンオフ。

「これで一通り説明出来たかな」
「はい!」

「これまた世界宝具の登場ですねぇ」
「ホント。捨てなくて良かったわぁ」


アローマが挙手。
「ソプランから聞きましたが。本当にアッテンハイムへの同行をしても宜しいのでしょうか」

「どの道向こうでソプラン自由にさせるから。
浮気心配じゃない?」

「是が非でもお供致します!」

「そうでしょうとも。私も真っ白な街並みでイラっとするかもだから、同性のお話相手が欲しいの。
夜ならシュルツと幾らでもお話出来るけど。
現地で私を支えて下さい。お願い」

「そこまで言われてしまっては一歩も退かぬ覚悟で参りましょう」

「俺も助かるよ。女神教って自宅以外での混浴絶対禁止だから。
ちょっとフィーネが心配だったんだ」
「それもあったね」


シュルツが。
「アッテンハイムは国外なので我慢しますが。
ラフドッグでの休暇中に一日だけでいいので私を連れて行っては貰えませんか?

私の記憶は幼少でよく覚えておらず。前回も海辺だけでしたし」

「お爺様の許可を頑張って取ってみて。
私たちは全然構わないから」
「はい!そちらも頑張ります。一人で行かせて貰えるように…」


「後は…ラフドッグの休暇までに。
皇帝が毒薬飲んでくれるかどうか」
「そして飲んだら何が起こるのか」

「どの様な薬なのですか?」

「もう送っちゃったから説明するけど。
簡単に言うと、全ての者から絶望的に嫌われる薬。

元は女神様まで落とせる最強な惚れ薬だったから、
怒り任せに反転させてやったのさ」
「アホな薬でしょ」

「寒気がしますね」
「私も同感です」


「もう直ぐ昼だけどシュルツはどうする?」

「出来ればこちらで…。
本棟では侍女長とアローマさん以外は、余計な気を遣われてしまって。
中々一緒に食べてくれないのです」

「アローマさん。あっちから俺たちの分も何か運んで貰える?」

「畏まりました」



アローマが取りに行っている間。

暇だったので、事前にお手紙書き書き。

「麗しのペリーニャ様」

「スタン…私もだけど。教皇様を敵に回したいの?」

「すんません。真面目に」


「ペリーニャ様。

先日のお手紙有り難う御座いました。

ご無事の帰還を聞き、安心致しました。

私共の休暇が丁度今月内で終わる見込みですので。
来月頭頃より、陸路でそちらへ伺う事にしました。

その頃までに召還に預かれればと考えます。

今の所、同行従者二名を加えた四名の予定です。

そこでご相談です。

召還状に加え、異教徒でも宿泊出来る許可証など
ご用意して頂けると大変に助かります。

以前貴国を旅した際に、門前払いを頂戴した事があり
そちらの救済を宜しくお願い致します。

夫婦共々。
ペリーニャ様との再会を楽しみにしております。

それではまた。

                  ~スターレン夫婦、クワンティより~」

「宿屋は大事です」
「4人でテントは絶対無理!」


「ペリーニャ様はどの様な方なのですか?」

「何て言えばいいか…。
本物の女神様には勿論お会いした事もないけど。彼女が生まれ変わりなんじゃないかって思える位に可憐な子。
綺麗で繊細」

「透き通る感じで。初めて会ったのに…。
何処か懐かしい感じがして。直ぐに仲良くなれた。
誰からも愛されていて。とても頭の良い子」

「真贋の瞳って代表的なスキルを持っていて。
こっちの頭で考えてる事や心の声まで見抜かれちゃうんだけど。
それが全然嫌じゃない。不思議な子だったなぁ。
収納袋の中身まで見られちゃうし。
嘘なんか吐いてももろバレ」

