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第282話 改信・その後
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世界に激震が走った聖女の改信から3日後の朝。
隊員とレイルとシュルツ、ファフレイスを集め朝食後の打ち合わせ。
今日もフィーネから。
「皆様お疲れ様です。あれから3日が経ちペリーニャに異変は起きず。やっと昨日安眠が叶いました。
正直まだ眠いです。
城への問い合わせ。ここへ殺到したお手紙。邸外の抗議デモ隊は全てペリーニャ本人が出向きご返信。
そんな物は個人の自由だ!と悉くを粉砕。騒ぎは地方を除き直に収まるでしょう。
さて、置き忘れてしまった本題。
年末まで何をしましょうか問題に付いての討議に入りたいと思います。
まず1案。来年予定だったオーナルディアの迷宮探索。
ゴーレムなんて無視。転移プレートの原形が出るクワッドサイレス迷宮と。自武装集めの木札が出ると思われるチコトリマ迷宮の重点周回。
付随としてボルトイエガルやキリーの続報が舞い込む可能性が有ります。
2案。兎にも角にも各地で個人訓練と南極大陸での模擬戦などの特訓コース。
ブランちゃんを装備すればペリーニャも無敵に成れるので訓練には連れて行きます。
遠征時には漏れなくアレの活動が付いて来ますが心の準備は如何に」
「飛び込みます。只…。一番最初はレイル様の御力をお借りしたいかなと」
「良かろう。本に嫌ならここへ帰れば良いじゃろ」
「そうよ。無理は禁物。私たちは何処ぞの女神とは違う。
本気で嫌がればソプランはちゃんと止めてくれるわ」
「俺は強姦魔じゃない。そこは信じてくれ」
「信じます。スターレン様が信頼を寄せる方なら安心して身を委ねられます」
「鼻血が出そうなシュルツは後2年の辛抱を。
ブランちゃんを装備すればダリアも連れ回せますが。彼女の場合未来視の方が伸びる危険が有る為遠征や訓練には連れて行きません。
当初の予定通り事務支配人として頑張って頂きます。
スタンさんとの時間を作れていないのでハーレムへの参加は先延ばし。後は本人の意思を尊重し無理強いは一切致しません。
その代わりファフレイスを連れ回す可能性は有ります。宜しいでしょうか」
「その積もりで来ているので幾らでも」
「潔し。ダリアと交代でシュルツのお喋り相手をお願いします。邸内の訓練場で2人に剣の稽古を付けるとかでも構いません。そこはお任せで」
「承知」
「続いて3案。
個人訓練を少々。オリオン北東登山口2つへの挑戦。
この場合ペリーニャとレイルの参加は何方でも。黒竜様の竜の谷登って来いや!のメンバー強化です。
しかもレイルさんはどっちでもいい、と断言されましたので登るに関しても大昔にド付き合いをした時のルートで構わんよと言う事だと推測します。そちらも踏まえてお任せします」
「うむ。先に上で酒を差し合うも良し」
「格好良い…。プレマーレでなくても惚れました」
俺も今震えたぜ。
「さて4案。
訓練少々。長めの休み少々。ダリアのお迎えとエルラダさんとライザー殿下の話し合いを遠目から見守る。
ご心配準備コース。
以上の4点。他に案が無ければこの中から。他何か」
特に無し。
「ではシュルツ、ファフレイス以外で1人2回挙手を」
投票の結果。
「1案多数で決まりました。誰でも使える転移具は魅力的でカルとプレマーレ分に加え。ファフレイス分の計3枚は欲しい所。ソプラン分も欲しいけど…そこまでは欲張り過ぎな気がします。
レイルさん分で余った転移指輪はブランちゃんへ。地上の通常転移は可能との結果。空中使用は不可。
スタンさんの唐草手袋の行き先は保留。エメラルドと2段構えで継続しても良いかも。
次点で3案でしたが1月~3月辺りが冬山本番。そちらは来年ですね。
ペリーニャの冒険者用衣装はこの後シュルツからお受け取り。無形短剣は敵味方関係無く危険なので引き続きレイルさん預かりで。
武具に関しては短剣を主体。筋力が上がれば要相談。応じた武器を握って個人訓練の方で鍛錬をと。
衣装を受け取り試着後。問題無ければ冒険者登録。聖女は過去のお話。今は自由を謳歌致しましょう」
「はい。足を引っ張るしか出来ないと思いますが付いて行けるように頑張ります。焦らずに」
「そうそう焦っちゃ駄目。どっかに飲み込まれてもブランちゃんを信じて。
本日午後から明日に掛け。アッテンハイムで収集した各ゴッズと取り巻き収集品の鑑定をスフィンスラーで行い。
その間にクワンティーでディアオーナの宿を取ります。遠征出発時期は返答次第にて。
鑑定会にシュルツとファフレイスを連れて行けるかは…お叱り覚悟で私が聞いてみます。あんまし期待しないでね」
「ん~。やはり私も一緒にお願いをします」
「一緒に行こうか」
「はい!」
「冒険者登録はスタンさん。しっかりエスコートとデモ隊を転がして下さい」
「怪我させないように配慮をします」
「その他のメンバーは昼まで自由。昼食もここならお早めに。昼食明け集まり次第午後出発です」
本棟の水竜像へ挨拶を捧げロロシュ邸を出発。
全ての視線を集めながらの手繋ぎデート。一部にデモ隊。
「パンツルックは初めて?」
「恐らく。記憶に無いです。全くスースーしないのも」
「ふむふむどっちもお似合いで」
「いえいえどうもです」
「視線は気にせずお昼どっかで食べる?ギルド登録直ぐ終わるし」
「ん~。んん~。では外で。独り占め出来る時間も少ないですし。お店はお任せで」
「試されるねぇ」
「試しますよぉ」
他愛ない話で少し笑い合う。
「所で様付けは止めない?」
「え~それはまだちょっと。スタン様もセティ様もフィーネ様の前では使えませんし。他には何も浮かびません」
女子たちの中で取り決めは良く解らない。線引きは何処だろう?
「それは諦めるか。じゃあペリーニャも長いし…何か愛称考えるか。何か食べながら」
「それは名案です」
無事に登録出来た。がリリスは早めの産休に入って不在だとムルシュから聞いた。
「半年会わないと変わるなぁ。マリーシャは?」
「早くて来月上旬らしい。丸で実感が湧かないが男親と言うのはこうなのかな。との毎日で先輩のゴンザから情報収集中だ」
「成程ぉ」
「影ながら祝福を。はまだ早そうで」
「元聖女様からの祝福なら大歓迎だ。何時でも。そして伝えて置こう」
「はい」
「会いに行けないけどメルフィスも男の子出産したって聞いたし。年明け辺りはお祝い宴会だな」
「気が早いが楽しみに」
受付脇でそんな世間話をしてギルドを出た。
選んだ店はランチタイムのトワイライト。
勿論2人切りの特別室。
「昼間の空もいいもんだ」
「綺麗な青空。薄い白雲が海の波のよう」
2人並んで窓から空を見上げて。
「この時間のここは初めてだから他の皆には内緒だぞ」
「それは無理です。共有せねば怒られます」
「無理だったかぁ…」
定番コース化されそうな予感。
私が黙って居られません。
そっちもかよ…。俺の個別演出どうすりゃいいの?
存じません。お邪魔しました。
困った嫁たちだ。
適当なランチパスタメニューを注文して届けられる迄はずっと口吻を交した。
頼んだ物がペペロンチーノとカルボナーラだったりする。
詰りはそゆこと。
「愛称何にしよう」
「難しいですねぇ」
「あんまし出し過ぎると魅力が半減するし」
「はい。それは私も同意です」
「良し決め打ち。ロナ、で」
「ロナ…ですか」
彼女の瞳が輝き。もっと吸い込まれそう…。
「不満?」「いえ…。何故か今、懐かしいと感じました」
「不思議だな。パッと浮かんだだけなのに」
「ロナと呼ばれて私も浮かびました。セラ、と…」
そう呼ばれて俺も何故か切なく胸が痛んだ。
「ロナとセラか。悪くない。これにしよう」
「はい。これだけはロイド様を除き。二人切りの秘密です」
「流石にこれは黙ってくれるだろ。自分だってそうなんだしさ。じゃなければお仕置きする」
な…何をされるのですか…。
口を閉ざしなさい。
これだけは必ず隠します…。
宜しい。
昼過ぎまでゆったりデザートと紅茶を楽しみ。
2人切りの愛称を呼び合いながら。
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何とか嫁の土下座で外出許可をもぎ取れたらしいシュルツたちと共にスフィンスラー14層へ。
迷宮自体が初めてのペリーニャが。
「ここが迷宮…。そして何故かお風呂?」
「お風呂は自分たち用とペッツが何時でも入れるように置いたんだ。汗とか装備品の泥とか一気に落としてくれる虹玉の泉って道具で湯張り」
「普通は無いですよね?」
「有る訳が無い。そしてこれが」
風呂の近くにコテージドン。
「我らがピーカー君と内装はシュルツが整えた旅の必需品のコテージです」
「おぉ~。最早コテージではないですね。二階建てならロッジです」
「やっぱそうなるよねぇ」
初見のファフレイスにもちょい自慢。
「こんな建物とか大きな船が余裕で入るんだぜこのシュルツのバッグ。何処の世界にも無いだろ」
「いやぁ無いですね。初めてです。英雄を超える才女と呼ばれるのも納得です」
「照れますぅ。止めて下さいぃ」
ファフレイスの方をポンポン叩き照れ隠しをするシュルツが一段と可愛かった。
コテージ前で皆を振り返り。
「皆。ここまで来て置いて何だけど。途轍もなく嫌な予感が湧いて来た」
「…嫌な予感って?」
皆騒然。
「あの執念深いストーカー淫乱女神がこのままで終わる訳が無い。
ゴッズ本体より取り巻き。その中に多分鑑定不能品が紛れてる」
「あ…スタンさん用の罠?」
「そう。あそこまで嫌われて。尚且つグズルードの素性を知った俺に対し。それでも杖を掴むなと抵抗を見せた。
シュルツの眼鏡。ペリーニャの真贋の瞳。それすら欺く何かだと思う。
不能品じゃなくても。表層は使える道具だとか。
フィーネさん。次に俺が告げる提案とは何でしょう」
顔を両手で覆い。
「今回のドロップ。全部破棄した方が良い」
「正解!クワンが討伐したデビルイールとビッグベアも含めて全部。
どうしようレイル。俺めっちゃ怖い。格好悪くて申し訳無いけど」
「破棄しかないじゃないそんなの…」
「有り難う。俺先に帰って防音室籠る。コテージは誰か回収宜しく」
「解った。気を付けて。全部溶かして燃やして砕いて散りも残さず消し飛ばします!」
震える手で珈琲を立て。何とか防音室まで運び入れた。
椅子に座っても身体中が震え。
「まだ収まらねえ…。怖えよ」
「ごめん。私が指摘しなきゃいけなかった」
「いいよ大丈夫。俺の油断だ。完全に」
熱々の珈琲を飲み。やっと落ち着いた。
「ふぅー。危なかった」
「リラックス時間。継続するべきね」
「まだ何か隠れてるな。俺の記憶の中に…。ガンターネと早めに会うべきか否か。悩むなぁ」
「今のままじゃ杖は使え無い。別の何かが見付からない限り3年後の新たな敵の先手を取るのは厳しそうね」
「あぁ…それそれ。頭痛いぜピーカー君。折角のんびり旅が出来ると思ったのに」
「ヒントは幾つか有ります。世界樹の木片。五cm角。プレマーレさん専用の記憶復元の冠。キリータルニア王都内に隠された記憶複製器。レイル様が預かっている中上級復元器と消去器。
これらを繋いで行けばそれ程遠くは無いのかと」
「泣きそうです…。別の意味で」
「私も…。出ないけど」
「メモしよ今の。ピーカー君もう1回お願い」
「はい!」
しっかりメモの後。空のカップとポットを流し台の水桶に浸し。1人でダイニングの指定席に座る午後。
「何か作ろうか。勝手に作ると怒られるのか?」
「怒りはしないわよ。文句は言っても」
「最近は三人に成って仕事の奪い合いですから」
軽く笑い。
「傍に居てくれるだけで俺は幸せなのに…」
「そこは男女の違いね」
「家の主人は好きにすれば良いと思います」
「とは言えエロい店に遊びに出てしまったんじゃ他の人からも批判されるし。これも大切な1人の時間だと好きな物を作ります」
「モテる色男は辛いわね」
「ですねぇ」
困ったもんだ。
「日本時代に好きだった物は再現済み。粉物とかをアレンジする…のは簡単過ぎる。
筑前煮や甘露煮はフィーネが御節で作る…筑前煮は俺やると怒られるな」
「懐かし。美味しそう」
「難しいですね。実際」
「ラフドッグで適当に魚介買って考えるか。そろそろ蟹が解禁された頃だし」
「あぁ良いわねぇ。人間に戻ったらリクエストしても?」
「どうぞどうぞ。フィーネもロイドも喜ぶさ」
席を立ち1人で出歩く一時。
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14層のコテージ内。スタンさん以外のメンバーで緊急会議中。
「えー皆様。不測の事態とは真にこの事。12層を選んで良かったと思わずには居られず。
只単純にぶっ壊せば良いのではないかと。慎重に行こうとのアローマの言葉を無視し。
これまで散々私の行動を見られていたのも忘れ。スタンさんが正しい解体手順を判別出来るシュルツとペリーニャを態々残して帰ったのも忘れ…。
ハンマーでぺったんこにした所…。とんでもない化け物を12層に生み出してしまいました。
どうか皆様。この事はスタンさんには内緒にして下さい!」
席の後ろで皆に土下座。
「どうして無視をするのですかフィーネ様」
「お嬢…。副隊長としての自覚と責任は何処行ったんだ」
「御免為さい!怪我人が出なかったのは単なる幸運。猛省します!」
「困った子ですねフィーネは。今スターレンは…ラフドッグへ食材を買いに出掛けた様子。夕食までまだ時間は有ります。何とか倒し切る方法を考えましょう。
ほら席に座って」
「有り難う御座います!」
席に座り直し。
「一瞬の出来事で未確認部が多いですが。
解体中の他の道具を喰い始めた多様性。最早何の攻撃が飛び出すのか想像も出来ません。
シュルツとペリーニャはここで待機。ファフレイスは屋外で武装展開した後に2人の護衛。そこまでは確定。
ブランちゃんを本層入口側に向かって防壁にするのも確定とし。何か打開策は無いでしょうか。
苛々最高潮のレイルさん」
「夕時には帰る。自分で考えよ!」
「お怒りはご尤もです。思慮不足でした。でもどうしたら良いのか全く浮かばない…無い?無形短剣!」
「やっとかえ。お主以外皆が一番に浮かんだぞ」
「大変申し訳無い。また私だけなのは何時もの事。
シュルツのジト目が胸の奥まで突き刺さっているのでどうかご勘弁を。
造形は真っ黒いスライム。一見ブランちゃんと対極を為す存在かと思いきや。あのクソ女神は眷属作成権限をレイルさんに破壊されていた事に因り。無核ではない魔核持ちであると推測。
特殊性はどうあれ中身は最上位のスライムと同一。
隊のメンバーとレイルさんで攻撃を分散。
ナーディ騎乗のアローマとソプランは外周から遠距離。
反射盾は必須。近接攻撃沸きに備え新長剣を装備。
グーニャは飛翔無しでダメスとセット。連携方法は任意で回避の為の飛翔は勿論可。配置はアローマペアとの対極で同じく遠距離。
シュピナードのみ遊撃近接で地上撹乱。
他は中近距離と最高武装で中空飛翔。飛翔組を遠距離二極以外の全方位へ布陣。
敵の攻撃を分散しつつ誘導。頭上をこじ開け神格クワンティが中心に向け一点突破。
外装が開いた所へアイアンロック打倒経験を持つプレマーレが無形短剣装備で飛び込み魔核を破壊。
以上が私の考案する撃破プランです」
「まあ良いじゃろ。撹乱を継続すればチャンスは一度限りではない。プレマーレが酸に焼かれて失敗したなら飛翔の誰かと交代。回収の木札を持たせよ。短剣とセットで持ち回りじゃ」
「有り難う御座います。木札を1枚預かって置いてホント良かったです。
では参ります。謎の黒スライム撃破へと!」
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食材を買って帰ってもまだ誰も居ない?
