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第248話 勇者前。最後の外遊
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リフレッシュ休暇3日目は大半をプールで過ごし。プレマーレが加わり目の保養でフル充電。
身も心も幸せを味わい。夕方にエリュトマイズ氏に挨拶して少しオリオンの話をした。
4日目出発日はイイテンに東砦まで運んで貰い、そこから転移移動。
必要品を適度に購入。巨峰ワインは5本買って2本の首に白い布を巻いてセラーの仲間入り。内1本を自宅で空け2本をレイルとプレマーレに配布。
追加は直接買いに行きましょうと。
外遊は1週間後で決定。
初日はサンタギーナに王都で挨拶オンリー。
2日目にカルツェルク城に転移移動。以降のスケジュールは現地で調整。
休暇から帰って3日後。
シュルツの工房を借り各員の装備品のチェック。
カットランス用に闇風、闇地、闇雷の最上位をカット。
その場で4層皮の固定グリップを作成。
問題は宝石の方。ご意見を伺うのは勿論レイル。
「宝石の色で効果を切り替えるのか。色は関係無くて効果を封入出来る物なの?
イメージ的には黄色や緑が転移具。
赤が従属系。青は水系。深緑は風系。
キャッツアイみたいな混色は戦闘系。
紫は何だろ、遠距離や飛行系とか」
「一概には言えんのぉ。元々力を持った石なら別の意味を追加出来るし。
何の力も持たぬ石では何を掛けても封入は出来ぬ。
クワンティが持つ空中で使える転移指輪はエメラルド。
二つと無い力を持つ石じゃ。
基本的な意味は今スターレンが言ったので正解じゃな」
フィーネも。
「宝石なら何でもいいってなったら魔石は要らないじゃんて話よね」
「そらそやね。道具が山程出来ちゃうよな」
わしゃ何を言うとるん。
「封入出来るかどうかは別に。プレマーレの練習用に無垢の白色ダイヤを寄越せ」
「はい」
スロットサイズにカットした物を渡すと天井照明に翳して眺めた。
「まあまあじゃな。ほれ」
プレマーレに投げた。
「練習、ですか?」
「お前は長く生きた割りに戦闘が浅い。遠距離でも近接でもどうせ武器や道具の性能でごり押ししたんじゃろ」
「仰る…通りで」
「お前が戦闘で理想とする使い方を書き込め。それが出来るまでカットランスのスロットの一つは空けたままとする。手っ取り早く魔石を二つ入れると直ぐに頼るからの」
「やってみます」
そっと握り絞めた。
「レイルは今度の外遊中どうする?サンタギーナ行きたいなら2往復するけど。それか別便のクワンで。
俺たちとソプランたちは城内に泊まるし」
「そうじゃのぉ…。今回はええかの。
プレマーレはマッサラの自宅に籠らせ魔力操作の修練。
妾はメリーとこの都内で遊ぶ。
そろそろ嫉妬し出す頃じゃし」
「ふーん」
ちゃんと考えてるんだな。
「ロイド。カタリデさんに最果て町にプレマーレやグーニャ入れても大丈夫なものか聞いて。今度は迷宮踏破隊の一員だから」
「……西外壁に触らなければ問題無いと。門下は空けて置くだそうです」
「おー中々寛大な措置。圧倒的に居心地悪いのはプレマーレだけど。プレマーレが嫌なら体調不良扱いで」
「ん~。悩みますね。デスパレイドは寄りたいですし。
中央町まで来たのに行かないと言う…。ん~」
「じゃあ俺たちの外遊帰りまでに決めといて。極度の人見知りで歓迎されるのが大嫌いだ!て言い訳も有るし」
「はい…考えます」
「さて外遊まで残りの4日間。ソプランたちは思い残しが無いよう。しっかり鋭気を養って下さい」
「のんびり出来るのは後四日かぁ。適度に走って考えよ」
「いよいよですね」
「俺たちも」
「走っちゃいますかー」
「スフィンスラーには行かんのかえ?天竜の子分とかも居るじゃろ」
「子天竜はまだいい。カタリデさんで試し斬りするから」
「成程の」
「行くならどうっすかなぁ…」
メモ用紙を取り出し。
「色々試したい飛行系は全滅。
17層は大型1体でマウデリン少々が出るだけ。
木材は豊富に持ってるから15層は無し。
9層のミノタウロスまでならソプランたちでも余裕。
でもドロップ種類が少ない。7と8も少ない。
やっぱり5層の素早い虎人かな。
実用性の有る物沢山出るし。
ソプランたちも来る?フィアフォンゼル経験した後だから超鈍速に見えちゃうけど」
「行くかな。ちょい試したい物も有ったし」
「実戦経験が積めるなら私もお供します」
「では2日後の午前。ちょっと本気出しちゃうと3分も持たないんで出来るだけ引き延ばして地上戦を試しましょう」
「試しましょー」
スフィンスラー迷宮残りチャレンジ回数。
1~4層…3回
5層…2回
6層…✕
7~9層…2回
10層…✕
11層…2回
12~14層…✕
15~16層…2回
17層…1回
18~19層…✕
最下層…推定1回
見所なんて特に有りません。
--------------
今回は視察ではなく純粋な外遊。
パージェント城からサンタギーナ城の指定位置に転移するだけの簡単なご案内。
ロイドとグーニャは自宅でお留守番。
お久し振りのサダハんは行き成り俺に食い付いた。
「スターレン殿!フィアフォンゼル迷宮の話を!」
「サダハ様。キャラ崩壊してますって。
今回はミラン様をお連れしているのです。大変失礼に当るので自重して下さい」
遂にキレたイプシス様に往復ビンタを喰らい。
「善くぞ来てくれたタイラント王妃ミラン。
メイザー太子とメルシャン妃。
久々に顔を合せるのに先程は取り乱して済まなかった」
と頬を撫で撫でしながら謝罪した。
各自の挨拶が終わり。昼食会が始まる前にサダハんから直接1通の手紙を渡された。
「これは?」
「ペカトーレ新首相のマホロバからの書だ。
何でも。ヘルメン王に送ってしまうと破り捨てられるだろうから私から渡して欲しいと」
「あ…」
「嫌な予感しかしないわ」
気になるお手紙内容は。
「前略。スターレン殿、フィーネ嬢。
あんたら何してくれんのよぉ。もぉ~。
俺はのほほんと暮らして行きたいって言ったじゃん。
前にバッチリ話したよね?ねえ??
