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喫茶〜ほらぁ〜⑤
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「いらっしゃいませ。お客様、一名様ですね?お席の方へご案内します」
道に迷い、たどり着いた場所はまさかのカフェだった。
『喫茶 ほらぁ』
不気味なネーミングだ。周りが木々に囲まれていなかったらまた違った印象を抱いたのかもしれない。
店内に客は一人もいない。
それはそうだ。こんな山奥にある所へわざわざ足を運ぶ客はいないだろう。
「メニューでございます。お客様、新規でご来店された方ですよね。新規のお客様にはとあるサービスをしておりまして」
なるほど。
どうやらこの店主は暇らしい。
たまに来る客の話を聞くしか楽しみがないのだろう。
俺は、目的の神社が見つからなかった落胆もあり、話を聞いてほしい気持ちで口を開く。
「俺、今年の4月から社会人になったんです。仕事は、まぁ順調で、生活自体も安定してます。彼女もできたし。でも、少し俺の中で魚の骨みたいに喉の奥に刺さってチクチクと引っかかっているやつがあるんです。
‥あ、実際に刺さってないです。え、骨を取る裏技?いや、刺さってないからいいんですけど。例えです。分かりにくくてすみません。
俺、大学時代マンションに住んでたんですけど、その隣にネパール人が居たんです。
偶に会う程度だったんすけどね。なんか、笑顔が柔らかくて安心する雰囲気を持っているやつだったんですよ。
あー、店長さんにどことなく似てるかも。
まぁでも挨拶くらいで、特に親しくなることは無いだろうな、って少し残念に思っていたんですけど、ある日、友人が‥仮にAとしますけど。そのAが酔っ払って来たことがあって、偶々出てきたネパール人を誘ったんです。
いつもはそんな事するやつじゃないんですけどね。
おいやめろよ、迷惑だと思われるだろうって焦ったんですけど、そのネパール人、頷いて。そのまま流れで俺の部屋で飲むことになったんですよ。
‥今考えると自分でも驚きます。
何を話したわけでもないです。ただ、Aがいつもみたいに自分の話をして、俺がツッコミ入れて、ネパール人は楽しそうに笑っていて。その日から、偶に、本当に偶にですけどネパール人とAと飲むようになったんです。
飲むのはいつもAでしたけどね。自分のことをろくに語らないネパール人でしたが、俺は彼の雰囲気が好きでした。そうですね、なんか、楽しかった。
Aも何も喋らないネパール人でしたけど、好きだったんでしょうね。彼の事がよく分かってる様子でした。
そんなある日、事件が起こって。俺の金が無くなったんです。封筒に入れていた50万。少し、入り用でお金を下ろしてたんですよ。丁度、Aとネパール人と飲んでた日の翌日です。
Aも一緒に探してくれて。でも無くて。それで俺はネパール人を疑ったんです。実はネパール人にその封筒見られてたんですよ。丁度、鞄を倒した拍子に封筒が飛び出して。ネパール人はいつもみたいに笑ってました。少し、嫌な笑いに見えたんです。
俺は、ネパール人を呼んで、聞きました。
お金、盗んだ?って。
彼は、悲しそうな顔をして、一言、こう言いました。
ザンネン、デス。
日本語を話せた驚きよりも、失望した悲しみの顔を見た方がショックでした。
俺は、彼に謝りたい」
そこまで語ると、店主は「良いホラ話でした。お客様、代金は頂戴いたします」と笑った。
ホラ話じゃないんだけど‥。
やっぱり、なんとなくネパール人に似ている。
俺はカフェオレとパンケーキを注文する。
疲れ切った身体にこの匂いは反則だな。
どうぞ、と店長が注文したものを持ってくる。
「そう言えばお客様。なぜそのネパールの方に謝りたいのですか?」
「え?‥あぁ。実は、Aが失踪したんですよ」
「ほう」
「あいつ、他の知り合いの財布から金を抜いてたみたいで。だから、きっと俺の金を取ったのもあいつです」
