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8.看病
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反射的にアデラートは手を引いた。ぼんやりしたシェリルノーラは、何をされていたのか分かっていないようだった。
「……旦、那様?」
ゆっくりと視線が合い、弱々しい声で自分を呼ぶ。
「熱があります。休めばよくなりますから」
怖がらせないようにゆっくりとそう告げてみたが、シェリルノーラは小さくすみませんと返答したのみで、また目を閉じてしまった。
しばらくするとシェリルノーラの震えも治まり、額に大粒の汗をかきだした。執事がワゴンに水の入ったタライと水差し、小さくカットされた苺などを持って入ってきた。そのまま何も言わず、静かに退室する。
何も告げていないのだが、いつも意図を汲んで動いてくれる彼らしい。
「シェリルノーラ様、薬を飲む前に少しだけでも食べてください」
眠ってしまったのかと思ったがが、声を掛けて口元に苺を持っていくとシェリルノーラは目を閉じたまま小さく口を開けた。熱でよく分かっていないのだろう。少し顔を横に向け、まるでひな鳥のように苺を1個分ほど食べさせると、口を開かなくなる。
水分を取る意味でももう少し食べさせたいのだが、今は無理そうだ。仕方なく、熱い身体を支えて医師が置いていった熱冷ましを飲ませると、素直に飲み込んだ。
初めて触れたその身体は、うっすらと筋肉はついている男の身体ではあったが、余りに華奢で頼りなかった。それは力が入っていないからだけではなく、彼の存在そのもののようにも思えた。
薬を飲ませ横にしてからは、布団を外したり掛けたり、汗を拭いたりと、アデラートは離れず世話をやいた。
戦場にいれば怪我は日常的で、その手当てなら一通りできるのだが、病人の世話などほとんどしたことはない。しかし、他の者に任せることができなかった。
昼を過ぎると、薬も効いたのかやや呼吸が楽になったようだった。かなり汗をかいているので、一度着替えさせたい。自分が行ってよいものか躊躇したが、近くには裾の長いシャツ型の寝衣が置いてあった。
眠るシェリルノーラに小さく声をかけ、毛布をずらした。汗をすったシャツを脱がすと手早く拭いていく。その身体は傷ひとつなく、滑らかだ。
余計なことを考えそうになる頭を軽く振り、ぐにゃりと力のない身体を拭き、寝衣を着替えさせる。
少しさっぱりしたのか、先ほどよりは穏やかな顔で眠るシェリルノーラとは対照的に、ややぐったりした気分でそばの椅子に腰を下ろす。
毎日変わりなく過ごしているとは聞いていたが、彼が何を考え、何を感じているかなど考えたこともなかった。好きに過ごせばいいとは告げたが、突然婚姻させられ、知らない場所で一人過ごす彼に対して配慮が欠けていた。
怖がらせてはとは距離を取っていたが、、今思えばシェリルノーラの目には緊張はあるものの、最初から恐怖や嫌悪は浮かんでいなかった。
彼の存在をどうしてよいか戸惑っていたとは言え、シェリルノーラのほうがその困惑は上回っていただろうに。彼にとって酷なことをしていたと今更ながらに反省する。
引き寄せられるように、そっと胸の上に置かれた手をとった。美しいが女性とは違う、少し硬い男の手だ。まだ熱いが、自分は普段の彼の手の温度を知らない。
その手を離さないでいると、無意識なのか弱い力で握り返してくる。
自分を見る視線に気づき、その手を痛くないようにごく僅かな力で握り返してみた。
自分の手にすっぽり治まる手だ。その手が動き、人差し指と中指を握ってくる。指2本で彼の手にはちょうど良さげだ。
小さな迷い子のようだ。
親指で甲を撫でると、ぴくりと手が動いたが、目を閉じてその手を離そうとはしなかった。
「……旦、那様?」
ゆっくりと視線が合い、弱々しい声で自分を呼ぶ。
「熱があります。休めばよくなりますから」
怖がらせないようにゆっくりとそう告げてみたが、シェリルノーラは小さくすみませんと返答したのみで、また目を閉じてしまった。
しばらくするとシェリルノーラの震えも治まり、額に大粒の汗をかきだした。執事がワゴンに水の入ったタライと水差し、小さくカットされた苺などを持って入ってきた。そのまま何も言わず、静かに退室する。
何も告げていないのだが、いつも意図を汲んで動いてくれる彼らしい。
「シェリルノーラ様、薬を飲む前に少しだけでも食べてください」
眠ってしまったのかと思ったがが、声を掛けて口元に苺を持っていくとシェリルノーラは目を閉じたまま小さく口を開けた。熱でよく分かっていないのだろう。少し顔を横に向け、まるでひな鳥のように苺を1個分ほど食べさせると、口を開かなくなる。
水分を取る意味でももう少し食べさせたいのだが、今は無理そうだ。仕方なく、熱い身体を支えて医師が置いていった熱冷ましを飲ませると、素直に飲み込んだ。
初めて触れたその身体は、うっすらと筋肉はついている男の身体ではあったが、余りに華奢で頼りなかった。それは力が入っていないからだけではなく、彼の存在そのもののようにも思えた。
薬を飲ませ横にしてからは、布団を外したり掛けたり、汗を拭いたりと、アデラートは離れず世話をやいた。
戦場にいれば怪我は日常的で、その手当てなら一通りできるのだが、病人の世話などほとんどしたことはない。しかし、他の者に任せることができなかった。
昼を過ぎると、薬も効いたのかやや呼吸が楽になったようだった。かなり汗をかいているので、一度着替えさせたい。自分が行ってよいものか躊躇したが、近くには裾の長いシャツ型の寝衣が置いてあった。
眠るシェリルノーラに小さく声をかけ、毛布をずらした。汗をすったシャツを脱がすと手早く拭いていく。その身体は傷ひとつなく、滑らかだ。
余計なことを考えそうになる頭を軽く振り、ぐにゃりと力のない身体を拭き、寝衣を着替えさせる。
少しさっぱりしたのか、先ほどよりは穏やかな顔で眠るシェリルノーラとは対照的に、ややぐったりした気分でそばの椅子に腰を下ろす。
毎日変わりなく過ごしているとは聞いていたが、彼が何を考え、何を感じているかなど考えたこともなかった。好きに過ごせばいいとは告げたが、突然婚姻させられ、知らない場所で一人過ごす彼に対して配慮が欠けていた。
怖がらせてはとは距離を取っていたが、、今思えばシェリルノーラの目には緊張はあるものの、最初から恐怖や嫌悪は浮かんでいなかった。
彼の存在をどうしてよいか戸惑っていたとは言え、シェリルノーラのほうがその困惑は上回っていただろうに。彼にとって酷なことをしていたと今更ながらに反省する。
引き寄せられるように、そっと胸の上に置かれた手をとった。美しいが女性とは違う、少し硬い男の手だ。まだ熱いが、自分は普段の彼の手の温度を知らない。
その手を離さないでいると、無意識なのか弱い力で握り返してくる。
自分を見る視線に気づき、その手を痛くないようにごく僅かな力で握り返してみた。
自分の手にすっぽり治まる手だ。その手が動き、人差し指と中指を握ってくる。指2本で彼の手にはちょうど良さげだ。
小さな迷い子のようだ。
親指で甲を撫でると、ぴくりと手が動いたが、目を閉じてその手を離そうとはしなかった。
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