何でお勧めしちゃうかな。ねえ何で?
英雄夫婦のお墨付き、てなったらそら打っ千切りで当選しちゃうでしょ。
もうちょい自分たちの影響力考えた方が良いよ。絶対。
選ばれたからにはやるけどさぁ。
首相官邸内に専用転移場所設けたから。
任期の五年以内に来て下さい。ずっと待ってる。
お土産はタイラント産の柔らかいウィスキーと。
フィアフォンゼル大迷宮の話を聞かせて欲しいです。
こんな若いのに!新首相に抜擢されてしまった!
マホロバ・オキナより。
追伸。ニーメンも半ギレです」
「「……」」
急遽昼食会をお断りし。
夫婦とソプランたちとで揃って謝罪に飛んだ。
同じ迷宮話を昼と夕方に2度披露する羽目になろうとは。
まさかすんなり一発当選するとは思わず。
口は災いの元。
--------------
今日も昼過ぎ。愛する妻の墓の前に座る。
墓守を命じられて。これが日課と成った。
「俺を憎んでくれて構わない」
何と。何と重い言葉だろう。
英雄の重い言葉。それでも生きよと。
温情を受け。女王様から寛大な恩赦まで頂いた。
彼は。タイラントの彼らは何一つ悪くない。
国際的な領域侵犯。正式な依頼も召還も無い状態で。
打てる最善策を打ってくれた。
悪いのは…この俺。
海賊島で妻の姿を見付け。
調べもしないで。焦った俺が罠を踏んでしまった。
後一歩で届くその距離で。
妻の胸には深々と短剣が突き刺さっていた。
俺が妻を殺した…。それなのに。
あの英雄様は…。自分を憎めと、そう言ったのだ。
偉大な英雄。幾つもの国を救い。
幾つもの国を正し。
前人未踏の大迷宮さえ少人数で踏破した。
最早彼が新たな勇者だと発表されても誰も不思議には思わないだろう。
寧ろそう在って欲しいとすら願う。
その彼に刃を向けた俺は、何故許されたのか。
妻の墓の前。答えは出ぬまま時だけが無駄に過ぎる。
突然に背後で誰かの気配がした。
半身で振り返ろうとすると。
「振り返らないで」
聞いた事も無い女の声。
俺は小声で。
「だ、誰だ」
「貴方。英雄一行を憎んでいるのでしょう」
憎む?