「あれ?やっぱ何か出たのか。それとも判定が難しいのかな?」
「みたいね」
「慎重に解体しているのでしょう」
「ロイドから何も来てないし、そうかも」
実際は真逆の事が起きているとは露知らず。
冷凍の蟹足剥き身ポーションを自然解凍。
大変立派な大海老の頭と背わたを外して下処理。
頭は味噌汁の出し行き。
人数分の蟹の胴を前後で縦割り。解凍を待ち蟹味噌と身を解した物を下味付けてホワイトソースで和え。ピザ用チーズを載せ半々オーブンへIN。
人参、玉葱、ピーマンと微塵切り。野菜総同量の豚挽肉をご用意。
ジェイカーにターメリック、ガラムマサラ、ガラハイドの実を少々。クミンなどの香草と香辛料を加えて本格カレー粉を大量に作成。
刻んだ野菜からリゼルオイルで炒め。挽肉投入後に下味とカレー粉を投入。本格ドライカレーの出来上がり。
オーブンの中を後半戦へ。
炊飯器を起動後に良ーく水気を切った海老と蟹足に衣を付けて揚げ揚げフライに。
オーブンが終わる頃から海老の頭と殻で出汁を取り。灰汁を綺麗に取り除けたら頭と殻を取出しジェイカーへ。
米粉と塩少々を加え煎餅状に並べオーブン行き。
海老出汁の煮汁に豆腐、若芽、長葱。仕上げに大豆味噌を溶いてちょっとリッチなお味噌汁完成。
煎餅を裏返しに更に焼き入れ。
デザートのオレンジとグレープフルーツの爽やか寒天ゼリーを作成した上冷蔵庫IN。最後の最後で作り置きの芋羊羹を添えまして全ての工程を終了。
揚げ物と蟹甲羅グラタンを保温器へ。ドライカレーも保温器へ納め。味噌汁は出す前に再加熱と。
タルタルソースとスライストマトをレタスの上に乗せて。
「出来たぜ!1人でも順序良く遣れば出来るもんだな」
「遣り過ぎじゃない?」
「僕もそんな気が…」
「敵前逃亡した俺からの謝罪と感謝の気持ちだよ。責めてこれ位はしないと…。でも遅いな」
「遅いわね」
「遅過ぎ…ますね」
「レタス敷き大皿と取り皿並べて本でも読んで気長に待ちますかね」
「珈琲でも飲んで」
「リラックスを」
……
珈琲を飲み始めて30分後。虹玉風呂に入った隊員と入ってないシュルツたちがご帰還。
「お疲れ~。そんな苦戦した?」
「お疲れ様です。兎に角大変だった…。て何あの豪勢な料理の数々は?」
フィーネがキッチン奥の料理を見て静止した。
「そりゃ逃亡した俺からのお詫びとお礼だよ。久々に全力出した」
「…」
無言に成ると俺の隣に来て土下座?
「どした?」
「私が…。短絡的なハンマー破壊を試み。異常種のスライムを発現させてしまいました」
「あらま」
「あーあ」
「何となく…」
「しゃーない。ペリーニャを救った件と綺麗に相殺だな。
ペリーニャとレイルがそれで許してくれるなら」
「私は初めからその感覚で居りました」
「これも経験じゃの。それより早う食べようぞ」
「んじゃこの失敗はお終い。ペリーニャとシュルツ配膳手伝って」
「「はい!」」
「私がやる」
「フィーネは駄目。俺予想10割確率でドライカレー全部床に落とす。大人しく俺の隣に座って」
「はい…。後で反省文を提出します…」
食事中も食後も謎の黒スライムとの激戦模様の話で盛り上がり愉快な団欒を過ごした。
これにて善き日。
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それから4日後にディアオーナ行きが決定。
その間2日。みっちり個人訓練主にペリーニャの育成。
負荷バンドを駆使し格段に身体能力が上昇。引き摺られて治癒能力まで上昇。
フィーネが魔族2人を。聖属性寄りのペリーニャが人間やロイドをなど住み分けと戦術幅強化にも繋がった。
バンドと竜血剤を手に取り唸るペリーニャ。
「これは卑怯ですね。数ヶ月、下手をすれば一年分の鍛錬を圧縮してしまえるとは。
ゼノン隊があっさり負ける訳です」
「個人の今の限界も有るけどね。日常生活でも皆でこっそり使い回してたのさ。その積み重ねの結果。後消音の地下足袋とか男はそれぞれ。女子は洗って使い回すとか」
「地下足袋使ってみたいですフィーネ様」
「それがねぇ。擦り切れて踵に穴が空いて使え無くなっちゃったの女子分全部。同時期にだから多分使用回数が決まってたのかも。シュルツでも直せなかった」
「そうでしたか…。残念」
「今度ルーナ両国遊びに行った時聞いてみるね」
「はい」
「男分ももう駄目になったな」
「あぁ。普通使用で無理しても効果はさっぱり」
「奥が深いですね。単なる靴下でも」
ディアオーナへ移動後。緊張の一夜明けの本音の早朝お風呂場トーク。
恥ずかしそうにするペリーニャにフィーネが直球。
「どうだった?もし嫌な気持ちとか。心が傷付いたのなら一旦自宅へ帰るとかでも」
「いいえ。それがイメージしていたのとは全く逆で。
ソプラン様との初めては緊張と恥ずかしさは有りましたが肩に触れられただけで安らいで不安が消えて。
スターレン様に対する感情が揺らいでしまうかもと怖くも感じていましたが全くそれは無く。寧ろ強まる程に。
スターレン様には純粋な愛。ソプラン様には友愛?のような感情が芽生えて。
フィーネ様とロイド様以外の同性の方と肌を重ねても違和感が無くとても幸せを感じられました。
凄く心地良くて。気持ち良くて得した気分です」
素直な感想に人型全員顔真っ赤。
「良かった。私たちもそう。スタンさんへの愛情が壊れるのかと考えてた。けど一度もその感情はブレないの。
ペリーニャと同じ強く成るばかりで。勿論ソプランが大好きなのは確かな気持ち。でも信頼感や安心感は強く成ってもそれ以上には決して成らない。アローマの方がハッキリ愛してるって言える位。
ホント不思議。今でも」
「ストレートは恥ずかしいですフィーネ様…」
「本音トークだもん」
「これもレイルの計算の内?」
「いや。魔族の間でもこの様な事は起こらぬ。人間よりも個体繁殖性が強く。雄なら他の雄を殺してでも排除する種族が主流じゃ。例外的な者は人間と同等レベル。
この様な形にしたのは妾じゃが。最初の時以来魅了など一度も使わず中身が一切壊れないのは。フィーネと同じく不思議じゃな」
「姐さん。そりゃ俺が異常だって言ってるようなもんだぞ」
「そ、そんな事はないのじゃ。只初めてじゃと…」
「丁度ピッタリな言葉がペリーニャ嬢から出たから聞くがマーレ嬢。本音はどっちなんだ。俺かスターレンどっちが友愛なんだ。俺はどっちの感情で接すればいいのか教えてくれよ」
注目を浴びるプレマーレは顎を湯船に沈めながら。
「どっちも、です…」
「ん?」
「何方か、ではなく。同じ位に二人の子供が欲しいと考えている自分が居ます。最初から今も」
「そっちかえ。早う言わんか」
「元人間の感情にも今の蜥蜴種にも無い感情だったので悩んでいました…」
「何だ両方かよ」
「欲張りコースだったのか」
「はい…」
道理で悩む訳だ。
「複雑…。最初の愛人設定通り、もしスタンさんの子供が先に出来たら。外から見ると隊員アローマ以外は押し倒した事になる?いいのかな?あれ?」
「それはその時に考えましょう。逆上せる前に朝食です」
「そうね。今考えても無理。上がりましょ」
朝食後のミーティング。
「城からの返信が届きましたので今後の予定も考えて行きます。
ペリーニャが無事一山を越えられ。プレマーレの本音が解りました。なので早速今夜から弾けます。なんて無茶はせずペリーニャの心境に合わせ。穏やかに親睦を深めて参ります。
最初の迷宮。チコトリマ。次の組。予想交代は3日後。
次のクワッドサイレス迷宮。予想交代は4日後。連続はしていますが予約制なのでチコトリマが仮に延びても問題は有りません。
以降何方も踏破後に次の組の後ろへと入ります。
私たちで踏破したイルギング含め未だ後続隊は未踏破。
遠慮無く初回を攫います。
今月内のイベントは私かアローマがバインカレお婆ちゃんに道具を貰いに行く位で大きな物は有りません。
来月に入るとライザー殿下のエルラダさんへの謝罪イベントが発生する予定。早期に動きが有ればシュルツからメールが飛んで来ます。
後半年内でレイルさん主催のラメル君の成人祝い。
従者ら含め私たちオンリーの小規模。
この宿はぶち抜き3週間で今回からは料金前払いで振込済です。
私たちなら多分2回も入れば目標を達成出来る気がします。3回目をトライするかは2回目の結果で要相談。
早めに終われば帰国して冬山登山準備に入ります。只準備と言ってもマッハリアのカウテリアで本格的な登山用品を買い揃えるだけです。
スタンさん。これから海の上は寒くなる時期ですが来月組込ますか?例の秘密を」
皆の期待する目が…。
「ん~。ポイントを変えて開催しましょう。
ここが終わった後で。
場所は東大陸東の遠洋。前にロイドと行った赤道直下なら季節が反転してる筈。
船内は温調利いてても。うっかり外出てふと我に返ったら嫌じゃない?」
全員横へ首を振った。
「絶対に嫌です。そちらの方向で。
サンガちゃんの迷路改造も兼ねて。少し遊び最果て町から出発と言う流れで参ります。多少絡まれても振り切る所存です。
ペリーニャもしかしたらサンガちゃん触れるのかな」
「どうだろ」
「触れない、のですか?」
世界樹の木霊で木霊付きと勇者しか触れないと説明。
「ほぉその様な存在が。普通にお会いしたいです」
「ならちょっと長めに遊びましょう。
ここの迷宮待ちの空き時間どうする?レイルさんとプレマーレとアローマの個別デート断行しちゃうとか。
ルーナ両国だけじゃ中々時間作れないし」
「気が利くように成ったのぉ」
「フィーネ様…」
「是非とも」
「そやね。やろう。余裕が有る内に。
町は女神教信者が居るから食事と少し。人気の無い場所をクワンに7箇所探して貰ってお外観光。
またソプランとの総当たりで。人目が無いからってお痛は無しよと」
「当然です。危険なのは私とプレマーレ位かな」
「クワン。7箇所以上景色の良い場所。上空からでも神域からでも。
それが終われば地図に書き起こして2枚。今日中に俺とソプランで下見。各町近辺にも足跡を付ける。
明日以降でソプランペアが転移不能ペアならそっちの運搬も頼める?」
「楽勝です!ペッツは南極で遊ばせて頃合いを見て飛びます。取込中だったり夕方までその場に留まるなら空に向かって手を振って下さいね」
「おけ」
「気配りも出来る鳩神様や。
クワンが調査してる間にペア順決めよう。基本ルールはルーナの時と同じで被らないように」
「はい!」
ペア順も前回に似た感じにペリーニャが加わった。
私め。
レイル、プレマーレ、アローマ、ペリーニャ、
ロイド、フィーネ、男物買わせろ日、余力は初めから。
ソプラン。
プレマーレ、レイル、ロイド、フィーネ、
ペリーニャ、アローマ、以下同文。
人数が増える程自分たちの買い物が遠退く男2人。
ソプランは半分巻き添え。
出掛けなかったクワンが提示してくれたのは以下。
本当に誰も居ない北東海岸岸壁。
本当に誰も居ないって北部海岸岩場の切れ目。
少し位良いじゃない河口堰の谷間。
廃棄された北部迷宮。淡く青く輝く岩肌がロマンチック。
火山麓の無人樹海。
火山麓の無人丘隆地帯。
火山北東部の無人天然温泉(狭く適温。遮蔽物有り)
火山南の無人高台(奥に清潔な平場在り)
王都東部の廃棄された吊り橋ドキドキコース。
その下の隠れる場所には困らない無人渓谷。
「クワン…。君は、俺たちを試しているのかい?」
「数日前から神域と肉眼で調査済。神と成ってしまったあたしが空から四人を見守ります。これ以上何が必要なのか何が不安なのか。有るなら教えて下さい」
「…」
人型全員沈黙。
「スタンさん…。私はもう無理。絶対我慢出来ない」
あのソプランが助け船?
「俺が外で手を出すのは姐さんと嫁とマーレ嬢だけと最初から決めてる。安心しろ」
「それは不公平だから女性側の裁量に判断を委ねるとしても…」
「た、偶には良いじゃろ」
他の女性陣もそのモードの目をして。
「まあいっか。俺もその思考に成っちゃったし。トイレも上級品必要分差し替えたし。町に寄ると面倒だし。
朝出る前にお昼買ってお出掛けしよう。温泉だけは被らないように注意して。
とりま俺だけ足跡付けて来ます。お外解禁で」
女性陣が小さくガッツポーズ。
ペリーニャの順応力が高すぎる…。
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夜も昼間も熱い日々を過ごして3日後。
城の交代予想通りに迷宮の順番が回って来た。
次のクワッドサイレスも空いたそうで何とか本日中にチコトリマを踏破したい所。
臭い消しの材料も出る植物系天然迷宮。
全22層+1の23層。しかし誰も新迷宮主に見向きもしないので主の詳細は謎。
ひょっとしたらまだ先。若しくは世界樹に繋がる何かが潜んでいる可能性は有る。
記憶を呼び戻す手掛かりと成るのか否か。真実は如何に。
ブランちゃん装備で無敵ペリーニャを後衛。従者2人と同じに彼女のスピードに合せて進んだ。
押し寄せる花や花片。巻き付く蔦や根や茎。
立ち塞がる樹木。途中で通路を変える怪樹。
色取り取りの花に彩られた迷宮。そうここは天然の迷路迷宮だった。
上層は普通の木材と少し変わった薬草が出るだけ。
途中から趣旨が変わり。真実の灯火を使わず純粋に迷路で遊び倒した。
分断されても出口は1つ。先陣を切って魔物を掃除するのはグーニャとダメスコンビ。クワンは監視要員。
人型は手を取り合い花や樹木を掻き分け笑い合う。
完全なアトラクションと化した。
中層では臭い消しの材料が出始め。下層では上質木材が大量に出てピーカー君大喜び。
その木材の中に今回の目的であるロスト装備回収木札が3枚発見され。相談せずとももう1周が確定。
あっという間に23層。ここまで木札以外特殊素材はハーブ系オンリー。人気が高い訳だと皆が納得。
否しかし。22層出口辺りから漂うは強烈な腐敗臭。
「くっさ。もう行かなくても相手が解る」
「ラフレシア系だね」
皆が頷く。
「昔の俺なら喜んで飛び込んだだろうけど。もう1度入るのは確定だからどうすっかね」
「皆はどう思う?私は行ってみたい」
フィーネが後ろを振り返る。
「じゃのぉ。しかしペリーニャ以外衣服に臭いが着くしの」
「正直悩みますね」
「私だけ狡をしてしまい…」
レイルとロイドのお悩みに対しアローマは腕組み。
「私見を述べても良いなら…」
皆が注目。
「どうぞ私の愛する右腕アローマさん!」
「その言い回しは少々意味合いが…。私の意見としては二十三に入る前にここから。グーニャとスターレン様のルーナで火炎放射を打ち込んでしまえば良いと。
ルーナの出番が最近全く無いですし。何かドロップが出るとしても上級品なら消失はしません。何かの痕跡が残ればまた次回にしては如何かと」
「アローマにしては大胆」
「おー右腕あっつ。待てよ今出すから」
久々登場のルーナ。
「仕事を与えてくれて感謝するぞアローマ」
「いえいえ」
反対意見は無く即実行。
2匹並んで同体格に拡大。出力は圧倒的にルーナが上。
先手グーニャが存分に放出。後追いで大火力を23層に向けて注ぎ込んだ。
離れた場所で談笑しながら待つ事10分。
「臭いのは完全に消えた。けど」
「下が溶岩地帯に?」
「そこまでではない。二十三よりも更に下の層が在った様子でそちらに流れたな」
「へぇ24か。それで時間が掛かったんだ」
「うむ」
「我輩ではそこまでは解らないニャ。課題が一つ増えましたニャン…」
「いいじゃん。火力調整や効果範囲を掴む訓練にも成るし無駄打ちも減らせる。噴射じゃなくて火球弾にしてみるとかさ」
「火球弾…。その手が有ったニャ!ありがとニャ、スターレン様!」
クワンがジト目。
「またあたしの教育ネタが消えましたよ?自分で気付くのを待ってたのに」
「ごめん…」
カタリデとピーカー君も。
「あらあら」「まあまあ」
「これ以上は言わない。では下の確認に」
「参りましょう!」
黒炭だらけの23層中央部。そこに転がっていたのは。
大きな地魔石と1つ茨冠。
消臭の冠。
汚臭を好きな香りに変更可能。被れば身体。飾れば芳香剤代わりに。
変則使用:乱された因子を整えられる
「良いなこれ。俺の過去を探るのに使えそう」
「やったね。グーニャとルーナの手柄だからそれはスタンさんの物でいいよね。下も含めて」
振り返る皆が満場一致で了承。
「では有り難く」
手掛かりはやはり存在した。
同じく黒炭塗れの24層。最早何が居たのかも不明。
中央付近に転がる炭化した人型遺体が1つ。詳細は知りたくないので金角を押し当て成仏させた。
残ったドロップは。聖風炎と闇風炎の魔石2種。
それと小さな瓶。中身は半透明。
「吸収系の迷宮主が居た模様」
「ルーナ分が吸収し切れず、てとこね」
調整剤の秘薬。
数多の事象を調整する薬。並列平行の物を縦列直列。
統合。選出。初期位置固定。使い方は千差万別。
飲用可能で同効果が見込める。しかし想像を絶する苦みが数日間舌に残る。
「これってもう…答えでは。カタリデさん」
「駄目よ。早まらないで。ハーレムに何人女の子が居たとか周りの従者は何人居たとか。それが全員消されてるならその人数分逆行してる。それを頑張って思い出して初期位置を探る。杖を使った直後にそれを飲んでグズルードの最初を導き出して固定化する。
先に飲んだら只の苦い水。苦みが持続する間は正気が保てるかも。その後は誰も保障出来ない」
「おぉ焦るとこやった」
「ありがとねフウ」
「何の。久々に役に立てた気がするわ」
迷宮を出て管理棟に完了報告。次の組の後ろを予約。
都内ギルドで討伐方法とドロップ品の報告をした。
「二十二から…焼き払った?」
「超絶臭かったから我慢出来ずに炎魔石の強制発動で下の消臭をしたんだ。だから24層の迷宮主の姿は確認してない。次で復活してたらどうしよっかなぁ」
「はぁ~やはりプラチナ勇者様はやる事が違う!お見逸れ致しました」
「それほどでも~」
照れながら帰宿。褒められてはいない。
そして焦りは禁物です!
