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カミラside
デイジーが屋敷を出て行ってから何日が過ぎたのだろうか、学園で過ごしている娘が心配で心が落ち着かない、ルドウィン伯爵家当主としての責務も果たさなねばならないというのに…少しでも時間があれば娘のデイジーの事を心配してしまう。
気丈に振る舞ってはいたが幼き頃より婚約者として添い遂げていたランドルフとの別れは辛いはずだ、元気づけてあげたいが学園に出向く訳にはいかない……それでも母として何かしてあげたいと頭を悩ませていると執務室の扉を叩く音が聞こえた。
「入りなさい」
私の許可と共にこの屋敷の執事であるウィリアムが優雅にお辞儀をしながらゆっくりと要件を告げる。
「カミラ様、客人が来ております」
客人?そんな予定はなかったはず……それに連絡もなく突然に押しかけるなど失礼にも程があるだろう、それに私は客人の相手をしている暇はない、今はデイジーの心配で手一杯なのだ。
「忙しいの、帰ってもらえますか?」
「それが……」
言葉に詰まったウィリアムに詳細を尋ねた、突然にやって来た客人について教えられてため息と共に立ち上がる。
「それは仕方がないわね…客室まで案内してあげてください」
「承知いたしました」
さて…どうしたものかしら。
私は椅子の背もたれに体重を預けながら考える、厄介な客人が来たものだ…要件は分からないが面倒な事だけは分かっている…だが私の答えは決まっている。
何を言われようとも娘の事を信じるまでだ。
◇◇◇
「突然押しかけてすまなかったな、カミラ殿」
客室のソファに寛ぎ、私を見て開口一番にその方は呟いた。
私は頭を下げながら寛いでいる方に言葉をかける。
「いえ、ドーマス王……来てくださるなら言ってくだされば、お出迎えの準備もしておりましたのに」
ドーマス・ファルムンド王、この国の現王にしてデイジーの婚約者であったランドルフの父親だ、なぜ突然に屋敷にやって来たのかは分からないがデイジーの件についてなのは確実だ。
「よいよい、君も大変だろうから今日は手短に話そうか」
「いえ、それ程でも……してお話とは?」
余計な会話をしたくないのは向こうも一緒なのだろう、すぐさまに本題に入ったドーマス王は真剣な表情で私に問いかけた。
「君からデイジー嬢を学園から退学するように言ってほしいのだ」
「…理由を聞いても?」
「もちろん、君が戸惑うのも分かっている…一から話そうか、デイジー嬢とランドルフの婚約関係が破棄となったのは知っておるか?」
「ええ、デイジーから聞いております」
「何を伝えられているかは知らぬが、真実を言えば君の娘はランドルフに対して酷い事をしてきたようだ、ワガママ放題で気に入らない事があれば癇癪を起こして暴力を振るわれていたとランドルフから聞いている」
「……………」
私は内心でイライラと怒りながらもドーマス王の言葉を最後まで聞くことにした。
「未だに君がデイジーを学園に継続して通わせている事に驚いたよ、ランドルフも学園には通っていて息子は精神的にもデイジーを怯えている、だからデイジーには退学して欲しいのだよ」
「ドーマス王…私の答えは…」
「もちろん、君の考えもよく分かっている…娘に騙されて傷ついているのだろう、それに娘の世間体もあるはずだ……だがこれを引き受けてくれれば君が懇意にしている諸侯貴族の王家一派との親交に助力しようではないか!」
王家一派とは諸侯貴族の中でも王家に対して深い忠誠心を持っている貴族達の事だ、私もデイジーとランドルフ王子の関係があって王家一派とはそれなりに深い仲を作っていたが…今にして思えば無駄な事であったかもしれない。
とはいえ、それは結果論だが……とりあえずこの先を考える前に目の前の問題をどうにかせねばならない。
頭を抱えていた私にドーマス王はあと一押しとばかりに言葉を続けた。
「君の娘はランドルフの妻、ましてや王妃としての器ではなかったのだ……貴殿の育て方が悪いと責任を問うこともできるのだが……私もそこまで非情ではない、良きように計ら……っ!!」
ガシャンッツ!!
