嫌いなあいつの婚約者

みー

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6話

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「すごい……」

 数え切れないほどの服があって、まるでもうここはショップのようだった。

 こんなにあるなら、私の理想とするピンク色の花柄のワンピースや水色のものも絶対にあるはず。

「桜さまには、水色が似合うと思いますよ。肌も白いですし」

「私もピンクか水色にしようと思ってたのよ」

「いいですね。夏ですし、水色が良いかと思いますよ」

 爽やかな水色のワンピースに、白い靴。頭の中で想像する。

 うん、夏らしくてとても素敵。涼しげがあって、きっとデートにぴったり。

「じゃあ、水色のワンピース、何着か持ってきてもらえるかしら? あとは白のパンプスと」

「ええ、それではそちらの椅子でお待ちください」

「ありがとう」

 メイドは、服の森の中に入っていく。

 視界に入る服は、生地なんか当たり前にヨレヨレになっていなくて全て1つ1つピシッとシワひとつ無くて、流石だなと感服する。

 どれも華やかで、ここに1日篭って服を眺めていても絶対に飽きないと思う。

 待っていること数分、メイドが何着かを持って帰ってきた。

「それでは、着てみましょうか」

「そうね」

 着ては鏡でチェックし、を繰り返すこと数回。

「これ、すごくいいわ」

 膝丈の上品なエーラインのワンピースは、ひらひらとしていてとても可愛い。襟があるのも、変に大人っぽくなくて私の年齢にはぴったり。

「私もとてもいいと思います。いつもの桜さんとは少し違った感じもしますし」

「そうね」

 奏多さんの反応を考えると、今から心臓がばくばくとしてきて、早くデートをしたいという気持ちと、少し恥ずかしいなあという気持ちが入り混じる。

 それにしても、本当に素敵なワンピース。

 きっと、全てが最高級のもので作られたものなんだろう。

 桜は、こんな生活を捨ててまであっちの世界がいいというのだから、どんな環境が自分に合うかなんて本当に分からないものね。

「それでは、あとはこちらのパンプスでいかがでしょう。少し歩くことになっても、これなら高さもないですしいいと思います」

「そうね、それにするわ」

 好きな人の為に選ぶ服は、他の服よりも特別に見える。

 好きな人の為に選んだ靴は、良い場所に連れて行ってくれそうに思う。

 恋って、本当に自分の周りの全てに輝きを与えてくれて、人生を何倍も何倍も良く見せるんだから不思議なものだと思う。

 ただ、1人の人が好きっていうだけなのに。

 杏里もきっと、彼と話すときはそう感じているんだ。あの顔を見れば分かる。

 涼は…………涼は、桜を見る時どんな表情をするのだろう。その表情を当たり前だけど見た事がない。って、また涼のことを考えてしまう自分がいる。

 考えない考えない。

「ありがとう、じゃあ、部屋に戻りましょう」

「はい」
 
 
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