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何もせずに寝た翌日。何もしなくても添寝の誰かは居る。
「あの…レイルさん」
「ん?おはよ。何?」
「おはよ。俺は何時に成れば1人で寝られるのでしょうか」
「知らないわ。自宅に押し掛けてもいいの?」
「今は困ります」
「だったら仕方無いじゃない。老衰でも病死でも。その時ゆっくり一人で寝られる。明日を気にせず」
「そんな先っすか…」
どうやら一生無理みたい…。
今日も元気に迷宮探索。クワッドサイレス迷宮。
19層+1。目的は転移プレートの原形道具。
初回の迷宮主を美味しく頂く予定。
主の姿は未確認。但し魔法呪詛を反射する特性持ちであるのは確定情報。
封印系迷宮ならば。俺たちがやるのは只一つ。
物理でごり押し。
飛ぼうが跳ねようが横から湧こうが地面から生えようが泣こうが叫ぼうが。
斬って削って弾いて叩いて砕いてストレス発散。何も抱えてないのに。
脳筋集団と化した俺たちは昼過ぎには19層の階層主をぶっ壊していた。
「どうしよ。早過ぎかな」
「長めの休憩を取りましょう」
「はい」
層内出口付近に休憩所を設けてドロップ品を振り返る。
目的の床材模様替えのプレートが2枚。他で使えそうのは進行ルート変更誘導指示器。
「目標半分。ここももう1回確定」
「次で2枚出てくれたらねぇ」
「指示器をサンガの迷路に使ってみる?」
「そんな鬼仕様にしたら迷子に成ったまま出られないよ。スタンさんの意地悪」
「遣り過ぎか」
「どっか別場所で自分たちの競技用で使ってみりゃいんじゃね?難易度馬鹿みたいに上がるだろ」
「暇潰しの迷路なら王都壁外でもいいな。敵の目を分散させる意味でも」
ロイドの提案。
「遊び場も良いですが。
自走車専用道に使うとか。専用道自体も技工士の杖で造れそうですし。異世界日本のような高速道を街道の真上に設置するだとか」
「あ!ナイスロイド。それだ。有効利用方法有ったじゃん」
「ド忘れね。私も」
「来年の大きな案件出来ましたねフィーネさん」
「ですねぇスタンさん。大項目に加えます」
「レイル。その時杖貸して」
「うむ。元々クワンティの物じゃしの。妾も見たい」
結局全員集まるんでしょうと。来年行事に期待が膨らんだ所で休憩終了。
20層で出現した迷宮主?
ミラーリングメフェスト。
鏡張り迷路の奥に潜む1体の人形。遠距離攻撃、遠距離魔法攻撃倍増反射。倍増した攻撃の更に倍化した物を次の攻撃手段として所持。
近接攻撃でも鏡に映れば複製される。攻撃を続ければ続ける程メフェストの手段が増加する。
本体肉薄まで攻撃を温存し一気に殲滅がお勧め。
「ほぉ中々面白い難敵。フィーネさんアローマさん。看破カフスでバッチリ本体が丸見えで御座います。
さあ如何しましょうか」
「また私とプレマーレで拳で殴るとか」
「賛成です!」
「私の意見としましては。ここも炎で満たしては芸が有りません。そこでフィーネ様のポセラの槍で層内を水没。
更に避雷の杖・真打ちで超高電流を流し感電死をさせると言う案を推したいと考えます。
奥の側壁には隙間が多く。伏兵増援が予測され。一網打尽に地獄行きが見込まれます。
若しくは。複製困難な無形短剣をペリーニャ様が装備。単騎撃破も可能。増援が来ても攻撃性は変わらず無防備。
ペリーニャ様は一体一体刺して行くだけです。
見えている本体は飛翔種ではなく。奥の隙間も地上床から割れている事を踏まえると初期のメフェストは飛べないとの見立てが濃厚。飛翔して攻撃すれば複製されます。
加えて。ブランちゃんを装備した誰かが鏡に突っ込み。全ての鏡を無に帰し。本体を近接瞬時攻撃で捻じ伏せる。
鏡さえ封じてしまえば複製は何もされません」
「フィーネさん。プレマーレ。何か言う事は?」
「私が浅はかでした…」
「恥ずかしい…」
2人が顔を覆って蹲った。
「ペリーニャ。鏡割りからやってみる?時間操作は使わずに。単独撃破なら多分中級に上がれると思う。経験不足は後から補えばおーけー」
「はい!遣ります。そこまで教えて頂いて出来ないなどとは言えません。
レイル様。短剣を」
「うむ。皆で見物してやろう」
ペリーニャが鏡に正面から体当たりを開始。
ガッシャンガッシャン煩い中。
「フィーネ。ギルド報告の言い訳に使うからリフレクトガーの鱗限界まで重ね合成して」
「はい!反射には反射をね。そろそろやってみたいと思ってました。邪魔だったし。何枚行けるかな~」
片隅にしゃがみ込み白銀鱗を重ね掛け。
全ての鏡が砕け散り。露わになる怯えるメフェスト。
初期は人型ゴーレム。素の状態では何も持っていない為に震えるしか術は無く。
その胸に無形短剣が刺し込まれフィニッシュ。単なる茶色い盛り砂と化した。
続々と壁から湧いたゴーレムたちも逃げられず。その場を動けず。只呆然と無形短剣を受け入れた。
敵が哀れでシュールなペリーニャの初陣と成りました。
合成限界は10枚。計15枚の鱗に集約されアローマの反射盾と同性能。透明化されない銀鱗の出来上がり。
「そのまま盾にも加工して全身個別防具にも。角を付ければ武器にも成るな。ありがとフィーネ」
「いえこちらこそ。日々勉強の毎日です。近々アローマに弟子入りする所存です!」
「焦らず頑張れ」
「はい!取り敢えず1枚簡易装具を付けました」
左腕に着けて振ってみても尚軽い。合成しても鱗の重量は1枚のまま。性能と色が変わった以外超軽量盾。
そうこうしている間にペリーニャが最後の1体を盛り砂に変え完全勝利を収め。
「遣りましたー」
全身で喜びを表現していた。
剣を鞘へ戻し。拍手で出迎える俺たちの方へと駆け出すペリーニャを抱き留め。
「ドロップ品の確認を。置いて帰ったら冒険者とは呼べないぞ」
「あ、これはいけません。ご褒美が頂けるのではとすっかり忘れていました」
「ご褒美は個別の時にな」
「はい」
短剣をレイルに返した彼女の手を引きドロップ探索。
それは最初ではなく最後の盛り砂の中から発見された。
鏡張りの砂塵。
人工迷路内や屋内壁などに解析不能な鏡を自由に張れる砂瓶。枯渇まで作成可。作成者が設置物を解除すると瓶の中へと帰還する。
「おーこれは。ペリーニャ作成の迷路の難易度がアホ程上がるぞ」
「今から腕が鳴ります」
微少する彼女が恐ろしい。
後ろの皆がうわぁと頭を抱えた。
他は地魔石以外特に無し。隠し通路も無さそう。
時間に余裕が有ったので徒歩で上に上がった。
19層への戻り科。下りる時の景色とは一変。
千人近い黒服が待ち構えていた。
先頭の男のみ白い軍服。
「聖女様をお返し願う。勇者スターレンよ」
俺も先頭に立ち。
「名を名乗れ無礼者。その白い軍服は…ロルーゼか」
「ご明察。我はヌンタークの下に居た。女神ペリニャート様が造りし最後の眷属キエンターラ。
レイルダール様の従者はロロシュ邸内に固まっている。
それ以外を叩くだけなら三年の時を待つ迄も無い。この言葉通りにパージェント城内を血の海に変えてやる。そこから外へ。意味は理解出来るな」
あれ?座標動かしたの気付いてない?
それより3年後の敵が…もう来ちゃったんですけど?
来て…しまいましたね。何と向こうから態々。
両膝を着いて懇願。
「ま、待って欲しい。今の彼女は水竜教。もう自由の身だ。女神の狙いが俺ならばこの命を差し出せば済む事。今更他に何をする積もりだ」
「行方知れずの女神様を聖女様の身体へ再降臨させる。貴殿の魂だけ有っても意味は無い」
あれれ?輪廻の輪の効果に気付いてない?
の…様子ですね。
ペリーニャも膝を着いて懇願。
「やっと自由に成れたのに…。主が居なくとも貴方たちはそうして生きています。女神の呪縛から抜け出し自由に生きる道も有るのでは」
「女神様が女神として君臨して居なければどの道長くは持たぬ身体。精々持って五年。その間に何の自由を謳歌しろと仰るか」
「そんな物は知りません。多くの罪無き者たちの命を奪った報いだと受け止め為さい。
私は嫌です。スターレン様を。その魂すら弄ぶクソ女神をこの身に入れるなど。無理にでもと言うなら自害の道を選びます。何を以てしても」
「くっ…」
拳を震わせ。やがて解いた。
「絶対服従を解く方法は存在しない…。我らで最後。ならば女神が望む最善を尽くすのみ。
勇者よ。パージェント城の玉座で待っている。遅くならぬ内に来ると良い」
そう言い残し千人が一挙に消えた。
「レイルさん…。3年後の敵が挙ってメレディス火山に投身自殺を図りに行ってしまいました。止める術は無く。
どう判断したら?」
「こ、これはもう…。西へ行くまで遊び倒せって事じゃないかしら。ベルも言っていたのでしょ?ロルーゼは放置でも勝手に自滅するって」
「確かに…。どう思いますか。元神のカタリデさん。
鳩神のクワンさん。フィーネ経由で水竜様」
「いんじゃない。羽目を外し過ぎなければ」
「あたしはご主人様たちを守るだけです。何をどうしても」
「水竜様は…。子作りを予定通りに進めたいなら使命を果たせば良い。遊び過ぎれば遅れるだけだぞ、と」
「成程…。ま、いっか予定通り進めれば。遅くならないように気を付けて。さあ地上に戻って報告です!」
「はい!」
新事業や遣りたい事沢山有るし。そこまで暇には成らないかな。
そう言う事です。
完了報告とリトライ申請。ギルドへの報告。
夕食後の晩酌中。
「シュルツのメールでも何も起きてませんけど?確認が取れて一安心。エルラダさんの件ももう少し根回しが必要そうだとの返信。
降って湧いたこのご褒美時間。しかし只単に肉欲に溺れていては何処ぞの女神と一緒。
そうは思わないかねソプラン君」
「同意だ。俺たちは愛と友愛有ってこその人間と魔族と上位者だと思う」
男2人で例の薬を取り出した。
経験者の5人は硬直。未経験のペリーニャだけが。
「何ですか?その小瓶は」
「その答えは明日の朝に解る」
「俺たちに任せろ」
「はい…。お任せします」
お薬片手に一気飲み。
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天国から帰還した6人の美女は沈黙の朝食後に漸く口を開いた。
「私たちの意見は聞いてくれないの?スタンさんとソプランは」
「嫌なら前置きしてる間に止めてよ」
「経験者が誰も止めないなら使って良しだろ?」
「もぅ…。私たちを逆らえなくしたくせに。次は普通だと聞いてたから止めなかっただけ。
それをあんな優しく囁かれたら…一瞬で飛んじゃうよ」
4人は頷きペリーニャは俯いたまま。
「偶にはいいじゃん。俺たちも早く寝たい時も有るし。
ペリーニャが嫌だったなら使用は控えるけど」
「いえ…。まだ頭と下半身がフワフワですが素晴らしいお薬だと思います。心まで満たされ…愛が刻み込まれ。
でも頻繁に使われてしまうと人間として駄目に成りそうで怖いです」
「解りました。次こそは普通に。女性陣の総意を得てからの使用とします」
「だな。個人差付けると後で文句言い出すし」
6人は安堵の溜息。
順調に個別デートと夜の活動を経て。リトライした2つの迷宮では予定枚数に到達。チコトリマの最下層以外同じドロップが出てホクホク。
木札やプレートが足りなくなればまた来ましょと。
鏡張りの砂塵の瓶2個目もペリーニャ。誰が倒すか喧嘩に成りそう所で突撃。絶対防御を上乗せした拳で又も単独撃破を果たした為。
23層は消臭冠と空気清浄器を投入して楽勝クリア。
気になっていたチコトリマの24層の迷宮主とは。
緑のワンピースをお召しの樹木の妖精美女ドリアードさんでした。
「…よくも。よくも焼いてくれましたね。火が苦手なのを解っていながら。例え吸血姫様がお越しだとしても許し難い」
「だったら別の場所行けばいいじゃん。倒されるのが嫌なら迷宮じゃなくて地上の樹海選べば?」
「そうじゃて。妾は見ておっただけじゃ」
「私は世界樹の眷属のような者。木霊様がお戻りになり次の芽吹きが無ければここから動けないのです!」
「そんなの怒られても知らないよ」
「そうじゃ」
「他に移動方法は何か無いの?転移でいいなら外へ出せるよ?上には無人の樹海も在るし」
「…勇者様の、キスを頂けるならば。一時的な移動と固定化は可能です」
「ん?マジで?無感情や同情でいいの?」
「嫌に決まってるでしょ!気持ちを込めて!」
「初対面の精霊さんに言われてもなぁ…」
一応周りに確認。
「良いと思います。言葉交して情が湧いちゃたし。天然迷宮で無闇に倒すのは。ちょっと」
正妻と他女性陣が了承。
彼女の冷やかな腰に手を回し。
「では。今有る精一杯の気持ちを込めさせて頂きます」
「お、お願い、します…」
深緑の瞳を閉じた彼女の唇に出来る限りの友愛を注いだ。
あれ?普通の人間と変わらない?いや寧ろ、懐かしい?
