拾われた後は

なか

文字の大きさ
43 / 53

43.手当てされました

しおりを挟む
   
「おいで、まずは汚れを落とそう。」

   有無を言わせず、抱き上げられて浴室に連れていかれた。ぬるめのお湯で僕の埃や汚れを落としてくれる。
   掌と胸の傷がぴりっと痛んだ。頬の腫れと、掴まれたところに痣ができた以外は、大した傷はなかった。右手首はいつの間にか、少し捻ったようだった。


   きれいになると新しい大きなバスタオルに包まれ、ソファに連れていかれる。水を渡されて飲むと、口の中も切れていたのか、痛みに顔をしかめる。カイルさんに顎に指をかけられ、口を開けさせられた。

「口開けて。ああ、少し切れてるな。」

   僕の口の中を見て、カイルさんがまた眉をひそめた。そのまま、顔を近づけると、ペロリと頬の内側を舐められた。

「カ、カイルさんっ。」

「痛かったか?」

   慌てて頭を後ろに引いて言ったのに、全然分かってない。そんなところを舐められるなんて、頬に熱がこもる。

   黙りこんでいると、頬に大きな湿布を貼られた。傷薬を塗られ包帯を巻かれる。カイルさんは慣れているのか、痛みを確かめてくれながも、するすると手当ては進んだ。

   最後にカイルさんは、僕を怖がらせないように、声をかけてから、バスタオルをはだけさせた。上半身の前面が露わになる。

「跡にならないといいな。」

   そう言って、カイルさんは僕の胸の傷に舌を這わせた。

「ひゃっ。」

  思わず声が出て、口を手で塞ぐ。何度もそこを舐められ、湿った音が響いた。
   
「カ、カイルさんっ。」

   なんとか呼びかけると、カイルさんの舌が止まる。

「すまん、止まらなくなりそうだ。」

   それって、やっぱり、そういうこと?

「カイルさんは、えっと、あの、僕のこと……。」

「好きだって言っただろ。食べてしまいたいよ。ハルカはこういうことは嫌か?」

「い、嫌じゃないけど、あの、僕、そいういうことしたことなくて、それに、僕、男ですよ?」

「男なのは知ってる。」

   カイルさんは僕にバスタオルをまたきちんとかけて、ソファの前に跪いた。そして、僕の両手を取る。

「あんなことがあったハルカに、今告げるべきじゃないと分かってる。もう、ゆっくり休ませてあげなくてはいけないことも。」

   親指でそっと僕の手の甲を撫で、真剣な目をした。

「ハルカ、俺の伴侶になってほしい。」

「はっ、伴侶って、奥さんってこと?いきなり?!僕のこと、そういう意味で、えっと、」

   カイルさんが聞きなれない言葉を口にする。僕はもういっぱいいっぱいで、何がなんだか分からない。

「そうだ。お前の伴侶になりたい。ハルカの居場所になりたい。俺じゃ、ダメか?」

   強い視線が弱まり、僕の大好きな深い青色が不安そうな色を乗せる。

「っダメじゃない。」

   咄嗟に言葉が出ていた。次の瞬間、きつく抱きしめられる。

「痛っ。」

   頬が当たり、声が漏れた。カイルさんはばっと体を離し、慌てて謝る。

「すまない。…今日はもう休もうな。何か食べられそうか?」
   
   色んなことがあったせいか、お腹がすいた感じはしないので首を振る。しかし、スープだけでも摂るようにと、カイルさんが部屋を出ていった。


   カイルさんがいない間にパジャマに着替えておく。ボタンを留める時に、胸の傷が見えてさっきのことを思い出し、1人赤くなる。今日はもう容量オーバーだ。考えないようにしよう。

   すぐに温かなスープを手にカイルさんが戻ってきた。温かなスープがすぐに出てくるってことは、クロスさんがきっと温めなが僕を待っていてくれたのだろう。皆には明日ちゃんと謝ろう。


   ベッドに入ると、急に眠気が襲い、おやすみなさいをはっきり言えたか覚えていない。

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

処理中です...