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エピローグ
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公国建国より二年が経った時。
王城のある一室。
そこで過ごしていた大臣のリガルへと、ゼブル公爵が詰め寄った。
「リガル……この報告書について、少し疑問がある」
「どうされたのですか。ゼブル公爵」
リガルはゼブル公爵の緊迫した表情を見て、執務の手を止める。
「セリム陛下の御遺体を確認した者が、皆一様にご尊顔を確認できた者がいないのはなぜだ」
「……」
「ラテシア大公により医療施設に運ばれた後。セリム陛下のお姿を見た者が極めて少なく。調べれば……全てお前に仕える者しか居なかったのは偶然とはいいきれまい」
「やはり貴方は、気付いてしまいますか」
リガルは小さく息を吐くと同時に、部屋にて執務に励む他の文官達に休憩を言い渡す。
人払いを済ませた後、彼は視線をゼブル公爵へ向けた。
「これは、セリム陛下のご希望だ」
「なっ!?」
ゼブル公爵は驚愕と共に、話の続きを求めて詰め寄る。
その行為に肩をすくめながら、リガルは椅子の背もたれに体重を預ける。
「公国となるには陛下の退位が必要であり、セリム陛下が存命であれば……少数ではあるが王家派閥との遺恨が残る」
「……」
「下手をすれば、再び内乱のキッカケとなるだろう。そうでなくとも……今も民の不安となる情勢は続いたままであったかもしれない」
「では、セリム陛下は公国建国のために……」
「ええ、王が反乱軍を鎮めた後に戦死となれば誰も疑いようのない。ラテシア様の公国建国にも、憂いはなくなる」
「なら、セリム陛下が崩御なされたのは……」
ゼブル公爵の問いかけに、暫くの沈黙が流れ……
やがてリガルは小さく頷いた。
「偽装だ。それを知るのは、私を含めて数人のみ」
「っ……ラテシア様には?」
「教えておりません。情報が漏れる可能性を避ける必要がありましたので……」
「だが……それでセリム陛下は納得されているのか?」
「えぇ。今のセリム陛下は傷の後遺症で身体が不自由であり、政などできる状態ではない。ゆえにせめてラテシア様へと憂いを残さぬ選択をして、西の辺境で過ごされる事を望まれました」
リガルの言葉を受け、ゼブル公爵は暫し考え込む。
だが、やがて何かを納得したように頷いて……頬に笑みを刻んだ。
「リガル……地図を出してくれ」
「なにを?」
「まぁ、見て見ろ」
言われた通りにリガルがルマニア王国の地図を広げる。
そこにゼブル公爵が幾つかの地点に印をつけて、それらを繋げていく。
「ラテシア様は時折、各地に視察なされる。その際の通行路を繋げてみれば……」
「なっ……」
地図にて記された、ラテシアが視察のために通る道。
その際、西の貴族領へと向かう際の通り道が……一つの場所へと集中していた。
「はは……やはり傑物相手に隠し事などできんなリガル。どうやら、ラテシア様は……」
◇◇◇
走る馬車に揺られて、この日も大公としての務めで西の貴族領へと視察に向かうラテシア。
彼女はその道中、一度として車窓から景色を見ない。
大公として忙しい日々、馬車に揺られる時間であっても執務を進めねばならないのだ。
だが、それでもこの国をより良く出来ていると思えば、彼女にとって苦ではない。
しかし、そんな彼女でもある一つの場所だけは馬車を停める。
この日も……
「停めてください」
ラテシアの声に合わせて、馬車が停まる。
追随する護衛騎士達も馬を止め、馬の休息のために水などを与える。
皆にとって、慣れた休息地点。
なんの変哲もない、平坦な道……しかしラテシアは、その時だけは馬車の車窓から景色を見つめる。
そこから、目を離さずに微笑むのだ。
「綺麗……」
彼女が見つめる先にあるのは、道から離れた所に建つとある屋敷。
誰が住んでいるのかも不明な屋敷だが、その庭園に咲く、色鮮やかなガーベラの花畑が景色を彩っていた。
屋敷の主が育てているのは明白だ。
「……」
咲き誇るガーベラを見つめながらラテシアが思い出すのは、かつての記憶。
『ラテシア・フロレイス。君に僕の妃になってほしい。この花に貴方を永遠に愛すると誓います』
かつて、支えると誓った彼がくれた言葉。
そして手渡してくれた、ガーベラの花束。
それを思い出しながらラテシアは花畑へと頬笑み……言葉を告げる。
「感謝します……セリム」
誰にも聞こえぬ声、誰も知らぬ彼女の想い。
されどラテシアはガーベラの花を見て。改めて心に誓う。
彼の残した未来を、胸を張って歩んでいく。
凛と咲く、華として。
ーfinー
◇あとがき◇
本作を読んで下さった皆様。
最後までお付き合い頂き、感謝いたします。
今作は「決別」をテーマにして書いた作品です。
ラテシアとセリム。
互いに理解を深めて、尊敬しながら別れるまでを綺麗に書けたかなと思っております。
反面、ラテシアの恋愛などは深堀りできずで申し訳ない。。
とはいえ、本作に彼女の恋愛が必要であったかといえば悩ましい……やはり物語を考えるのは難しく、楽しいですね。
と、反省点などもありますが。
ここまで書けたのは応援してくださる皆様、読んでくださる読者様のおかげです!!
