🔴全話挿絵あり《堕胎告知》「オマエみたいなゴミ、産むんじゃなかった。」「テメェが勝手に産んだんだろ、ころすぞ。」🔵毎日更新18時‼️

ADPh.D.

文字の大きさ
149 / 189
第二章 藍と学校

145. 生まれて初めて For the First Time in Forever

しおりを挟む
「お母様!本気ですか!?アイを危険が潜んでいるかもしれない林間学校に送り出すなんて!!」

「……シュベスター。落ち着いて……大丈夫だよ。あの林間学校には学園最強の――をつけている。それに、もしことが起こったならば――の――だっている。何を心配することがあるの?」

 エレクトラはと話すときだけのやさしい口調と声音だ。

「……ですが、アイに少しでも危険が及ぶなら――」

「――シュベスター。少しはを信用したら?それともあの子たちはそんなに頼りにならない?」

「……わかり、ました。ではせめて私もアイに付き添って、林間学校に――」

「――言ったはずだよ。ミルヒシュトラーセ家の人間は、このパンドラ公国で最強だとね。
 ふふっ……貴女ももう少し、を信頼してみたら?

 ほら、アイに迫る危険そんなことよりこのお茶菓子でも食べて落ち着いて、久しぶりに母と娘で他愛のない話でもしようよ。?ほら、こっちにきてとなりに座ってよ、ね?

 ほら!久しぶりだからシュベスターの大好きな種類のコーヒーと、お菓子ばっかり用意したんだよ?抱きしめさせてよ~、もうシュベスター不足で死んじゃいそうなの、ね?お菓子も食べさせてあげる。ほらほら、ひざに座ってよ!」

 エレクトラの瞳は、声は、ほんとうにやさしい、母の慈愛を宿していた――。

 ◇◆◇

 お母様は絶対に正しい。それは世界の真理だ。だけど、今回はそのお母様の判断でアイは死ぬかもしれなかった。

 ……

 もしこの先、お母様の判断でアイが危険にさらされるようなことがあれば……私は……私は。

 ……どうするんだ?
 
 世界でいちばん正しいお母様と、世界でいちばん愛しい弟……その二人が衝突するようなことがあれば、私は――。

 ……どっちの肩を持つんだ……?

 アイの柔らかな身体を抱きしめていると、お母様に柔らかく抱きしめられている時を思い出してしまう。

「……アイ……私は――」
 
 ◇◆◇

「――アイ様!」

 シュベスターあねの声は勢いよく、病室に飛び込んできた闖入者ちんにゅうしゃの声でさえぎられた。
 それが良かったのか、問題を先延ばしにしただけなのかは分からない。

「……!……かげ、ろう。よかった……!無事だったんだね……怪我はない?
 あったらわたくしが――」

「――アイ様、まったく……目覚めてすぐに他人の心配とは……俺たちの中で一番大きな怪我をしたのはアイ様ですよ。
 アイ様が砂漠の黒死病デシエルト・ペストを引き付けてくれたおかげで、俺たちは全員無事です。」

 かげろうが歩み寄りながら、説明する。

「かげろー……ありがとう、“あの時”助けてくれたでしょ?あの時は意識が朦朧もうろうとしててあんまり覚えてないんだけど……。
 。」

「……あぁ、アイ様……。」

 かげろうがアイを抱擁しようと近づきかけた所で、アイが大きな声を出す。

「……あ!」

「「……!?」」

 かげろうとシュベスターが驚く。

「おねえさま……わたくしはどれほど眠っていたのですか?」

 アイが急いで姉に問う。

「ん?あ、ああ……えーと、約二週間ほどかな?」

「……!かげろー!それ以上近づいちゃだめ!!」

 慌てて手でかげろうをせいするアイ。

「えっ……!ア……アイ様……?そんな……。」

 拒絶されたかげろうは目に見えて落ち込む。

「あっ!ちがくて!かげろうがイヤとかじゃなくて!ただ……わたくしずっと眠ってたし、髪だってボサボサだし……きっとくさいし……。」

「アイ……身体なら私たち兄姉が毎日拭いていたし、それにこうやって抱きしめていてもいい匂いだぞ……?むしろいつもよりいい香りが強まって……。
 ……――」

 シュベスターがアイの頭頂部に顔をうずめて深呼吸を始める。

「そうですよ!アイ様!ほら!あれです!
 地獄系ロシア人のドストエフスキーの書いた、『カラマーゾフの兄弟』にも真なる聖者の身体は死しても腐ることはなく異臭も放たないとあります!!」

「……でも、その小説でも結局死体腐ってたじゃん!」

「……あの長老と違ってアイ様はほんとうの聖者です!いや……神です!神の御体みからだが異臭を放つことがありえましょうか……いいえ、ありえません!」

「……いや、だから!そういう問題じゃなくて!かげろーにはこんな姿見られたくないの!助けてもらって、お見舞いに来てもらってごめんだけど!ほんとうにごめんだけど!今は帰って!お風呂に入って髪も整えてから会いに行くから!!」

「でも……!」

「ダメ!……それ以上近づいちゃダメなんだからね!ごめんね!でもダメなの!!」

 ◇◆◇

 アイに初めて拒絶されたかげろうはトボトボと帰っていった。かなりショックを受けたようだ。アイは心のなかであとで必ず謝って助けてくれたお礼も言おうと誓った。

「なぁ……アイ?」

 今度はアイを後ろから抱きすくめてうなじと髪の匂いをかぎながらシュベスターあねが話しかける。

「……は、はい?おねえさま。」

 シュベスターは風紀委員長の活動で疲れたり、なにかストレスが溜まるとよくこうやってアイを吸うので、アイも慣れてしまっている。

「……一番最初にアイが目覚めた場に立ち会ったファンタジア王女殿下とは普通に話したんだろう?
 ……私ともこうやって普通に話せているし、こんなに密着してもなされるがままだ。」

「……?……はい?……そうです、ね?」

「……でもかげろう君が現れたら、お前は恥ずかしがった。」

「……え、ええ……そうでした。……?」

「なんでだ?……というかなんでだと思う……?」

 姉は答えを知っているらしい声音で、幼子に言い聞かせるように話す。

「……え?……だってだってそれは……わたくし二週間もお風呂に入ってないし、髪もボサボサだろうし……!」

「でも私やファンタジア王女殿下とは普通に話せたんだろう?」

「……たし、かに……?
 おねえさま、なんででしょうか?」

 上目遣いで自分の匂いを嗅ぎ続けている姉を見遣みやるアイ。

「……どうして、だろうな?」

「あ!その反応……!おねえさまは知ってるんですね……?」

「さぁ?……どうだろうなぁ……?」

「おしえてください!
 アイはなんでこんな気持ちになるんでしょうか?」

「さぁなぁ……。……なんでだろうなぁ……?」

「あ!とぼけてますね!おねえさまのことならアイはなんでもお見通しなんですよ!嘘をいているは分かってます!」

 アイが両手で丸を作って双眼鏡のようにして姉を問い詰める。

 シュベスターは顔をそらして言う。

「あ、あー……なんというか。
 私から言えることは、確かにかげろうくんはいい子だ。小さい頃から知ってるし……いい子なのは分かってる。
 だが、まだアイには……“そういうこと”は早すぎると思うんだ。」

「むぅ~だからっ!“そういうこと”ってなんなんですか~!?」

「だから……それはまだ幼いお前にはまだ早い。……早すぎる……!」

 アイをぎゅううと抱きしめて誤魔化すシュベスター。

「あいはおとなですっ!」

「まだ成人もしていないだろう!
 それにこんなに小さいのに!」

「もう小さくありません!
 あいはオトナですっ!」  

「大人は自分のことを『大人だ』などとは言わない!……そんなことより、アイ。無事でよかった。」

「……ごまかそうとしてませんか?」

「……いや、本心に決まってるだろ?私がお前に“嘘をいたこと”があるか?」

 アイは白い嘘ホワイト・ライを思い出す。
 ……思い出した……が。

「……いえ、ありません。」

「ほんとうに、ほんとうに心配したんだぞ?」

「……ええ、おねえさまの言葉は……愛情は何故か信じられるんです。いつだって……行動で、態度で……“こころ”で示してくださいますから。だからあいは今日まで生き永らえてこられたのです。」

「……アイ……。私は――」

「――アイちゃん!!
 ……目が覚めたってほん……と……う……?」

 ガラッとドアを開けて入ってきたクレジェンテがベットの上でシュベスターあねに抱っこされているアイを見て固まる。

「……し……失礼しましたー……。」

 クレジェンテはそのままそっとドアを閉めて出ていこうとする。

 学友に家族に甘えている姿を見られて、アイの顔がボンッと真っ赤になる。

「わぁ~!まってクレくん!誤解なんです~!!」
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...