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第三十七話
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馬車で進むということは、その分だけ国へと戻る事に時間がかかるということである。
それでもオーレリアを乗せた馬車はかなりの速さで進み、オフィリア帝国に無事につくことができた。
出立した時と違い早朝である為静かなものであり、街の様子を見ながらオーレリアは息を吐いた。
この帝国を背負うという事は、民を自らが守っていかなければならないという事である。
オーレリアは胸いっぱいに街の空気を吸いこむと気合を入れた。
決めたのだ。
この国を守ると。
だからこそ、たとえ恐ろしくあろうとも、父に立ち向かうことを決めたのだ。
「オーレリア様、参りましょう。」
エドモンドに声をかけられて頷くと、オーレリアは馬車の扉を閉めた。
馬車は城の中へと入り、そしてオーレリアは父に立ち向かうべくして馬車を降りた。
グレッグは別の馬車に力なく座っており、まるで魂が抜けたかのように項垂れている。
オーレリアはエドモンドとエルザと共に進んでいった。
帝王オランドは王座に気だるげに座り、オーレリアの帰りを今か今かと待ち望んでいた。
その表情には以前のような威厳は消え失せ、青白く、頬はこけ、目の下には深い隈が作られていた。
髪の毛も白髪がかなり目立ち始めており、オーレリアが出立した頃よりも十以上は老けて見えた。
領地を任される貴族らや、城に務める文官らもその変容ぶりに驚き、王を何が変えたのかが分からずに、毎日怒鳴り散らされ、下手をすれば処刑されそうになり、皆が恐怖しながらオーレリアの帰りを待ち望んでいた。
「オーレリアは、まだか。」
主要な貴族らはオーレリアが帰ってくる事に合せて呼びつけられ、王座の下の広間に皆が集められて頭を垂れていた。
「も、、、もうすぐ来られるかと。」
一人がそういった瞬間に、手に持っていた酒のグラスを叩きつけられる。
「ひっ!」
「さっさと連れてこい。」
「は、、、はい!只今、、、。」
その様子に皆が青ざめながら頭を下げ続けている。
「オーレリア皇女殿下が到着いたしました!」
高らかに声が響き、皆が安堵の息を吐いた。
「通せ。」
皆が中央に道を作るように移動をすると、扉から王座へと続く道が作られる。
そして扉が開き、オーレリアが現れた瞬間、その場にいた皆が息を呑んだ。
空気が変わったのである。
先ほどまで淀めいていた空気が、まるで清涼な森の空気のように爽やかに一変した事を皆が感じ取って、不敬とは思いながらも顔を上げてしまう。
そして、目にしたオーレリアを見て、皆が思う。
皇女とはこんなにも堂々とし、生命感に溢れた人物であっただろうかと。
歩く度に目を引きつけられるほどの強い印象を携えていた人であっただろうかと。
皆が思い、そして、その一瞬で皆が期待した。
何か今のこの悪夢のような日々を変えてくれるのではないかという他人任せな思いを抱いてしまう。
皇女は美しい所作で頭を下げるとオランドへと挨拶を述べた。
「只今帰りました。帝王陛下におかれましては、」
「黙れ。」
オランドの声に、その場がしんと静まり返った。
オランドは、ゆっくりと立ち上がると、おぼつかない足撮りでオーレリアの前へと向かい、その銀糸のような髪を掴み上げた。
「お前、何をした。」
地の底から響くようなオランドの声が響いた。
それでもオーレリアを乗せた馬車はかなりの速さで進み、オフィリア帝国に無事につくことができた。
出立した時と違い早朝である為静かなものであり、街の様子を見ながらオーレリアは息を吐いた。
この帝国を背負うという事は、民を自らが守っていかなければならないという事である。
オーレリアは胸いっぱいに街の空気を吸いこむと気合を入れた。
決めたのだ。
この国を守ると。
だからこそ、たとえ恐ろしくあろうとも、父に立ち向かうことを決めたのだ。
「オーレリア様、参りましょう。」
エドモンドに声をかけられて頷くと、オーレリアは馬車の扉を閉めた。
馬車は城の中へと入り、そしてオーレリアは父に立ち向かうべくして馬車を降りた。
グレッグは別の馬車に力なく座っており、まるで魂が抜けたかのように項垂れている。
オーレリアはエドモンドとエルザと共に進んでいった。
帝王オランドは王座に気だるげに座り、オーレリアの帰りを今か今かと待ち望んでいた。
その表情には以前のような威厳は消え失せ、青白く、頬はこけ、目の下には深い隈が作られていた。
髪の毛も白髪がかなり目立ち始めており、オーレリアが出立した頃よりも十以上は老けて見えた。
領地を任される貴族らや、城に務める文官らもその変容ぶりに驚き、王を何が変えたのかが分からずに、毎日怒鳴り散らされ、下手をすれば処刑されそうになり、皆が恐怖しながらオーレリアの帰りを待ち望んでいた。
「オーレリアは、まだか。」
主要な貴族らはオーレリアが帰ってくる事に合せて呼びつけられ、王座の下の広間に皆が集められて頭を垂れていた。
「も、、、もうすぐ来られるかと。」
一人がそういった瞬間に、手に持っていた酒のグラスを叩きつけられる。
「ひっ!」
「さっさと連れてこい。」
「は、、、はい!只今、、、。」
その様子に皆が青ざめながら頭を下げ続けている。
「オーレリア皇女殿下が到着いたしました!」
高らかに声が響き、皆が安堵の息を吐いた。
「通せ。」
皆が中央に道を作るように移動をすると、扉から王座へと続く道が作られる。
そして扉が開き、オーレリアが現れた瞬間、その場にいた皆が息を呑んだ。
空気が変わったのである。
先ほどまで淀めいていた空気が、まるで清涼な森の空気のように爽やかに一変した事を皆が感じ取って、不敬とは思いながらも顔を上げてしまう。
そして、目にしたオーレリアを見て、皆が思う。
皇女とはこんなにも堂々とし、生命感に溢れた人物であっただろうかと。
歩く度に目を引きつけられるほどの強い印象を携えていた人であっただろうかと。
皆が思い、そして、その一瞬で皆が期待した。
何か今のこの悪夢のような日々を変えてくれるのではないかという他人任せな思いを抱いてしまう。
皇女は美しい所作で頭を下げるとオランドへと挨拶を述べた。
「只今帰りました。帝王陛下におかれましては、」
「黙れ。」
オランドの声に、その場がしんと静まり返った。
オランドは、ゆっくりと立ち上がると、おぼつかない足撮りでオーレリアの前へと向かい、その銀糸のような髪を掴み上げた。
「お前、何をした。」
地の底から響くようなオランドの声が響いた。
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