何だこの感覚は…。
感情が芽生え。情熱的なキスへと変化。
彼女も何かを感じて呼応に熱が籠った。
女性陣が睨み付ける中で長時間。
唇を離して思わず出た名前。
「イグニース…」
「え…?どうしてその名を…。貴方はまさかグズルード?」
「え!?もしかして…ハーレムに居た子とか」
「あぁ…懐かしい。この姿で巡り会えるだなんて。生殖機能が無いのが悔しいです」
「えーー!!??」
俺も気持ちは一緒。
「そんな…。こんな事が」
「私は時の女神に断ち切られ。貴方は別の世界へと旅立った筈。どうしてまた此方に?」
「そのクソ女神に、連れ戻された。
当時の記憶は今は無い。復元する手掛かりは掴んだ。
でも復元しても良い物なのかも解らない。覚えているなら教えてくれないか。当時の事を」
イグニースは困った顔を浮べ。
「私は復元には反対です。それを知ってしまえばきっと…いいえ間違い無く貴方は暴走してしまう。それでもお聞きに成られますか?」
「聞きたい…。何が有ったのかを」
少し考えてから。
「解りました…。正妻様と第二妃様。彼のバッグを外した状態で全力で抑えて下さい」
「解りました。全力で」
「抑えましょう」
バッグとカタリデが離され嫁2人にサンドされた。
「私たちを信じて」
「皆が付いています」
「有り難う」
少し離れた場所から。
「今後で過去へ戻る術を見付けても。決して使わないと約束して下さい。それをすると女神の思う壺です」
「誓う。何が有っても戻らない。そんな道具は周りの仲間に破棄して貰う」
彼女は深く頷き返し。
「良いでしょう。……皆殺し、です」
心臓の鼓動が跳ね上がる。な…にを…。
「最初の貴方を…末席に居た女神の化身が操り。正妻位置に居た私を含め。第六までの妃。従者も全て」
「ん!?」
「殺させたのです。貴方自身のその手で」
奥歯が砕ける程噛み絞り。正面に居たフィーネの背中を壊れる程に抱き締めた。
臆する事無く前も背中も包み込まれる。優しさと温もりを一杯にして。
「二周目以降は恐らく出会いから潰して行ったのでしょう。過去の記憶を持った私は何度か遣り直そうと試みましたが女神に気付かれ。
出会いの前に殺されこの姿に変えられました」
「ふぅー、ふぅぅぅ」
「スタン!頑張って」
「堪えて下さい!」
「その怒りこそが狡猾な女神の狙い。まだ何か有ると思わせ道具を使わせ。激情を誘い。過去へと渡らせ。もう一度自分を再構成させる。
それに乗ってはいけません」
「ふぅー…。ごめんフィーネ。痛かっただろ」
「全然平気。この身体頑丈だから」
「ロイドもありがと」
「これ位は当然です。妻の1人として」
「誰が乗るもんか。グリドットが直ぐに使うなと忠告してくれた理由も合点が行った。
過去へ戻る術も可逆の歯車で最後。だから壊された瞬間に発狂してどっかに消えた。
杖は直ぐに破棄しよう」
「そうしよ」
「塵も残さぬように」
カタリデとピーカー君は悔しそう。
「まんまと乗せられたわぁ…あんな淫乱に」
「僕もです。記憶の手掛かりだと勘違いを…」
「振り返りは続けるよ。今の自分の見落としとスタプ時代の空白の穴埋めがまだ残ってる。
それとイグニース。オメロニアン様の行方は知らないか」
聞かれた彼女は驚き。
「記憶が抹消されたのに…そこまで辿り着くなんて。
やはり惹かれ合うのは必然なのですね。
彼女はペカトーレの海辺で恋をした。許されざる恋。
深海王時代の貴方と出会う。愛用のハープを奏で。
海鳥たちに聞かせる子守唄。
その音色に深海王は恋に落ちた。
彼は海を捨て人間に成ろうと幾度か転生。
浜辺での再会。そして七番目の妃へと招く。
深海の王妃は嫉妬に狂う。愛する夫を奪った女。
それは音楽の女神。その身体を奪い貴方を騙した。
繋がりを断とうと遙か太古へと飛ばす。
それがこの世界の時の始まり。時の女神の誕生。
今の造形は偽り。あれは中央大陸に居た神の資質を持つ町娘の身体。
辻褄合わせが凡そ千年前。カタリデ様の神格化に合わせるように違和感を消した。
悍ましい程の執念。一度貴方を諦めた振りをし。
異世界へと届け。憎き女の記憶も消去。
それから正妻位へ戻り貴方と添い遂げようとした。
しかし未完の貴方では満足出来ずに結局放逐。
以降は先程話した通りの繰り返し。詰りはオメロニアン様はこの世界の何処かの時間軸に居ます」
「…執念の塊だな」
また吐きそうに成って来た。
「貴方を愛していたのは相違無く。それが異常で。神にも匹敵する力を備えていた為にこう成った。
世界樹の枝葉の記憶を繋ぎ合わせてもこれが限度。
示される手掛かりは愛用のハープ。既に見付けたなら発見された場所の近く又は国内。手にしていのると同義。
オメロニアン様はこの今の時間軸上に居ます。
鍵を開く必要が有るのなら。もしかしたら子守唄の旋律。
お持ちでしたらお見せを」
フィーネが布を解いて手渡した。
「これです…。これに間違い有りません。
出来る限りで旋律の再現をしてみます。念の為スターレン様は耳栓を。そして何方か譜面起こしをお願いします」
「ピーカー君。俺用の耳栓頼む」
「はい!直ぐに」
「妾の出番じゃな」
レイルに続きペリーニャも挙手。
「私もお手伝いを。二年間分の修学が抜けていますがアッテンハイムでは楽器の嗜みも…。これもあの女の狙いだったようです…。
何処までも何処までも纏わり付いて」
テーブルセットをフィーネが準備。
「同時に休憩も取りましょう。私とカルで譜線を入れます」
「正しい選択です。落ち着いて座りながら」
俺だけピーカー君の耳栓をして離れ小島でポツンと読書。
直ぐに「まだです」のカンペを持ったアローマと。ソプランが常温の珈琲を水筒から差し出し。対面へ座った。
穏やかな迷宮内の無音の午後。
アローマが終わりをカンペで告げ。
耳栓を外してイグニースの前に立つ。
「人間に戻る術は有りそうか」
「恐らく無いでしょう。私も時間軸を外され過去へ飛ばされた存在。このまま人間に戻れても老衰で即死です。
偶に樹海まで遊びに来て下さい。次の芽吹きで大地へと還ります故」
「残念だ。もし若返りまで見付けたら必ず持って行くよ」
「期待しないでお待ちして居ります」
もう一度長いキスを交し。無人の樹海へ送り届けて暫しのお別れ。
管理棟で次の予約と24層の迷宮主消失の再調査をするとした。ギルドへも同様に。
帰宿した大部屋の中から全員で北部海岸へ飛び。
グーニャとルーナで古代樹の杖をお焚き上げ。
塵も残さぬ煙が空へ。俺の過去が茜の空へと吸い込まれて消えた。
感慨も無く哀愁も無い。全ては過去のお話。
-------------
12月に入り今年も師走。
2巡目の個別デート中にふと気付き。
俺たち遊んでばっかやないの!と1日訓練を挟み入れ。
スフィンスラー1層2層の連続再現で主に中級ペリーニャの経験を積んだり。
スフィンスラー迷宮残りチャレンジ回数。
1~2層…2回
3~4層…3回
5層…2回
6層…✕
7層…2回
8~9層…1回
10~17層…✕
18層以降には生涯立入禁止
プレートの改造をシュルツに依頼。序でに発動袋も。
その場でファフレイスを秘密のパーティーへ招待をすると宣言。
どうぞどうぞとシュルツが了承。略毎日ダリアと打ち合わせしているから寂しくないですよ。何なら延長されてもと快い返事を貰った。
若干緊張気味のファフレイスが超可愛かった。
オーナルディアに戻ってチコトリマ最下層の再調査。
新たに現われた迷宮主はドライエアード。
疾風と湿度を自在に操る鳥の精霊体。
レイルの存在を認識しても尚。果敢に挑んで来る獰猛な飛翔する赤茶色の軍鶏。だったのだが…。
ソラリマクワンの前に平伏した。地面に潜る勢いで。
「も、申し訳有りません!まさかこの様な狭苦しい迷宮内へ鳩神様がお越しになるとは露程も思わず…」
「良い。火で炙って焼き鳥にしたとする。想定する魔石以外のドロップ品をここへ置け。今回の討伐はそれで見逃してやる」
「ハハッ!」
すると突然自分の金属鶏冠を引き千切り。
「これは建物内。何処かに飾るだけで建物内全体の空気と湿度を最適化する鶏冠。上で出る消臭冠と併用すればお好きな香りも全域に。暖炉の横に置けば全域が暖房入。
日光を利用すれば極寒の地でも真夏気分。焼き過ぎ注意のお肌のケアは忘れずに。
他は羽毛と羽根。何れもガルーダ様の物のやや劣化品と成りまする。
それ以外は塵です。肉は食べられません」
「苦しゅうない。あたしたち以外が来た時は。その疾風と湿度変化を駆使して火炎を巻き返し。逆に広範囲で炙ってやるのだぞ。湿気を風で拡散すれば鎮火とは逆の延焼爆発効果も発揮する。試してみよ」
「ご助言有り難く!!」
末恐ろしい助言を授けて撤収した。
調査完了を管理棟とギルドへ報告して今回の迷宮探索は終了。
行き過ぎたイチャイチャお外デート2巡目が終わるまでは宿に滞在。
イグニースとも健全なイチャイチャお茶会を開催して2度目のオーナルディア行程もお終い。
ランガ&サンガ宅へお邪魔した所。
何と昼間から寝室でお取り込み中。サンガは外の迷路遊びに夢中。
今朝まで全く同じ事をしていた俺たちに文句を垂れる権利は微塵も無く。
言ってしまえば自分たちの方が不健全…。
半日丸々サンガと新作迷路作りに没頭。
ペリーニャはやはりサンガに触れる事は出来なかった。
サンガが気に入ったペリーニャ作のミラーリング迷路を残してそちらも撤収し最果て町へ移動。
-------------
ロロシュ邸からファフレイスを招いた秘密の船上パーティー3日目の朝。
「えー…。女性方に。感想を…伺うのは。大変失礼な、お話では有りますが…。次への参加を。考える為にも…
敢えて伺います。初参加のペリーニャと…。ファフレイスのご感想は、如何に」
朦朧とするペリーニャ。
「意識が…まだ…。天国から、掴めませんが…。とっても気持ちが良かった、です…。次回も、必ず参加を…、致します」
感動に震え。涙を流すファフレイス。
「この様な…天国が。存在しようとは…。夢、の中に居るようで…。痛い程…。胸と、心と、身体の奥深くまで…
皆の愛が、刻まれました。次回も、参加をお願いします」
「痛い…程?これはいけないぞ…ソプラン君。俺たちの愛で痛みを、与えてしまった…」
「駄目だな…。接する時間が…足りなくて。愛情が、上手く乗せられなかった、ようだ…」
男2人は例の薬をテーブル上に出した。
他女性6人が身を固くする中。1人知らないファフレイス。
「いや今のは…言葉の綾で。他意は…。何ですか…その青く透き通った…小瓶は」
「ファフレイスの、心の痛みが取れるまで!」
「延長する!」
秘薬を一気飲み。ファフレイスを船内個室へお姫様抱っこで連れ込み。順番に2人掛かりで俺たちなりの愛を伝えて伝えて伝え抜いた…。
4日目の朝を超えて昼下がり。
セクシーなバスローブ姿で食堂の机上に突っ伏す7人の美女を前に余裕の男2人。
「これはいいぞソプラン君。俺たちだけ絶好調だ」
「こらからは終盤での薬の投入を視野に入れよう」
ピクリと動く7人。
「シャキッと!早く意識を戻せ!」
「追加して延長するぞ!」
即座に行儀良く座り直し。胸元と裾を整える7人。
「どうかなファフレイス。痛いのは消えた?」
「完全に消えました!寧ろ最初から存在しません!」
「伝わって良かったぜ」
「フィーネさんに代わり。引き続き俺から連絡を。
ついさっきシュルツからメールが来ました。ライザー王子の謝罪イベントが2日後。こちらで言う2日半後に決定。
事前にエルラダさんに2人の状況。ウィンザートで愛人を設けました情報を流し緩和を図った模様。
一時脈に乱れが出たものの様態に変化は無く。依然安定状態。故に決定と成りました。
正式な婚姻解消はそれ以降。傷心ダリアのお迎えがその翌日と言う流れ。年内には余裕。
その間にラメル君の成人祝いを組み込みます。何処でやるとか希望とか。決めてたりする?」
「む~。カメノス邸の小宴会場は借りれぬのかえ。新事務棟の一階がもう使えるならそちらの方が良いのぉ」
「まあカメノス邸とは無関係だけど借りられる。でも確かに事務棟の方が良いな。ファフレイスは1階の厨房周りの様子は見た?」
「詳しくは見ていません。厨房用品搬入までは確認済。
今現在使える状態かは不明。ですがシュルツさんなら仕上げているのではと」
「ふむふむ。搬入済なら自分たちでも整えられそう。帰ったらそこら辺を聞いてみよう。
登山用品の購入は年明けでも構わないので時間の余裕の有る時に向かいます。ペリーニャも山登りしてみたい?」
「行きます。この状態で自宅に長時間放置されては心身が持ちません。買い物も登山も同行致します。捨てないで下さいスターレン様」
「死んでも捨てません。カウテリアもしっかり回ってないから普通に買い物でも皆で。
この後。女子のお風呂後に何時もの掃除確認。
時差ボケ緩和の為にルーナリオン北一番。大露天風呂併設旅館に1泊。そちらは既にクワンで予約済。
自宅へ帰宅後。周辺状況を確認した上で迷宮内特訓でリフレッシュ運動の予定です。
異議有る方。又は今直ぐ帰りたい方が居れば挙手を」
誰も微動だにせず。
船内大型バスルーム。本音の女子トーク。
「ファフレイス。今後はファフと呼ばせて貰う。ファフとペリーニャはあの薬を見てどう思った?」
「危険な物。毒物ではないと…感じた」
「何度見ても。女性に幸せを運んでくれる秘薬だと」
「そう…。私たちももうあの瓶を見ただけで何も言えない身体に成ってしまった。取り上げるのは不可能。身体も心も拒絶しちゃう」
「じゃの。妾の魅了が軽々と踏み越えられるとは…」
「純血魔族の性欲を満たせる程ですから…。今では薬を使わずとも」
「止めるのも無理。ねえファフ正直に答えて。防壁続けられそう?」
「…今回だけで。スターレン殿に持って行かれた。頭は次の事で一杯。自分なら大丈夫と言う考えが甘かった。
ロディを何処かで馬鹿にしていたのを恥じる…」
「上から見るとそう見えるでしょうね」
「やっぱり…」
「薬を使われてからのお声が。完全に切り替わられたご様子でしたし」
「スタンはそれも視野に入れ始めた。プレマーレは表向きソプランの方だとしても。
また新たに森の精霊。更には音楽の女神様まで救おうと考えてる。
居場所は南東大陸内で間違い無い。残る国は2つ。
それはさて置き。ファフと2人を加えてしまうと一気に嫁が8人。最近常に同行しているレイルもそう言う目で見られる。
外の声を無視し続けるか。何か別の言い訳を立てなければ収まらない。
何か無いかしらアローマとペリーニャ」
「…極限に難しいです。こればかりは」
「…全く浮かびません。今は特に。頭も心も落ち着けてからでないと」
「そうね。事務棟が開業したら定期的に対策考案会議を始めます。ダリアにもシュルツにも関わる事だし。その2人も招集して。混乱させてしまうから侍女衆は抜き。
スタンやソプランを呼んでも外は無視を決め込むだろうから女子メンバー限定で」
「はい」
「うむ…」
「私も無い知恵絞って考えます。さあ上がってお掃除始めましょ」
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混浴大露天風呂は何度入っても最高。
思い思いの場所で肌を寄せ合ったり景色を観賞したり。
時間の掛かるメニューを先に頼んで置いて騒いだり。
他の客が皆無ですから。
気になっていた秘湯へも足を運び。全員は無理な狭さで足湯にして座談会を開いた。
個別デートの時に重宝する事間違い無し。
夜は牡丹鍋と山菜尽しの豪華懐石。
濃い口出汁に浸された温玉に差し掛かった時。隣のロイドとチェンジしてファフレイスが座ってスプーンで口へ運んでくれた。
「どしたの急に」
他の嫁も見て見ぬ振りで自分の食事。
「防壁の件…なのですが。止める事は出来ない物かと」
「それは俺に気持ちが偏ったと受け取っても?」
「はい…」
お顔を真っ赤に染め上げて。
「本気に成っても良いと?」
「その通りにて」
そこはハッキリ。
右のフィーネに。
「フィーネたちは了承済?」
「元々自由枠だし了承済よ。本人の意思尊重。邸内と城の関係者に説明し直しやダリアとかの順番。シュルツへの説明とかは必要だけど。シュルツの成人後なら手続きしても良いのかな」
ファフレイスに向き直り。
「素直に嬉しいけど。俺に来る前に1つ重要な事を忘れていませんか?」
「重要な…事?」
クワンを指差し。
「君の主は?」
「あぁ!済みません我が主。私欲で先走ってしまい」
「あたしは良いと思いますよ。元からハーレム要員で防壁なんて無理だと考えてたので」
「有り難う御座います!」
「スターレン様のカリスマはフィアフォンゼル迷宮よりももっと前から異常値。迷宮内で出会った時。芋羊羹ではなくスターレン様に恋する目をしてました。
そして神域での自己推薦。自覚は無いみたいでしたけどこの人もう落ちてるなと感じてました」
「仰る通りです…」
「理解有る主で良かった。でもフィーネの言う通り序列で言えば6番目。シュルツの後。それまで宿舎の部屋は変えずに行こう。多分シュルツも無理だろなと思ってても実際俺が通っちゃうと傷付く気がする。
その事情説明は自分の口で話して。俺が言ったら余計に傷付く。何たって俺が防壁さんですと紹介して置いて本気で手を出しちゃった形に成るからさ」
「それは必ず自分から。その他の方へも順番に」
「有り難う。じゃあ席に戻って食事の続き」
「はい」
6人目空の上から来ちゃった。
来ちゃいましたね。
時間配分難しい!