「に、憎む…とは」
「遠慮しないで。私たちは貴方の味方。その貴方の復讐が叶う武器と道具を与えてあげる」
「なっ…」
目の前に一枚の小さな紙が降り落ちた。
「今夜そこへ一人で来なさい。この国に居る仲間たちとそこで待ってるわ」
そう告げて気配は消えた。
鼻に着く嫌な香水の残り香を置いて。
答えは出た。
「ルイダ。もう直ぐ俺も。そっちへ行けそうだ」
何も返らぬ妻の墓に囁き。俺は重い腰を上げた。
墓守仕事終わりの日没後。俺を監視する衛兵たちの目を盗み指定の場所へ向かった。
そこは王都の南外れ。南部の樹海が見える寂れた一角。
疎らに粗末な小屋が並ぶ。身を隠すには丁度具合の良いそんな場所。
人の気配がする小屋を見付け玄関を。
叩く前には開かれた。
見知らぬ長身男が出た。
「入れ」
こちらの顔は知られてる。こんな照明も無い暗がりでも。
もう一つ内扉を潜ると明るい照明と中心のテーブル。
外観に相応しい粗末な大部屋。
右手廊下に二人。床下に三人。室内には八人。
室内に知る顔は居ない。その中心に座る女。
意外に若い。普通レベルの美人でこの国に居ても不自然でない風貌。その女から昼に嗅いだ臭い香水が漂う。
「お前が昼間の女か」
「そうよ。私は」
「名前は要らん。どうせ断っても失敗しても俺は死ぬんだからな。ただ一つ聞かせろ。もしも英雄に打撃を与えて逃げ切れば。俺は首謀者に会わせて貰えるのか。
それとも用済みで消されるのかどっちだ」
「南東に連れて行ってあげる。私の転移具で。英雄の仲間なら誰でも良い。一人を葬ってくれればね」
首謀者は南東。転移具持ち。この女は頭が悪い。
「確かに俺ならもう一度位は接近出来る。だがそんな甘い言葉を囁かれても取り残されたら死罪確定。
俺の逃亡手段もちゃんと用意してるんだろうな」
「心配性ね」
「当たり前だ!俺は生きる。死んだ妻の分まで。
あのいけ好かない英雄に俺と同じ苦しみを存分に味わわせる為にな!!」
室内全員がニヤリと笑う。多分右手と床下も。
チョロい馬鹿ばかり。こんな奴等に俺は…。
「気に入ったわ」
女はフッと笑い。
テーブル下から幾つかの箱を取出し上に並べた。
「貴方の大きな足でも履ける俊敏性上昇ブーツ。
腕力と脚力を上げられる手足首輪が四個。
刃先に触れたら接触箇所周辺が破裂する魔短剣。
ブーツ以外、身に着けると全て鞘も含め完全透明化。
転移具は私しか持ってないから渡せないけど。全力で逃げるにはこれで充分でしょ」
一通り眺め。
「逃亡先は。
まさかこんな使い捨ての場所な訳が無いだろ」
「成功すればこの中の誰か一人が次を書いたメモを渡しに行くわ」
この女がここのリーダーで間違い無い。
問題は次の潜伏先と転移具。
「鑑定眼なんて無いから魔剣以外ここで試着する。土壇場で操られて無謀な英雄に挑まされても面倒だ。
俺がやれるのは精々取り巻きの誰か一人」
「慎重なのは結構。どうぞご自由に」
ブーツを履き替えながら。
「城の近くに居ても英雄一行が何時来るかなんて情報は入らない。自宅部屋は監視され荷物は定期的に検査。
ブーツや輪っかは誤魔化せるが魔剣は身体検査で引っ掛かる。どうすればいい」
「直前に箱で仕事場まで運ぶわ。南東の主の見立てでは今月下旬か来月上旬頃。英雄一行が到着すれば城の内外が騒ぎ出すから逃す事は無い。
城に警戒が向けば仕事場周りは手薄になる」
「まあ悪くないな。どうしても一言謝罪したいとか演技してみるか」
ブーツの爪先を床にトントン打った。
「扁平足なのに中々の履き心地だ。
身体に異常は無さそう。国内の仲間はここで全部か。次の逃亡先にも居るのかどっちだ」
「ここで全員よ。足りなくなったら私が南東で補充するし」
「ふむ。俺は転移具と言う物を見た事が無い。信用の記念に見せてくれないか」
「特別よ」
と胸元からペンダントの先を引っ張り出した。
「へえ。そんなに小さい物なのか」
「家で持ってる転移具は残り僅か。他は根刮ぎ英雄一行に奪い取られてしまったわ。これを失ったら大惨事ね」
この女は馬鹿確定。そんな秘密をペラペラと。
「良い記念だ。少し魔剣を握ってみてもいいか」
「ここで振り回さないでよ」
「復讐出来るチャンスを俺が逃す訳がないだろ」
「ならいいわ」
そっと魔剣の柄を取ると瞬時に透明になった。手で空白の棒を握った形。魔力が吸い取られている気配は無い。
重量も一般的な短剣と変わらない。
鞘を外さず数回振った。
「まずまず。これなら懐に飛び込んで首筋狙いか」
「まあそうなるでしょうね」
「不甲斐ない俺の最期に相応しい。ひょっとしたら歴史に名を刻めるかもと思うと顔もニヤけてしまう」
「フフッ。正直ね貴方」
「それ程でも」
魔剣を箱に戻す振りをして。
女の首にぶら下がるチェーンを引き千切った。
「なっ!?」
だらしなく開いた女の口に魔剣の鞘を喉奥まで捻じ込み。
顎下に拳を入れ鞘を咬ませ魔剣の剣身を抜き放つ。
「ううっ!!」
チェーン端部の宝石に刻みを入れ破壊。
中々派手な飛び散り方だ。
一歩飛び退きテーブル毎女を後ろ壁まで蹴り飛ばし。
手前左手の男から。手首足首、首元から上を次々に刻み回り。女を残して廊下の二人を破壊。
廊下先の下り階段から出て来てくれた三人も一人ずつ順に破砕。
俺を殺してくれる奴はこの中には居なかった。
ルイダ…もう少し、待たせるかも知れない。
