【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか

文字の大きさ
74 / 75

白きガーベラ・終

しおりを挟む
デイジーside

 今日もローザの屋敷にお邪魔させてもらっている、もう前のように面談の必要はないが友人として来ているのだ、学園に通い出したローザと会える日はそれ程に多くはないために休みが合えば会うようにしている。
 ローザ自身も学園で講師として働いているモネと仲良くしているようだ、流石はモネだ。

 いつかはエリザやアイザック、マキナ達と全員揃って会いたいものだけど今日は少しだけ違う話をしに来た。

 私達についてだ。


「白いガーベラ」

「え?」

 私の言葉にローザは動揺していたが気にせず話を続ける。

「白いガーベラ……貴方は気付いていますか?」

「な、なにを言ってるの?デイジー」

「少し前に貴方の前世について詳しく聞いた時に私と貴方の共通点が気になっていたのです」

「共通点……?私と貴方の?」

 時代もおそらく世界も違う私達の前世であったが唯一といってもいい共通点があり、それが気になっていたのだ。

「それが先程の白いガーベラです、話に聞けば貴方が死ぬ前に見たのがその花だと……私も同じです」

 それがなんだというの?というように首を再度傾げたローザに話す、私の考えを告げる。

「私はこの花がこの前世の記憶を引き継いだ要因となっていると思っています」

「へ!?な、なにを言ってるの…そんな事があるわけ…」

「私達自身が有り得ない現象の当事者ですよ?有り得ないとは断言できないかもしれません…私はこの白いガーベラが前世の記憶を引き継いでいる要因と考えています……といっても仮説で確証もなにもありませんが…」

「デイジーそれがなんだっていうの?話が見えないわ」

 私は微笑み、ローザの当然の疑問に答える。

「私はずっと気がかりがありました……私自身の人生は幸福になったと思います、友達もいて愛する人もいる…ローザ、貴方もそうでしょう?」

「へ……ま、まぁね………優しい人達に囲まれていると気づけたし…友達もできた…それに」

 ローザは誰かを思い出しながら頬を赤らめて言葉を続けた。

「す、好きな人もようやく見つけたから…」

「マキナですか?」

「んな!?お、教えないわ!」

 分かりやすい……とは私も言えないか、アイザックと接している時の私も今のローザと同じように見えていたのだろう、初々しさと過去の恥ずかしさを同時に感じたために話を慌てて戻す事にした。

「やり残した事はたった一つです……唯一ですが悲しんだままの人がいて、私はその子を救いたい、そのためにこの仮説を信じてみたいと思っています」

「救ういたい?…一体誰の…事を?」

「それは……………」


 私の続く言葉、それを聞いたローザの瞳からは自然と涙が溢れ出し、彼女は私を抱きしめて感謝の言葉を告げた。


 確証なんてない、ただの仮説であり都合が良すぎる事は理解している。
 それでも、私とローザ自身がそもそもこの世界では都合が良すぎる存在なのだ…ならこの人生や物語は果てしなく、とびきり幸せなハッピーエンドに繋がる都合のいい展開を…。



 私は望む。








   ◇◇◇

 ◇モネ◇
 ファルムンド公国・ラインベル学園の講師として生涯を務める。
 多くの生徒達を導き、指導した彼女の優しさに尊敬を抱いた者は数知れず公国と生まれ変わって不安定な情勢を支える人材を生み出した指導者と後に伝えられる。
 自身の教え子である生徒に求婚を申し込まれ、一度は断ったものの卒業と同時に想いを告げられて承諾…子供にも恵まれ幸せな日々を過ごした。


 ◇エリザ・フィンブル◇
 東の国へ外交官として赴いていた彼女は26歳となった年にファルムンド公国へと帰ってくる、その隣には周辺国家が一目おく程の研究者と共に胸を張って帰還する。
 ファルムンド公国へと帰還したと同時に正式にフィンブル伯爵家の女性当主としての地位に就く、強気で剛腕な外交にトラブルはあったものの彼女自身の力で解決し周辺国家と強固な関係を築く程の功績を成し遂げる。
 後にとある国の王子に一目惚れされて求婚されるがこれを断り、身分など関係がなく自分自身が愛する者と結婚を果たした。

 
 ◇アメリア・ラインズ◇
 ラインズ公爵家として不安定であったファルムンド公国を支えながらも最後までラインベル学園の創始者として学園長の責を果たし続けようとしたがデイジーを始めとする周囲の人達の説得により、残りの余生を穏やかでゆとりのある時間を過ごした。
 彼女が亡くなった葬儀の日には多くの人々が悲しみに暮れながらも感謝の言葉を告げた。


 ◇マキナ◇
 一度は退学となったラインベル学園に再度入学して無事に卒業、類いまれなる乗馬の名手として周辺国家に名を残す、馬との絆は強く…また馬と接していた彼は誰よりも生き生きとしていたと言われている。
 平民階級であったが周囲も驚く者より求婚を申し込まれ、それを承諾。
 子宝に恵まれ、彼は家族に対しても至上の愛情を持って接していた…彼の生きる意味は生涯に渡って尽きる事はなかった。


 ◇ローザ・オルレアン◇
 かつて引き起こした彼女自身の事件を知る者は多く、再度学園に通った際は心無い言葉で傷つく事もあったが周囲の人々の支えもあり無事に卒業。
 そしてかつての贖罪をするようにオルレアン公爵家として民の声に耳を傾ける当主となった、王家が無くなり公国として姿を変えて不安定であったファルムンド公国を支える当主なる。
 平民階級である青年に求婚、周囲から驚きはあったが彼女が選んだ選択に異を唱える者はいなかった。
 その生涯は笑顔で…心の底から幸せそうであったと彼女の近くにいた者は口を揃えて伝える。