頑張って♡
マジどうしよう…。取り敢えずダリアとの時間はマストで作らないと。
順番が大切。
夜空を見上げて又露天風呂。
満天の星空は何も答えてはくれないけれど。吸い込まれそうな程輝いて希望に満ち溢れていた。
深海から地上を目指した過去の自分。グズルードもこうして愛する嫁たちと星を眺めていたに違いない。
四方を裸で密着されていたかは別として。
残りの3人はソプランに張り付いていた。
隊員とレイルとシュルツ、ファフレイスを集め朝食後の打ち合わせ。
今日もフィーネから。
「皆様お疲れ様です。あれから3日が経ちペリーニャに異変は起きず。やっと昨日安眠が叶いました。
正直まだ眠いです。
城への問い合わせ。ここへ殺到したお手紙。邸外の抗議デモ隊は全てペリーニャ本人が出向きご返信。
そんな物は個人の自由だ!と悉くを粉砕。騒ぎは地方を除き直に収まるでしょう。
さて、置き忘れてしまった本題。
年末まで何をしましょうか問題に付いての討議に入りたいと思います。
まず1案。来年予定だったオーナルディアの迷宮探索。
ゴーレムなんて無視。転移プレートの原形が出るクワッドサイレス迷宮と。自武装集めの木札が出ると思われるチコトリマ迷宮の重点周回。
付随としてボルトイエガルやキリーの続報が舞い込む可能性が有ります。
2案。兎にも角にも各地で個人訓練と南極大陸での模擬戦などの特訓コース。
ブランちゃんを装備すればペリーニャも無敵に成れるので訓練には連れて行きます。
遠征時には漏れなくアレの活動が付いて来ますが心の準備は如何に」
「飛び込みます。只…。一番最初はレイル様の御力をお借りしたいかなと」
「良かろう。本に嫌ならここへ帰れば良いじゃろ」
「そうよ。無理は禁物。私たちは何処ぞの女神とは違う。
本気で嫌がればソプランはちゃんと止めてくれるわ」
「俺は強姦魔じゃない。そこは信じてくれ」
「信じます。スターレン様が信頼を寄せる方なら安心して身を委ねられます」
「鼻血が出そうなシュルツは後2年の辛抱を。
ブランちゃんを装備すればダリアも連れ回せますが。彼女の場合未来視の方が伸びる危険が有る為遠征や訓練には連れて行きません。
当初の予定通り事務支配人として頑張って頂きます。
スタンさんとの時間を作れていないのでハーレムへの参加は先延ばし。後は本人の意思を尊重し無理強いは一切致しません。
その代わりファフレイスを連れ回す可能性は有ります。宜しいでしょうか」
「その積もりで来ているので幾らでも」
「潔し。ダリアと交代でシュルツのお喋り相手をお願いします。邸内の訓練場で2人に剣の稽古を付けるとかでも構いません。そこはお任せで」
「承知」
「続いて3案。
個人訓練を少々。オリオン北東登山口2つへの挑戦。
この場合ペリーニャとレイルの参加は何方でも。黒竜様の竜の谷登って来いや!のメンバー強化です。
しかもレイルさんはどっちでもいい、と断言されましたので登るに関しても大昔にド付き合いをした時のルートで構わんよと言う事だと推測します。そちらも踏まえてお任せします」
「うむ。先に上で酒を差し合うも良し」
「格好良い…。プレマーレでなくても惚れました」
俺も今震えたぜ。
「さて4案。
訓練少々。長めの休み少々。ダリアのお迎えとエルラダさんとライザー殿下の話し合いを遠目から見守る。
ご心配準備コース。
以上の4点。他に案が無ければこの中から。他何か」
特に無し。
「ではシュルツ、ファフレイス以外で1人2回挙手を」
投票の結果。
「1案多数で決まりました。誰でも使える転移具は魅力的でカルとプレマーレ分に加え。ファフレイス分の計3枚は欲しい所。ソプラン分も欲しいけど…そこまでは欲張り過ぎな気がします。
レイルさん分で余った転移指輪はブランちゃんへ。地上の通常転移は可能との結果。空中使用は不可。
スタンさんの唐草手袋の行き先は保留。エメラルドと2段構えで継続しても良いかも。
次点で3案でしたが1月~3月辺りが冬山本番。そちらは来年ですね。
ペリーニャの冒険者用衣装はこの後シュルツからお受け取り。無形短剣は敵味方関係無く危険なので引き続きレイルさん預かりで。
武具に関しては短剣を主体。筋力が上がれば要相談。応じた武器を握って個人訓練の方で鍛錬をと。
衣装を受け取り試着後。問題無ければ冒険者登録。聖女は過去のお話。今は自由を謳歌致しましょう」
「はい。足を引っ張るしか出来ないと思いますが付いて行けるように頑張ります。焦らずに」
「そうそう焦っちゃ駄目。どっかに飲み込まれてもブランちゃんを信じて。
本日午後から明日に掛け。アッテンハイムで収集した各ゴッズと取り巻き収集品の鑑定をスフィンスラーで行い。
その間にクワンティーでディアオーナの宿を取ります。遠征出発時期は返答次第にて。
鑑定会にシュルツとファフレイスを連れて行けるかは…お叱り覚悟で私が聞いてみます。あんまし期待しないでね」
「ん~。やはり私も一緒にお願いをします」
「一緒に行こうか」
「はい!」
「冒険者登録はスタンさん。しっかりエスコートとデモ隊を転がして下さい」
「怪我させないように配慮をします」
「その他のメンバーは昼まで自由。昼食もここならお早めに。昼食明け集まり次第午後出発です」
本棟の水竜像へ挨拶を捧げロロシュ邸を出発。
全ての視線を集めながらの手繋ぎデート。一部にデモ隊。
「パンツルックは初めて?」
「恐らく。記憶に無いです。全くスースーしないのも」
「ふむふむどっちもお似合いで」
「いえいえどうもです」
「視線は気にせずお昼どっかで食べる?ギルド登録直ぐ終わるし」
「ん~。んん~。では外で。独り占め出来る時間も少ないですし。お店はお任せで」
「試されるねぇ」
「試しますよぉ」
他愛ない話で少し笑い合う。
「所で様付けは止めない?」
「え~それはまだちょっと。スタン様もセティ様もフィーネ様の前では使えませんし。他には何も浮かびません」
女子たちの中で取り決めは良く解らない。線引きは何処だろう?
「それは諦めるか。じゃあペリーニャも長いし…何か愛称考えるか。何か食べながら」
「それは名案です」
無事に登録出来た。がリリスは早めの産休に入って不在だとムルシュから聞いた。
「半年会わないと変わるなぁ。マリーシャは?」
「早くて来月上旬らしい。丸で実感が湧かないが男親と言うのはこうなのかな。との毎日で先輩のゴンザから情報収集中だ」
「成程ぉ」
「影ながら祝福を。はまだ早そうで」
「元聖女様からの祝福なら大歓迎だ。何時でも。そして伝えて置こう」
「はい」
「会いに行けないけどメルフィスも男の子出産したって聞いたし。年明け辺りはお祝い宴会だな」
「気が早いが楽しみに」
受付脇でそんな世間話をしてギルドを出た。
選んだ店はランチタイムのトワイライト。
勿論2人切りの特別室。
「昼間の空もいいもんだ」
「綺麗な青空。薄い白雲が海の波のよう」
2人並んで窓から空を見上げて。
「この時間のここは初めてだから他の皆には内緒だぞ」
「それは無理です。共有せねば怒られます」
「無理だったかぁ…」
定番コース化されそうな予感。
私が黙って居られません。
そっちもかよ…。俺の個別演出どうすりゃいいの?
存じません。お邪魔しました。
困った嫁たちだ。
適当なランチパスタメニューを注文して届けられる迄はずっと口吻を交した。
頼んだ物がペペロンチーノとカルボナーラだったりする。
詰りはそゆこと。
「愛称何にしよう」
「難しいですねぇ」
「あんまし出し過ぎると魅力が半減するし」
「はい。それは私も同意です」
「良し決め打ち。ロナ、で」
「ロナ…ですか」
彼女の瞳が輝き。もっと吸い込まれそう…。
「不満?」「いえ…。何故か今、懐かしいと感じました」
「不思議だな。パッと浮かんだだけなのに」
「ロナと呼ばれて私も浮かびました。セラ、と…」
そう呼ばれて俺も何故か切なく胸が痛んだ。
「ロナとセラか。悪くない。これにしよう」
「はい。これだけはロイド様を除き。二人切りの秘密です」
「流石にこれは黙ってくれるだろ。自分だってそうなんだしさ。じゃなければお仕置きする」
な…何をされるのですか…。
口を閉ざしなさい。
これだけは必ず隠します…。
宜しい。
昼過ぎまでゆったりデザートと紅茶を楽しみ。
2人切りの愛称を呼び合いながら。
--------------
何とか嫁の土下座で外出許可をもぎ取れたらしいシュルツたちと共にスフィンスラー14層へ。
迷宮自体が初めてのペリーニャが。
「ここが迷宮…。そして何故かお風呂?」
「お風呂は自分たち用とペッツが何時でも入れるように置いたんだ。汗とか装備品の泥とか一気に落としてくれる虹玉の泉って道具で湯張り」
「普通は無いですよね?」
「有る訳が無い。そしてこれが」
風呂の近くにコテージドン。
「我らがピーカー君と内装はシュルツが整えた旅の必需品のコテージです」
「おぉ~。最早コテージではないですね。二階建てならロッジです」
「やっぱそうなるよねぇ」
初見のファフレイスにもちょい自慢。
「こんな建物とか大きな船が余裕で入るんだぜこのシュルツのバッグ。何処の世界にも無いだろ」
「いやぁ無いですね。初めてです。英雄を超える才女と呼ばれるのも納得です」
「照れますぅ。止めて下さいぃ」
ファフレイスの方をポンポン叩き照れ隠しをするシュルツが一段と可愛かった。
コテージ前で皆を振り返り。
「皆。ここまで来て置いて何だけど。途轍もなく嫌な予感が湧いて来た」
「…嫌な予感って?」
皆騒然。
「あの執念深いストーカー淫乱女神がこのままで終わる訳が無い。
ゴッズ本体より取り巻き。その中に多分鑑定不能品が紛れてる」
「あ…スタンさん用の罠?」
「そう。あそこまで嫌われて。尚且つグズルードの素性を知った俺に対し。それでも杖を掴むなと抵抗を見せた。
シュルツの眼鏡。ペリーニャの真贋の瞳。それすら欺く何かだと思う。
不能品じゃなくても。表層は使える道具だとか。
フィーネさん。次に俺が告げる提案とは何でしょう」
顔を両手で覆い。
「今回のドロップ。全部破棄した方が良い」
「正解!クワンが討伐したデビルイールとビッグベアも含めて全部。
どうしようレイル。俺めっちゃ怖い。格好悪くて申し訳無いけど」
「破棄しかないじゃないそんなの…」
「有り難う。俺先に帰って防音室籠る。コテージは誰か回収宜しく」
「解った。気を付けて。全部溶かして燃やして砕いて散りも残さず消し飛ばします!」
震える手で珈琲を立て。何とか防音室まで運び入れた。
椅子に座っても身体中が震え。
「まだ収まらねえ…。怖えよ」
「ごめん。私が指摘しなきゃいけなかった」
「いいよ大丈夫。俺の油断だ。完全に」
熱々の珈琲を飲み。やっと落ち着いた。
「ふぅー。危なかった」
「リラックス時間。継続するべきね」
「まだ何か隠れてるな。俺の記憶の中に…。ガンターネと早めに会うべきか否か。悩むなぁ」
「今のままじゃ杖は使え無い。別の何かが見付からない限り3年後の新たな敵の先手を取るのは厳しそうね」
「あぁ…それそれ。頭痛いぜピーカー君。折角のんびり旅が出来ると思ったのに」
「ヒントは幾つか有ります。世界樹の木片。五cm角。プレマーレさん専用の記憶復元の冠。キリータルニア王都内に隠された記憶複製器。レイル様が預かっている中上級復元器と消去器。
これらを繋いで行けばそれ程遠くは無いのかと」
「泣きそうです…。別の意味で」
「私も…。出ないけど」
「メモしよ今の。ピーカー君もう1回お願い」
「はい!」
しっかりメモの後。空のカップとポットを流し台の水桶に浸し。1人でダイニングの指定席に座る午後。
「何か作ろうか。勝手に作ると怒られるのか?」
「怒りはしないわよ。文句は言っても」
「最近は三人に成って仕事の奪い合いですから」
軽く笑い。
「傍に居てくれるだけで俺は幸せなのに…」
「そこは男女の違いね」
「家の主人は好きにすれば良いと思います」
「とは言えエロい店に遊びに出てしまったんじゃ他の人からも批判されるし。これも大切な1人の時間だと好きな物を作ります」
「モテる色男は辛いわね」
「ですねぇ」
困ったもんだ。
「日本時代に好きだった物は再現済み。粉物とかをアレンジする…のは簡単過ぎる。
筑前煮や甘露煮はフィーネが御節で作る…筑前煮は俺やると怒られるな」
「懐かし。美味しそう」
「難しいですね。実際」
「ラフドッグで適当に魚介買って考えるか。そろそろ蟹が解禁された頃だし」
「あぁ良いわねぇ。人間に戻ったらリクエストしても?」
「どうぞどうぞ。フィーネもロイドも喜ぶさ」
席を立ち1人で出歩く一時。
--------------
14層のコテージ内。スタンさん以外のメンバーで緊急会議中。
「えー皆様。不測の事態とは真にこの事。12層を選んで良かったと思わずには居られず。
只単純にぶっ壊せば良いのではないかと。慎重に行こうとのアローマの言葉を無視し。
これまで散々私の行動を見られていたのも忘れ。スタンさんが正しい解体手順を判別出来るシュルツとペリーニャを態々残して帰ったのも忘れ…。
ハンマーでぺったんこにした所…。とんでもない化け物を12層に生み出してしまいました。
どうか皆様。この事はスタンさんには内緒にして下さい!」
席の後ろで皆に土下座。
「どうして無視をするのですかフィーネ様」
「お嬢…。副隊長としての自覚と責任は何処行ったんだ」
「御免為さい!怪我人が出なかったのは単なる幸運。猛省します!」
「困った子ですねフィーネは。今スターレンは…ラフドッグへ食材を買いに出掛けた様子。夕食までまだ時間は有ります。何とか倒し切る方法を考えましょう。
ほら席に座って」
「有り難う御座います!」
席に座り直し。
「一瞬の出来事で未確認部が多いですが。
解体中の他の道具を喰い始めた多様性。最早何の攻撃が飛び出すのか想像も出来ません。
シュルツとペリーニャはここで待機。ファフレイスは屋外で武装展開した後に2人の護衛。そこまでは確定。
ブランちゃんを本層入口側に向かって防壁にするのも確定とし。何か打開策は無いでしょうか。
苛々最高潮のレイルさん」
「夕時には帰る。自分で考えよ!」
「お怒りはご尤もです。思慮不足でした。でもどうしたら良いのか全く浮かばない…無い?無形短剣!」
「やっとかえ。お主以外皆が一番に浮かんだぞ」
「大変申し訳無い。また私だけなのは何時もの事。
シュルツのジト目が胸の奥まで突き刺さっているのでどうかご勘弁を。
造形は真っ黒いスライム。一見ブランちゃんと対極を為す存在かと思いきや。あのクソ女神は眷属作成権限をレイルさんに破壊されていた事に因り。無核ではない魔核持ちであると推測。
特殊性はどうあれ中身は最上位のスライムと同一。
隊のメンバーとレイルさんで攻撃を分散。
ナーディ騎乗のアローマとソプランは外周から遠距離。
反射盾は必須。近接攻撃沸きに備え新長剣を装備。
グーニャは飛翔無しでダメスとセット。連携方法は任意で回避の為の飛翔は勿論可。配置はアローマペアとの対極で同じく遠距離。
シュピナードのみ遊撃近接で地上撹乱。
他は中近距離と最高武装で中空飛翔。飛翔組を遠距離二極以外の全方位へ布陣。
敵の攻撃を分散しつつ誘導。頭上をこじ開け神格クワンティが中心に向け一点突破。
外装が開いた所へアイアンロック打倒経験を持つプレマーレが無形短剣装備で飛び込み魔核を破壊。
以上が私の考案する撃破プランです」
「まあ良いじゃろ。撹乱を継続すればチャンスは一度限りではない。プレマーレが酸に焼かれて失敗したなら飛翔の誰かと交代。回収の木札を持たせよ。短剣とセットで持ち回りじゃ」
「有り難う御座います。木札を1枚預かって置いてホント良かったです。
では参ります。謎の黒スライム撃破へと!」
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食材を買って帰ってもまだ誰も居ない?