「なるほど、なるほど。最後にもう一つだけ質問してもよろしいでしょうか?」
「なんでしょう?」
「Aの方とネパールの方は本当に初対面だったんですか?」
魚の骨が、取れる感覚がした。
道に迷い、たどり着いた場所はまさかのカフェだった。
『喫茶 ほらぁ』
不気味なネーミングだ。周りが木々に囲まれていなかったらまた違った印象を抱いたのかもしれない。
店内に客は一人もいない。
それはそうだ。こんな山奥にある所へわざわざ足を運ぶ客はいないだろう。
「メニューでございます。お客様、新規でご来店された方ですよね。新規のお客様にはとあるサービスをしておりまして」
なるほど。
どうやらこの店主は暇らしい。
たまに来る客の話を聞くしか楽しみがないのだろう。
俺は、目的の神社が見つからなかった落胆もあり、話を聞いてほしい気持ちで口を開く。
「俺、今年の4月から社会人になったんです。仕事は、まぁ順調で、生活自体も安定してます。彼女もできたし。でも、少し俺の中で魚の骨みたいに喉の奥に刺さってチクチクと引っかかっているやつがあるんです。
‥あ、実際に刺さってないです。え、骨を取る裏技?いや、刺さってないからいいんですけど。例えです。分かりにくくてすみません。
俺、大学時代マンションに住んでたんですけど、その隣にネパール人が居たんです。
偶に会う程度だったんすけどね。なんか、笑顔が柔らかくて安心する雰囲気を持っているやつだったんですよ。
あー、店長さんにどことなく似てるかも。
まぁでも挨拶くらいで、特に親しくなることは無いだろうな、って少し残念に思っていたんですけど、ある日、友人が‥仮にAとしますけど。そのAが酔っ払って来たことがあって、偶々出てきたネパール人を誘ったんです。
いつもはそんな事するやつじゃないんですけどね。
おいやめろよ、迷惑だと思われるだろうって焦ったんですけど、そのネパール人、頷いて。そのまま流れで俺の部屋で飲むことになったんですよ。
‥今考えると自分でも驚きます。
何を話したわけでもないです。ただ、Aがいつもみたいに自分の話をして、俺がツッコミ入れて、ネパール人は楽しそうに笑っていて。その日から、偶に、本当に偶にですけどネパール人とAと飲むようになったんです。
飲むのはいつもAでしたけどね。自分のことをろくに語らないネパール人でしたが、俺は彼の雰囲気が好きでした。そうですね、なんか、楽しかった。
Aも何も喋らないネパール人でしたけど、好きだったんでしょうね。彼の事がよく分かってる様子でした。
そんなある日、事件が起こって。俺の金が無くなったんです。封筒に入れていた50万。少し、入り用でお金を下ろしてたんですよ。丁度、Aとネパール人と飲んでた日の翌日です。
Aも一緒に探してくれて。でも無くて。それで俺はネパール人を疑ったんです。実はネパール人にその封筒見られてたんですよ。丁度、鞄を倒した拍子に封筒が飛び出して。ネパール人はいつもみたいに笑ってました。少し、嫌な笑いに見えたんです。
俺は、ネパール人を呼んで、聞きました。
お金、盗んだ?って。
彼は、悲しそうな顔をして、一言、こう言いました。
ザンネン、デス。
日本語を話せた驚きよりも、失望した悲しみの顔を見た方がショックでした。
俺は、彼に謝りたい」
そこまで語ると、店主は「良いホラ話でした。お客様、代金は頂戴いたします」と笑った。
ホラ話じゃないんだけど‥。
やっぱり、なんとなくネパール人に似ている。
俺はカフェオレとパンケーキを注文する。
疲れ切った身体にこの匂いは反則だな。
どうぞ、と店長が注文したものを持ってくる。
「そう言えばお客様。なぜそのネパールの方に謝りたいのですか?」
「え?‥あぁ。実は、Aが失踪したんですよ」
「ほう」
「あいつ、他の知り合いの財布から金を抜いてたみたいで。だから、きっと俺の金を取ったのもあいつです」
「なるほど、なるほど。最後にもう一つだけ質問してもよろしいでしょうか?」
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