嫌いなあいつの婚約者

みー

文字の大きさ
9 / 69
2話

しおりを挟む
 部屋から出て杏里のところに行こうとした時、反対側から近付いてくる人が確認できて、その人の顔を見ると思わず頬が緩んでしまう。

 その人は私に気付くと、にこりと笑みを浮かべた。

 それだけで私の心は満たされる。

「桜さんも杏里に用事?」

「あ、はい。一緒に、館内の散歩でもどうかなって」

「そうなんだ。僕もちょうど、杏里の所に行こうとしていたところで。よかったら、僕もご一緒していいかな? 案内もできるし」

「は、はい、もちろんです」

 なんという幸運だろう。

 2人で杏里に話をして、早速施設内を見て回ることになった。


 

「2人は初めてだもんね」

 広々とした廊下を、3人並んで歩く。それでもまだ余裕のある廊下は、相当幅が広い。

「ここの階はレストランエリア。和洋中好きなのをいつでも食べられるんだ。どこも美味しいけど、僕のおすすめは和食かな」

「いいですね、和食」

「うん、心がほっとする味だよね」
 
 なんて素敵な表現をするのだろうと、うっとりとしてしまう。






 建物の中を一通り見て回ると、次は外に来た。

 太陽がさんさんと降り注ぎ、水色の海と白い砂浜を輝かせている。

 奏多さんの横顔を見ると、完璧ともいうことが出来るその造形にうっとりとしてしまう。色白の肌も、少し色っぽい目元も、私の視線を奪うには十分だった。

「外には、テニスコートとかゴルフ場とか、夏でも使えるアイススケート場とかがあるんだ。外の授業で一番人気は乗馬かな。あとは、散歩が出来る小道もあって、鳥の鳴き声を聴きながら歩くとすごく落ち着くよ。桜さんは、なにがしたいとかある?」

「奏多さんと、散歩がしたいかな」

「僕と?」

「はっ、いや、あの……」

 ぼーっとしていて、心の声をそのまま口に出してしまっていた。

 もう、恥ずかしすぎる。

「うん、いいよ。あ、でも、涼くんに許可を取らないとね」

 涼、という名前を聞いた瞬間一気に現実に引き戻された。

 そういえば今頃何をしているのだろうか、まあ、べつに一緒に居なければならない義務なんてないし、この1週間くらいは涼と顔を合わせなくてもいい。

 それより、奏多さんと親睦を深めたいの。

「お昼、どうしようか。桜さんと杏里は何か食べたいものある?」

「私はなんでも」

「奏多さんのおすすめがあれば」

「うん、分かった。じゃあ、行こうか」

 杏里が、こっちを向いて微笑む。

 もしかして、私の気持ちがダダ漏れで、奏多さんへの気持ちがばれてしまっただろうか。

 もしそうなら、杏里に何かを言われる前に私から話した方がいいかもしれない。友人に隠し事をしているみたいで、もやもやとしてしまうから。

「杏里、今夜部屋に行ってもいい?」

「ええ、もちろん」

「ありがとう」

 


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る

小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」 政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。 9年前の約束を叶えるために……。 豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。 「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。 本作は小説家になろうにも投稿しています。

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!? 男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!? ※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。

君に何度でも恋をする

明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。 「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」 「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」 そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。

東雲の空を行け ~皇妃候補から外れた公爵令嬢の再生~

くる ひなた
恋愛
「あなたは皇妃となり、国母となるのよ」  幼い頃からそう母に言い聞かされて育ったロートリアス公爵家の令嬢ソフィリアは、自分こそが同い年の皇帝ルドヴィークの妻になるのだと信じて疑わなかった。父は長く皇帝家に仕える忠臣中の忠臣。皇帝の母の覚えもめでたく、彼女は名実ともに皇妃最有力候補だったのだ。  ところがその驕りによって、とある少女に対して暴挙に及んだことを理由に、ソフィリアは皇妃候補から外れることになる。  それから八年。母が敷いた軌道から外れて人生を見つめ直したソフィリアは、豪奢なドレスから質素な文官の制服に着替え、皇妃ではなく補佐官として皇帝ルドヴィークの側にいた。  上司と部下として、友人として、さらには密かな思いを互いに抱き始めた頃、隣国から退っ引きならない事情を抱えた公爵令嬢がやってくる。 「ルドヴィーク様、私と結婚してくださいませ」  彼女が執拗にルドヴィークに求婚し始めたことで、ソフィリアも彼との関係に変化を強いられることになっていく…… 『蔦王』より八年後を舞台に、元悪役令嬢ソフィリアと、皇帝家の三男坊である皇帝ルドヴィークの恋の行方を描きます。

【完結】脇役令嬢だって死にたくない

⚪︎
恋愛
自分はただの、ヒロインとヒーローの恋愛を発展させるために呆気なく死ぬ脇役令嬢──そんな運命、納得できるわけがない。 ※ざまぁは後半

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

処理中です...