「あれ?やっぱ何か出たのか。それとも判定が難しいのかな?」
「みたいね」
「慎重に解体しているのでしょう」
「ロイドから何も来てないし、そうかも」
実際は真逆の事が起きているとは露知らず。
冷凍の蟹足剥き身ポーションを自然解凍。
大変立派な大海老の頭と背わたを外して下処理。
頭は味噌汁の出し行き。
人数分の蟹の胴を前後で縦割り。解凍を待ち蟹味噌と身を解した物を下味付けてホワイトソースで和え。ピザ用チーズを載せ半々オーブンへIN。
人参、玉葱、ピーマンと微塵切り。野菜総同量の豚挽肉をご用意。
ジェイカーにターメリック、ガラムマサラ、ガラハイドの実を少々。クミンなどの香草と香辛料を加えて本格カレー粉を大量に作成。
刻んだ野菜からリゼルオイルで炒め。挽肉投入後に下味とカレー粉を投入。本格ドライカレーの出来上がり。
オーブンの中を後半戦へ。
炊飯器を起動後に良ーく水気を切った海老と蟹足に衣を付けて揚げ揚げフライに。
オーブンが終わる頃から海老の頭と殻で出汁を取り。灰汁を綺麗に取り除けたら頭と殻を取出しジェイカーへ。
米粉と塩少々を加え煎餅状に並べオーブン行き。
海老出汁の煮汁に豆腐、若芽、長葱。仕上げに大豆味噌を溶いてちょっとリッチなお味噌汁完成。
煎餅を裏返しに更に焼き入れ。
デザートのオレンジとグレープフルーツの爽やか寒天ゼリーを作成した上冷蔵庫IN。最後の最後で作り置きの芋羊羹を添えまして全ての工程を終了。
揚げ物と蟹甲羅グラタンを保温器へ。ドライカレーも保温器へ納め。味噌汁は出す前に再加熱と。
タルタルソースとスライストマトをレタスの上に乗せて。
「出来たぜ!1人でも順序良く遣れば出来るもんだな」
「遣り過ぎじゃない?」
「僕もそんな気が…」
「敵前逃亡した俺からの謝罪と感謝の気持ちだよ。責めてこれ位はしないと…。でも遅いな」
「遅いわね」
「遅過ぎ…ますね」
「レタス敷き大皿と取り皿並べて本でも読んで気長に待ちますかね」
「珈琲でも飲んで」
「リラックスを」
……
珈琲を飲み始めて30分後。虹玉風呂に入った隊員と入ってないシュルツたちがご帰還。
「お疲れ~。そんな苦戦した?」
「お疲れ様です。兎に角大変だった…。て何あの豪勢な料理の数々は?」
フィーネがキッチン奥の料理を見て静止した。
「そりゃ逃亡した俺からのお詫びとお礼だよ。久々に全力出した」
「…」
無言に成ると俺の隣に来て土下座?
「どした?」
「私が…。短絡的なハンマー破壊を試み。異常種のスライムを発現させてしまいました」
「あらま」
「あーあ」
「何となく…」
「しゃーない。ペリーニャを救った件と綺麗に相殺だな。
ペリーニャとレイルがそれで許してくれるなら」
「私は初めからその感覚で居りました」
「これも経験じゃの。それより早う食べようぞ」
「んじゃこの失敗はお終い。ペリーニャとシュルツ配膳手伝って」
「「はい!」」
「私がやる」
「フィーネは駄目。俺予想10割確率でドライカレー全部床に落とす。大人しく俺の隣に座って」
「はい…。後で反省文を提出します…」
食事中も食後も謎の黒スライムとの激戦模様の話で盛り上がり愉快な団欒を過ごした。
これにて善き日。
--------------
それから4日後にディアオーナ行きが決定。
その間2日。みっちり個人訓練主にペリーニャの育成。
負荷バンドを駆使し格段に身体能力が上昇。引き摺られて治癒能力まで上昇。
フィーネが魔族2人を。聖属性寄りのペリーニャが人間やロイドをなど住み分けと戦術幅強化にも繋がった。
バンドと竜血剤を手に取り唸るペリーニャ。
「これは卑怯ですね。数ヶ月、下手をすれば一年分の鍛錬を圧縮してしまえるとは。
ゼノン隊があっさり負ける訳です」
「個人の今の限界も有るけどね。日常生活でも皆でこっそり使い回してたのさ。その積み重ねの結果。後消音の地下足袋とか男はそれぞれ。女子は洗って使い回すとか」
「地下足袋使ってみたいですフィーネ様」
「それがねぇ。擦り切れて踵に穴が空いて使え無くなっちゃったの女子分全部。同時期にだから多分使用回数が決まってたのかも。シュルツでも直せなかった」
「そうでしたか…。残念」
「今度ルーナ両国遊びに行った時聞いてみるね」
「はい」
「男分ももう駄目になったな」
「あぁ。普通使用で無理しても効果はさっぱり」
「奥が深いですね。単なる靴下でも」
ディアオーナへ移動後。緊張の一夜明けの本音の早朝お風呂場トーク。
恥ずかしそうにするペリーニャにフィーネが直球。
「どうだった?もし嫌な気持ちとか。心が傷付いたのなら一旦自宅へ帰るとかでも」
「いいえ。それがイメージしていたのとは全く逆で。
ソプラン様との初めては緊張と恥ずかしさは有りましたが肩に触れられただけで安らいで不安が消えて。
スターレン様に対する感情が揺らいでしまうかもと怖くも感じていましたが全くそれは無く。寧ろ強まる程に。
スターレン様には純粋な愛。ソプラン様には友愛?のような感情が芽生えて。
フィーネ様とロイド様以外の同性の方と肌を重ねても違和感が無くとても幸せを感じられました。
凄く心地良くて。気持ち良くて得した気分です」
素直な感想に人型全員顔真っ赤。
「良かった。私たちもそう。スタンさんへの愛情が壊れるのかと考えてた。けど一度もその感情はブレないの。
ペリーニャと同じ強く成るばかりで。勿論ソプランが大好きなのは確かな気持ち。でも信頼感や安心感は強く成ってもそれ以上には決して成らない。アローマの方がハッキリ愛してるって言える位。
ホント不思議。今でも」
「ストレートは恥ずかしいですフィーネ様…」
「本音トークだもん」
「これもレイルの計算の内?」
「いや。魔族の間でもこの様な事は起こらぬ。人間よりも個体繁殖性が強く。雄なら他の雄を殺してでも排除する種族が主流じゃ。例外的な者は人間と同等レベル。
この様な形にしたのは妾じゃが。最初の時以来魅了など一度も使わず中身が一切壊れないのは。フィーネと同じく不思議じゃな」
「姐さん。そりゃ俺が異常だって言ってるようなもんだぞ」
「そ、そんな事はないのじゃ。只初めてじゃと…」
「丁度ピッタリな言葉がペリーニャ嬢から出たから聞くがマーレ嬢。本音はどっちなんだ。俺かスターレンどっちが友愛なんだ。俺はどっちの感情で接すればいいのか教えてくれよ」
注目を浴びるプレマーレは顎を湯船に沈めながら。
「どっちも、です…」
「ん?」
「何方か、ではなく。同じ位に二人の子供が欲しいと考えている自分が居ます。最初から今も」
「そっちかえ。早う言わんか」
「元人間の感情にも今の蜥蜴種にも無い感情だったので悩んでいました…」
「何だ両方かよ」
「欲張りコースだったのか」
「はい…」
道理で悩む訳だ。
「複雑…。最初の愛人設定通り、もしスタンさんの子供が先に出来たら。外から見ると隊員アローマ以外は押し倒した事になる?いいのかな?あれ?」
「それはその時に考えましょう。逆上せる前に朝食です」
「そうね。今考えても無理。上がりましょ」
朝食後のミーティング。
「城からの返信が届きましたので今後の予定も考えて行きます。
ペリーニャが無事一山を越えられ。プレマーレの本音が解りました。なので早速今夜から弾けます。なんて無茶はせずペリーニャの心境に合わせ。穏やかに親睦を深めて参ります。
最初の迷宮。チコトリマ。次の組。予想交代は3日後。
次のクワッドサイレス迷宮。予想交代は4日後。連続はしていますが予約制なのでチコトリマが仮に延びても問題は有りません。
以降何方も踏破後に次の組の後ろへと入ります。
私たちで踏破したイルギング含め未だ後続隊は未踏破。
遠慮無く初回を攫います。
今月内のイベントは私かアローマがバインカレお婆ちゃんに道具を貰いに行く位で大きな物は有りません。
来月に入るとライザー殿下のエルラダさんへの謝罪イベントが発生する予定。早期に動きが有ればシュルツからメールが飛んで来ます。
後半年内でレイルさん主催のラメル君の成人祝い。
従者ら含め私たちオンリーの小規模。
この宿はぶち抜き3週間で今回からは料金前払いで振込済です。
私たちなら多分2回も入れば目標を達成出来る気がします。3回目をトライするかは2回目の結果で要相談。
早めに終われば帰国して冬山登山準備に入ります。只準備と言ってもマッハリアのカウテリアで本格的な登山用品を買い揃えるだけです。
スタンさん。これから海の上は寒くなる時期ですが来月組込ますか?例の秘密を」
皆の期待する目が…。
「ん~。ポイントを変えて開催しましょう。
ここが終わった後で。
場所は東大陸東の遠洋。前にロイドと行った赤道直下なら季節が反転してる筈。
船内は温調利いてても。うっかり外出てふと我に返ったら嫌じゃない?」
全員横へ首を振った。
「絶対に嫌です。そちらの方向で。
サンガちゃんの迷路改造も兼ねて。少し遊び最果て町から出発と言う流れで参ります。多少絡まれても振り切る所存です。
ペリーニャもしかしたらサンガちゃん触れるのかな」
「どうだろ」
「触れない、のですか?」
世界樹の木霊で木霊付きと勇者しか触れないと説明。
「ほぉその様な存在が。普通にお会いしたいです」
「ならちょっと長めに遊びましょう。
ここの迷宮待ちの空き時間どうする?レイルさんとプレマーレとアローマの個別デート断行しちゃうとか。
ルーナ両国だけじゃ中々時間作れないし」
「気が利くように成ったのぉ」
「フィーネ様…」
「是非とも」
「そやね。やろう。余裕が有る内に。
町は女神教信者が居るから食事と少し。人気の無い場所をクワンに7箇所探して貰ってお外観光。
またソプランとの総当たりで。人目が無いからってお痛は無しよと」
「当然です。危険なのは私とプレマーレ位かな」
「クワン。7箇所以上景色の良い場所。上空からでも神域からでも。
それが終われば地図に書き起こして2枚。今日中に俺とソプランで下見。各町近辺にも足跡を付ける。
明日以降でソプランペアが転移不能ペアならそっちの運搬も頼める?」
「楽勝です!ペッツは南極で遊ばせて頃合いを見て飛びます。取込中だったり夕方までその場に留まるなら空に向かって手を振って下さいね」
「おけ」
「気配りも出来る鳩神様や。
クワンが調査してる間にペア順決めよう。基本ルールはルーナの時と同じで被らないように」
「はい!」
ペア順も前回に似た感じにペリーニャが加わった。
私め。
レイル、プレマーレ、アローマ、ペリーニャ、
ロイド、フィーネ、男物買わせろ日、余力は初めから。
ソプラン。
プレマーレ、レイル、ロイド、フィーネ、
ペリーニャ、アローマ、以下同文。
人数が増える程自分たちの買い物が遠退く男2人。
ソプランは半分巻き添え。
出掛けなかったクワンが提示してくれたのは以下。
本当に誰も居ない北東海岸岸壁。
本当に誰も居ないって北部海岸岩場の切れ目。
少し位良いじゃない河口堰の谷間。
廃棄された北部迷宮。淡く青く輝く岩肌がロマンチック。
火山麓の無人樹海。
火山麓の無人丘隆地帯。
火山北東部の無人天然温泉(狭く適温。遮蔽物有り)
火山南の無人高台(奥に清潔な平場在り)
王都東部の廃棄された吊り橋ドキドキコース。
その下の隠れる場所には困らない無人渓谷。
「クワン…。君は、俺たちを試しているのかい?」
「数日前から神域と肉眼で調査済。神と成ってしまったあたしが空から四人を見守ります。これ以上何が必要なのか何が不安なのか。有るなら教えて下さい」
「…」
人型全員沈黙。
「スタンさん…。私はもう無理。絶対我慢出来ない」
あのソプランが助け船?
「俺が外で手を出すのは姐さんと嫁とマーレ嬢だけと最初から決めてる。安心しろ」
「それは不公平だから女性側の裁量に判断を委ねるとしても…」
「た、偶には良いじゃろ」
他の女性陣もそのモードの目をして。
「まあいっか。俺もその思考に成っちゃったし。トイレも上級品必要分差し替えたし。町に寄ると面倒だし。
朝出る前にお昼買ってお出掛けしよう。温泉だけは被らないように注意して。
とりま俺だけ足跡付けて来ます。お外解禁で」
女性陣が小さくガッツポーズ。
ペリーニャの順応力が高すぎる…。
--------------
夜も昼間も熱い日々を過ごして3日後。
城の交代予想通りに迷宮の順番が回って来た。
次のクワッドサイレスも空いたそうで何とか本日中にチコトリマを踏破したい所。
臭い消しの材料も出る植物系天然迷宮。
全22層+1の23層。しかし誰も新迷宮主に見向きもしないので主の詳細は謎。
ひょっとしたらまだ先。若しくは世界樹に繋がる何かが潜んでいる可能性は有る。
記憶を呼び戻す手掛かりと成るのか否か。真実は如何に。
ブランちゃん装備で無敵ペリーニャを後衛。従者2人と同じに彼女のスピードに合せて進んだ。
押し寄せる花や花片。巻き付く蔦や根や茎。
立ち塞がる樹木。途中で通路を変える怪樹。
色取り取りの花に彩られた迷宮。そうここは天然の迷路迷宮だった。
上層は普通の木材と少し変わった薬草が出るだけ。
途中から趣旨が変わり。真実の灯火を使わず純粋に迷路で遊び倒した。
分断されても出口は1つ。先陣を切って魔物を掃除するのはグーニャとダメスコンビ。クワンは監視要員。
人型は手を取り合い花や樹木を掻き分け笑い合う。
完全なアトラクションと化した。
中層では臭い消しの材料が出始め。下層では上質木材が大量に出てピーカー君大喜び。
その木材の中に今回の目的であるロスト装備回収木札が3枚発見され。相談せずとももう1周が確定。
あっという間に23層。ここまで木札以外特殊素材はハーブ系オンリー。人気が高い訳だと皆が納得。
否しかし。22層出口辺りから漂うは強烈な腐敗臭。
「くっさ。もう行かなくても相手が解る」
「ラフレシア系だね」
皆が頷く。
「昔の俺なら喜んで飛び込んだだろうけど。もう1度入るのは確定だからどうすっかね」
「皆はどう思う?私は行ってみたい」
フィーネが後ろを振り返る。
「じゃのぉ。しかしペリーニャ以外衣服に臭いが着くしの」
「正直悩みますね」
「私だけ狡をしてしまい…」
レイルとロイドのお悩みに対しアローマは腕組み。
「私見を述べても良いなら…」
皆が注目。
「どうぞ私の愛する右腕アローマさん!」
「その言い回しは少々意味合いが…。私の意見としては二十三に入る前にここから。グーニャとスターレン様のルーナで火炎放射を打ち込んでしまえば良いと。
ルーナの出番が最近全く無いですし。何かドロップが出るとしても上級品なら消失はしません。何かの痕跡が残ればまた次回にしては如何かと」
「アローマにしては大胆」
「おー右腕あっつ。待てよ今出すから」
久々登場のルーナ。
「仕事を与えてくれて感謝するぞアローマ」
「いえいえ」
反対意見は無く即実行。
2匹並んで同体格に拡大。出力は圧倒的にルーナが上。
先手グーニャが存分に放出。後追いで大火力を23層に向けて注ぎ込んだ。
離れた場所で談笑しながら待つ事10分。
「臭いのは完全に消えた。けど」
「下が溶岩地帯に?」
「そこまでではない。二十三よりも更に下の層が在った様子でそちらに流れたな」
「へぇ24か。それで時間が掛かったんだ」
「うむ」
「我輩ではそこまでは解らないニャ。課題が一つ増えましたニャン…」
「いいじゃん。火力調整や効果範囲を掴む訓練にも成るし無駄打ちも減らせる。噴射じゃなくて火球弾にしてみるとかさ」
「火球弾…。その手が有ったニャ!ありがとニャ、スターレン様!」
クワンがジト目。
「またあたしの教育ネタが消えましたよ?自分で気付くのを待ってたのに」
「ごめん…」
カタリデとピーカー君も。
「あらあら」「まあまあ」
「これ以上は言わない。では下の確認に」
「参りましょう!」
黒炭だらけの23層中央部。そこに転がっていたのは。
大きな地魔石と1つ茨冠。
消臭の冠。
汚臭を好きな香りに変更可能。被れば身体。飾れば芳香剤代わりに。
変則使用:乱された因子を整えられる
「良いなこれ。俺の過去を探るのに使えそう」
「やったね。グーニャとルーナの手柄だからそれはスタンさんの物でいいよね。下も含めて」
振り返る皆が満場一致で了承。
「では有り難く」
手掛かりはやはり存在した。
同じく黒炭塗れの24層。最早何が居たのかも不明。
中央付近に転がる炭化した人型遺体が1つ。詳細は知りたくないので金角を押し当て成仏させた。
残ったドロップは。聖風炎と闇風炎の魔石2種。
それと小さな瓶。中身は半透明。
「吸収系の迷宮主が居た模様」
「ルーナ分が吸収し切れず、てとこね」
調整剤の秘薬。
数多の事象を調整する薬。並列平行の物を縦列直列。
統合。選出。初期位置固定。使い方は千差万別。
飲用可能で同効果が見込める。しかし想像を絶する苦みが数日間舌に残る。
「これってもう…答えでは。カタリデさん」
「駄目よ。早まらないで。ハーレムに何人女の子が居たとか周りの従者は何人居たとか。それが全員消されてるならその人数分逆行してる。それを頑張って思い出して初期位置を探る。杖を使った直後にそれを飲んでグズルードの最初を導き出して固定化する。
先に飲んだら只の苦い水。苦みが持続する間は正気が保てるかも。その後は誰も保障出来ない」
「おぉ焦るとこやった」
「ありがとねフウ」
「何の。久々に役に立てた気がするわ」
迷宮を出て管理棟に完了報告。次の組の後ろを予約。
都内ギルドで討伐方法とドロップ品の報告をした。
「二十二から…焼き払った?」
「超絶臭かったから我慢出来ずに炎魔石の強制発動で下の消臭をしたんだ。だから24層の迷宮主の姿は確認してない。次で復活してたらどうしよっかなぁ」
「はぁ~やはりプラチナ勇者様はやる事が違う!お見逸れ致しました」
「それほどでも~」
照れながら帰宿。褒められてはいない。
そして焦りは禁物です!
