お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏

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第241話 最も深き迷宮攻略・4

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迷宮突入16日目の26層。

さあ泣いても笑っても残りは多分20層以内。
遠いわ…。

いきり立ち嘶く。黒い馬群の真ん中に。
ポツンと白馬の騎士乙女。背中には純白の翼。
長い金髪に見合う黄金のティアラ。超美人!

携える獲物は長い西洋ランス。
腰には銀鞘長剣。左腕には白銀シールド。

双眼鏡で覗くこちらを見据える流し目、長睫毛。
色っぽい♡

ヴァルキリー・ファフレイス。
聖なる戦乙女の最上位魂。槍聖(剣装備時:剣聖)
必殺技:狂い咲き、蒼薔薇、散月花
得意技:百連突き、兜割り、投擲貫通
特性:闇反射、破邪、全魔法呪詛吸収、馬脚上昇
   神速飛翔、陸上踏襲、空間浄化、美瑛美声
性能:ベース知能(140)以外3500
   馬上✕2、飛翔✕3、陸上✕5
特徴:彼女を地上に降ろしてはいけない
好物:芋羊羹

怯えるプレマーレ。
「無理無理無理無理!!」

「あれ?え?何で!?」俺
「…どゆこと?」嫁
「俺の苦労は何処行った」ソプラン
「お美しい」アローマ
「あら?同業者かしら」ロイド
「クワ?」
「誰ニャ?」

昨日、一昨日の行動を振り返る…。振りか……。
「あ!!皆!御免!マジ御免」
「何?スタンが…な…あ!」
「黒竜様の盾持って抜け穴出ちゃった!」

「「「「あ…」」」」
「クワァ…」
「うっかりニャ~」

風マイクを握り絞め説得を試みる。
「大変申し訳無い。こちらのちょっとした手違いで。お帰り頂く訳には」
「出来ぬ。悪しき竜の呼び声を聞き及んだ。
我が名はファフレイス。貴殿の名は」
静かで透き通るお声。
フィーネもロイドも居なかったら一発で惚れてました。

「えーっと私。こちらの世界で勇者をやらせて頂いているスターレンと申します。どーしたら良いですかね。
ひじょーに。ひじょーーーに戦いたくないんですけども」
「勇者…。勇者の貴殿が何故!魔の者と居る。
それに。左隣の黒髪の麗人。同業とお見受け致すがこれを何とする」
「こちらの世界の新たな試みと申しましょうか。種族や属性を越えてですね。対話を致しまして。
共通する敵の。邪神を信奉する悪の教団を倒す為に。
只今絶賛共闘中なのです」
マイクをロイドへ。
「私はロディカルフィナ。こちらでの名です。
今スターレンが述べたように。魔であろうと闇であろうと意思が通えば交じ合える。同じ世界に住む者同士。
何時の日か共に暮らせる日が来ると。
歩み始めた今時分」

こちらに向けた矛先を降ろした。
「成程…。こちらの世界は和平に向かうか。
その邪神とやらは何処に居る!」
「済みませーん。大分こっちに近付いて来てるみたいなんですけど。まだ来てないんですよぉ。
さっきの悪い教団が。邪神を召喚する道具を作ったり集めてたりしていてですね。主にそいつらをぶん殴ってる所なんですよ」
「無駄足だったか」
「申し訳無いですが」

ファフレイスさんは暫く考え。
「貴殿ら夫婦は料理が得意とお見受け致す。
我の好物も見られた様子。次に行く為にはやや空腹。
作っては貰えぬか」
「「お作り致します!」」

中間層にコテージを出し直し。
糖度の高い甘芋を蒸し、濾し、黒砂糖少々、
蜂蜜(風味付け)、適度な水、
ジェイカーで粉にした寒天。
蒸し型に填めて再度蒸し。待つ事暫し。

粗熱を取った芋羊羹を約2時間でお届け。

大人しく道を空けるお馬の間を走り戦乙女の御前へ。
「お待たせしました。薬味が無いので蜂蜜を。お砂糖は黒砂糖を控え目に使いました」
白馬から華麗に降りたファフレイスさん。
「忝い」
皿を受け取りフォークで突いてパクりとモグモグ。