一人一人逆順に首元を壊して大部屋に戻る。階段も廊下も床も血の池で臭いな。
大部屋の壁際で気絶する女の口から鞘を抜き。剣身を女の服で拭い鞘に納めた。
魔剣を腰ベルトに挟み。女の髪を鷲掴みに床の血の海に転がした。
遣り過ぎたのかまだ起きない。
仕方無く爪先で軽く溝内を蹴り上げた。
「がはっ…うっ、ううぅ」
まだ装備したばかりで調整が難しい。
「馬鹿が。英雄一行の取り巻きにすら辿り着けず。不審な動きをした時点で俺の首が飛ぶに決まってるだろ」
俺みたいな雑魚があの領域に入れる訳が無い。こんな玩具を幾ら装備したって。
「こ、このぉ…。糞虫がぁ!」
「そっくり返す。さあ、死にたくなかったら首謀者の名を答えろ」
「…言えない…」
「何故だ」
「関連情報を口から出すと。首が折れて死ぬからよ!」
厄介な道具を作られたもんだ。
「はぁ…。なら男か女か」
「…お…おぉ…おガッ!!…」
白目を剥いて女の首が折れてしまった。
「それすら駄目だったか…」
しかし女の可能性も有るな。
女の首を更に折り。一通り全員の道具袋を漁ったが結局俺には中身が解らない。
武装も含めて。
この情報と我楽多をどう上に伝えれば良いものか。
俺も全身が真っ赤。これでは自宅部屋にも帰れない。
情報と魔剣は英雄様に届けたい。南森への逃亡は有り得ない。
「殺される覚悟で帰ってみる…」
窓の外を見ると大粒の雨。それは直ぐに土砂降りへ。
今の季節では珍しい豪雨だ。昼間の空模様も悪くなかったのに。
有り難い。
外に出て全身で水浴びをしていると。王城方面から数人の人影。
魔導ランタンを片手に先頭を歩く人物は良く知っている。
「サイラス様!こちらです。サインジョです!」
「駄目ではないか。兵の目を盗むのも。夜間外出は禁じられていると百も承知」
「申し訳有りません!俺を使ってスターレン様に害を為そうする連中に絡まれまして」
「な、何だと!」
「国内の敵はこの小屋の中の十三人。
全員俺が殺しました。道具や武装の回収をお願いします。そして。南東に居る首謀者は女の可能性も有ると。
スターレン様へお伝え下さい!」
「了解した!三人は小屋を。二人はサインジョを宿舎へ」
「ハッ!」
--------------
カルツェルク城到着早々俺たちだけ別室に呼ばれ。
サイラスとサインジョの報告を聞いた。
サイラスから。
「異常だったのはそちらの魔剣。補助の首輪と俊足ブーツは中の上と言った具合です。
他が身に着けていた装備品は一般品に毛が生えた程度。
南東の何処の国製造かまでは掴めませんでした。
道具袋の毒薬も含めて。
一本だけ不可視のネックレスが有りましたが存在するのも面倒だと直ぐに城内の炉で溶かしました。
魔剣は所有していても碌な事は起きないのでそちらの品は全てスターレン様へ進呈せよと女王が」
まだ居たんだ潜伏者。しかも南東の転移具持ち。
「うむ。しっかりと預かる。しかしサインジョ」
「はい…」
「誰がこんな事をしてくれとお前に頼んだ」
「出過ぎた真似を。ですが。連中を逃したくなくて」
「そっちじゃない。その後自害を試みたそうじゃないか」
「…」
「俺は辛くても生きくれと頼んだんだ。ルイダさんの墓参りをする前に。お前に死なれたら俺は何て言葉を捧げれば良かったんだと聞いている」
「それは…」
「生きろ。これは命令だ。敵に絡まれ殺されるのは仕方無いにしても。自分から命を捨てるな」
俺が言えた台詞では全く無いが。
「はい」
「何時か刑期が晴れ。前を向けるようになったらタイラントへ来い。過去を振り返れない位扱き使ってやる」
「はい…はい!」
大粒の涙を溢して顔を覆った。
「しかし持ち帰ってくれた情報は有り難い。首謀者が女の線も有るのか」
「ちょっと盲点だったね」
完璧男だと思ってた。これはあの2人にも伝えよう。
「サイラス。将来の南東大陸閉鎖解除を見据えて最東部の港町カートロッドを訪ねたいんだが。
あちらの状況はどんなだ」
「一部討伐前の海賊に壊された部分は復旧中の最中。
ですが住民の日常へ異常を来す程の被害は無く。
一般商用船は運休でドッグ入り。
現在港に停泊している半軍船の商用船は全て女神教所有の物。
近海漁業は通常まで戻りました。
女神教が軍船を置いている為。当国所有の軍港は置かずに全て北部海岸に纏めています。
閉鎖が解除されてから二週内の運行再開が望めます」
「2週間は空くのかぁ」
「船も急には走れません」
仰る通り。
「南東側のミロアルデの状況なんて解る?」
「それは厳しい物が。女神教は口が堅いので」
「無念」「残念」
ローレライに聞くか悩む。半端な時期だし。
「ですが女神教の船が来ている以上。少なくとも港は機能していると考えます」
「「確かに」」
当然でした。
「ではサインジョ。午後の何処かでお墓参り行くから」
「贈り花の御用意を」
「畏まりました」
午後に慰霊碑を全体で参拝。個別でルイダさんの墓へ献花と祈りを捧げた。
滞在2日目。
メイザー一行は城下の町並みを外遊。
俺たちはサイラス隊を引き連れカートロッドを外遊。
町の状況はサイラスの言葉通りだった。
ここはどうしても時間を取られる。しゃーなし。
王城へ戻った後。カートロッドの転移場所の協議。
プリメラ様の鶴の一声で一発OKが貰えた。
余裕が有れば城にも寄って欲しいとも。毎回お土産は不要で顔見せだけをお願いされた。なんでやろ?