心から感謝いたします!!
次回作はとびきり明るい主人公の恋愛を書く予定をしつつ。
ひとまずは、また少しだけまったり過ごします。
次回作もお見掛けした際は、ぜひ読んでくださると嬉しいです。
改めて。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました!!!!
王城のある一室。
そこで過ごしていた大臣のリガルへと、ゼブル公爵が詰め寄った。
「リガル……この報告書について、少し疑問がある」
「どうされたのですか。ゼブル公爵」
リガルはゼブル公爵の緊迫した表情を見て、執務の手を止める。
「セリム陛下の御遺体を確認した者が、皆一様にご尊顔を確認できた者がいないのはなぜだ」
「……」
「ラテシア大公により医療施設に運ばれた後。セリム陛下のお姿を見た者が極めて少なく。調べれば……全てお前に仕える者しか居なかったのは偶然とはいいきれまい」
「やはり貴方は、気付いてしまいますか」
リガルは小さく息を吐くと同時に、部屋にて執務に励む他の文官達に休憩を言い渡す。
人払いを済ませた後、彼は視線をゼブル公爵へ向けた。
「これは、セリム陛下のご希望だ」
「なっ!?」
ゼブル公爵は驚愕と共に、話の続きを求めて詰め寄る。
その行為に肩をすくめながら、リガルは椅子の背もたれに体重を預ける。
「公国となるには陛下の退位が必要であり、セリム陛下が存命であれば……少数ではあるが王家派閥との遺恨が残る」
「……」
「下手をすれば、再び内乱のキッカケとなるだろう。そうでなくとも……今も民の不安となる情勢は続いたままであったかもしれない」
「では、セリム陛下は公国建国のために……」
「ええ、王が反乱軍を鎮めた後に戦死となれば誰も疑いようのない。ラテシア様の公国建国にも、憂いはなくなる」
「なら、セリム陛下が崩御なされたのは……」
ゼブル公爵の問いかけに、暫くの沈黙が流れ……
やがてリガルは小さく頷いた。
「偽装だ。それを知るのは、私を含めて数人のみ」
「っ……ラテシア様には?」
「教えておりません。情報が漏れる可能性を避ける必要がありましたので……」
「だが……それでセリム陛下は納得されているのか?」
「えぇ。今のセリム陛下は傷の後遺症で身体が不自由であり、政などできる状態ではない。ゆえにせめてラテシア様へと憂いを残さぬ選択をして、西の辺境で過ごされる事を望まれました」
リガルの言葉を受け、ゼブル公爵は暫し考え込む。
だが、やがて何かを納得したように頷いて……頬に笑みを刻んだ。
「リガル……地図を出してくれ」
「なにを?」
「まぁ、見て見ろ」
言われた通りにリガルがルマニア王国の地図を広げる。
そこにゼブル公爵が幾つかの地点に印をつけて、それらを繋げていく。
「ラテシア様は時折、各地に視察なされる。その際の通行路を繋げてみれば……」
「なっ……」
地図にて記された、ラテシアが視察のために通る道。
その際、西の貴族領へと向かう際の通り道が……一つの場所へと集中していた。
「はは……やはり傑物相手に隠し事などできんなリガル。どうやら、ラテシア様は……」
◇◇◇
走る馬車に揺られて、この日も大公としての務めで西の貴族領へと視察に向かうラテシア。
彼女はその道中、一度として車窓から景色を見ない。
大公として忙しい日々、馬車に揺られる時間であっても執務を進めねばならないのだ。
だが、それでもこの国をより良く出来ていると思えば、彼女にとって苦ではない。
しかし、そんな彼女でもある一つの場所だけは馬車を停める。
この日も……
「停めてください」
ラテシアの声に合わせて、馬車が停まる。
追随する護衛騎士達も馬を止め、馬の休息のために水などを与える。
皆にとって、慣れた休息地点。
