嫌いなあいつの婚約者

みー

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8話

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 何も解決しないまま3日が過ぎる。

 こんな中途半端な気持ち。やっぱり、苺のネックレス、返したほうがいい。これがあると、なんだか気持ちが揺ら揺らと定まらない。

 鞄にそれを入れて、学校に行く。教室に着くと、既に涼の姿があった。

 同じクラスだから、結局嫌でも毎日涼の顔は見るわけで、その度に言いようのない気持ちになる。

 涼は特に話し掛けてこない。

 そうだよね。婚約を破棄した2人が仲良くしていたら可笑しいし、これが普通。

 でも、やっぱり単純に寂しい。友人を1人失った時のような空虚感。

「桜、朝から溜息なんてどうしたの?」

「あ、うん……ちょっと眠いなあって」

「そう。そういう時は無理しない方が良いわね」

「そうね」

 涼が席を立つ。

 教室を出てどこかに行く。

「あ、私ちょっとお手洗いに行くわね」

「ええ」

 バレないように、窓の外を見たりしながら涼の跡を追っていく。

 って、私何をしているの。

 もしかしたら、鈴華さんのところに行くんじゃないかと思うと、どうしても気になってしまっていても立ってもいられなくなる。

 だからってこんなストーカーみたいなこと……。

 涼は廊下を曲がった。急いで私もその後を追う。

「どうしたの? 桜」

 そこには壁に寄りかかっている涼がいて、なんだか雰囲気がいつもと違って男らしさが増していた。その姿が新鮮で、嫌に緊張する。

「りょ、涼」

「桜から突き放したのに、今度は僕を追ってくるなんて。どうしたの?」

「そ、そんなんじゃ。ひゃっ」

 涼の手が頬に触れる。

 真っ直ぐな瞳に吸い込まれそうになる。

 顔が近い。もう少し近づけば鼻と鼻がくっついてしまいそう。

 もうだめ、こんなんじゃあおかしくなってしまう。

 その時、人が近づいてくる音がして涼はさっと離れた。

 息が吸えない。

 心臓が早く動きすぎて苦しい。
 
「って。奏多さんを好きな桜が僕のことを追ってくるわけないか。ごめん、変なこと言って」

 いつもの雰囲気に戻った涼。

「そ、それは……」

「じゃあ、僕行かないと」

 どこに? 私を置いて行かないで。

 声にならない言葉が、脳内に次々と湧き出てくる。ここで涼の手を握れば、世界はどう変わるの? どんな道が待っている?

 小さくなっていく涼の背中。こちらを振り向かない涼の姿。

「ま、待って」

「桜?」

「その……」
 
 どうしよう、何を話せばいいのか全く分からない。

「涼? どうしたの?」

 何も話さないでいると、向こう側から歩いてくる鈴華さんの姿が見えて、その目は涼の次に私を捉えた。

 こんな状況、気まずい以外ない。

「なあに? 桜さんどうしたの?」

「あ、いや……」

 彼女は涼の横を通りすぎて私の元に来た。

「涼に何か用?」

 氷のように冷たい声に、怯んでしまう。私の全てを受け入れないという意思がそこから伝わるようで、彼女の目を見ることが出来ない。

「あ、いや……その……」

「もう、婚約者じゃないのよね? あまり2人でいない方がいいと思うわよ。周りの目、気にならないの?」

「そうだよね、分かってるわ」

 反論できるはずもなく、この空気観に耐え切れなくなった私はこの場を後にした。
 
 
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