直通便の再開連絡は文書でヘルメン陛下へ。
滞在3日目は俺たちが城下へ。メイザー一行はお城でお茶会と適度に豪華な親睦会。
4日目に城から真っ直ぐ北へ馬車で8時間の漁港軍港ギザレムズの町まで行くかとなったが今回は無理せずこれにて外遊は終了。
復旧中で見せる物が無いとプリメラ様がちょい泣き。
こちら都合で訪問を早めちゃったからね。
パージェント城へ転移して勇者前の外遊は完結。
身も心も幸せを味わい。夕方にエリュトマイズ氏に挨拶して少しオリオンの話をした。
4日目出発日はイイテンに東砦まで運んで貰い、そこから転移移動。
必要品を適度に購入。巨峰ワインは5本買って2本の首に白い布を巻いてセラーの仲間入り。内1本を自宅で空け2本をレイルとプレマーレに配布。
追加は直接買いに行きましょうと。
外遊は1週間後で決定。
初日はサンタギーナに王都で挨拶オンリー。
2日目にカルツェルク城に転移移動。以降のスケジュールは現地で調整。
休暇から帰って3日後。
シュルツの工房を借り各員の装備品のチェック。
カットランス用に闇風、闇地、闇雷の最上位をカット。
その場で4層皮の固定グリップを作成。
問題は宝石の方。ご意見を伺うのは勿論レイル。
「宝石の色で効果を切り替えるのか。色は関係無くて効果を封入出来る物なの?
イメージ的には黄色や緑が転移具。
赤が従属系。青は水系。深緑は風系。
キャッツアイみたいな混色は戦闘系。
紫は何だろ、遠距離や飛行系とか」
「一概には言えんのぉ。元々力を持った石なら別の意味を追加出来るし。
何の力も持たぬ石では何を掛けても封入は出来ぬ。
クワンティが持つ空中で使える転移指輪はエメラルド。
二つと無い力を持つ石じゃ。
基本的な意味は今スターレンが言ったので正解じゃな」
フィーネも。
「宝石なら何でもいいってなったら魔石は要らないじゃんて話よね」
「そらそやね。道具が山程出来ちゃうよな」
わしゃ何を言うとるん。
「封入出来るかどうかは別に。プレマーレの練習用に無垢の白色ダイヤを寄越せ」
「はい」
スロットサイズにカットした物を渡すと天井照明に翳して眺めた。
「まあまあじゃな。ほれ」
プレマーレに投げた。
「練習、ですか?」
「お前は長く生きた割りに戦闘が浅い。遠距離でも近接でもどうせ武器や道具の性能でごり押ししたんじゃろ」
「仰る…通りで」
「お前が戦闘で理想とする使い方を書き込め。それが出来るまでカットランスのスロットの一つは空けたままとする。手っ取り早く魔石を二つ入れると直ぐに頼るからの」
「やってみます」
そっと握り絞めた。
「レイルは今度の外遊中どうする?サンタギーナ行きたいなら2往復するけど。それか別便のクワンで。
俺たちとソプランたちは城内に泊まるし」
「そうじゃのぉ…。今回はええかの。
プレマーレはマッサラの自宅に籠らせ魔力操作の修練。
妾はメリーとこの都内で遊ぶ。
そろそろ嫉妬し出す頃じゃし」
「ふーん」
ちゃんと考えてるんだな。
「ロイド。カタリデさんに最果て町にプレマーレやグーニャ入れても大丈夫なものか聞いて。今度は迷宮踏破隊の一員だから」
「……西外壁に触らなければ問題無いと。門下は空けて置くだそうです」
「おー中々寛大な措置。圧倒的に居心地悪いのはプレマーレだけど。プレマーレが嫌なら体調不良扱いで」
「ん~。悩みますね。デスパレイドは寄りたいですし。
中央町まで来たのに行かないと言う…。ん~」
「じゃあ俺たちの外遊帰りまでに決めといて。極度の人見知りで歓迎されるのが大嫌いだ!て言い訳も有るし」
「はい…考えます」
「さて外遊まで残りの4日間。ソプランたちは思い残しが無いよう。しっかり鋭気を養って下さい」
「のんびり出来るのは後四日かぁ。適度に走って考えよ」
「いよいよですね」
「俺たちも」
「走っちゃいますかー」
「スフィンスラーには行かんのかえ?天竜の子分とかも居るじゃろ」
「子天竜はまだいい。カタリデさんで試し斬りするから」
「成程の」
「行くならどうっすかなぁ…」
メモ用紙を取り出し。
「色々試したい飛行系は全滅。
17層は大型1体でマウデリン少々が出るだけ。