水筒から淹れ立ての烏竜茶をティーカップで進呈。
「生憎緑茶を切らせて居りまして。代わりにこちらの烏竜茶で何卒」
「美味い…本に美味。熱い黒茶も程良い苦み」
「有り難う御座います。妻も後ろで喜ぶ事でしょう。
羊羹はもう1本程お作りしましたが如何致しましょうか」
俺のバッグを凝視して。
「適度な清浄布が有るなら持たせてはくれまいか」
「喜びまして。直ぐに包んでお持ちを」

「それとロディカルフィナ殿をここへ」
「ははっ」

残りの羊羹包んで2人で戻った。
腰鞄へ普通に収納。
「ロディカルフィナ殿。こちらの敵は強大か」
「数年内には激戦化。格上も数匹」
ふむと唸り腰の長剣をベルト毎ロイドに渡した。
「帰路の途上で寄っただけ。羊羹と茶も貰い受け。
何もせずでは心苦しい。槍は渡せぬが剣ならば。
役立てよ」
「有り難く」

俺に向き直り。
「勇者よ」
「はい」
「四半日以上空けると良い。来る前の状態に戻そう」
「有り難う御座います!」

不思議そうに見詰め。
「変わった勇者だ」
「良く言われます」

ロイドは忘れず長剣をバッグへ収納した。

26層入口内に退避したら消えるとの事で食器を受け取り撤収。


「いやぁ。マジでビビったぁ」
「危なかったねぇ」

プレマーレは未だに震え。
「怖かったぁ。聖気だけで首を絞められたみたいに…」
「あらあら。私も本気を出せばあれ位に成りますよ。先程良い剣も頂いたので」
窘めてるのか脅しているのか。
「お手合わせの件は…無かった事に」
「仕方が有りませんね。でも安心。敵に回らなければ消し飛ばしたりはしませんよ」
「…善処します…」

「皆6時間以上置けば戻るらしいから。長い休憩と昼食入れて7時間後に出直します」
「頼むぜ隊長。見過ごしてた俺らも俺らだが」
「寿命が縮みます」
「ごめん。反省します」


リトライ26層。

グリッドグリーバー。(階層主)
人馬一体の槍術師。放射魔法と刺突が得意。

上記小型版の取り巻きが240体。

「良し。狙い通り。円弧陣形でソプラン中心。固まって接近して一際デカい階層主までの道を作りソプランで止め。
範囲系魔法だから多少当っても無視。
次で相手も陣形整えるから戦力対比で止めと中心の人を入替えて行く。
雑魚の殲滅は不可。少し残すイメージで」
「おお!」

次の27層ではこちらと同じ円弧陣形を取った。
同じ魔物構成。敵戦力上昇は軽微。

夕食フィニッシュで16日目は2層更新。


17日目の28層。

同魔物構成。敵戦力中上昇。敵布陣ランス型。
中央1点突破でこちらの壁を破り玉取り狙いの型。

こちら中心人物をプレマーレに変更。
獲物は上の階層主が落とした長槍。

「敵陣形の見た目に惑わされず。中央開いて誘い込み。
食い込んで雑魚敵前半部が削れたらプレマーレが擦り抜け階層主撃破。撃破威力は最少で。調整お任せ」
「はい」

「こっから先は敵が落とした武装を使い捨てる感じでじゃんじゃん放出。どうせ31層から入れ替わる」
「おーけー」

30層の宝箱は1つ。

苦心の羽織。
装備者への有害な呪詛無効。見た目赤いちゃんちゃんこ寄りのベストジャケット。

「次来るねぇ」
「来ちゃいますねぇ」

「何が来るんだ?」
「何でしょう」

「俺たちのボーナスステージ。イビルアイ君がさ」
「ゲジゲジもじゃもじゃのデッカい一つ目」
「マジかぁ。見たくねえわ」
「いよいよですか…」

「出来る限りイビル君を引き延ばしたいから…。
まずこの赤いベストはアローマに着させない。
隠れられる岩場が在るから反射盾装備で身を潜める。
ペッツペアもアローマの近くで待機。
他人型の人員は上層で出た弓矢で攻撃。アローマの近くの岩場から。