「非の打ち所の無い方なのですね。
私も成人したら是非一度お会いしてみたいです」

「許可が降りればスマホでお話も出来るから。
シュルツだったら直ぐにお友達に成れるわよ。必ず」
「クワッ!」


そんな話をしている間に昼食が届けられみんなで食べた。




---------------

貴重品ポーチと連結出来る、ワイヤーストラップも念頭に置きつつ。

買い物前にカメノス邸へと赴いた。

カメノス氏を呼び出して。

「何度も済みません。皆さん含め自分も忙しいので手短にお願いしたい事がありまして」

「面白い話なら何でも聞こう。君のなら尚更な」

「先日の祝勝会の時にも。カメノスさんに会う度に
なんか忘れてるなぁーとずっと思ってて。

昨日フィーネに言われてやっと思い出しました。

それは豆腐と呼ばれる物で。

醤油の原料でもある大豆を蒸し上げ、それを布巾などで絞り上げると出る豆乳。

その豆乳に、カメノスさんの所で良く出る、食塩を海水から分離した後の分離水を混ぜると凝固するんです。

豆乳自体も栄養価が高く、大豆を搾った後の出し殻もおからと言ってそれも繊維が豊富でサッパリとした食べ物。

全てが使い切れて何れも美味しい。

ちょっと自宅で試したいので大豆と分離水を少し分けて貰えないかと」

「その試作品の一部と引き換えなら」

「それは勿論。冷やしても温めても美味しいので
今日作って明日持って来ます」

「うむ。両方共醤油と同列の工房にあるから。
直ぐに持って来させる。
…生大豆二kgと分離水は五百cc位あればいいか?」

「充分です」


物を引き取って退場。


「いやぁこれで豆腐とも再会出来る。ラフドッグで鰹節に似た物が見付かれば言う事ないな」
「私もお味噌と言うフレーズを聞いてから、ずっとあれぇーて思ってて。昨日の料理の最中にお揚げさんが浮かんできたの」

「豆腐さえ出来れば厚揚げも揚げも直ぐだしね」
「納豆も思い出したけど。あれって菌が強すぎて他の菌を壊しちゃうんだよね?」

「そうそう。醤油や味噌作りで使う菌の邪魔するから
それはカメノスさんとこじゃ無理。納豆は何時かのお楽しみだ」
「夢も目標もどんどん増えて楽しい」



直ぐに帰りたいのは山々だったが、武器屋にやって来た。

今日はご主人の方から声を掛けて来た。
「おぉ、スターレン様じゃねえか。前の襲撃事件以来ご無沙汰だったから、家にはもう用はねえのかと諦めてたぜ。
で。今日はなんだい?」

やっぱ顔覚えられてた。
あんだけ纏め買いすれば当然か。

「今日は細長のピックを探しに」

「人か魔物を串刺しに?」

「まあ使い方は色々」

ご主人は笑うと。
「長い針物ならあそこの一角だけだな。衛生面まで考えるならステン合金がお勧めだ。まああんたらなら重さなんて関係ねえだろ。じゃんじゃん買ってくれ」
店内右手奥の壁際を示してくれた。

陳列棚を眺め。
「揚げ物用の菜箸だからステンレス一択だ」
「柄も細い物が……これかな」

丁度いい感じの長さと太さ。
2人で箸持ちして掬い揚げる動作をして試した。

「「いいねぇ」」

最も手に馴染んだ物を6本購入した。

「おー。その長さならオークの皮も貫けるな。
頑張れよ。後…夫婦喧嘩には使うなよ」

「使いませんて」
「喧嘩なんて滅多にしませんよ」

「おぉおぉお熱いこって。また来てくれよ。

あと間違っても隣は行くなよ。
こっちでも特殊武器のカスタムも受け付けてるが、
あっちは丸パクリして堂々と転売しやがるから。
精々気を付けな」

「それは良い事聞きました。また来まーす」
「また~」



店を出て。
「運が良いですねぇ」
「ついてるついてるぅ」




---------------

自宅へ帰宅。

大豆を全部水洗いして、水に浸して置き放置。
それが1時間。

その間にショウガの摺下ろしの準備。
今回は柚ではなく酢橘を入手。それを半分にカット。

蒸し器と湯専用の器も用意。

「豆腐に初挑戦のスターレンです」
「ワクワクが止まらない助手のフィーネです」

「準備段階から、早くもお客様が…5名!」
「噂を聞きつけてしまったお隣のお爺様とお孫さん。
ここの担当主任さん。
明日を待ちきれなくなったお隣邸宅のご主人様と
私のお友達の娘さんですねぇ」