木材は豊富に持ってるから15層は無し。
9層のミノタウロスまでならソプランたちでも余裕。
でもドロップ種類が少ない。7と8も少ない。
やっぱり5層の素早い虎人かな。
実用性の有る物沢山出るし。
ソプランたちも来る?フィアフォンゼル経験した後だから超鈍速に見えちゃうけど」
「行くかな。ちょい試したい物も有ったし」
「実戦経験が積めるなら私もお供します」
「では2日後の午前。ちょっと本気出しちゃうと3分も持たないんで出来るだけ引き延ばして地上戦を試しましょう」
「試しましょー」
スフィンスラー迷宮残りチャレンジ回数。
1~4層…3回
5層…2回
6層…✕
7~9層…2回
10層…✕
11層…2回
12~14層…✕
15~16層…2回
17層…1回
18~19層…✕
最下層…推定1回
見所なんて特に有りません。
--------------
今回は視察ではなく純粋な外遊。
パージェント城からサンタギーナ城の指定位置に転移するだけの簡単なご案内。
ロイドとグーニャは自宅でお留守番。
お久し振りのサダハんは行き成り俺に食い付いた。
「スターレン殿!フィアフォンゼル迷宮の話を!」
「サダハ様。キャラ崩壊してますって。
今回はミラン様をお連れしているのです。大変失礼に当るので自重して下さい」
遂にキレたイプシス様に往復ビンタを喰らい。
「善くぞ来てくれたタイラント王妃ミラン。
メイザー太子とメルシャン妃。
久々に顔を合せるのに先程は取り乱して済まなかった」
と頬を撫で撫でしながら謝罪した。
各自の挨拶が終わり。昼食会が始まる前にサダハんから直接1通の手紙を渡された。
「これは?」
「ペカトーレ新首相のマホロバからの書だ。
何でも。ヘルメン王に送ってしまうと破り捨てられるだろうから私から渡して欲しいと」
「あ…」
「嫌な予感しかしないわ」
気になるお手紙内容は。
「前略。スターレン殿、フィーネ嬢。
あんたら何してくれんのよぉ。もぉ~。
俺はのほほんと暮らして行きたいって言ったじゃん。
前にバッチリ話したよね?ねえ??
何でお勧めしちゃうかな。ねえ何で?
英雄夫婦のお墨付き、てなったらそら打っ千切りで当選しちゃうでしょ。
もうちょい自分たちの影響力考えた方が良いよ。絶対。
選ばれたからにはやるけどさぁ。
首相官邸内に専用転移場所設けたから。
任期の五年以内に来て下さい。ずっと待ってる。
お土産はタイラント産の柔らかいウィスキーと。
フィアフォンゼル大迷宮の話を聞かせて欲しいです。
こんな若いのに!新首相に抜擢されてしまった!
マホロバ・オキナより。
追伸。ニーメンも半ギレです」
「「……」」
急遽昼食会をお断りし。
夫婦とソプランたちとで揃って謝罪に飛んだ。
同じ迷宮話を昼と夕方に2度披露する羽目になろうとは。
まさかすんなり一発当選するとは思わず。
口は災いの元。
--------------
今日も昼過ぎ。愛する妻の墓の前に座る。
墓守を命じられて。これが日課と成った。
「俺を憎んでくれて構わない」
何と。何と重い言葉だろう。
英雄の重い言葉。それでも生きよと。
温情を受け。女王様から寛大な恩赦まで頂いた。
彼は。タイラントの彼らは何一つ悪くない。
国際的な領域侵犯。正式な依頼も召還も無い状態で。
打てる最善策を打ってくれた。
悪いのは…この俺。
海賊島で妻の姿を見付け。
調べもしないで。焦った俺が罠を踏んでしまった。
後一歩で届くその距離で。
妻の胸には深々と短剣が突き刺さっていた。
俺が妻を殺した…。それなのに。
あの英雄様は…。自分を憎めと、そう言ったのだ。
偉大な英雄。幾つもの国を救い。
幾つもの国を正し。
前人未踏の大迷宮さえ少人数で踏破した。
最早彼が新たな勇者だと発表されても誰も不思議には思わないだろう。
寧ろそう在って欲しいとすら願う。
その彼に刃を向けた俺は、何故許されたのか。
妻の墓の前。答えは出ぬまま時だけが無駄に過ぎる。
突然に背後で誰かの気配がした。
半身で振り返ろうとすると。
「振り返らないで」
聞いた事も無い女の声。
俺は小声で。
「だ、誰だ」
「貴方。英雄一行を憎んでいるのでしょう」
憎む?