的はデカいから誰かのは当る。暫く間を置き誰かの着弾が見えたら反射盾を向けてサヨナラ」
「狡賢いですねぇスタンさん。ゾクゾクします」

「それほどでもー。どう?反対意見は。
ソプランの真面目にやれ!てのは無しで」
「言わねーよ。俺はそれでいい」
「私も従います」

ロイドとプレマーレは。
「同意で」
「同じく。その次でどう変化するのか見物です」

「クワァ」
「待機は暇ですニャ~」
「クワンとグーニャはアローマに接近した触手だけちょん切って。敵に見えるスピードで」
「クワッ!」「ハイニャ!」

「それよりスタン。どうしてドロップ装備品捨てるの?」
「え?宝箱産とプレマーレに渡した特殊効果名前付き品以外は迷宮出たら消えるよ?」
「え!?」

「だってこんな歴史長いのに外でも最果て町でも身に着けた冒険者居なかったじゃん。性能は悪くないのに」
「あ!そっか。迷宮内限定の救済品かぁ…」
「そゆこと。流石のベルさんも押し寄せる何千何万人分の材料は確保出来ないよ」
「おぉ…考える迄も無いわ」

「まあ外装着込んでもインナーとベストの方が性能断然上だしな」
「重くて邪魔です」

「理に適った仕組みですね」
「ギリギリ生き残れるように、ですか」
「クワァ~」
「だニャ~」




--------------

18日目にフィーネとアローマ同時にあの日が来た為
+3日の21日目の31層。

31層で遂に登場。標準イビルアイ1体。

初見の従者2人。
「おぉ~グロい…」
「夢に出そうです…」

初見ではないプレマーレ。
「槍投げしたい…」
「お止め下さい」

的がデカけりゃ何でも当る作戦で進んだ32層。

サンズアイ。1体
イビルアイの進化形。呪詛に加え何とピカッと光ります。

「光追加されちゃったかぁ」
「ですねぇ」
「どうする。作戦変更か」
ソプランに対し。
「いやこのまま。眼球に矢が当れば眼閉じるし。直視しなければ全員竜眼コンタクトで超余裕」
「それもそうか」

「次で敵数が増えたらちょっと作戦練ろう」
「おぅ。今更主増やしたくねえもんな」

あっさり撃破。
短時間勝負であり。前日迄の遅れストックが有るのでそのまま戦闘続行。

33層もサンズアイ1体。

「良し!まだ運が有る。発光力が上がっただけ。次の層で地面から巨大百足が追加されると思う。各自この層で地上回避運動の練習をして置こう」
「百足かぁ。まあ浮遊物体だけで終わりなんて甘くはねえわな」
「足元注意…。
これも黒竜様のご助言の一つなのでしょうね」
「ぽいな」

「この層戦闘終了後。クワンとグーニャは2人を空中で拾える練習を頼む。グーニャの猫手が合わないなら無理しなくていい。途中落下が一番怖い。
他の俺、フィーネ、ロイド、プレマーレは完全無視で」
「クワッ!」
「ハイニャ!」

模擬訓練終了後に昼食。

「グーニャの自信の程は」
「前足だけ大きくすれば楽勝だニャ。今の大きさだと爪が食い込んで無理ニャ」
「掴まれた左肩痛え痛え。まあ薬塗りゃ一発で治るが」

「部分巨大化出来るの?」
「知らなかったわぁ」
「出来ますニャ。格好悪いので使わなかっただけニャン。
使っちゃ駄目かニャ?」
「是非使おう。遊撃の片方がちょっと大きくなった位じゃ影響は少ないさ」
「助かるぜ。クワンティはアローマに張り付くからよ」
「お願いしますね。タイミングはお任せです」
「クワッ」

「おっけ。グーニャの掴む練習が終わったら34層に突入しよう」
「ハイニャ」
「ちょい塗り薬用意しよ…」
「信用するニャ」
「お、おぉ…。多少は我慢か」
男ですから。