なんの変哲もない、平坦な道……しかしラテシアは、その時だけは馬車の車窓から景色を見つめる。
そこから、目を離さずに微笑むのだ。
「綺麗……」
彼女が見つめる先にあるのは、道から離れた所に建つとある屋敷。
誰が住んでいるのかも不明な屋敷だが、その庭園に咲く、色鮮やかなガーベラの花畑が景色を彩っていた。
屋敷の主が育てているのは明白だ。
「……」
咲き誇るガーベラを見つめながらラテシアが思い出すのは、かつての記憶。
『ラテシア・フロレイス。君に僕の妃になってほしい。この花に貴方を永遠に愛すると誓います』
かつて、支えると誓った彼がくれた言葉。
そして手渡してくれた、ガーベラの花束。
それを思い出しながらラテシアは花畑へと頬笑み……言葉を告げる。
「感謝します……セリム」
誰にも聞こえぬ声、誰も知らぬ彼女の想い。
されどラテシアはガーベラの花を見て。改めて心に誓う。
彼の残した未来を、胸を張って歩んでいく。
凛と咲く、華として。
ーfinー
◇あとがき◇
本作を読んで下さった皆様。
最後までお付き合い頂き、感謝いたします。
今作は「決別」をテーマにして書いた作品です。
ラテシアとセリム。
互いに理解を深めて、尊敬しながら別れるまでを綺麗に書けたかなと思っております。
反面、ラテシアの恋愛などは深堀りできずで申し訳ない。。
とはいえ、本作に彼女の恋愛が必要であったかといえば悩ましい……やはり物語を考えるのは難しく、楽しいですね。
と、反省点などもありますが。
ここまで書けたのは応援してくださる皆様、読んでくださる読者様のおかげです!!
心から感謝いたします!!
次回作はとびきり明るい主人公の恋愛を書く予定をしつつ。
ひとまずは、また少しだけまったり過ごします。
次回作もお見掛けした際は、ぜひ読んでくださると嬉しいです。
改めて。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました!!!!
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みんなの感想(267件)
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紅麗亜様
ご感想ありがとうございます🌼*・
終盤にてお父様は目を覚ましておりますよ!🙏
蘇枋様
ご感想ありがとうございます⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝
本作も読んでくださり、とても嬉しいです🍀*゜
私も自分自身で書きながら、可愛らしさに癒されながら書いております(*´˘`*)♡
今作ではディアが、本当にラテシアの心の支えになってくれました💕
セリムはその心の弱さゆえに間違いを犯しましたが、それを正しく変えるために立ち上がるのも、また妻であったラテシアの責務でもあったのかもしません🍀
最後のガーベラのシーン。
セリムとラテシアの2人は、決別したからこそ得た絆もきっとあるはずですね🌼*・
二人のことを想って下さり、本当に嬉しいです(≧∇≦)
いつか、きっとラテシアにもその想いは届いてくれるはずです!
素敵だと言って下さり、ありがとうございます!!
またもっと素敵だと言ってもらえるように、これからも書いていきます(∩´∀`∩)💕
読んでくださり、ありがとうございました😊
yupi様
ご感想ありがとうございます⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝
今作で感情を動かすことができたなら、嬉しいです!!
ガーベラの鮮やかさ、お互いは離れてしまいましたが、それでも繋がっている部分は心の中にありそうですね(∩´∀`∩)💕