🔴全話挿絵あり《堕胎告知》「オマエみたいなゴミ、産むんじゃなかった。」「テメェが勝手に産んだんだろ、ころすぞ。」🔵毎日更新18時‼️

ADPh.D.

文字の大きさ
168 / 189
第三章 iと姉

164. 藍と女王の出会い Indigo meets the Queen

しおりを挟む
「……して、わたくしが他人の認知を歪ませる条件とは……?」

「……あぁ?……あぁ、その話だったな。
 まず視界でお前をとらえることだ。
 お前を見たものは立ちどころに雷に打たれ、馬から投げ出されたようになって目から鱗が落ちる。聖書の“パウロの回心かいしん”みてぇにな。
 そして次はフェロモンと体臭だ。お前は花のように狡猾こうかつにその“美しい”見た目で相手を誘惑したあと……引き寄せて自分の匂いとフェロモンを浴びせる。そうすれば相手はもう終わりだ。」

 ……嘘だ……。
 
 ……だって……じゃあ……あの日、あの時……かげろうは……かげろうは……。初めてった日あの時から?わたくしを好いてくれたのは、真実じゃない?……わたくしが、わたくしがそう仕向けていた……?

 嘘だ……だって、いやありえない、だって。
 
 かげろうはわたくしの――。

 ◆◆◆

「だから俺はテメェにされねぇように、俺と会う時は仮面で顔を隠させて、フェロモンと匂いは外套で抑え込ませた。」

 …………?
 “母の愛”で洗脳されていると思っていたわたくしが……周りの皆を洗脳していた?

 じゃあかげろうがわたくしを好いてくれているのも……。ラアルさまが初めてわたくしにったときに心配してくださったのも……?

 じゃあじゃあ……おにいさまやおねえさま達がアイにやさしいのは?

 全部全部……ぜんぶ……彼らの本心……じゃない……?

 嘘だ……じゃあわたくしは……何を信じればいい……?誰か本心からわたくしを好いてくれている人は……この世に一人でもいるのか……?

「だかられを使え、そのクソみてぇな能力を……あのおろかなツエールカフィー公王になぁ……。」

 ◇◆◇
 
「……貴公がアイ・ミルヒシュトラーセ。」

 公王様の声は決して大きくはないが……王座の間に響き渡る威厳があった。慌ててひざまずく。

「……!……はいっ!わたくしのようなけがれた身を御前おんまえに晒すことをどうかお許し下さい……!ファンタジア女王殿下。やつがれの名はアイ――」

「――面を上げよ。アイ・ミルヒシュトラーセ。」

「は……はい……!」

 恐る恐る顔を上げると威厳に満ちた顔で女王様がわたくしを見ている。わたくしの身をつんざくようなまなこで――。左足を椅子のうえに上げて、その膝に肘を乗せて座る姿には後光がさしていた――。

「貴殿は其処そこに居る我が娘、ラアル・ツエールカフィーナ・フォン・ファンタジアの命を救った。れはこの国の王女を救ったという意味だけを持つのではない。

 貴様も知っているであろうが、元々このパンドラ公国はファンタジア王国が直接西の蛮族ばんぞくどもと国境を接しないように作られた緩衝かんしょう国家である。」

「……はい。」

「そして公国の王は代々ファンタジア王国の王族が務める……今私がこうして君臨くんりんしているようにな……。……つまり、貴君は超大国ファンタジア王国の王族を救ったということになる。」

 慌てて否定しようとする。

「……いえ、その……わたくしは、ただ……わたくしも、ラア……ファンタジア王女殿下には救われましたし――」

「――女王の言葉を否定するのか?」

「いっいえ……!滅相めっそうもございません……!」

「ならば聞け。貴殿はこの国の敵……新生ロイヤル帝国から王族を護った。
 ――何か一つ願いを叶えてやろう。。なんでも言ってみよ。」

「……なん、でも……?」

「あぁ……富か?権力か?名声……はこの一件でもう得ているか。」

「……ならば、一つだけお願い申し上げても宜しいでしょうか?」

「あぁ……なんでも言ってみよ。」

「……でしたら、もし宜しいのでしたら……ミルヒシュトラーセ家のわたくしとファンタジア王女殿下が友でいることを許しては頂けないでしょうか?」

 辺りがシン……と静まり返る。
 公王派の重鎮じゅうちんたちが皆黙り込んで、わたくしを見ている。隣でラアルさまが驚いているのが分かる。

 ……公王様は……少しだけ、ほんの少しだけ目を見開いたような気がした。

「……そんなことでよいのか?富も名声も権力も……なんでもいいと言っているのだぞ?ほっするものは、貴公に欲望はないのか?」

「――あります。
 わたくしが得たいもの“れ”はこの世の何よりも得難えがたいものです。何よりも得ることが難しいものです。
 そしてれは……
 ……つまりれは“一人の友”です。一人の友を得るという“偉業”です。」