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何もせずに寝た翌日。何もしなくても添寝の誰かは居る。
「あの…レイルさん」
「ん?おはよ。何?」
「おはよ。俺は何時に成れば1人で寝られるのでしょうか」
「知らないわ。自宅に押し掛けてもいいの?」
「今は困ります」
「だったら仕方無いじゃない。老衰でも病死でも。その時ゆっくり一人で寝られる。明日を気にせず」
「そんな先っすか…」
どうやら一生無理みたい…。
今日も元気に迷宮探索。クワッドサイレス迷宮。
19層+1。目的は転移プレートの原形道具。
初回の迷宮主を美味しく頂く予定。
主の姿は未確認。但し魔法呪詛を反射する特性持ちであるのは確定情報。
封印系迷宮ならば。俺たちがやるのは只一つ。
物理でごり押し。
飛ぼうが跳ねようが横から湧こうが地面から生えようが泣こうが叫ぼうが。
斬って削って弾いて叩いて砕いてストレス発散。何も抱えてないのに。
脳筋集団と化した俺たちは昼過ぎには19層の階層主をぶっ壊していた。
「どうしよ。早過ぎかな」
「長めの休憩を取りましょう」
「はい」
層内出口付近に休憩所を設けてドロップ品を振り返る。
目的の床材模様替えのプレートが2枚。他で使えそうのは進行ルート変更誘導指示器。
「目標半分。ここももう1回確定」
「次で2枚出てくれたらねぇ」
「指示器をサンガの迷路に使ってみる?」
「そんな鬼仕様にしたら迷子に成ったまま出られないよ。スタンさんの意地悪」
「遣り過ぎか」
「どっか別場所で自分たちの競技用で使ってみりゃいんじゃね?難易度馬鹿みたいに上がるだろ」
「暇潰しの迷路なら王都壁外でもいいな。敵の目を分散させる意味でも」
ロイドの提案。
「遊び場も良いですが。
自走車専用道に使うとか。専用道自体も技工士の杖で造れそうですし。異世界日本のような高速道を街道の真上に設置するだとか」
「あ!ナイスロイド。それだ。有効利用方法有ったじゃん」
「ド忘れね。私も」
「来年の大きな案件出来ましたねフィーネさん」
「ですねぇスタンさん。大項目に加えます」
「レイル。その時杖貸して」
「うむ。元々クワンティの物じゃしの。妾も見たい」
結局全員集まるんでしょうと。来年行事に期待が膨らんだ所で休憩終了。
20層で出現した迷宮主?
ミラーリングメフェスト。
鏡張り迷路の奥に潜む1体の人形。遠距離攻撃、遠距離魔法攻撃倍増反射。倍増した攻撃の更に倍化した物を次の攻撃手段として所持。
近接攻撃でも鏡に映れば複製される。攻撃を続ければ続ける程メフェストの手段が増加する。
本体肉薄まで攻撃を温存し一気に殲滅がお勧め。
「ほぉ中々面白い難敵。フィーネさんアローマさん。看破カフスでバッチリ本体が丸見えで御座います。
さあ如何しましょうか」
「また私とプレマーレで拳で殴るとか」
「賛成です!」
「私の意見としましては。ここも炎で満たしては芸が有りません。そこでフィーネ様のポセラの槍で層内を水没。
更に避雷の杖・真打ちで超高電流を流し感電死をさせると言う案を推したいと考えます。
奥の側壁には隙間が多く。伏兵増援が予測され。一網打尽に地獄行きが見込まれます。
若しくは。複製困難な無形短剣をペリーニャ様が装備。単騎撃破も可能。増援が来ても攻撃性は変わらず無防備。
ペリーニャ様は一体一体刺して行くだけです。
見えている本体は飛翔種ではなく。奥の隙間も地上床から割れている事を踏まえると初期のメフェストは飛べないとの見立てが濃厚。飛翔して攻撃すれば複製されます。
加えて。ブランちゃんを装備した誰かが鏡に突っ込み。全ての鏡を無に帰し。本体を近接瞬時攻撃で捻じ伏せる。
鏡さえ封じてしまえば複製は何もされません」
「フィーネさん。プレマーレ。何か言う事は?」
「私が浅はかでした…」
「恥ずかしい…」
2人が顔を覆って蹲った。
「ペリーニャ。鏡割りからやってみる?時間操作は使わずに。単独撃破なら多分中級に上がれると思う。経験不足は後から補えばおーけー」
「はい!遣ります。そこまで教えて頂いて出来ないなどとは言えません。
レイル様。短剣を」
「うむ。皆で見物してやろう」
ペリーニャが鏡に正面から体当たりを開始。
ガッシャンガッシャン煩い中。
「フィーネ。ギルド報告の言い訳に使うからリフレクトガーの鱗限界まで重ね合成して」
「はい!反射には反射をね。そろそろやってみたいと思ってました。邪魔だったし。何枚行けるかな~」
片隅にしゃがみ込み白銀鱗を重ね掛け。
全ての鏡が砕け散り。露わになる怯えるメフェスト。
初期は人型ゴーレム。素の状態では何も持っていない為に震えるしか術は無く。
その胸に無形短剣が刺し込まれフィニッシュ。単なる茶色い盛り砂と化した。
続々と壁から湧いたゴーレムたちも逃げられず。その場を動けず。只呆然と無形短剣を受け入れた。
敵が哀れでシュールなペリーニャの初陣と成りました。
合成限界は10枚。計15枚の鱗に集約されアローマの反射盾と同性能。透明化されない銀鱗の出来上がり。
「そのまま盾にも加工して全身個別防具にも。角を付ければ武器にも成るな。ありがとフィーネ」
「いえこちらこそ。日々勉強の毎日です。近々アローマに弟子入りする所存です!」
「焦らず頑張れ」
「はい!取り敢えず1枚簡易装具を付けました」
左腕に着けて振ってみても尚軽い。合成しても鱗の重量は1枚のまま。性能と色が変わった以外超軽量盾。
そうこうしている間にペリーニャが最後の1体を盛り砂に変え完全勝利を収め。
「遣りましたー」
全身で喜びを表現していた。
剣を鞘へ戻し。拍手で出迎える俺たちの方へと駆け出すペリーニャを抱き留め。
「ドロップ品の確認を。置いて帰ったら冒険者とは呼べないぞ」
「あ、これはいけません。ご褒美が頂けるのではとすっかり忘れていました」
「ご褒美は個別の時にな」
「はい」
短剣をレイルに返した彼女の手を引きドロップ探索。
それは最初ではなく最後の盛り砂の中から発見された。
鏡張りの砂塵。
人工迷路内や屋内壁などに解析不能な鏡を自由に張れる砂瓶。枯渇まで作成可。作成者が設置物を解除すると瓶の中へと帰還する。
「おーこれは。ペリーニャ作成の迷路の難易度がアホ程上がるぞ」
「今から腕が鳴ります」
微少する彼女が恐ろしい。
後ろの皆がうわぁと頭を抱えた。
他は地魔石以外特に無し。隠し通路も無さそう。
時間に余裕が有ったので徒歩で上に上がった。
19層への戻り科。下りる時の景色とは一変。
千人近い黒服が待ち構えていた。
先頭の男のみ白い軍服。
「聖女様をお返し願う。勇者スターレンよ」
俺も先頭に立ち。
「名を名乗れ無礼者。その白い軍服は…ロルーゼか」
「ご明察。我はヌンタークの下に居た。女神ペリニャート様が造りし最後の眷属キエンターラ。
レイルダール様の従者はロロシュ邸内に固まっている。
それ以外を叩くだけなら三年の時を待つ迄も無い。この言葉通りにパージェント城内を血の海に変えてやる。そこから外へ。意味は理解出来るな」
あれ?座標動かしたの気付いてない?
それより3年後の敵が…もう来ちゃったんですけど?
来て…しまいましたね。何と向こうから態々。
両膝を着いて懇願。
「ま、待って欲しい。今の彼女は水竜教。もう自由の身だ。女神の狙いが俺ならばこの命を差し出せば済む事。今更他に何をする積もりだ」
「行方知れずの女神様を聖女様の身体へ再降臨させる。貴殿の魂だけ有っても意味は無い」
あれれ?輪廻の輪の効果に気付いてない?
の…様子ですね。
ペリーニャも膝を着いて懇願。
「やっと自由に成れたのに…。主が居なくとも貴方たちはそうして生きています。女神の呪縛から抜け出し自由に生きる道も有るのでは」
「女神様が女神として君臨して居なければどの道長くは持たぬ身体。精々持って五年。その間に何の自由を謳歌しろと仰るか」
「そんな物は知りません。多くの罪無き者たちの命を奪った報いだと受け止め為さい。
私は嫌です。スターレン様を。その魂すら弄ぶクソ女神をこの身に入れるなど。無理にでもと言うなら自害の道を選びます。何を以てしても」
「くっ…」
拳を震わせ。やがて解いた。
「絶対服従を解く方法は存在しない…。我らで最後。ならば女神が望む最善を尽くすのみ。
勇者よ。パージェント城の玉座で待っている。遅くならぬ内に来ると良い」
そう言い残し千人が一挙に消えた。
「レイルさん…。3年後の敵が挙ってメレディス火山に投身自殺を図りに行ってしまいました。止める術は無く。
どう判断したら?」
「こ、これはもう…。西へ行くまで遊び倒せって事じゃないかしら。ベルも言っていたのでしょ?ロルーゼは放置でも勝手に自滅するって」
「確かに…。どう思いますか。元神のカタリデさん。
鳩神のクワンさん。フィーネ経由で水竜様」
「いんじゃない。羽目を外し過ぎなければ」
「あたしはご主人様たちを守るだけです。何をどうしても」
「水竜様は…。子作りを予定通りに進めたいなら使命を果たせば良い。遊び過ぎれば遅れるだけだぞ、と」
「成程…。ま、いっか予定通り進めれば。遅くならないように気を付けて。さあ地上に戻って報告です!」
「はい!」
新事業や遣りたい事沢山有るし。そこまで暇には成らないかな。
そう言う事です。
完了報告とリトライ申請。ギルドへの報告。
夕食後の晩酌中。
「シュルツのメールでも何も起きてませんけど?確認が取れて一安心。エルラダさんの件ももう少し根回しが必要そうだとの返信。
降って湧いたこのご褒美時間。しかし只単に肉欲に溺れていては何処ぞの女神と一緒。
そうは思わないかねソプラン君」
「同意だ。俺たちは愛と友愛有ってこその人間と魔族と上位者だと思う」
男2人で例の薬を取り出した。
経験者の5人は硬直。未経験のペリーニャだけが。
「何ですか?その小瓶は」
「その答えは明日の朝に解る」
「俺たちに任せろ」
「はい…。お任せします」
お薬片手に一気飲み。
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天国から帰還した6人の美女は沈黙の朝食後に漸く口を開いた。
「私たちの意見は聞いてくれないの?スタンさんとソプランは」
「嫌なら前置きしてる間に止めてよ」
「経験者が誰も止めないなら使って良しだろ?」
「もぅ…。私たちを逆らえなくしたくせに。次は普通だと聞いてたから止めなかっただけ。
それをあんな優しく囁かれたら…一瞬で飛んじゃうよ」
4人は頷きペリーニャは俯いたまま。
「偶にはいいじゃん。俺たちも早く寝たい時も有るし。
ペリーニャが嫌だったなら使用は控えるけど」
「いえ…。まだ頭と下半身がフワフワですが素晴らしいお薬だと思います。心まで満たされ…愛が刻み込まれ。
でも頻繁に使われてしまうと人間として駄目に成りそうで怖いです」
「解りました。次こそは普通に。女性陣の総意を得てからの使用とします」
「だな。個人差付けると後で文句言い出すし」
6人は安堵の溜息。
順調に個別デートと夜の活動を経て。リトライした2つの迷宮では予定枚数に到達。チコトリマの最下層以外同じドロップが出てホクホク。
木札やプレートが足りなくなればまた来ましょと。
鏡張りの砂塵の瓶2個目もペリーニャ。誰が倒すか喧嘩に成りそう所で突撃。絶対防御を上乗せした拳で又も単独撃破を果たした為。
23層は消臭冠と空気清浄器を投入して楽勝クリア。
気になっていたチコトリマの24層の迷宮主とは。
緑のワンピースをお召しの樹木の妖精美女ドリアードさんでした。
「…よくも。よくも焼いてくれましたね。火が苦手なのを解っていながら。例え吸血姫様がお越しだとしても許し難い」
「だったら別の場所行けばいいじゃん。倒されるのが嫌なら迷宮じゃなくて地上の樹海選べば?」
「そうじゃて。妾は見ておっただけじゃ」
「私は世界樹の眷属のような者。木霊様がお戻りになり次の芽吹きが無ければここから動けないのです!」
「そんなの怒られても知らないよ」
「そうじゃ」
「他に移動方法は何か無いの?転移でいいなら外へ出せるよ?上には無人の樹海も在るし」
「…勇者様の、キスを頂けるならば。一時的な移動と固定化は可能です」
「ん?マジで?無感情や同情でいいの?」
「嫌に決まってるでしょ!気持ちを込めて!」
「初対面の精霊さんに言われてもなぁ…」
一応周りに確認。
「良いと思います。言葉交して情が湧いちゃたし。天然迷宮で無闇に倒すのは。ちょっと」
正妻と他女性陣が了承。
彼女の冷やかな腰に手を回し。
「では。今有る精一杯の気持ちを込めさせて頂きます」
「お、お願い、します…」
深緑の瞳を閉じた彼女の唇に出来る限りの友愛を注いだ。
あれ?普通の人間と変わらない?いや寧ろ、懐かしい?
