25 / 75
22
しおりを挟む
パチパチパチパチ
パチパチパチパチ
ピアノの音色が鳴り終わり、最初のグループのダンスが終わった、拍手と喝采に溢れた会場は踊った人々を称えるように拍手が鳴り止まない、正直全員のレベルが高く、魅入られて時間さえ忘れてしまうほどだった、だが1番目のグループの中で最も目を引いたのは間違いなく、モネとエリザの組だろう。
頭が一つ飛びぬけて息が合っており常に楽しそうに笑顔で、ステップや息の合わせ方はプロに引けを取らずに、一朝一夕で身につく業ではない事が伺える、歪ながらも長く過ごした2人だからこそ息を合わせて踊れるのだろう。
正直……嫉妬してしまう程の美しいダンスだった。
「完敗、私と2人じゃ……まだあのレベルは難しいわね」
ダンスが終わって、礼をするグループの面々に再度拍手を送りながら、誰にも聞こえないように呟く。
モネの背中を押してよかった、そう思うと同時にあの2人の仲に少しだけ嫉妬をしてしまう、過ごした年月には敵わない事もある。
「デイジー!ありがとう!」
最初のグループが終わって、それぞれ終了者の指定場所へと移っていく際にモネは私を見つけて嬉しそうに手を振って声をかける、私は微笑みながら手を振り返した。
エリザは少しだけ俯いて気まずそうにしていたが、ペコリと小さく頭を下げてモネと共に指定場所へと向かっていく、流石に私と言い合った手前、すぐに懇意にという訳にはいかないのだろう。
「さて………どうしようかしら……」
一転して私は1人になってしまった、王妃教育を受けていたために舞踏は多少は嗜んでいたけど、舞踏会に女性1人というのはやはり目立ち、侮蔑の対象となってしまうだろう。
覚悟はしてモネの背中を押したのだけど、時間が経って自分の番が近づくにつれて緊張と心配がこみ上げてくる。
「………………」
考えが思い浮かばない、このまま1人で踊りいくら完璧に踊ろうと周囲の視線は冷ややかだろう、モネは称賛してくれるだろうが、ランドルフの思惑に嵌ったようで気に食わない。
途方に暮れている間に次のグループも終わってしまった、一際目立つ黒髪の男子生徒が1人で踊り、注目を集めていたようだ、髪をかき上げて深紅の瞳で微笑む姿に周囲の女性達は、垂涎しているかのように恍惚としていた。
その男性はマキナであった、彼は1人で参加して他を圧倒するほどの踊りを見せた、それはまるで演武のようであり綺麗だった。
周囲の女性達の反応は熱狂的だ、確かに、マキナの端正な顔立ちからにこりと微笑む姿には魔性の魅力を感じる…。
「なかなか、手強い相手ばかりだな!」
ぼうっとして途方に暮れていた私の隣で、いつもと変わらない明るい声が聞こえる、いつの間にか私の隣で腕を組んで立っていたアイザックは周囲の女性達の視線を浴びながらも、気にもせず私に話しかける。
「負けてられない、参加するなら目指すは優秀賞だ」
「私は1人ですので、アイザック……もうあなたの好敵手としては相応しくないかもしれませんね」
私は自嘲気味に言葉を返すと、アイザックは周囲の視線を気にせずに豪快に笑った。
「あはははは!!らしくないな、しおらしい君も珍しいが……やはり毅然とした君の方がいいな」
「からかっているのですか?」
「いや違う、安心しろ、デイジー」
彼は微笑みながら、私の手を取って引き寄せた……周囲の女性達が感嘆の声をあげる、学友としてではなく………恋仲のような距離で微笑む彼は呟いた。
「君が1人になるはずがない、俺がいるのだから……」
「アイザック……」
「周囲の耳もある、言い逃れができないように…俺の本心を聞いてほしい」
「なにを………」
彼は、何かを証明するように周囲に聞こえるように隠さず、堂々と私の目を見て話す。
「正直に言おう、俺は君に恋焦がれている…拒否されたあの日から、君に魅入られている」
「な!?」
突然過ぎる言葉、さらに周囲の生徒達が大勢見ている前で言われてしまい、言葉に詰まってしまう。
そんな私を置いて彼は言葉を続けた。
「答えは必要ない、君の答えは前に聞いているからな!」
「な、なら…突然どうしてこんな事を…」
私の言葉にアイザックは笑いながら答える。
