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こんにちは魔王様
しおりを挟む雷が轟く闇の中、稲光が漆黒の魔王城を照らし出す。
その恐ろしさに、人間は魔王の敷地には滅多なことでは足を踏み入れることはない。
しかし、そんな恐ろしい城の前に公爵令嬢であるリナリー・ガボットは馬車を停め、城を見上げていた。
ことの始まりは一週間前の舞踏会での婚約破棄騒動にある。
第二王子との婚約は順調であると、リナリーは思っていた。しかし実際は、裏で色々な事が暗躍しリナリーは悪役令嬢に仕立て上げられた。そして皆の前での婚約破棄。並べ立てられるのは嘘八百の事ばかり。
リナリーは絶望した。
だが、絶望はここでは終わらない。なんと追い打ちをかけるようにこう第二王子は告げたのである。
「リナリー!お前の罪は婚約破棄だけでは償いきれない。よって、お前には生贄として魔王の元へと嫁ぐことを命じる!異論は受け付けぬ!これは決定であり、国王、そしてお前の父にもすでに受理されている!」
そこでやっとリナリーは気付いた。
これは始めから仕組まれていたのだ。
現在の魔王が即位したのはわずか1年前。実は前々から魔族と架け渡しとして誰かを嫁がせてはどうかという話は出ていたのだ。
そして、白羽の矢が自分に当たったのだ。
位も、教養も、リナリーは第二王子の婚約者だけあって申し分ない。
それならばそのままでいいか?
否。
第一王子が結婚したのは伯爵令嬢であり、あまり後ろ盾となれるような力のある家ではなかった。しかし、第一王子たっての希望もあり、息子に甘い国王はそれを許した。ここで問題になるのがリナリーである。
第二王子のほうが有力な後ろ盾のある家と結婚しては諍いの元となる。
だからか、と、リナリーはストンと納得した。
きっと父と国王とで、内々に決められたのだろう。父は娘の見返りにどんなものを要求したのか。リナリーは大きくため息をついた。元々家族からの愛情を感じたこともなく、母とは死別、兄とは疎遠なリナリーである。
仕方ない。自分はこういう運命なのだな。
リナリーは小さく溜息をつくと目の前で婚約破棄を言い渡す第二王子を見据えた。
馬鹿で、愚鈍な第二王子。でもそれなりに、情のような何かを抱いていた相手。
きっと周りに嘘ばかり聞かされ、リナリーのことを見限ったのだろう。
馬鹿で愚鈍で、周りの嘘も全て信じてしまう人。
ただ良く言えば純粋なのだ。
リナリーは思わずクスリと笑った。
「アラン様。」
「なんだ?」
「これからもどうかそのままでいて下さいませ。リナリーは今の命、謹んでお受けいたします。」
これからはリナリーはおりませんよ。アラン様を助けてくれる素敵な女性が早めに見つかるといいのですが。きっと難しいでしょうね。でもある意味お似合いの人(馬鹿)は見つかると思います。
では、ごきげんよう。
リナリーは美しく、恭しく頭を垂れ、そして、その場を後にした。
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