「わしの知らぬ所で奪わせん!」
「卿よ。今回の食材と分離水は家の取扱商品ですぞ。
権利は私の商団に在ります」
「食品部門も私の管轄。お二方共に出過ぎた真似はお止め下さい」
「「ぐぬぬ…」」

「ロロシュさんの所へは別物を2つ提案予定です。
今度の休暇でゴーギャンさんに進呈しますので、どうか怒りを鎮めて下さい」
「ちゃんと偏らないように考えております。
スタンを信じてやって下さい」
「そうか。ならば良し」
「チッ」
「舌打ちが聞こえたぞ、カメノス!」


「面倒なので放っておいて。作成に入ります。
まずは水に浸して置いた大豆が2kg。こちらを3段重ねの蒸し器に分けて配置します。
本日の目安は40分。じっくりと蒸し上げます」
「簡単とは言え焦ってはいけません」

………

「ペルシェさん。
今回の蒸し上げは高級品の位置付けです。
一般向けに低価格を狙うなら大豆は水煮でお勧めします」
「はい。メモメモ…」

「いい感じに蒸し上がったようです」

「蒸し上げた大豆の絞り時は手で触れてちょっと熱いな位が目安です」
「熱すぎると手で絞れませんからね」

「大豆を、今回は100gだけ取り置き。
用意した湯煎用の器に絞り濾した豆乳を入れます」
「蒸した大豆を布巾で包んで絞るだけ!」

「絞り取ったおからも立派な食材ですので捨てずにお願いします」
「大豆本来の美味しい部分ですから。捨てるお馬鹿さんは王宮にしか居ないと思います。食物繊維も一杯ですから男女問わず嬉しい食材です」

「3つの器に注いだ豆乳に対し、9対1の割合でこちらの分離水を混ぜ湯煎して行きます。目安は大体20分」
「必ず分離水をしっかり混ぜてからでないと、凝固が偏りますので。手間を惜しんではいけません」

「湯煎して頂いている間に。取り置きした大豆を粗く摺ってペースト状にしておきます」
「混ぜてよし。乗せてよし。付け出し感覚ですね」

「濾し取ったおからに、細く切った人参と牛蒡を投入して甘醤油で炊くだけ…なのですがコンロが空き次第に実行します」
「最初は三つも使うのか?と思っていましたが
意外に使うものですねぇ」

「湯煎が完了しましたが、余熱で冷ましながら更に固めます。ここで掬っても美味しいのですが今日はやりません。
ここから先はペルシェさんのセンスを信じます」
「はい!」

「その間におからを弱火で炊きましょう。ここで水分を飛ばしてしまうとパッサパサになって食べ辛くなるので注意です」

………

「おからもいい感じに炊けました。
配膳のお手伝いをアローマさんお願いします」
「今日のは機材が…あ!只今参ります」


今日は笊を買い忘れたのでそのまま深皿に豆腐を取り分けた。

おから煮も配膳しおわり頂きます。

「最初はそのまま。お好みで小皿に移して大豆ペーストを加えたり、ショウガを乗せたり、酢橘を搾ったり、味の変化を楽しんで下さい」

「美味いな!柔らかく優しく深い味わいだ」
「大豆は醤油や味噌だけではなかったのか…」
「勉強になります。優しい甘さと酢橘の清涼感。
醤油とショウガの相性も良い。美味です」
「これは…自分で作れる気がしません」
「美味しいです!幾らでも入ります!」
「クワッ」