もう、私に冷静な考えはなかった……紅茶の入っていたカップを蹴飛ばして机に脚をのせて沸騰しそうな勢いのままに言葉を発する。
「私の娘をこれ以上侮辱すればいくらドーマス王でも許せません、デイジーが王妃としての器ではない?私はデイジーが睡眠時間を削ってまでそちらの用意した王妃教育カリキュラムを受けていたのを見ています!学園との両立も友達と遊んだりしたい気持ちを無理して行っておりました!それらを見ていた私には貴方が今しがた言った事の数々は反吐が出そうな嘘だとわかります!!」
「な、カ…カミラ……落ち着いて…」
「これが落ち着いていられますか!?愛している娘を貶されたのですよ?王妃となるために辛い日々を過ごしていた彼女の人生を否定しないで!これ以上私の娘を馬鹿にしないで!!」
「な…何を言っているのか分かっているのか!?お前が懇意にしている王家一派との関係もワシの一言で消し飛ぶのだぞ!」
「そんなもの!!娘の名誉に比べれば痛くもありません!!退学なんてさせません!話は終わりです!執務が残っておりますのでお帰り頂けますか?ドーマス王」
私は客室の扉を開き、ドーマス王の帰り道を作ってあげる、苦々しい表情を浮かべたドーマス王はゆっくりと立ち上がり、通り過ぎる間際に小さく呟いた。
「ワシに逆らって……後悔するやもしれんぞ」
「……ランドルフ王子との結婚を安易に引き受けてしまった事を………もうすでに後悔しておりますよ」
「ちっ!!」
舌打ちをしながら去っていくドーマス王、私は見送りはせずに自分で蹴飛ばして割ってしまったカップの欠片を拾い上げていく。
「カミラ様…危ないですのでここは私が」
執事のウィリアムが欠片を拾うために箒を持って来てくれていた、音を聞いて準備をしてくれたのだろう…優秀な執事に感謝をしつつも私は執務室へと戻る。
この選択に後悔なんてしない、後悔をする時間があれば今できる事をすべきだと思う、私がすべき事はルドウィン伯爵家として民の生活を考えて……そして母親としてデイジーの帰るこの場所を守る事だ。
「信じているわよ、デイジー」
呟いた言葉、デイジーを想いながら私は娘の帰るこの場所を守り続けよう、母親として…愛する娘のために。
私を愛してくれている娘のために。
◇◇◇
ドーマスside
「ちっ!!ヒステリックな女だ」
馬車に乗り込みながら今後について思案する、カミラは前までは王家に対して非情に好意を持っていたのだが、デイジーへの愛、そして母親としての愛の方が利益よりも優先すべき事だったのだろう。
忌々しいが……今はランドルフからの連絡を待つほかにあるまい、こちらができる事は無くなった。
あのヒステリックな女…カミラを粛清しようかとも考えもした…殺しを生業にしている者も知っている。
だがその考えは早計、かつてそれらを雇って失敗をしてしまった過去もある、やはり息子であるランドルフを信用すべきだ。
「頼んだぞ、我が息子……ランドルフよ」
デイジーが屋敷を出て行ってから何日が過ぎたのだろうか、学園で過ごしている娘が心配で心が落ち着かない、ルドウィン伯爵家当主としての責務も果たさなねばならないというのに…少しでも時間があれば娘のデイジーの事を心配してしまう。
気丈に振る舞ってはいたが幼き頃より婚約者として添い遂げていたランドルフとの別れは辛いはずだ、元気づけてあげたいが学園に出向く訳にはいかない……それでも母として何かしてあげたいと頭を悩ませていると執務室の扉を叩く音が聞こえた。
「入りなさい」
私の許可と共にこの屋敷の執事であるウィリアムが優雅にお辞儀をしながらゆっくりと要件を告げる。
「カミラ様、客人が来ております」
客人?そんな予定はなかったはず……それに連絡もなく突然に押しかけるなど失礼にも程があるだろう、それに私は客人の相手をしている暇はない、今はデイジーの心配で手一杯なのだ。
「忙しいの、帰ってもらえますか?」
「それが……」
言葉に詰まったウィリアムに詳細を尋ねた、突然にやって来た客人について教えられてため息と共に立ち上がる。
「それは仕方がないわね…客室まで案内してあげてください」
「承知いたしました」
さて…どうしたものかしら。
私は椅子の背もたれに体重を預けながら考える、厄介な客人が来たものだ…要件は分からないが面倒な事だけは分かっている…だが私の答えは決まっている。
何を言われようとも娘の事を信じるまでだ。
◇◇◇
「突然押しかけてすまなかったな、カミラ殿」
客室のソファに寛ぎ、私を見て開口一番にその方は呟いた。
私は頭を下げながら寛いでいる方に言葉をかける。
「いえ、ドーマス王……来てくださるなら言ってくだされば、お出迎えの準備もしておりましたのに」
ドーマス・ファルムンド王、この国の現王にしてデイジーの婚約者であったランドルフの父親だ、なぜ突然に屋敷にやって来たのかは分からないがデイジーの件についてなのは確実だ。
「よいよい、君も大変だろうから今日は手短に話そうか」
「いえ、それ程でも……してお話とは?」
