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9.外出
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熱を出した後から、何故か旦那様との会話が少しだけ増えた。あの時のことは熱のせいか、朦朧としていてあまり覚えてないのだけれど、何かあったのだろうか。
熱は2日ほどですっかり下がったが、来て早々迷惑をかけてしまい、申し訳なかった。
面と向かうとまだ緊張してしまうから、会話とは呼べないような気もする。旦那様は無口な方だけど、いずれ自然に会話できるようになれたらいいなと思っている。
朝食は一緒にとっているが、それ以外顔を合わせることも少ない。お仕事が忙しそうな旦那様は夕食までに帰宅することもなかなか難しいようだ。
今日も帰宅は屋敷は寝静まっている時間だった。そっとガウンを羽織り、玄関に向かう。
「おかえりなさい」
上着を脱いで、執事に渡しているところだった旦那様は少し驚いた目をされた。
「起こしてしまいましたか」
「いえ、起きていましたので。お仕事お疲れ様でした」
少し言い淀んだ旦那様にもしまだ眠らないのであれば、とお茶に誘われた。初めてのことだ。食堂ではなく居間に導かれ、ソファに腰を下ろす。
執事のダラスが程なくして2人の前にお茶を差し出した。ほんのり甘さのあるハーブティをいただく。
静かな空間だが、会話がほとんどないのはいつものことなので、少し慣れてきた。
「馬には乗れますか?」
唐突に聞かれ、旦那様の顔を見ると眉間に皺が寄っている。どうしたのだろう。とりあえず頷く。
「明日、もし良ければ遠乗にいきませんか」
「…旦那様とですか?」
なんだか話が見えない。馬に乗れるけど、いきなり遠乗とはどういうことだろう。
「無理にとは申しません」
僕の言葉を嫌がっていると捉えられたのか、早口に旦那様が言葉を発した。表情は変わらないけど、不快にさせてしまったのかもしれない。
「いえ、よろしければご一緒させてください」
慌てて言うと、ほんの少し旦那様の肩の力が抜けたように見えた。
「明日、お昼前に出るつもりです。朝はゆっくりで結構です」
はいと返事はしたが、それ以上はなんだか聞けなくて無言ままお茶を飲んだ。
翌日は気持ちのいい青空だった。乗馬用の動きやすい服に着替えて、案内されるままついていくと屋敷の奥まった所に厩舎があった。この辺りに来るのは初めてだ。
厩舎には4頭の馬がいた。その一頭に旦那様は近付く。
「これは私の馬で、ガイといいます。
後の3頭から乗る馬を選んでください。ただ離れにいる芦毛の馬はリラといって、少し癖がありますので、近づく時は気をつけて下さい」
アデラートが首を優しく撫でているのは、一際大きな青鹿毛の馬だ。黒々とした毛が光ってその筋肉質な体を覆っている。身体の大きな旦那様と並ぶと、小さな子供などは泣いてしまいそうな威圧感がある。
視線を感じて振り返ると、少し離れたところから芦毛の馬が自分を見ていた。そっと近づいてみると、つやつやとした毛並みでしなやかな筋肉がしっかりついている。
「リラ?触ってもいい?」
その馬に話しかけてみると、触れとばかりに首を下げてくる。顔を撫でてみると、うっとりと濃いまつげが下がる。その下で、きれいな瞳が見つめてくるのが、とてもかわいらしい。
「旦那様、この子に乗ってみてもよろしいですか」
「賢い馬です。あなたを受け入れたようですし、乗ってあげて下さい」
鞍を付けてもらう間に、他の馬も撫でて待つ。どの子も賢そうな顔をしている。黒いキラキラした目で見つめてくる。また今度ね、と撫でているうちにリラの準備が終わる。
声をかけて、ひらりとその背に跨る。こちらにきて乗っていなかったが、馬場で少し動くと問題なさそうだった。