予想が的中。サンズ1体に対し巨大百足が百匹追加。
34は無事に乗り切れたが35では百足が倍以上に。

2人共高く舞い上がり。百足に巻かれる前にクワンとグーニャが救出成功。

宝箱からは虫除けのロザリオ。
所持者の標的以外の昆虫種を全て遠避ける十字架。
これもずっと探していた物の1つ。

21日目の夕食時。
「名誉の負傷を負ったソプランの為にも明日はお休みで」
「おぅ。めっちゃ刺さった。ベスト以外の部分が」
「ごめんニャ」
「急場じゃ仕方無いよ。後で治癒掛けるわ」
「頼む」
「お願いします」

プレマーレが。
「次はどの様な物が来るとお考えですか」
「そうねぇ…。遊撃の飛行性能と地上組の回避力をある程度把握されたから…。次も飛行系の何かだと思う」
「ここまで初期装備で頑張れたけど。いよいよ、て感じね」

「本音で理想を語れば。最下層突入後に完全武装で迷宮主を押し潰したい。でもソプランとアローマはそろそろ厳しい。後衛の性能上昇がどう響くか。悩ましいとこ」
「36の敵を見てから考えましょ。もしかしたらアローマの盾1つで抜けられるかも知れないし」
「そやね」

ソプランが謝りながら。
「足引っ張って済まん。所で最下層の想定層は何層だって考えてる」
「うーん。スフィンスラーがきっちり20層。
その倍の40層。その入口に最下層ですと言う看板。
騙された俺たちは40層で完全武装解禁。
実はもう1層有りましたー。で41層目がラスト。
だろうね。悪戯好きなベルさんなら」
「うへ、えげつなーい」
「最後の最後で…。有り得るな」
「英雄の悪戯。怖すぎます…」

ロイドも。
「ここまで5刻みが続いて最後だけ39は可笑しいですものね」
「それそれ。ずっと考えてたんだ。
過去唯一39層に辿り着いた冒険者隊が何を見たのか。
多分きっと偽物の表示で。40層の前座を頑張って倒し。
1人生き残り。突然奥へ続く扉が現われ絶望した。
仲間を失った悔しさで最終到達は39層だと言い残したんじゃないかってさ」
「最宮踏破の栄光を奪われた復讐か。一冒険者として解らなくはねえな」

心配性のプレマーレ。
「四十二層も…。想定されては如何ですか?」
「勿論考えてるよ」
探索片眼鏡を取り出し。
「これも多分ベルさんの作品。俺に使えって巡って来た。
41層グルッと探索。ちょっとだけ他の皆で抑え込んでて欲しいかな」
「余計でしたね」

「いやいや何の。俺の最悪想定は51層。臆病者で疑心暗鬼だから」
「自分で言っちゃう?」
「ハハッ」

「お前が言うと現実になるから止めろ!頼むから四十二って言え」
「御免。42層想定で」


フィーネと2人切りの寝室で。
「ねえねえフィーネさんフィーネさん」
「駄目よ」
「まだ何も言ってないじゃん」
「本はシュルツと一緒に読むって約束でしょ」
「前書きだけ…」
「だーめ。目を離すと高速で捲ってるじゃない」
バレバレやん(泣)

最終巻を嫁に取り上げられ。悔しさの余り黒竜様の盾を眺めながらうっかり出てしまった要因だったりする。




--------------

突入23日目の36層。

入口の高台から見下ろせる…筈だった物は見えない。

眼前に広がる光景は。
「壁かぁ…」
「2巡目のスフィンスラー終盤で見た光景ね…」

崖下の地面から天井までを1枚の壁が覆い隠す謎層。

シークレットウォール。
只硬い土壁。

呆然自失気味なソプラン。
「これ…こっちの攻撃性能計りに来てるのか」
「だね。無闇に壊せば次の層で硬さが上昇。
妄想で。最初の壁の向こうは動く大穴。
その向こうは動くスリット。
その向こうは押し潰して来る壁。
攻撃性、俊敏性、飛行能力、耐久力。全部調べる気だ。
ここまでずっと隠して進んだ事へのお仕置き、て感じ」
「厳しー。最初の壁は壊さないと絶対進めない。
遠距離、魔法攻撃とかも引き出させるのが狙いなのね」