「俺はあの時のような軽い男ではないと証明するためだ、これだけの生徒達に聞いてもらった…言い逃れもできまい、虚偽で君を誘ったあの時のつまらない俺ではなく、恋を知った事を証明したかった」
「証明して、どうする気ですか?」
私は彼が言いたい事を察して、思わず微笑みながら言葉を待つ。
「君に俺を愛してもらう!、一度振られたからと言って諦める気はない!俺の初恋は執念深いぞデイジー…覚悟する事だな」
痛快に人目もはばからずに言い放つ彼に、私は思わず噴き出すように笑ってしまう、気落ちしていた気分を吹き飛ばすためにここで言ってくれたのだろう、先程の曇天のような気分から一転して晴れやかにしてくれた彼に、私は微笑みながら言葉を返す。
「ふふ、道は遠いかもしれませんよ?アイザック」
「今日で一歩は進んだだろう?」
「ええ…………それに訂正をさせてください」
私は彼の耳元に近寄り、囁くように過去に言った言葉を取り消す。
「恋を知らぬ、つまらぬ男だと言ってしまいましたが、今の貴方は素敵です」
「っ!?………あぁ君を知ったからな」
まるで犬のように嬉しそうに笑う彼に、私は自分が甘いのかもしれないと思った……だけど、モネがエリザを許したように私も過去に縛られずに前に進むべきなのかもしれない、一回目の人生で私はアイザックに捨てられたが、それは私の記憶の中のアイザックであり、今の彼ではない………判断をするなら、目の前にいる彼を見るべきだろう。
「私と踊ってくれますか?アイザック」
「もちろん、君となら………」
今の彼に好きだとか、そんな感情を抱いてはいないが……素直に好意を抱いてくれている事には嬉しく思う。
そして、恋を知って成長したアイザックだからこそ、私は今世の彼を許す事が出来るのかもしれない。
パチパチパチパチ
ピアノの音色が鳴り終わり、最初のグループのダンスが終わった、拍手と喝采に溢れた会場は踊った人々を称えるように拍手が鳴り止まない、正直全員のレベルが高く、魅入られて時間さえ忘れてしまうほどだった、だが1番目のグループの中で最も目を引いたのは間違いなく、モネとエリザの組だろう。
頭が一つ飛びぬけて息が合っており常に楽しそうに笑顔で、ステップや息の合わせ方はプロに引けを取らずに、一朝一夕で身につく業ではない事が伺える、歪ながらも長く過ごした2人だからこそ息を合わせて踊れるのだろう。
正直……嫉妬してしまう程の美しいダンスだった。
「完敗、私と2人じゃ……まだあのレベルは難しいわね」
ダンスが終わって、礼をするグループの面々に再度拍手を送りながら、誰にも聞こえないように呟く。
モネの背中を押してよかった、そう思うと同時にあの2人の仲に少しだけ嫉妬をしてしまう、過ごした年月には敵わない事もある。
「デイジー!ありがとう!」
最初のグループが終わって、それぞれ終了者の指定場所へと移っていく際にモネは私を見つけて嬉しそうに手を振って声をかける、私は微笑みながら手を振り返した。
エリザは少しだけ俯いて気まずそうにしていたが、ペコリと小さく頭を下げてモネと共に指定場所へと向かっていく、流石に私と言い合った手前、すぐに懇意にという訳にはいかないのだろう。
「さて………どうしようかしら……」
一転して私は1人になってしまった、王妃教育を受けていたために舞踏は多少は嗜んでいたけど、舞踏会に女性1人というのはやはり目立ち、侮蔑の対象となってしまうだろう。
覚悟はしてモネの背中を押したのだけど、時間が経って自分の番が近づくにつれて緊張と心配がこみ上げてくる。
「………………」
考えが思い浮かばない、このまま1人で踊りいくら完璧に踊ろうと周囲の視線は冷ややかだろう、モネは称賛してくれるだろうが、ランドルフの思惑に嵌ったようで気に食わない。
途方に暮れている間に次のグループも終わってしまった、一際目立つ黒髪の男子生徒が1人で踊り、注目を集めていたようだ、髪をかき上げて深紅の瞳で微笑む姿に周囲の女性達は、垂涎しているかのように恍惚としていた。
その男性はマキナであった、彼は1人で参加して他を圧倒するほどの踊りを見せた、それはまるで演武のようであり綺麗だった。