余計な会話をしたくないのは向こうも一緒なのだろう、すぐさまに本題に入ったドーマス王は真剣な表情で私に問いかけた。
「君からデイジー嬢を学園から退学するように言ってほしいのだ」
「…理由を聞いても?」
「もちろん、君が戸惑うのも分かっている…一から話そうか、デイジー嬢とランドルフの婚約関係が破棄となったのは知っておるか?」
「ええ、デイジーから聞いております」
「何を伝えられているかは知らぬが、真実を言えば君の娘はランドルフに対して酷い事をしてきたようだ、ワガママ放題で気に入らない事があれば癇癪を起こして暴力を振るわれていたとランドルフから聞いている」
「……………」
私は内心でイライラと怒りながらもドーマス王の言葉を最後まで聞くことにした。
「未だに君がデイジーを学園に継続して通わせている事に驚いたよ、ランドルフも学園には通っていて息子は精神的にもデイジーを怯えている、だからデイジーには退学して欲しいのだよ」
「ドーマス王…私の答えは…」
「もちろん、君の考えもよく分かっている…娘に騙されて傷ついているのだろう、それに娘の世間体もあるはずだ……だがこれを引き受けてくれれば君が懇意にしている諸侯貴族の王家一派との親交に助力しようではないか!」
王家一派とは諸侯貴族の中でも王家に対して深い忠誠心を持っている貴族達の事だ、私もデイジーとランドルフ王子の関係があって王家一派とはそれなりに深い仲を作っていたが…今にして思えば無駄な事であったかもしれない。
とはいえ、それは結果論だが……とりあえずこの先を考える前に目の前の問題をどうにかせねばならない。
頭を抱えていた私にドーマス王はあと一押しとばかりに言葉を続けた。
「君の娘はランドルフの妻、ましてや王妃としての器ではなかったのだ……貴殿の育て方が悪いと責任を問うこともできるのだが……私もそこまで非情ではない、良きように計ら……っ!!」
ガシャンッツ!!
もう、私に冷静な考えはなかった……紅茶の入っていたカップを蹴飛ばして机に脚をのせて沸騰しそうな勢いのままに言葉を発する。
「私の娘をこれ以上侮辱すればいくらドーマス王でも許せません、デイジーが王妃としての器ではない?私はデイジーが睡眠時間を削ってまでそちらの用意した王妃教育カリキュラムを受けていたのを見ています!学園との両立も友達と遊んだりしたい気持ちを無理して行っておりました!それらを見ていた私には貴方が今しがた言った事の数々は反吐が出そうな嘘だとわかります!!」
「な、カ…カミラ……落ち着いて…」
「これが落ち着いていられますか!?愛している娘を貶されたのですよ?王妃となるために辛い日々を過ごしていた彼女の人生を否定しないで!これ以上私の娘を馬鹿にしないで!!」
「な…何を言っているのか分かっているのか!?お前が懇意にしている王家一派との関係もワシの一言で消し飛ぶのだぞ!」
「そんなもの!!娘の名誉に比べれば痛くもありません!!退学なんてさせません!話は終わりです!執務が残っておりますのでお帰り頂けますか?ドーマス王」
私は客室の扉を開き、ドーマス王の帰り道を作ってあげる、苦々しい表情を浮かべたドーマス王はゆっくりと立ち上がり、通り過ぎる間際に小さく呟いた。
「ワシに逆らって……後悔するやもしれんぞ」
「……ランドルフ王子との結婚を安易に引き受けてしまった事を………もうすでに後悔しておりますよ」
「ちっ!!」
舌打ちをしながら去っていくドーマス王、私は見送りはせずに自分で蹴飛ばして割ってしまったカップの欠片を拾い上げていく。
「カミラ様…危ないですのでここは私が」
執事のウィリアムが欠片を拾うために箒を持って来てくれていた、音を聞いて準備をしてくれたのだろう…優秀な執事に感謝をしつつも私は執務室へと戻る。
この選択に後悔なんてしない、後悔をする時間があれば今できる事をすべきだと思う、私がすべき事はルドウィン伯爵家として民の生活を考えて……そして母親としてデイジーの帰るこの場所を守る事だ。
「信じているわよ、デイジー」
呟いた言葉、デイジーを想いながら私は娘の帰るこの場所を守り続けよう、母親として…愛する娘のために。
私を愛してくれている娘のために。
◇◇◇
ドーマスside
「ちっ!!ヒステリックな女だ」
馬車に乗り込みながら今後について思案する、カミラは前までは王家に対して非情に好意を持っていたのだが、デイジーへの愛、そして母親としての愛の方が利益よりも優先すべき事だったのだろう。
忌々しいが……今はランドルフからの連絡を待つほかにあるまい、こちらができる事は無くなった。
あのヒステリックな女…カミラを粛清しようかとも考えもした…殺しを生業にしている者も知っている。
だがその考えは早計、かつてそれらを雇って失敗をしてしまった過去もある、やはり息子であるランドルフを信用すべきだ。
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