「出口の開放条件が全く解らない…。
双眼鏡でも透視不可。潜水艇取りに行った時と同様に流動体で遮ってる。
ピーカー君で猾しよう物なら異次元の強敵が登場。
話が通じるファフレイスさんを引けたのは奇跡だ。
次は無い」

意外に元気な嫁。
「なーにスタンさん。絶望的な顔しちゃって」
「え?」
「大丈夫よ。私とプレマーレなら取って置きが有るじゃないの」
そう言って見せたのは。素手の拳。
「困った時は拳骨よ」
「あぁ確かに。失念していました。拳なら自由に硬さが変えられる。壊れるギリギリを攻めれば楽勝ですよ」

「おぉ…。2人が拳闘術の女神様に見える…」
「褒められてる気がしない」
「しませんね」

突破困難だと思われた秘密壁も2人の女神に砕かれすんなり素通り。

ベルさんの策略をぶち破ったのは生身の拳だった。

出口開放も同じ硬さの最後の1枚壁を壊せば開いていた。

他の皆で盛大な拍手を送ったとさ。

39層まで硬度微増を続ける壁が続く。本当の意味でのボーナスステージ。有り難や。

そして迎える40層。

39層出口の中間層から人工壁となり。スフィンスラーとは微妙に違う調定の白壁造りへと変化。そこから繋がる緩やかな螺旋回廊。誰もが終わりを期待する。

降り切りからストレート廊下。その先には大扉。

扉手前の側壁に埋め込まれた金プレート。
描かれる文字は!
『最も深き迷宮最下層・御目出度う』

「捻りが…無い…だと」
「捻って、無いね」
「三十九からの雰囲気とこの文見りゃ。上で散々苦労した後なら。まあ受け入れたくなるのも……頷ける」
「そう…ですかね」
「少々、味気ない」
「少々、でしょうか…」
「クワァ~」
「スフィンスラーを知らない冒険者なら仕方無いニャ~。
我輩は最下層見てないですけどニャ」

「まあね。俺とフィーネとロイドとクワンだけだし。なーんも真っ新に考えれば最下層。て書いてるから」
「スフィンスラーは大扉だけだったしねぇ」

俺の隣から離れ扉の前に立つフィーネ。
「扉を開ける前に提案が有ります」
「何でしょう」

「40と次は私とプレマーレでやらせて」
「…その心は」

「36からの判定壁の硬さをこの身で知ってるのは私たちだけだから。
42層前提で40も41も同じ調整が必要。
ここまで温存出来た俊敏性も少し上乗せするだけで敵を上回れる。
8人分に分裂するゴーレムや鎧の怪物だったとしても後ろ壁を利用して私たちが前に立つ。スフィンスラーでは初見だったから散開したけど。固まってくれた方が守り易いしアローマは壁を背に盾を構えるだけでいい」
「成程」

「私とプレマーレなら魔力を全身に纏えるし。後手を踏むなんて有り得ない」
「ふむふむ。敵を弱体化させたようなもんだしね」

「何よりも!」
「何よりも?」

「最宮入ってから…私全く活躍してないじゃない!」
「おぉ…」
「スタンは隊長で陣頭指揮を全部。
本を見付ける切っ掛けを作ったのはソプラン。
その鍵を見付けたのはアローマで終盤盾持ち。
遊撃ペアは重要な飛行系。
プレマーレは後半攻撃の中核に入った。
カルはファフレイスさんとの交渉で強力な剣を貰う。
私……何か、したっけ?」
「済みません…。全く、気付きませんで」

「そのストレス発散です!!」
嫁さんは大きなストレスを抱えていたらしい。
「もういっそ最後までボッコボコにしてやって下さい!」
「粉に変えてやるわ!」

宣言通りに!

40層。ゲルヘイムス。
全身に業火を纏うスライムゴーレム。8体に分裂。
水属性領域浄化で鎮火。正拳突きでコア破壊。

ドロップ品はフレイメスト。深紅の勾玉。
全身に炎が纏える。本人と装備品には無害。

41層。カータリアワーメ。
黄金色の鎧騎士。8体に分身。
肉弾戦ならお手の物。スクラップにしてコア破壊。
個人的には格好良かった。鎧が。

ドロップは黄金武装と金の延べ棒2✕8kg。
装備の特殊効果は金運アップ。…いらね。
性能は金なので唯々重くて柔らかい。…どっかに飾る。
8セットなので喧嘩には成らない。

ホントに在った42層。真の迷宮主デロメニアン。
杖を持った狼男の毛むくじゃら。最初から8体。
何かを発動するよりも。何かを詠唱するよりも早く。
敵の身体はバラバラに成り果てた。

一番最初に人語で。
「よ」
と言っていた気がするので。
「善くぞここまで辿り着いた」
が言いたかったんだと思う。

ドロップは。
最宮踏破者の証。小型ブローチ8個。特殊効果無し。
初回最宮踏破隊の証。金色Ver1個。特殊効果無し。
最宮命名権の金プレート。書き込んでギルド提出。
彫り込みも可。プレート自体に効果は無し。
裏にはしっかりと最深部は42層と明記。
ちゃんと手続きまで考えられるベルさん偉い子。

残り6者は無惨に駆逐される様を見守った。
興奮も感動も苦労も無く終了。

一瞬で終わってしまうもの…。
3層全部で10分も掛かってない。
アローマは盾を途中からバッグに入れていた。

勝利の雌叫びを上げ抱き合い喜び合う姿は美しかった。


嘆き節のソプラン。
「こんな苦労して辿り着いて踏破称号だけかよ…」
「まあ戦術教育がメインだし。こんなもんでしょ。
さーて。詫びの品は何処かなぁ」

全員で42層の大空間を捜索。

照明以外何も無い箱型空間なので特に苦労も無く。
片眼鏡で導かれ。入口から見て右手の壁際の丁度中央。

目地も無い普通の壁を示し。指背でコンコン。
向こう側に小さな空洞を発見。

皆を集めてさてどうしよか。

「壁を壊す?は何か違う気が…」
「でも特に仕掛けは無さそうね」
「壊したってどうせリセットされるし。詫びなんだから壁壊した位で…。いや違うな。もう少し考えよう」
真面目なソプランに自己復帰。

一番後ろのアローマが壁を見ながら後退。
「全体を見る…全体を…」

空間のド真ん中まで歩き四方を直立で見渡す。
東西南北、床から天井まで繰り返し。

「フィーネ様!」
「なーに?」
「出番を…お取りしても良い物かと」
「え!?待って!私に譲ってよ」
譲る物なの?