「に、憎む…とは」
「遠慮しないで。私たちは貴方の味方。その貴方の復讐が叶う武器と道具を与えてあげる」
「なっ…」
目の前に一枚の小さな紙が降り落ちた。
「今夜そこへ一人で来なさい。この国に居る仲間たちとそこで待ってるわ」
そう告げて気配は消えた。
鼻に着く嫌な香水の残り香を置いて。
答えは出た。
「ルイダ。もう直ぐ俺も。そっちへ行けそうだ」
何も返らぬ妻の墓に囁き。俺は重い腰を上げた。
墓守仕事終わりの日没後。俺を監視する衛兵たちの目を盗み指定の場所へ向かった。
そこは王都の南外れ。南部の樹海が見える寂れた一角。
疎らに粗末な小屋が並ぶ。身を隠すには丁度具合の良いそんな場所。
人の気配がする小屋を見付け玄関を。
叩く前には開かれた。
見知らぬ長身男が出た。
「入れ」
こちらの顔は知られてる。こんな照明も無い暗がりでも。
もう一つ内扉を潜ると明るい照明と中心のテーブル。
外観に相応しい粗末な大部屋。
右手廊下に二人。床下に三人。室内には八人。
室内に知る顔は居ない。その中心に座る女。
意外に若い。普通レベルの美人でこの国に居ても不自然でない風貌。その女から昼に嗅いだ臭い香水が漂う。
「お前が昼間の女か」
「そうよ。私は」
「名前は要らん。どうせ断っても失敗しても俺は死ぬんだからな。ただ一つ聞かせろ。もしも英雄に打撃を与えて逃げ切れば。俺は首謀者に会わせて貰えるのか。
それとも用済みで消されるのかどっちだ」
「南東に連れて行ってあげる。私の転移具で。英雄の仲間なら誰でも良い。一人を葬ってくれればね」
首謀者は南東。転移具持ち。この女は頭が悪い。
「確かに俺ならもう一度位は接近出来る。だがそんな甘い言葉を囁かれても取り残されたら死罪確定。
俺の逃亡手段もちゃんと用意してるんだろうな」
「心配性ね」
「当たり前だ!俺は生きる。死んだ妻の分まで。
あのいけ好かない英雄に俺と同じ苦しみを存分に味わわせる為にな!!」
室内全員がニヤリと笑う。多分右手と床下も。
チョロい馬鹿ばかり。こんな奴等に俺は…。
「気に入ったわ」
女はフッと笑い。
テーブル下から幾つかの箱を取出し上に並べた。
「貴方の大きな足でも履ける俊敏性上昇ブーツ。
腕力と脚力を上げられる手足首輪が四個。
刃先に触れたら接触箇所周辺が破裂する魔短剣。
ブーツ以外、身に着けると全て鞘も含め完全透明化。
転移具は私しか持ってないから渡せないけど。全力で逃げるにはこれで充分でしょ」
一通り眺め。
「逃亡先は。
まさかこんな使い捨ての場所な訳が無いだろ」
「成功すればこの中の誰か一人が次を書いたメモを渡しに行くわ」
この女がここのリーダーで間違い無い。
問題は次の潜伏先と転移具。
「鑑定眼なんて無いから魔剣以外ここで試着する。土壇場で操られて無謀な英雄に挑まされても面倒だ。
俺がやれるのは精々取り巻きの誰か一人」
「慎重なのは結構。どうぞご自由に」
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「直前に箱で仕事場まで運ぶわ。南東の主の見立てでは今月下旬か来月上旬頃。英雄一行が到着すれば城の内外が騒ぎ出すから逃す事は無い。
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「まあ悪くないな。どうしても一言謝罪したいとか演技してみるか」
ブーツの爪先を床にトントン打った。
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「ここで全員よ。足りなくなったら私が南東で補充するし」
「ふむ。俺は転移具と言う物を見た事が無い。信用の記念に見せてくれないか」
「特別よ」
と胸元からペンダントの先を引っ張り出した。
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「良い記念だ。少し魔剣を握ってみてもいいか」
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そっと魔剣の柄を取ると瞬時に透明になった。手で空白の棒を握った形。魔力が吸い取られている気配は無い。
重量も一般的な短剣と変わらない。
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「まあそうなるでしょうね」
「不甲斐ない俺の最期に相応しい。ひょっとしたら歴史に名を刻めるかもと思うと顔もニヤけてしまう」
「フフッ。正直ね貴方」
「それ程でも」
魔剣を箱に戻す振りをして。
女の首にぶら下がるチェーンを引き千切った。
「なっ!?」
だらしなく開いた女の口に魔剣の鞘を喉奥まで捻じ込み。
顎下に拳を入れ鞘を咬ませ魔剣の剣身を抜き放つ。
「ううっ!!」
チェーン端部の宝石に刻みを入れ破壊。
中々派手な飛び散り方だ。
一歩飛び退きテーブル毎女を後ろ壁まで蹴り飛ばし。
手前左手の男から。手首足首、首元から上を次々に刻み回り。女を残して廊下の二人を破壊。
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ルイダ…もう少し、待たせるかも知れない。
一人一人逆順に首元を壊して大部屋に戻る。階段も廊下も床も血の池で臭いな。
大部屋の壁際で気絶する女の口から鞘を抜き。剣身を女の服で拭い鞘に納めた。
