嫌いなあいつの婚約者

みー

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6話

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「桜さま、どうしましたか? 今日は元気がないですね」

 ようやく涼も帰って、今は自室で特に何をすることもなくソファに座って天井から吊るされているシャンデリアを、あー、奇麗だなあ、と思いながら眺めている。

「さきほど奏多さまからお電話がありましたよ。明日はどうですか? だそうです」

「ほ、本当に? もう、先に知らせて欲しいわ、そういうことは。大丈夫って、伝えて」

「はい、ではそのように伝えますね」

 メイドは部屋から出て行った。

 はあっと大きなため息をつく。何もしたくない。今はこうしてゆったりとしていたい。

「じゃなくて、明日のデートの服を用意しなきゃ。って、服っていつもメイドが持ってきてくれたのよね。どこにあるのかしら?」
  
 メイドが帰ってくるまで、このままソファに座っていることにした。

 改めてこうして見ると、本当に広い部屋でそれなのにいつも埃1つなく清潔にされていて、私には勿体ない。

 こっちの世界を選んだことは本当に正解だったのか、まあ今更そんなことを考えても意味もないし、自分で選んだことに責任をもたないと。

 もう1人の桜は今、どんな風に過ごしているのかしら。

 どっちの涼にも好かれてしまうなんて、きっと余程いい子なんだわ。

 素直に羨ましい。

「ううん、いいの。私には奏多さんがいるんだから」

 首を横にぶんぶんと振る。

 こう言い聞かせたのは何度目だろう。きっとまだまだ幸せじゃないから、もし本当に奏多さんの恋人になることが出来たら、こんな風に言い聞かせることだって無くなる。

 涼のことが頭に浮かぶことも、無くなる。

 今はまだ、ずっと近くにいたせいで情が湧いてきてしまっていたせい。きっとそう。

 とんとん、と扉を叩く音が聞こえてようやくメイドが戻ってきた。

「桜さま。明日の10時に奏多さまが迎えに来るそうです」

「ねえ、そのことで、明日の服装を一緒に考えて欲しいんだけど、衣裳部屋に連れて行ってくれない?」

「はい、いいですよ。とびっきりお洒落しましょうね」

「ええ、もちろん」

 いつもはブルー系のものが多いし、学校の制服もモノトーンだから、思い切って明日はピンク系の花柄のワンピースなんて着て行こうかしら。

 それとも、水色の爽やかな夏に会うワンピース?

 ううん、それとも、薄紫の上品なラベンダーを思わせるワンピースの方がいいかしら。

 って、まだどんなワンピースがあるかも分からないのにあれこれと考えてしまって、見てからにしないと。

「では、いきましょうか」

 部屋を出て、長い廊下を歩いて右左に曲がったり階段を昇ったりして、まるで迷路じゃない、と心の中で突っ込みながらようやく衣裳部屋に辿り着いた。
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