周囲の女性達の反応は熱狂的だ、確かに、マキナの端正な顔立ちからにこりと微笑む姿には魔性の魅力を感じる…。
「なかなか、手強い相手ばかりだな!」
ぼうっとして途方に暮れていた私の隣で、いつもと変わらない明るい声が聞こえる、いつの間にか私の隣で腕を組んで立っていたアイザックは周囲の女性達の視線を浴びながらも、気にもせず私に話しかける。
「負けてられない、参加するなら目指すは優秀賞だ」
「私は1人ですので、アイザック……もうあなたの好敵手としては相応しくないかもしれませんね」
私は自嘲気味に言葉を返すと、アイザックは周囲の視線を気にせずに豪快に笑った。
「あはははは!!らしくないな、しおらしい君も珍しいが……やはり毅然とした君の方がいいな」
「からかっているのですか?」
「いや違う、安心しろ、デイジー」
彼は微笑みながら、私の手を取って引き寄せた……周囲の女性達が感嘆の声をあげる、学友としてではなく………恋仲のような距離で微笑む彼は呟いた。
「君が1人になるはずがない、俺がいるのだから……」
「アイザック……」
「周囲の耳もある、言い逃れができないように…俺の本心を聞いてほしい」
「なにを………」
彼は、何かを証明するように周囲に聞こえるように隠さず、堂々と私の目を見て話す。
「正直に言おう、俺は君に恋焦がれている…拒否されたあの日から、君に魅入られている」
「な!?」
突然過ぎる言葉、さらに周囲の生徒達が大勢見ている前で言われてしまい、言葉に詰まってしまう。
そんな私を置いて彼は言葉を続けた。
「答えは必要ない、君の答えは前に聞いているからな!」
「な、なら…突然どうしてこんな事を…」
私の言葉にアイザックは笑いながら答える。
「俺はあの時のような軽い男ではないと証明するためだ、これだけの生徒達に聞いてもらった…言い逃れもできまい、虚偽で君を誘ったあの時のつまらない俺ではなく、恋を知った事を証明したかった」
「証明して、どうする気ですか?」
私は彼が言いたい事を察して、思わず微笑みながら言葉を待つ。
「君に俺を愛してもらう!、一度振られたからと言って諦める気はない!俺の初恋は執念深いぞデイジー…覚悟する事だな」
痛快に人目もはばからずに言い放つ彼に、私は思わず噴き出すように笑ってしまう、気落ちしていた気分を吹き飛ばすためにここで言ってくれたのだろう、先程の曇天のような気分から一転して晴れやかにしてくれた彼に、私は微笑みながら言葉を返す。
「ふふ、道は遠いかもしれませんよ?アイザック」
「今日で一歩は進んだだろう?」
「ええ…………それに訂正をさせてください」
私は彼の耳元に近寄り、囁くように過去に言った言葉を取り消す。
「恋を知らぬ、つまらぬ男だと言ってしまいましたが、今の貴方は素敵です」
「っ!?………あぁ君を知ったからな」
まるで犬のように嬉しそうに笑う彼に、私は自分が甘いのかもしれないと思った……だけど、モネがエリザを許したように私も過去に縛られずに前に進むべきなのかもしれない、一回目の人生で私はアイザックに捨てられたが、それは私の記憶の中のアイザックであり、今の彼ではない………判断をするなら、目の前にいる彼を見るべきだろう。
「私と踊ってくれますか?アイザック」
「もちろん、君となら………」
今の彼に好きだとか、そんな感情を抱いてはいないが……素直に好意を抱いてくれている事には嬉しく思う。
そして、恋を知って成長したアイザックだからこそ、私は今世の彼を許す事が出来るのかもしれない。
353
あなたにおすすめの小説
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です
流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。
父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。
無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。
純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる