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第二章 藍と学校

86. 永訣の夜 I wish you had loved me.

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 「じゃあなんで?なんでみんなはよくて、私も先刻さっきのアイちゃんとラアル様みたいにっ!あの娘みたいに!!先刻さっきの――

 ◇◆◇

 「わたくしが、偉いのか?」
 「私が、偉いのか?」

 「偉いなどとは程遠いですが……。」
 「偉いに決まってるじゃない!」

 「わたくしは“この国を統治とうちする任務”をファンタジア国王から拝領はいりょうした、ミルヒシュトラーセ家が1人!」

 「私は“この国に君臨くんりんする権利”をファンタジア国王からたまわった、ツエールカフィー公王こうおうが娘!」

 「――“アイ・サクラサクラ―ノヴナ・フォン・ミルヒシュトラーセ”だ!!……覚えておけ!!」

 「――“ラアル・ツエールカフィーナ・フォン・ファンタジア”である!!……覚えておきなさい!!」

 ◇◆◇

 ――私だって!!あの娘みたいにぃ!!私だって!!アイちゃんがいれば――」

 アイはアルタークの両手をそっと取り、けれども愛しさが伝わるようにぎゅううぅっとにぎった。

 「アルちゃん……。わたくしは――」

 その時アルタークはある言葉を思い出した。人間体排斥委員会アー・アニマ・クランに襲われた時にいわれた言葉だ。心の根をずっと蝕んできた言葉だ。

 ◇◆◇

 ――オマエが人間体アニマだというのは1だろう?どうして我々が知っていると思う?オマエは――

 ――裏切られたんだよ!――

 ◇◆◇

 そして笑顔でアイは告げた、アルタークにとっての永訣の言葉さよならを――

「――アルちゃんを守りたいの。
 だってアルちゃんは……“人間体アニマ”、でしょ……?」 

 ◇◆◇

 そう誰にもアルちゃんの性別がバレないようにそっと伝えると、アルちゃんは何かを諦めたような、何かに得心がいったような、そんな瞳でうなずいた。

 ――ごめんね、アルちゃん。
 
  人間体アニマがどれだけ弱いかは。だって皆には秘密にしてるけど、“わたくしも人間体アニマ”なんだから。

 聖別の儀セパレーション以来人間体アニマより、“アニマ・アニマ”として生きてきて分かった。どれだけ人間体アニマの肉体が虚弱かってことに。

 流石にアルちゃんは、アニマ・アニマのわたくしとは違ってただの人間体アニマだから、わたくしよりは力は強いだろう。それでも心配だ。 

 それに、わたくしは幸いこころをもつものプシュケーしのヘルツの量でごまかしてるけど、身体能力はほんとうに非道ひどいものだ。いつでも身体にヘルツを纏っていないとそこら辺の幼子にさえ力負けする。

 だから、には絶対に安全な場所にいてほしい。

 わたくしはどうなってもいいから――

 ◇◆◇

 そうか。腑に落ちた。なんだか不思議とスッキリしたよ。アイちゃん。

 つまりアイちゃんは、”ってことを言いたいんだね……。

 私は人間体アニマだから駄目で、ラア……ファンタジア王女殿下は獣神体アニムスだからいいんだ?
 肩を並べても。あの娘とはよくて私とじゃダメなんだ。だってあの娘は獣神体アニムスなんだから……!
 
 アイちゃんも結局人間体アニマをそうやって……獣神体至上主義委員会アニムス・クランの連中みたいに!
 ……クラスメイト達みたいに……!!

 私とじゃあ世界の半分を分け合えないんだ。
 私とじゃ安心できないんだ……私が“人間体アニマ”だから……平民だから……あの娘と違って、“貴族じゃない”から……!!

 ◇◆◇

 ――アイにとっての親友とは、“自分を犠牲にしてでも守ってあげたい相手”だった。
 
 ――アルタークにとっての親友とは、“お互いを守り合うもの”だった。

 “対等な”、関係だった――

 ◇◆◇

「分かったよ……アイちゃん。怪我をしたの皆と一緒にいることにする。ありがとうね、気を使ってくれて……。」

 アルちゃんの様子が変な気がする。どことはハッキリと言えないけれど、いちばんの親友の様子がおかしい時くらいわたくしにだって分かる。

 ちゃんと“対話”しないと、じゃなきゃまた――

「アルちゃ――」

「アイ!!!」

 爆発音のような声がした。ラアルさまだった。

「皆の治療がある程度終わる前に方針をきめておかないといけないわ!
 急がないと――」

「……!……分かりました!すぐ行きます。」

 アルちゃんに向き直って両手を握って、伝えるその手には握り返す気力はもう残っていないようだった。やっぱりアイちゃんを作戦から外して正解だった。こんなに憔悴しょうすいしているんだから。

「アルちゃん……できるだけ皆と一緒にいてね。危ないと思ったらすぐ逃げて……とにかく無事でいてね……!」

 クルリと振り返りラアルさまの方へ一步踏み出した。その土はどこか湿しめっていて少し足を取られて、なんだか足取りを重くする。

 ◇◆◇

「――アイ!先刻さっきの続きだけど――」

「はい!
 できるだけ単刀直入に行きましょう。
 この国の“致命的な問題”とはこの国が内部分裂を起こしているということです。」

「――つまり、アイのお母様と私のお母様が対立していること。し、本来なら起こり得ないミルヒシュトラーセ辺境伯の越権えっけん行為も目立ち始めた。
 ……気を悪くしないでね、アイ。」

「大丈夫です……実際そのとおりですから。」

「あーもー!!つまり、どういう事!?」

 シビレを切らしたはるひが2人に食って掛かる。
 アイとラアルが静かな瞳で答える。

「結論から言うと、神聖ロイヤル帝国は
 “我々に内戦を起こさせ、その隙に乗じてパンドラ公国を滅ぼす”
 つもりでしょう。」

「そして、
 “パンドラ利権をパンドラ公国の宗主国そうしゅこくであり、仮想敵国であるファンタジア王国から奪う”
 ということよ。」

 かげろうが得心がいったように言葉を挟む。

「確かに……ユスカリオテのイダには、自分達は公王派はだと名乗り、辺境伯派の不安を煽る。すると彼らは公王派がアイ様を狙って起こした事件だと考える。
 
 そして、ミルヒシュトラーセ家のお膝元であるマンソンジュ軍士官学校の林間学校で、王女が元マンソンジュ生の副会長達に殺されたとあれば、公王派は辺境伯派がらんを起こしたと主張するでしょう。」

 クレジェンテが疑問を口にする。

「でもじゃあ……このユスカリオテのイダのような裏切り者は……もうこれ以上は内部に裏切り者はいないと?」

 はるひが小馬鹿にしたように応える。

「いや~居るでしょ。
 ウチらの奇襲に対する訓練が始まったのはいいもののまだ全然終わってないのがその証拠じゃん?
 先生たちが座学座学で後回しにしてさ。
 ずっと机上きじょうの勉強ばかりしてたのも内部のものが、ウチらに経験をできるだけつけさせないためっしょ。」

 クレジェンテが希望的観測を伝える。

「でもそれは、裏切りのためではなく、公王の娘とミルヒシュトラーセ家の者に何かあった時に責任が取れないから、後回しにしていたのでは――?」

 はるひがククッとわらう。

「あのねぇ。人間なんて簡単に裏切るの。」

 アイをみながらそう言った。
 アイもはるひも聖別の儀セパレーションのときの自分を思い出していた。

「ええ、クレくん。哀しいですが、人間は追い詰められるとすぐに裏切ります。それが人間なんです。
 それに淡い記憶ですが、お姉様は1年生の冬学期で既に奇襲対策訓練を終えていたように思えます。わたくしなんぞより、もっとこの国とって価値のあるおねえさまが、です。」

 ラアルがオトメアンのオルレを思い出しながら、アイの言葉を引き取る。

「そうね……人間は……、あまりに人間的だものね……。
 
 それにおかしい点がもう一つあるわ。
 これはずっと気になっていたのだけれど、仮にも王女である私が蛮族ばんぞくとの国境近くまで行くのに、引率……まぁ言っちゃえば警護よね。
 それが1人だけというのもありえない。あのナウチチェルカという先生が飯盒炊爨はんごうすいさんの前にボヤいてたでしょ?」

 アイがハッとしてつぶやく。

「確かにチェルせんせいは
 
 『まぁ今回の林間学校はボクが監督しているのでね。しかもなぜか一人で――』
 
 と仰っていました……!
 その後手を触り合ったからよく覚えています。」

 ラアルが言いにくいことを無理やり口に出す。

「アイは前からあの先生と仲がいいわよね?」

「は、はい……?」

 目を逸らして伝えるラアル。

「でもおかしいと思わない?
 1人しかいない引率の先生が、これだけのことが起きても、寮舎が燃え落ちても、こんなに状況を整理するために時間を使いながら待っても――」

 アイはなんだか後頭部に重みのある黒いもやもやがかかったような、厭な予感がした。

「え……え。」

「――?」
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