魔剣を腰ベルトに挟み。女の髪を鷲掴みに床の血の海に転がした。
遣り過ぎたのかまだ起きない。
仕方無く爪先で軽く溝内を蹴り上げた。
「がはっ…うっ、ううぅ」
まだ装備したばかりで調整が難しい。
「馬鹿が。英雄一行の取り巻きにすら辿り着けず。不審な動きをした時点で俺の首が飛ぶに決まってるだろ」
俺みたいな雑魚があの領域に入れる訳が無い。こんな玩具を幾ら装備したって。
「こ、このぉ…。糞虫がぁ!」
「そっくり返す。さあ、死にたくなかったら首謀者の名を答えろ」
「…言えない…」
「何故だ」
「関連情報を口から出すと。首が折れて死ぬからよ!」
厄介な道具を作られたもんだ。
「はぁ…。なら男か女か」
「…お…おぉ…おガッ!!…」
白目を剥いて女の首が折れてしまった。
「それすら駄目だったか…」
しかし女の可能性も有るな。
女の首を更に折り。一通り全員の道具袋を漁ったが結局俺には中身が解らない。
武装も含めて。
この情報と我楽多をどう上に伝えれば良いものか。
俺も全身が真っ赤。これでは自宅部屋にも帰れない。
情報と魔剣は英雄様に届けたい。南森への逃亡は有り得ない。
「殺される覚悟で帰ってみる…」
窓の外を見ると大粒の雨。それは直ぐに土砂降りへ。
今の季節では珍しい豪雨だ。昼間の空模様も悪くなかったのに。
有り難い。
外に出て全身で水浴びをしていると。王城方面から数人の人影。
魔導ランタンを片手に先頭を歩く人物は良く知っている。
「サイラス様!こちらです。サインジョです!」
「駄目ではないか。兵の目を盗むのも。夜間外出は禁じられていると百も承知」
「申し訳有りません!俺を使ってスターレン様に害を為そうする連中に絡まれまして」
「な、何だと!」
「国内の敵はこの小屋の中の十三人。
全員俺が殺しました。道具や武装の回収をお願いします。そして。南東に居る首謀者は女の可能性も有ると。
スターレン様へお伝え下さい!」
「了解した!三人は小屋を。二人はサインジョを宿舎へ」
「ハッ!」
--------------
カルツェルク城到着早々俺たちだけ別室に呼ばれ。
サイラスとサインジョの報告を聞いた。
サイラスから。
「異常だったのはそちらの魔剣。補助の首輪と俊足ブーツは中の上と言った具合です。
他が身に着けていた装備品は一般品に毛が生えた程度。
南東の何処の国製造かまでは掴めませんでした。
道具袋の毒薬も含めて。
一本だけ不可視のネックレスが有りましたが存在するのも面倒だと直ぐに城内の炉で溶かしました。
魔剣は所有していても碌な事は起きないのでそちらの品は全てスターレン様へ進呈せよと女王が」
まだ居たんだ潜伏者。しかも南東の転移具持ち。
「うむ。しっかりと預かる。しかしサインジョ」
「はい…」
「誰がこんな事をしてくれとお前に頼んだ」
「出過ぎた真似を。ですが。連中を逃したくなくて」
「そっちじゃない。その後自害を試みたそうじゃないか」
「…」
「俺は辛くても生きくれと頼んだんだ。ルイダさんの墓参りをする前に。お前に死なれたら俺は何て言葉を捧げれば良かったんだと聞いている」
「それは…」
「生きろ。これは命令だ。敵に絡まれ殺されるのは仕方無いにしても。自分から命を捨てるな」
俺が言えた台詞では全く無いが。
「はい」
「何時か刑期が晴れ。前を向けるようになったらタイラントへ来い。過去を振り返れない位扱き使ってやる」
「はい…はい!」
大粒の涙を溢して顔を覆った。
「しかし持ち帰ってくれた情報は有り難い。首謀者が女の線も有るのか」
「ちょっと盲点だったね」
完璧男だと思ってた。これはあの2人にも伝えよう。
「サイラス。将来の南東大陸閉鎖解除を見据えて最東部の港町カートロッドを訪ねたいんだが。
あちらの状況はどんなだ」
「一部討伐前の海賊に壊された部分は復旧中の最中。
ですが住民の日常へ異常を来す程の被害は無く。
一般商用船は運休でドッグ入り。
現在港に停泊している半軍船の商用船は全て女神教所有の物。
近海漁業は通常まで戻りました。
女神教が軍船を置いている為。当国所有の軍港は置かずに全て北部海岸に纏めています。
閉鎖が解除されてから二週内の運行再開が望めます」
「2週間は空くのかぁ」
「船も急には走れません」
仰る通り。
「南東側のミロアルデの状況なんて解る?」
「それは厳しい物が。女神教は口が堅いので」
「無念」「残念」
ローレライに聞くか悩む。半端な時期だし。
「ですが女神教の船が来ている以上。少なくとも港は機能していると考えます」
「「確かに」」
当然でした。
「ではサインジョ。午後の何処かでお墓参り行くから」
「贈り花の御用意を」
「畏まりました」
午後に慰霊碑を全体で参拝。個別でルイダさんの墓へ献花と祈りを捧げた。
滞在2日目。
メイザー一行は城下の町並みを外遊。
俺たちはサイラス隊を引き連れカートロッドを外遊。
町の状況はサイラスの言葉通りだった。
ここはどうしても時間を取られる。しゃーなし。
王城へ戻った後。カートロッドの転移場所の協議。
プリメラ様の鶴の一声で一発OKが貰えた。
余裕が有れば城にも寄って欲しいとも。毎回お土産は不要で顔見せだけをお願いされた。なんでやろ?
直通便の再開連絡は文書でヘルメン陛下へ。
滞在3日目は俺たちが城下へ。メイザー一行はお城でお茶会と適度に豪華な親睦会。
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