「……アイ……。」

「……。」

 公王様が黙り込み、辺りを静寂せいじゃくが支配する。
 静寂しじまは意外なものによって切り裂かれた。

「あははは!」

 公王様の笑い声だ。

「そうかそうか!どんな富よりも一人の友か!確かに真理やもしれぬ。ほんとうの友など貴族や王族には願うべくもないことだ。皆権力に群がってくるからな!貴様!面白いな……!改めて名を名乗ってみよ……貴様の真名まなを……!」

「はい……わたくしの名はアイ・サクラサクラ―ノヴナ・フォン・ミルヒシュトラーセ……サクラ・マグダレーネマグダラのサクラの子であります。」

「そうか!アイ!貴様と我が娘ラアルの親交を認めよう!ここに公に、認めよう。是非とも仲良くしてやってくれ!くくくっ!」

 ◇◆◇

 その後ラアルさまとツエールカフィー公王、そしてわたくしだけで会談をしようということになり、茶室へ招かれる。

 ……が……なんだろうこの光景は……。

「ラアルちゃん~!会いたかったわよ~!ぎゅうう~!もう離さないんだから~!!」

「お母様!私も会えて嬉しいですが、最近会ったばかりではないですか!」

「毎日会わないと足りないわよ~!一時間離れてるだけでもおかーさん寂しいのに~!!」

「はいはい……ぎゅー、お母様、ラアルも寂しかったですわよ。」

「ラアルちゃん~!!」

 ……先程までの威厳ある公王様は何処へ?
 本当に同一人物なのかな?
 そんな事を考えていると……。

「アイちゃん!アイちゃんって呼んでもいいわよね!ね!アイちゃん可愛いわね~!最初に見たときから抱っこしてみたいと思ってたのよ~!」

「わわっ!」

 バッと此方こちらに顔を向けた公王様に抱き上げられる。

「公王様……おたわむれを!わたくしのこのようにけがれた身を御身おんみに触れさせるなど……!!」

「そんなに畏まらなくていいのよ~?
 先刻さっき臣下しんかの目があったから公王モードだったけど、今の私はただのラアルちゃんのお母さんなんだから!」

「……は、はい……?」

「アイ……お母様は他人と接する時と身内と接する時で……その……ちょっとだけ、ギャップがあるのよ。」

 “ちょっとだけ”?これで?

「アイちゃんはなんだかいい匂いもするわね~?やっぱりラアルちゃんと一緒で可愛い子はいい匂いがするものなのでかしら!」

 クンクン嗅がれるが公王様に向かって抵抗する訳にもいかないのでなされるがままでいる。
 でも恥ずかしいことは恥ずかしい。

「あの~ラアルさま……?どうすれば?」

「お母様!アイが困っているわ!そろそろお茶を始めましょう?」

「ん~?そうね~でもヤダヤダ~“もうちょっと”だけ~。」

 ◇◆◇

 今わたくしはおそれ多くも公王様のひざの上に座っている。それにしても長い“もうちょっと”だったなぁ……。やっぱりわたくしの身体が放つ“呪い”のせいだろうか……?クンクンと自分の匂いを嗅ぐが分からない。

「もう~ラアルちゃんったらなかなか帰って来てくれないんだから~。」

「お母様……マンソンジュ軍学校は西側の辺境近くで、ここは真反対の西のファンタジア国境近くですよ?」

「でもでも~ラアルちゃんに会えないとお母さんさみしいのよ~?」

「まぁ……私もさびしいですが。」

「それにラアルちゃんがお熱なアイちゃんにもやっと会えたわ~。」

「お母様!お熱とか言わないでください!」

「でも~帰ってきたらアイちゃんの話しかしないじゃない?お母さんちょっと嫉妬しちゃうわ。」

 ……まるで姉妹のような母娘だな……と思った。

 ――ウチとは大違いだ。
 
 ……こんな所まで正反対じゃなくてもいいのに。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...