 ◇アイザック・マグノリア◇
 マグノリア公爵家の当主なり、父に変わって公国を代表する者となる。
 公国となった直後は不安定な情勢を見た周辺国家が侵攻を目論んだ事もあったが彼の強気な姿勢と強固な意志によってこれを回避、さらに彼自身が侵攻を目論んだ国に赴き強固な友好を結んだ。
 生涯に渡って忙しく過密な日々を過ごしたと言われているが家族との時間を何よりも大切にしていたと言われる、周囲にはあまり笑顔を見せなかったが屋敷に帰ると満面の笑みを浮かべていると言われている。

 その笑顔は子供達と……愛する妻に向けられていた。



 ◇デイジー・マグノリア◇
 彼女は学園を卒業後にアメリア学園長に講師を推薦されたがこれを断る、そして後に自身の実家であるルドウィン伯爵家の当主となって公国を支える。
 後にアイザック・マグノリアより求婚を受けてこれを承諾、しかしルドウィン家の当主としては引き続き執務を続け多くの民の意見を参考に国の安寧となる政策を執っていく。
 彼女の友人が集まってパーティーを開いた日には公国を支える者達が集まっていると少しの騒ぎにはなったが当の本人達はお構いなしに楽しそうに過ごしていく。

 子宝にも恵まれ、多くの人々と共に過ごした彼女は最後に貴族中心の社会から民が代表を選ぶ民主的な国家を目指す事を提案する、これはアメリア・ラインズの意思を引き継いだとも言われており。
 彼女の周囲もその提案を承諾、民主国家に向けて進みだす…彼女が生きている間に成し遂げる事はなかったが意志を引き継いだ者が後に多くの人々が望んだ国家を作る。


 死の間際……動けなくなり寝たきりになった彼女であったがアイザックに頼んだ最後の場所は一面に咲き誇る白いガーベラの花畑であった。
 アイザック、そして集まった友人達と思い出話や笑い話を交わしながら……最後の時間を過ごした。

 夫であり長い時を過ごしていたアイザックは亡くなる前にデイジーと口付けを交わして抱きしめた。

「君の隣に立つために生きてきて…一緒にいれて…幸せだった」

 薄れていく意識の中でデイジーは笑顔でアイザックの頬に手を当てて呟いた。

「私もよ、アイザック…貴方が皆がいてくれたから……私は幸せで充実していた…充分よ、充分……」



 その言葉がデイジー・マグノリアの最後の言葉。
 齢73であった。






 悲しみに包まれながらも周囲の人々に彼女が目指した意志は引き継がれていく。
 白いガーベラは涙に濡れ、寂しそうに揺れながらもその綺麗な花弁を太陽に向けた。























 彼女の意識は……長い時間、世界を超えて…最後の願いを叶えるため。
 再び、動き出す。









   ◇◇◇

【希望を…貴方へ】

「か、返して!!」

 必死に叫んで手を伸ばして私は自分の本を取り戻そうとするがその手は空を掴むだけで本はクラスの人気者である女子に取られたままであった。
 新しくいじめる対象を見つけたかのように面白そうに笑みを浮かべる彼女を見て冷や汗が止まらない。

「王子様とかさ、夢見過ぎだよ~こんな無駄な夢を抱いていても意味ないし、叶わないんだからさ…こんなの要らないよね?」

「っ!!やめ!!」

 制止の声は間に合わず、醜悪な笑みを浮かべて笑う彼女に私の大事な本がビリビリと破られていき、バラバラになった紙が教室にまき散らされた。




 かに思えた。




「なにしてんの?」

 呟かれた言葉、顔を上げると人気者の女性の手を強く掴んで睨む女生徒がいた、まるで鷹のように鋭い視線を送って問いかける彼女に周囲は明らかに動揺した。
 手を掴んでいる女生徒の事は私も含めて誰も知らなかったからだ。

「なにしてんのって聞いてんだけど?答えらんないの?」

「誰よ!!貴方!」

「転校生、てか質問に答えてくれない?」

 ギリギリと彼女は掴む手を強め、人気者の女生徒は痛そうに顔を歪めて本を離してしまう。

「痛いわね!!何するのよ!?」

 叫ぶようにまくし立てた人気者の女生徒を転校生はギロリと睨み付けた。

「何してるか聞いてるのは私なんだけど、つまんない事してないで学業に励みなよ、くそ野郎」

「んな!?」

 乱暴で強気な言葉に圧倒されたのか人気者の彼女は捨て台詞を吐きながら仲間の元へと帰っていくブツブツと悪口を言っていたが転校生は気にせずに私に落ちていた本を手渡してくれた。

「はい、あなたのでしょう?」

「あ…ありがとうございます…」

「よいしょっと」

 転校生は私の前に座り、私に視線を向けながら握手するかのように手を伸ばしてきたので私も動揺しつつ握手を返す。

「私は雛菊っていうの……よろしく」

「よ、よろしく………受、受験も近いのに転校なんて…珍しいね」

「あ~~私が親に言って転校させてもらったんだ」

「ど、どうして………?」
 







 どんよりと黒い雲から差し込んだ太陽の光が教室の窓から差し込み、私と雛菊さんを照らす。
 私の質問に対して雛菊さんは快活な笑みを浮かべて迷いもなく答えた。




「くそったれな人生を変えにきたの、それが私の望んだ夢だから」


 


 
 学校の庭に咲いていた白いガーベラは嬉しそうに小さく揺れた。









––fin––
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です

流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。 父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。 無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。 純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

処理中です...