何だこの感覚は…。
感情が芽生え。情熱的なキスへと変化。
彼女も何かを感じて呼応に熱が籠った。
女性陣が睨み付ける中で長時間。
唇を離して思わず出た名前。
「イグニース…」
「え…?どうしてその名を…。貴方はまさかグズルード?」
「え!?もしかして…ハーレムに居た子とか」
「あぁ…懐かしい。この姿で巡り会えるだなんて。生殖機能が無いのが悔しいです」
「えーー!!??」
俺も気持ちは一緒。
「そんな…。こんな事が」
「私は時の女神に断ち切られ。貴方は別の世界へと旅立った筈。どうしてまた此方に?」
「そのクソ女神に、連れ戻された。
当時の記憶は今は無い。復元する手掛かりは掴んだ。
でも復元しても良い物なのかも解らない。覚えているなら教えてくれないか。当時の事を」
イグニースは困った顔を浮べ。
「私は復元には反対です。それを知ってしまえばきっと…いいえ間違い無く貴方は暴走してしまう。それでもお聞きに成られますか?」
「聞きたい…。何が有ったのかを」
少し考えてから。
「解りました…。正妻様と第二妃様。彼のバッグを外した状態で全力で抑えて下さい」
「解りました。全力で」
「抑えましょう」
バッグとカタリデが離され嫁2人にサンドされた。
「私たちを信じて」
「皆が付いています」
「有り難う」
少し離れた場所から。
「今後で過去へ戻る術を見付けても。決して使わないと約束して下さい。それをすると女神の思う壺です」
「誓う。何が有っても戻らない。そんな道具は周りの仲間に破棄して貰う」
彼女は深く頷き返し。
「良いでしょう。……皆殺し、です」
心臓の鼓動が跳ね上がる。な…にを…。
「最初の貴方を…末席に居た女神の化身が操り。正妻位置に居た私を含め。第六までの妃。従者も全て」
「ん!?」
「殺させたのです。貴方自身のその手で」
奥歯が砕ける程噛み絞り。正面に居たフィーネの背中を壊れる程に抱き締めた。
臆する事無く前も背中も包み込まれる。優しさと温もりを一杯にして。
「二周目以降は恐らく出会いから潰して行ったのでしょう。過去の記憶を持った私は何度か遣り直そうと試みましたが女神に気付かれ。
出会いの前に殺されこの姿に変えられました」
「ふぅー、ふぅぅぅ」
「スタン!頑張って」
「堪えて下さい!」
「その怒りこそが狡猾な女神の狙い。まだ何か有ると思わせ道具を使わせ。激情を誘い。過去へと渡らせ。もう一度自分を再構成させる。
それに乗ってはいけません」
「ふぅー…。ごめんフィーネ。痛かっただろ」
「全然平気。この身体頑丈だから」
「ロイドもありがと」
「これ位は当然です。妻の1人として」
「誰が乗るもんか。グリドットが直ぐに使うなと忠告してくれた理由も合点が行った。
過去へ戻る術も可逆の歯車で最後。だから壊された瞬間に発狂してどっかに消えた。
杖は直ぐに破棄しよう」
「そうしよ」
「塵も残さぬように」
カタリデとピーカー君は悔しそう。
「まんまと乗せられたわぁ…あんな淫乱に」
「僕もです。記憶の手掛かりだと勘違いを…」
「振り返りは続けるよ。今の自分の見落としとスタプ時代の空白の穴埋めがまだ残ってる。
それとイグニース。オメロニアン様の行方は知らないか」
聞かれた彼女は驚き。
「記憶が抹消されたのに…そこまで辿り着くなんて。
やはり惹かれ合うのは必然なのですね。
彼女はペカトーレの海辺で恋をした。許されざる恋。
深海王時代の貴方と出会う。愛用のハープを奏で。
海鳥たちに聞かせる子守唄。
その音色に深海王は恋に落ちた。
彼は海を捨て人間に成ろうと幾度か転生。
浜辺での再会。そして七番目の妃へと招く。
深海の王妃は嫉妬に狂う。愛する夫を奪った女。
それは音楽の女神。その身体を奪い貴方を騙した。
繋がりを断とうと遙か太古へと飛ばす。
それがこの世界の時の始まり。時の女神の誕生。
今の造形は偽り。あれは中央大陸に居た神の資質を持つ町娘の身体。
辻褄合わせが凡そ千年前。カタリデ様の神格化に合わせるように違和感を消した。
悍ましい程の執念。一度貴方を諦めた振りをし。
異世界へと届け。憎き女の記憶も消去。
それから正妻位へ戻り貴方と添い遂げようとした。
しかし未完の貴方では満足出来ずに結局放逐。
以降は先程話した通りの繰り返し。詰りはオメロニアン様はこの世界の何処かの時間軸に居ます」
「…執念の塊だな」
また吐きそうに成って来た。
「貴方を愛していたのは相違無く。それが異常で。神にも匹敵する力を備えていた為にこう成った。
世界樹の枝葉の記憶を繋ぎ合わせてもこれが限度。
示される手掛かりは愛用のハープ。既に見付けたなら発見された場所の近く又は国内。手にしていのると同義。
オメロニアン様はこの今の時間軸上に居ます。
鍵を開く必要が有るのなら。もしかしたら子守唄の旋律。
お持ちでしたらお見せを」
フィーネが布を解いて手渡した。
「これです…。これに間違い有りません。
出来る限りで旋律の再現をしてみます。念の為スターレン様は耳栓を。そして何方か譜面起こしをお願いします」
「ピーカー君。俺用の耳栓頼む」
「はい!直ぐに」
「妾の出番じゃな」
レイルに続きペリーニャも挙手。
「私もお手伝いを。二年間分の修学が抜けていますがアッテンハイムでは楽器の嗜みも…。これもあの女の狙いだったようです…。
何処までも何処までも纏わり付いて」
テーブルセットをフィーネが準備。
「同時に休憩も取りましょう。私とカルで譜線を入れます」
「正しい選択です。落ち着いて座りながら」
俺だけピーカー君の耳栓をして離れ小島でポツンと読書。
直ぐに「まだです」のカンペを持ったアローマと。ソプランが常温の珈琲を水筒から差し出し。対面へ座った。
穏やかな迷宮内の無音の午後。
アローマが終わりをカンペで告げ。
耳栓を外してイグニースの前に立つ。
「人間に戻る術は有りそうか」
「恐らく無いでしょう。私も時間軸を外され過去へ飛ばされた存在。このまま人間に戻れても老衰で即死です。
偶に樹海まで遊びに来て下さい。次の芽吹きで大地へと還ります故」
「残念だ。もし若返りまで見付けたら必ず持って行くよ」
「期待しないでお待ちして居ります」
もう一度長いキスを交し。無人の樹海へ送り届けて暫しのお別れ。
管理棟で次の予約と24層の迷宮主消失の再調査をするとした。ギルドへも同様に。
帰宿した大部屋の中から全員で北部海岸へ飛び。
グーニャとルーナで古代樹の杖をお焚き上げ。
塵も残さぬ煙が空へ。俺の過去が茜の空へと吸い込まれて消えた。
感慨も無く哀愁も無い。全ては過去のお話。
-------------
12月に入り今年も師走。
2巡目の個別デート中にふと気付き。
俺たち遊んでばっかやないの!と1日訓練を挟み入れ。
スフィンスラー1層2層の連続再現で主に中級ペリーニャの経験を積んだり。
スフィンスラー迷宮残りチャレンジ回数。
1~2層…2回
3~4層…3回
5層…2回
6層…✕
7層…2回
8~9層…1回
10~17層…✕
18層以降には生涯立入禁止
プレートの改造をシュルツに依頼。序でに発動袋も。
その場でファフレイスを秘密のパーティーへ招待をすると宣言。
どうぞどうぞとシュルツが了承。略毎日ダリアと打ち合わせしているから寂しくないですよ。何なら延長されてもと快い返事を貰った。
若干緊張気味のファフレイスが超可愛かった。
オーナルディアに戻ってチコトリマ最下層の再調査。
新たに現われた迷宮主はドライエアード。
疾風と湿度を自在に操る鳥の精霊体。
レイルの存在を認識しても尚。果敢に挑んで来る獰猛な飛翔する赤茶色の軍鶏。だったのだが…。
ソラリマクワンの前に平伏した。地面に潜る勢いで。
「も、申し訳有りません!まさかこの様な狭苦しい迷宮内へ鳩神様がお越しになるとは露程も思わず…」
「良い。火で炙って焼き鳥にしたとする。想定する魔石以外のドロップ品をここへ置け。今回の討伐はそれで見逃してやる」
「ハハッ!」
すると突然自分の金属鶏冠を引き千切り。
「これは建物内。何処かに飾るだけで建物内全体の空気と湿度を最適化する鶏冠。上で出る消臭冠と併用すればお好きな香りも全域に。暖炉の横に置けば全域が暖房入。
日光を利用すれば極寒の地でも真夏気分。焼き過ぎ注意のお肌のケアは忘れずに。
他は羽毛と羽根。何れもガルーダ様の物のやや劣化品と成りまする。
それ以外は塵です。肉は食べられません」
「苦しゅうない。あたしたち以外が来た時は。その疾風と湿度変化を駆使して火炎を巻き返し。逆に広範囲で炙ってやるのだぞ。湿気を風で拡散すれば鎮火とは逆の延焼爆発効果も発揮する。試してみよ」
「ご助言有り難く!!」
末恐ろしい助言を授けて撤収した。
調査完了を管理棟とギルドへ報告して今回の迷宮探索は終了。
行き過ぎたイチャイチャお外デート2巡目が終わるまでは宿に滞在。
イグニースとも健全なイチャイチャお茶会を開催して2度目のオーナルディア行程もお終い。
ランガ&サンガ宅へお邪魔した所。
何と昼間から寝室でお取り込み中。サンガは外の迷路遊びに夢中。
今朝まで全く同じ事をしていた俺たちに文句を垂れる権利は微塵も無く。
言ってしまえば自分たちの方が不健全…。
半日丸々サンガと新作迷路作りに没頭。
ペリーニャはやはりサンガに触れる事は出来なかった。
サンガが気に入ったペリーニャ作のミラーリング迷路を残してそちらも撤収し最果て町へ移動。
-------------
ロロシュ邸からファフレイスを招いた秘密の船上パーティー3日目の朝。
「えー…。女性方に。感想を…伺うのは。大変失礼な、お話では有りますが…。次への参加を。考える為にも…
敢えて伺います。初参加のペリーニャと…。ファフレイスのご感想は、如何に」
朦朧とするペリーニャ。
「意識が…まだ…。天国から、掴めませんが…。とっても気持ちが良かった、です…。次回も、必ず参加を…、致します」
感動に震え。涙を流すファフレイス。
「この様な…天国が。存在しようとは…。夢、の中に居るようで…。痛い程…。胸と、心と、身体の奥深くまで…
皆の愛が、刻まれました。次回も、参加をお願いします」
「痛い…程?これはいけないぞ…ソプラン君。俺たちの愛で痛みを、与えてしまった…」
「駄目だな…。接する時間が…足りなくて。愛情が、上手く乗せられなかった、ようだ…」
男2人は例の薬をテーブル上に出した。
他女性6人が身を固くする中。1人知らないファフレイス。
「いや今のは…言葉の綾で。他意は…。何ですか…その青く透き通った…小瓶は」
「ファフレイスの、心の痛みが取れるまで!」
「延長する!」
秘薬を一気飲み。ファフレイスを船内個室へお姫様抱っこで連れ込み。順番に2人掛かりで俺たちなりの愛を伝えて伝えて伝え抜いた…。
4日目の朝を超えて昼下がり。
セクシーなバスローブ姿で食堂の机上に突っ伏す7人の美女を前に余裕の男2人。
「これはいいぞソプラン君。俺たちだけ絶好調だ」
「こらからは終盤での薬の投入を視野に入れよう」
ピクリと動く7人。
「シャキッと!早く意識を戻せ!」
「追加して延長するぞ!」
即座に行儀良く座り直し。胸元と裾を整える7人。
「どうかなファフレイス。痛いのは消えた?」
「完全に消えました!寧ろ最初から存在しません!」
「伝わって良かったぜ」
「フィーネさんに代わり。引き続き俺から連絡を。
ついさっきシュルツからメールが来ました。ライザー王子の謝罪イベントが2日後。こちらで言う2日半後に決定。
事前にエルラダさんに2人の状況。ウィンザートで愛人を設けました情報を流し緩和を図った模様。
一時脈に乱れが出たものの様態に変化は無く。依然安定状態。故に決定と成りました。
正式な婚姻解消はそれ以降。傷心ダリアのお迎えがその翌日と言う流れ。年内には余裕。
その間にラメル君の成人祝いを組み込みます。何処でやるとか希望とか。決めてたりする?」
「む~。カメノス邸の小宴会場は借りれぬのかえ。新事務棟の一階がもう使えるならそちらの方が良いのぉ」
「まあカメノス邸とは無関係だけど借りられる。でも確かに事務棟の方が良いな。ファフレイスは1階の厨房周りの様子は見た?」
「詳しくは見ていません。厨房用品搬入までは確認済。
今現在使える状態かは不明。ですがシュルツさんなら仕上げているのではと」
「ふむふむ。搬入済なら自分たちでも整えられそう。帰ったらそこら辺を聞いてみよう。
登山用品の購入は年明けでも構わないので時間の余裕の有る時に向かいます。ペリーニャも山登りしてみたい?」
「行きます。この状態で自宅に長時間放置されては心身が持ちません。買い物も登山も同行致します。捨てないで下さいスターレン様」
「死んでも捨てません。カウテリアもしっかり回ってないから普通に買い物でも皆で。
この後。女子のお風呂後に何時もの掃除確認。
時差ボケ緩和の為にルーナリオン北一番。大露天風呂併設旅館に1泊。そちらは既にクワンで予約済。
自宅へ帰宅後。周辺状況を確認した上で迷宮内特訓でリフレッシュ運動の予定です。
異議有る方。又は今直ぐ帰りたい方が居れば挙手を」
誰も微動だにせず。
船内大型バスルーム。本音の女子トーク。
「ファフレイス。今後はファフと呼ばせて貰う。ファフとペリーニャはあの薬を見てどう思った?」
「危険な物。毒物ではないと…感じた」
「何度見ても。女性に幸せを運んでくれる秘薬だと」
「そう…。私たちももうあの瓶を見ただけで何も言えない身体に成ってしまった。取り上げるのは不可能。身体も心も拒絶しちゃう」
「じゃの。妾の魅了が軽々と踏み越えられるとは…」
「純血魔族の性欲を満たせる程ですから…。今では薬を使わずとも」
「止めるのも無理。ねえファフ正直に答えて。防壁続けられそう?」
「…今回だけで。スターレン殿に持って行かれた。頭は次の事で一杯。自分なら大丈夫と言う考えが甘かった。
ロディを何処かで馬鹿にしていたのを恥じる…」
「上から見るとそう見えるでしょうね」
「やっぱり…」
「薬を使われてからのお声が。完全に切り替わられたご様子でしたし」
「スタンはそれも視野に入れ始めた。プレマーレは表向きソプランの方だとしても。
また新たに森の精霊。更には音楽の女神様まで救おうと考えてる。
居場所は南東大陸内で間違い無い。残る国は2つ。
それはさて置き。ファフと2人を加えてしまうと一気に嫁が8人。最近常に同行しているレイルもそう言う目で見られる。
外の声を無視し続けるか。何か別の言い訳を立てなければ収まらない。
何か無いかしらアローマとペリーニャ」
「…極限に難しいです。こればかりは」
「…全く浮かびません。今は特に。頭も心も落ち着けてからでないと」
「そうね。事務棟が開業したら定期的に対策考案会議を始めます。ダリアにもシュルツにも関わる事だし。その2人も招集して。混乱させてしまうから侍女衆は抜き。
スタンやソプランを呼んでも外は無視を決め込むだろうから女子メンバー限定で」
「はい」
「うむ…」
「私も無い知恵絞って考えます。さあ上がってお掃除始めましょ」
-------------
混浴大露天風呂は何度入っても最高。
思い思いの場所で肌を寄せ合ったり景色を観賞したり。
時間の掛かるメニューを先に頼んで置いて騒いだり。
他の客が皆無ですから。
気になっていた秘湯へも足を運び。全員は無理な狭さで足湯にして座談会を開いた。
個別デートの時に重宝する事間違い無し。
夜は牡丹鍋と山菜尽しの豪華懐石。
濃い口出汁に浸された温玉に差し掛かった時。隣のロイドとチェンジしてファフレイスが座ってスプーンで口へ運んでくれた。
「どしたの急に」
他の嫁も見て見ぬ振りで自分の食事。
「防壁の件…なのですが。止める事は出来ない物かと」
「それは俺に気持ちが偏ったと受け取っても?」
「はい…」
お顔を真っ赤に染め上げて。
「本気に成っても良いと?」
「その通りにて」
そこはハッキリ。
右のフィーネに。
「フィーネたちは了承済?」
「元々自由枠だし了承済よ。本人の意思尊重。邸内と城の関係者に説明し直しやダリアとかの順番。シュルツへの説明とかは必要だけど。シュルツの成人後なら手続きしても良いのかな」
ファフレイスに向き直り。
「素直に嬉しいけど。俺に来る前に1つ重要な事を忘れていませんか?」
「重要な…事?」
クワンを指差し。
「君の主は?」
「あぁ!済みません我が主。私欲で先走ってしまい」
「あたしは良いと思いますよ。元からハーレム要員で防壁なんて無理だと考えてたので」
「有り難う御座います!」
「スターレン様のカリスマはフィアフォンゼル迷宮よりももっと前から異常値。迷宮内で出会った時。芋羊羹ではなくスターレン様に恋する目をしてました。
そして神域での自己推薦。自覚は無いみたいでしたけどこの人もう落ちてるなと感じてました」
「仰る通りです…」
「理解有る主で良かった。でもフィーネの言う通り序列で言えば6番目。シュルツの後。それまで宿舎の部屋は変えずに行こう。多分シュルツも無理だろなと思ってても実際俺が通っちゃうと傷付く気がする。
その事情説明は自分の口で話して。俺が言ったら余計に傷付く。何たって俺が防壁さんですと紹介して置いて本気で手を出しちゃった形に成るからさ」
「それは必ず自分から。その他の方へも順番に」
「有り難う。じゃあ席に戻って食事の続き」
「はい」
6人目空の上から来ちゃった。
来ちゃいましたね。
時間配分難しい!
頑張って♡
マジどうしよう…。取り敢えずダリアとの時間はマストで作らないと。
順番が大切。
夜空を見上げて又露天風呂。
満天の星空は何も答えてはくれないけれど。吸い込まれそうな程輝いて希望に満ち溢れていた。
深海から地上を目指した過去の自分。グズルードもこうして愛する嫁たちと星を眺めていたに違いない。
四方を裸で密着されていたかは別として。
残りの3人はソプランに張り付いていた。
0
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