「「(懐かしいぃ~~)」」

大人たちにはトワイライトで別途購入したシャンパンを
シュルツとクワンには白葡萄ジュースを進呈。

シャンパンとの相性もバッチリ。


食器を片付けながら歓談していると。



遂に、その時がやって来た。

扉を叩いてソプランが飛び込んむ。
「うわ何だこの面子…いや丁度いい。
たった今、ミランダが苦しみ出したぞ!
恐らくカメノス邸の方も!」

「解った。先にミランダを解除してみます。
その後カメノス邸へ向かいます」
「いよいよね」

頷き合って出て行く面々。

「アローマさんとクワンは念の為ここで待機。
ソプランはモヘッドとギークの様子を先に見てきて」

「はい!」
「クワッ!」
「了解」




---------------

ミランダの軟禁部屋へ。

「ミランダさん。俺が解りますか!」
「す、スターレン様…ぐぅ…」

頭を抱えて苦しむミランダから少し離れて呪いを解除。

次第に呼吸の乱れが整い始め、苦しむ表情が消えた。
そして意識を失いその場に倒れた。

「警備は監視を継続。縄を解いてベッドに寝かせてくれ。

シュルツは離れた所から様子を伺って、もし暴れ出したら1番のスマホを呼び出して。

カーネギは2人の間に入って待機」

「はい!」
「解った」

「私は貝殻を。
周辺の町の様子を見てくる」

貝殻を耳にセット。
「オーケー。カメノス邸へ飛んでみる」



カメノス邸の正門前に飛び、2人の到着を待った。

数分で到着。

2人が到着後、常駐メンバー3人と共に軟禁部屋へ。

ミランダと同様に苦しむ女性に対して呪いを解除。

「メンバーの3人はこのまま様子を見ていてくれ。
フィーネは周辺の確認が終わったら、カメノス邸で待機。

俺はこれから地下道を通って城に向かう」

「「「「了解」」」」



先に来ていたソプランと合流して、案内の衛兵たちと共に地下牢へ向かった。

同様に苦しむモヘッド。
しかも舌を噛み千切ろうとした為、
猿轡をして様子を見た。

ソプランが問う。
「まだ解除しないのか?」

「会員のモヘッドがどうなるのかが知りたい。
じゃないと他の潜伏者がどうなるのかが解らない。

この大陸中の会員を救う事は不可能だから」

「…そうだな。そうだった。悪い」
「大丈夫…だと信じるしかない」

こいつが死んだら、他の人も死んでしまう。

それは失敗とも言える。
帝国の人々を殺したも同然。


フィーネから連絡が入った。
「周辺は特に変化無し。カメノス医院に飛び込む人たちも居ない」

「フィーネはカメノス邸内へ。軟禁部屋にメンバーが居るからそこと交代して」
「解った」


周りの衛兵に呼びかけた。
「誰かこいつと一緒に捕えたギークの様子と。
上への連絡は問題ない?」

「連絡は問題ありません。あちらの様子を見て参ります」
数人が走って行った。



とても長い夜だった。



数時間後にモヘッドの錯乱が収まった。

その間で、各所に動きは無いまま。
ギークは唯々泣いているそうだ。

自然に呼吸の乱れが消え、眼差しも以前のような優しい目になった。

「落着いた?」

モヘッドは頷いた。

「俺の事が憎い?」

首を横に振った。

「今から口外すけど。舌は噛まない?」

頷いた。

「俺がやる」とソプランがモヘッドの猿轡を外した。

「衛兵の皆さんは。これから俺とモヘッドが話した内容を上にそのまま報告を」
「ハッ」

モヘッドに向き直り。
「これから1つずつ聞きます」

「はい…」

「皇帝の事はどう思っていますか?」

「今は唯々憎いです。あんな奴の言いなりになった自分も何もかも」

「最近の記憶に欠落は?」

