嫌いなあいつの婚約者

みー

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2話

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 月曜日、今日から夢の校外学習が始まる。

 空は限りなく水色が続いていて雲一つなく最高の天気で、今日という日に相応しい。

「桜、随分と上機嫌だね」

 ついつい鼻歌を歌ってしまう私の様子を見て、涼が口元を緩めながら話しかけてきた。

「だって、今日から一週間校外学習でしょう?」

「いつもなら、こういう行事にはあまり行きたくないわねって言っていたのに。まあ、でもいいことだ」

 相変わらず毎朝うちに来てコーヒーを飲みながら私のことを待っている涼。

 もし、婚約者じゃなければこういうことはしないんだろつ。

 それでも、別に私から言えば必要ないのだけれど、多分長年こうして過ごしてきたんだろうし、今更それに対して文句を言ったりするのも可笑しいと思われかねないからそのままにしている。











 いつものように艶々な黒色の車に乗って、今日は学校ではなく港につくと、すでに多くの生徒がいた。

 がやがやと賑わしい雰囲気は、修学旅行の集合場所のよう。

 時間になるとフェリーに乗り込んで、いよいよ出港する。

 フェリーが海の上を走ること数十分。

 潮の匂いを乗せた海の風が当たって気持ちいいけれど、なんとなくこの船の揺れにだんだんと気分が悪くなってきて私は近くにあった椅子に座って目を閉じた。

「桜、大丈夫?」

 さっきまでどこかに行っていたはずの涼の声がする。

「うん、大丈夫」

「少し顔が白いけど、なんか飲もうか?」

「さっぱりしたもの、欲しいかも」

「うん、ちょっと待ってて」

 また涼が遠くに行ってしまう音が聞こえる。目を開けて、細目で遠くなる涼の背中を見る。

 待って、行かないで。

 側にいて。

 心の中で、誰にも聞こえないように叫んだ。

 ああ、きっと弱っているからだ。

 軽く船酔いをしているから、涼なんかにこんなことを思ってしまう。きっとそう。




 少し経って、透明の飲み物が入っているボトルを持った涼が涼が戻ってくる。その姿を見ると、心がまるでココアを飲んだ時のようにほっとする。

「はい」

 頬に冷たいものが触り、それと同時に少しだけ涼の指も頬に触れた。

「あ、ありがとう」

「どういたしまして」

 飲み物を口に入れて胃の中に入れると、すうっと染み込んで気持ち良い。

 再び目蓋を閉じて、休もうとした時だった。

「あれ、桜さんと涼くんじゃないかい?」

 その声に、私はすぐに目を開けた。

 一瞬で涼のことなんてどこかへ行ってしまい、脳内は彼のことで埋め尽くされる。見れば見るほど私の理想の顔をしている。

 もちろんそれだけじゃなくて、奏多さんの醸し出す雰囲気は心を穏やかにさせてくれる。

「奏多さんっ」

「大丈夫? 具合悪いの?」

「ちょっとだけ、ふらっとしただけで。でも、今はもう大丈夫です」

「そっか、船酔いだね。でも、もうすぐ着くと思うよ」

「はい」

「今はゆっくり休んで。あ、校外学習中、よければ一緒に食事でもしよう」

「はいっ、もちろんです」

 まさか、奏多さんんのほうから誘ってくれるなんて、こんなに順調でいいんだろうか。

 どこかで、この出来事を上書きする最悪なことが起きてしまわないだろうか。

 ううん、そんなことを考えているよりだったら、目の前の時間にもっと目を向けた方がいい。

 

 
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