将軍の宝玉

なか

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15.誘い

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「お願いがあるのですが」

   旦那様が帰って来られて、昼間のことを話してしばらく保護してよいか聞いてみた。

「猫?構いませんよ」

   私のお願いはあっさりと受け入れられ、このまま飼ってもよいと言われた。お願いごとは遠慮せず、なんでもまずは言ってほしいという言葉とともに。



   保護した猫は泥と汚れを落としたら、真っ白だった。瞳の色は旦那様に似ているきれいな猫だった。
   あっという間に回復して、今ではすっかり元気になって、毛もつやつやだ。その生命力にとても感動し、うらやましくもあった。
   でも飼い猫より自由に生きたいかなと、一度庭に出してみたけど、私のそばから離れないし、どこかに行ってもちゃんと帰ってきた。

「ミー、おいで」

 呼ぶと小さくミーと鳴いて、頭を摺り寄せてくる。夜はベッドの足元に寝てくれて、初めて感じるほっこりとした気持ちを味わっていた。
   動物の毛は胸によくないと両親に言われて、病気から回復しても飼うことは許されなかった。
   例外的に馬だけは、嗜みとして限られた時間だけ許されていた。その短い時間だけが、生き物と触れ合う貴重な時間だった。今は付かず離れずの距離だけど、一緒にいられる幸福を感じることができる。

   正式にうちの子になって、名前をつけたら珍しく旦那様に笑われた。名前をつけて下さいとお願いしたら、 自分でつけるとよいと言われて、すごく悩んだのに。

   でも旦那様の優しい笑顔が見れたから、私は満足している。それに、ミーがいるおかげか、一緒にいる時の緊張もほぐれて、会話も増えているように感じる。


「お前は私のこと怖がらないな」

   夕食後、居間でくつろいでいる旦那様の膝の上で、ミーはその指を甘噛みしてる。反対の手で背中を優しく撫でられて気持ちよさそう。
   ミーはなぜか私と旦那様、最初に世話をしてくれたダラス以外には触らせてくれない。それどころか近づきもしないのだ。

「いや、私は人間にも動物にも大体怖がられてしまいますからね」

   私の目線に気づいて、旦那様が苦笑して説明してくれた。
   
「旦那様は優しい方です」

   思わず慌てて言ってしまって、恥ずかしい。旦那様から目を逸らしてしまう。

「前から私の副官のうちに誘われています。休みが会えばですが、いかがですか?」

   急な話題の変換に顔を上げると、優しい顔でこちらを見られていた。

「副官の方ですか?」

「はい。レイノルドと言って昔からの付き合いで、私の右腕のような男です。少々騒がしいのですが、いい奴です。奥方と小さな子がいて、この近くに屋敷を構えています」
 
  
   旦那様の右腕……。
   その言葉に胸がざわりとした。どんなに望んでも、自分には到底立つことのできないその場所。そこにいる男性。
   分かっていたはずなのに、ほの昏いものが胸に広がる。
 誰のせいでもない。そう、私がこうしてここにいるのは。


「気乗りしないのでしたら、良いのですが」

   黙ってしまった私に、行きたくないと捉えられたようだ。いけない。知らぬ間に表情をなくしていたのかもしれない。

「いえ、ぜひ」

   笑顔を見せると、旦那様は何か言いたそうな顔を一瞬した後、頷いてくれた。
  


   


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