「全て覚えています。薬の在処を探ろうと、元上級三人と各所に指示を出したのも僕です」

「モヘッドが王都のトップの指揮者だったとの認識で大丈夫ですか?」

「はい」

「他の地方に潜伏者は居ますか?」

「いいえ。タイラント国内は全て王都に集約されています。
皇帝の最初の指示は、スターレン様とフレゼリカとの確執の動向監視でした」

「最初にフィーネに目を付けたのは何時からですか」

「ツンゲナの宿屋で居合わせたあちらの潜伏者が
フィーネ様の素顔を見てしまったのが事の発端です。

それが皇帝まで伝わり、こちらにも指示が飛ぶ様になりました。

ラッハマでの最初の襲撃も、指示を受けた僕が手配した者たちです」

「解りました」
だから手際が良い割に女神教とは関係が無かったんだ。

「エドガントとデュルガは死亡。ギークは肢体の腱を切られて別の牢に捕えられています」

「…はい」
悔しそうに目を瞑った。

「キャルベスタの会員番号はモヘッドよりも若いですか」

「はい。確か一桁だった筈です」

「その数字に特別な意味は無いと?」

「皇帝の気分で決めたのでしょう。キャルベスタは宰相で動き難い。動き易い僕が、指揮者に任命されました。

僕がここへ来た後、対面に居たキャルベに掴んだ情報を横流し。鎖が解かれた瞬間に飛びました」

「そうですか。他の人も記憶があるなら問題ないか…。

貴方の裁量は陛下が決める問題です。

酌量を求めるなら協力も出来ますが、どうしたいですか」

「陛下の裁定をここで待ちたいと思います」

「解りました。ギルドはゴンザとムルシュが代理で引き継いでいます。

もしも酌量が認められ、復帰出来るとしたら
どうしたいですか?」

「その時に。スターレン様がお許しして下さるなら
命に代えて職務を全うする所存です」

「それはその時に周りの皆と決めましょう。

最後に質問です。こちらからのギルド本部への問い合わせは結局したんですか?」

「全て破棄しました。本部は何も知りません」

本部まで疑っちゃったぜ。

1つ頷き返し、牢を出た。

「衛兵の皆さんは上に報告を。
俺は自宅かカメノス邸の何方かに居るとお伝え下さい」
「ハッ!」


「フィーネ。
モヘッドは多少錯乱したけど、自然に回復した。
先ずは一安心だ」

「良かったぁー」

「そっちも多分起きたら元通りに戻ると思うから、それを伝えて自宅集合で」

「はい。直ぐに帰るね」


「ソプラン。一旦帰ろう。
凄く眠い」

「俺もだわ」



ロロシュ邸に戻り、卿にモヘッドの自然回復を伝え、
ミランダはもう大丈夫だと進言した。

カーネギと軽くハイタッチして。

シュルツの頭を撫でた。
「遅くまでごめん。もう大丈夫だよ」
「はい!」




---------------

自宅に戻り、アローマが淹れてくれた紅茶で乾杯。

「ミランダは元に戻るのですね」

「ああ。間違い無く」

胸を撫で下ろすアローマをフィーネが抱き締めた。

キッチンを眺め、途中だった片付けを再開。

「何だそのブヨブヨした白いもん」

「豆腐だよ。もう直ぐカメノスさんのとこで売り出すから食べてみなよ」

「その残りは」

「明日の朝食だよ。スープにして飲むの」

「俺も飲みに来ていい?」
言うと思った。

「解ったよ。どうせ一杯あるし。
シュルツ辺りが来そうだし」

「間違い無いわね」
「ですね。と言う私も!」

はいはい言いながら、残り全てを蓋付きのボールに入れて冷蔵庫にIN。

「取り敢えず今日は寝よう。
どうせ明日も城に呼ばれるだろうから」


深夜の解散。
取り敢えずの成功を心で祝いながら。
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