「では、ついてきて下さい」
声をかけられ、先導される。
どうやら旦那様と2人でお出かけのようだ。嬉しくて、手綱をしっかり握り、後を追った。
熱は2日ほどですっかり下がったが、来て早々迷惑をかけてしまい、申し訳なかった。
面と向かうとまだ緊張してしまうから、会話とは呼べないような気もする。旦那様は無口な方だけど、いずれ自然に会話できるようになれたらいいなと思っている。
朝食は一緒にとっているが、それ以外顔を合わせることも少ない。お仕事が忙しそうな旦那様は夕食までに帰宅することもなかなか難しいようだ。
今日も帰宅は屋敷は寝静まっている時間だった。そっとガウンを羽織り、玄関に向かう。
「おかえりなさい」
上着を脱いで、執事に渡しているところだった旦那様は少し驚いた目をされた。
「起こしてしまいましたか」
「いえ、起きていましたので。お仕事お疲れ様でした」
少し言い淀んだ旦那様にもしまだ眠らないのであれば、とお茶に誘われた。初めてのことだ。食堂ではなく居間に導かれ、ソファに腰を下ろす。
執事のダラスが程なくして2人の前にお茶を差し出した。ほんのり甘さのあるハーブティをいただく。
静かな空間だが、会話がほとんどないのはいつものことなので、少し慣れてきた。
「馬には乗れますか?」
唐突に聞かれ、旦那様の顔を見ると眉間に皺が寄っている。どうしたのだろう。とりあえず頷く。
「明日、もし良ければ遠乗にいきませんか」
「…旦那様とですか?」
なんだか話が見えない。馬に乗れるけど、いきなり遠乗とはどういうことだろう。
「無理にとは申しません」
僕の言葉を嫌がっていると捉えられたのか、早口に旦那様が言葉を発した。表情は変わらないけど、不快にさせてしまったのかもしれない。
「いえ、よろしければご一緒させてください」
慌てて言うと、ほんの少し旦那様の肩の力が抜けたように見えた。
「明日、お昼前に出るつもりです。朝はゆっくりで結構です」
はいと返事はしたが、それ以上はなんだか聞けなくて無言ままお茶を飲んだ。
翌日は気持ちのいい青空だった。乗馬用の動きやすい服に着替えて、案内されるままついていくと屋敷の奥まった所に厩舎があった。この辺りに来るのは初めてだ。
厩舎には4頭の馬がいた。その一頭に旦那様は近付く。
「これは私の馬で、ガイといいます。
後の3頭から乗る馬を選んでください。ただ離れにいる芦毛の馬はリラといって、少し癖がありますので、近づく時は気をつけて下さい」
アデラートが首を優しく撫でているのは、一際大きな青鹿毛の馬だ。黒々とした毛が光ってその筋肉質な体を覆っている。身体の大きな旦那様と並ぶと、小さな子供などは泣いてしまいそうな威圧感がある。
視線を感じて振り返ると、少し離れたところから芦毛の馬が自分を見ていた。そっと近づいてみると、つやつやとした毛並みでしなやかな筋肉がしっかりついている。
「リラ?触ってもいい?」
その馬に話しかけてみると、触れとばかりに首を下げてくる。顔を撫でてみると、うっとりと濃いまつげが下がる。その下で、きれいな瞳が見つめてくるのが、とてもかわいらしい。
「旦那様、この子に乗ってみてもよろしいですか」
「賢い馬です。あなたを受け入れたようですし、乗ってあげて下さい」
鞍を付けてもらう間に、他の馬も撫でて待つ。どの子も賢そうな顔をしている。黒いキラキラした目で見つめてくる。また今度ね、と撫でているうちにリラの準備が終わる。
声をかけて、ひらりとその背に跨る。こちらにきて乗っていなかったが、馬場で少し動くと問題なさそうだった。
「では、ついてきて下さい」
声をかけられ、先導される。
どうやら旦那様と2人でお出かけのようだ。嬉しくて、手綱をしっかり握り、後を追った。
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