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十一話
しおりを挟むソフィアは今までの中で一番後悔していた。
この二人はやばい。
紫色の瞳がソフィアの事をうっとりとした表情で見つめている。ソフィアの事を、檻の中に入れて。
「あぁぁぁ、可愛らしいな。」
「本当に、とっても素敵。」
何故こうなったのであろうか。魔術師であるヒューズとエマに、今日は魔術の研究成果をお披露目をするから来てくれと誘われ、魔術の研究室へと来ていた。
なのに、ソフィアは可愛らしいピンク色で塗装された檻の中へと何故か誘導され、二人は記録用のカメラを構えながらこちらをうっとりとした表情で見つめている。
ソフィアはぷるぷると震えながら、檻の外で遠い目をしているレスリーに視線を向けた。
レスリーは腕に着けている時計を指差し、ちゃんと時間になったら助けるというような目線を向けてくれたので、ソフィアは軟禁されることはないだろうと、小さく安堵の息を吐いた。
「あ・・・あの、そ・・それで研究成果というのは?」
震えながらもどうにか今日の目的を達成して、さっさと帰してもらおうとソフィアは口を開いた。
だが、言ってから後悔した。
ヒューズはきらきらと瞳を輝かせて、ローブの中から紫色のうねうねとした何かが入った小瓶を取り出す。
エマはにっこりと可愛らしく微笑むと、ソフィアに言った。
「私達の研究成果です!ソフィアに一番に見てほしかったの。」
「あぁ。ソフィアならきっと気に入ってくれると思ってね。だから君がゆっくりとこの子と遊べるように、この折も作ったんだよ。」
「ふぇ?」
意味が分からずにいるソフィアに、エマは嬉々として語る。
「この子が変な所に逃げないようにね、この檻の中からは出ないように魔術を施してあるの。」
「だから、この檻の中なら、きっと楽しく遊べるよ。はい。どうぞ。」
「え?え?え?」
ソフィアはヒューズに手に持っていた小瓶を手渡され、瓶の中を見た。
中には、紫色のうねうねとしたものが入っており、蓋がいつのまにか開けられていた。
「え・・・・」
さすがにレスリーも動揺したようだが、次の瞬間、目の前の光景に思わず動きを止めてしまう。
「ひゃぁぁぁっ・・・んんんんんん!」
「あぁぁぁ。可愛い。すごいよ。やっぱり、ソフィアは世界一だね!」
「うねうね君二十号もとっても嬉しそうね。」
ソフィアの白い肌にうねうね君二十号が伸びて絡みつき、ソフィアの首筋や足をくすぐる。
「うひゃぁぁっ!くすぐったい!くすぐったいですぅぅぅぅ!」
くすぐるというのは、拷問になると言うが、本当にそうだとソフィアは笑いながら悲鳴を上げていた。
「むりです!むりですぅぅぅ!」
全身をうねうね君二十号がくすぐりまわっている。
「ソフィア。君って子は本当に可愛すぎる。改良に改良を重ねて、うねうね君二十号を作ったかいがあった。」
「本当に!うねうね君二十号、ここまでソフィアに懐くなんて。感動ね。」
違う。感動ではない。拷問である。
ソフィアはヒューズとエマが満足するまでうねうねくん二十号にくすぐられ続け、そして、家へと帰る頃にはぐったりと動くことさえできなくなっていた。
そして、レスリーに運ばれてベッドに横になったソフィアは、悟った顔で呟いた。
「レスリー。」
「はい。お嬢様。」
「無理だわ。」
「・・・」
「四組とも、癖が強すぎる。」
「・・・」
ソフィアは静かに、瞼を閉じると、決断した。
「レスリー。」
「はい。お嬢様。」
「逃げましょう。」
ソフィアは決断した。無理である。
四組とも、絶対に、無理である。
ソフィアは、男爵家の今後を考えながらも、瞼を閉じると自分の決意は揺らぐことはないだろうと、そう思った。
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