中央に走ったフィーネの背中に回り。四方に向けて何かを囁いている。

「あ?あぁ…あ!」
こちらを向いて何かに気付いた様子。
「スタンさん!真上。天井際!他の3方には無い切れ込みがある」

胡座姿勢のまま天井を見上げ…。
「お!ホンマやん」
薄い物を差し込めそうな縦線が壁に向かって空いていた。
天井の模様に被る形で。

白ロープを伸ばしスリットをコチョコチョ。

すると目の前の壁板が手前に倒れた。
空間内には小箱が1つ。

「アローマ、フィーネ。ありがとー」
「アローマの手柄よ。やっぱり私はガサツで大雑把。
さてさて中身は?」

「何だろね」
集まった所で御開帳。

中には短いタクトと畳まれた紙。

操蟲のタクト。
指揮者の思うがまま。自分の魂と縁深い昆虫種を操れる。
例え最上位種で有ろうと無かろうと。

「おぉ!欲しかった奴だ。手紙は…

君が作ろうとしている物を作成して置いた。
自力作成する手間省きを詫びとして贈る。

その箱自体もきっと役に立つ。
シトルリンのお宝カプセルはメレディス火山にでも焼べてしまった方が良い。君の位置が把握されている。

迷宮36層からはサービス。本を抜くのが後だったら難易度は普通だった。

将来勝利した暁に。暇潰しにでも使って欲しい。

手紙は以上!
クワン君大至急これを火山にぶち込め!!」
「クワッ!!」
宙に放り投げたカプセルをクワンがキャッチし、瞬時に配達超特急便。

煤塗れで帰ったクワンをフィーネが拭き拭き。

タクトを両手で掲げ。
「ベルさん。これは無駄にしません。感謝します」

ソプランが伸びをしながら。
「あーーー終わったぁ。地上にかえ…。なあスターレン」
「もう一泊して帰ろう。絶対に!絶望的に!絡まれる」
「だよなー」

一同ガックリ。


最宮初挑戦初踏破。突入から23日で完了。
4月は大事な出張有るしカタリデさんは5月位かな?
でも南東大陸との兼ね合いも…難しいな。

王都の図書館で造船系の書籍買わなくちゃいけないし。




--------------

突入23日目の夜。

夕食も終わり。踏破祝いの晩酌お喋りタイムに金プレートを置いた。

「1人1名前。俺でいいよは無しで!」
「えーーー。スタンの方が何時も格好良いじゃん」
「俺は最後に発表します」

プレマーレ。
「レ、レイルダール様の方がセンスが有るので…」
「またそんな事を言って。将来レイルの元を卒業して魔族のイケメンさんとデキ婚したらどうするんですか?子供の名前は旦那任せでいいんですか?」
「有り得ませんよ。その様な…」
「プレマーレ悩み中。はい次!」

ソプラン。
「てっきりお前が決めるもんだと思ってたから考えてねーよ」
「じゃあ今考えよう」
「ムッズ…。じゃあシュトラール迷宮で。お前らの家名もじって」
「却下。どうせならベネチアーゼとか言って下さい。
ソプラン悩み中。次!」

アローマ。
「そう聞いてしまうと引っ張られてしまいますが…。
フィアフォンゼル、ではどうでしょう。アルフォンゼル家をそのままでは色々弊害が有るかと」
「親愛を頭に持って。尚且つ失われた家名すら守るアローマさんのセンスに脱帽です。フィーネが目の前に居なかったらハグしている所。
俺もそれにすりゃ良かったな…」

嫁の目が怖い…。

ロイド。
「私はファフレイス迷宮で。こちらでは中々聞かない名ですし。異界の戦乙女ですから」
「無断借用は禁じます。ご本人の許可を取りなさい」
「ここからでは遠すぎて…」
「ロイドさん悩み中。次」

フィーネ。
「私はエルミルテイン迷宮。特に意味は無いけど。何方かと言えば聖寄りの迷宮だからエルを付けた」
「普通に良い!ミルテは盾、テインで剣か。新たな造語が生まれそうな名です」
「どうも」

再びソプラン。
「じゃあスフィアドプラン迷宮。スフィアてあれだろ。結晶球体とか構成とか。他は特に意味合いは無い」
「良いですね。どんどん出て来ました。
後はロイドとプレマーレ」

リベンジプレマーレ。
「私はダメスドーテ。魔族の言葉で深い、と言う意味とも少し被るので」
「へぇ。難しいな西大陸語。これも普通で良い響きだ。
後はロイドさんだけ」

「私はウィル・アーネシア。集合して勝利を的な。けれど人物名称でも使われるので微妙」
「響きは悪くないですね。世界のウィルさんが。え!?
俺関係無いのに…と驚きそう。良いでしょう。

俺はクラウンガーディアン。陣形の中で最も制御と統制が難しいとされている形。前衛3。中心に王。
後衛3の半弧円。残り3で隠密、陽動、遊撃。ここの制限10名を見立てて王冠配置で考えた。

最後にクワンとグーニャ。この6個の中から選んで。直ぐに決まらないなら明日の朝地上へ戻る前迄に。
ピーカー君も加えてもいいよ」
「クワァ~」
「何れも良いですニャ~。明日の朝まで考えますニャ」
「僕は耳栓作っただけなので。とてもとても」

「解った。では今回…何度もは嫌だけど。最後の夜はこれにて解散かな」
ソプランが挙手。
「因みになんだが。最果てを名付けてたとしたらどんなのにしたんだ?」

「ソプラン君。その話は止めよう。もしもカタリデさんが認証してしまったら一巻の終わりだ。
俺が次期総長に成るだけでなく。ソプランとアローマの仕事がアホ程増えちゃうぞ。アローマ転移使えるし」
「止めだ!聞いた俺が馬鹿だった」

こうして最宮、初回最後の夜は更け行く。
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13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

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