20 / 59
第20話 壁の花
しおりを挟む
ハープの優しい音色が幾重にも重なり、音のさざ波を作り出す。
その合間をフルートが泳ぎ、時折シンバルやティンパニが跳ね回る。
全ての音が集い、たったひとつの荘厳な音楽となって世界を満たしていく。
「ダンテ様はダンスもお上手なのですね」
アンジェリカとダンテ。
ふたりは互いの体を寄せ合い、ゆっくりと揺蕩いながらお互いの瞳だけを見つめ続ける。
ダンスホールには多くの人が二人と同じくダンスに興じているのだが、今の二人の視界は相手だけで占められており、他人が入る余地は一切ない。
「君のパートナーを譲りたくはなかったのでね」
ダンテの口調は少し砕けたものに移っている。
もしダンテ以外の男がこんな口を聞けば、アンジェリカの不興を買ってしまうだろう。
ダンテは、ダンテだけが許された特権を手に入れつつあった。
「ふふっ、5曲以上は流石にマナー違反でしてよ」
舞踏会、特に若者たちが集う場合は結婚相手を見定める場でもある。
生涯のパートナーを見つけるために、なるべく多くの人同士が顔を合わせる必要があるのだ。
しかしダンテはそれすら許さないとばかりにアンジェリカとのダンスを続けた。
「……アンジェリカ、私は君に秘密を明かすと約束しました。今日は何が知りたいですか?」
ひとしきりむつみ合ってから、ダンテはようやく本題を切り出した。
狙いはむろん、情報を引き出すこと。
アンジェリカ自身のことや家のことまで、とにかくどんな些細な事でも彼女を攻略するためのカギになりうるからだ。
「私が知りたい事……、そうですわね」
アンジェリカがどこかイタズラをしかける少女めいた笑みを浮かべ、上目遣いでダンテのことを見つめる。
「あなたはいったいどなたですの? ダンテ・エドモン・ブラウン様?」
そう言われた瞬間、ダンテは表情や態度の変化を全力で押さえ込んだ。
ダンテは未だ名前しかアンジェリカに伝えてはいない。
もちろん、ブラウン家がダンテを養子に取ることは皇帝へも伝えてあるため、調べようと思えば調べられる。
しかし、ダンテの名前を知ってから数日でブラウン家にまでたどり着けたのは、ブルームバーグ伯爵家の力あってのものだろう。
「ブラウン家には子どもが居ないはずでしたのに、貴方はいったいどこから現れましたの?」
「…………」
どうやらかなり子細に調べられているらしかったが、それでもダンテの事を邪険に扱わないのは、ダンテ自身に興味があるからだろう。
ダンテは、アンジェリカ自身に興味があると言い続けた過去の言動に助けられた形になる。
「……私には、3人の父が居ます」
慎重に言葉を選びながら述懐する。
こう問いかけられた場合を想定して答えは既に用意していたものの、それがアンジェリカを納得させられるとは限らない。
ほんの少しでも彼女を失望させるようなことがあれば今まで積み上げてきたもの全てが崩れ去ってしまう。
ダンテは出来る限り自然に、それでいて自信に満ち溢れた表情を浮かべる。
「一人は私に貴族の血をくれた父。もう一人は私を商品として育てた父。そしてブラウンの名をくれた父です」
「そうなのですか……」
貴族だからこそ血を残さねばならないため、妻以外の女性と子をなすことがある。
時にそれが行き過ぎてしまった場合、平民との間にも産まれてしまうことがあった。
ダンテはそれに当てはまらないのだが、盗賊に誘拐され、そのまま育てられたなどと言えるはずがない。
庶子ということにした方が納得してもらえるという判断だった。
「ああ、商品と言いましたが、私も二番目の父を利用してこの場に戻って来たのですから、共犯の方が正しいかもしれませんね」
貴族の血を半分ひいているとはいえ、半分は平民の血が混じっている。
そのままでは表舞台に立つどころか疎まれて殺されることすらある。
この舞踏会でアンジェリカと顔を合わせているだけでも十分に優秀な証左と言えるのに、ダンテはさらにその上を行っているのだ。
それだけの実力を持ち合わせていて自分は操り人形ではないと、ダンテは言外に主張したのだった。
「…………」
アンジェリカの表情は変わらない――ように見えて少し影が差しこんでいる。
ダンテの話を聞いて、同情の念を抱いているのかもしれなかった。
だからダンテはそれらを吹き飛ばすために、わざと快活な笑みを浮かべ、両手に力を籠める。
「アンジェリカ。私はこの生を受けたことに、とても感謝したいのですよ」
「どうしてですか?」
これは紛れもない事実である。
ダンテは自身の数奇な人生に、心から感謝していた。
なぜなら――。
「私は私の足で立ち、どこへでも自由に歩るいていくことができる」
それこそがダンテが最も好むもの。
ダンテ自身を形作っているもの。
「自由。それは何ものにも勝る幸いなのです」
「……そう、ですか……」
アンジェリカには自由などない。
ずっと父親の決めた箱庭から出ることも叶わず、結婚相手すら自分で決めらない。
ブルームバーグ家の財をもっとも効率的に増やすための手段として使われる。
アンジェリカもその事をよく分かっていて、だからこそ自分のできる範囲で精いっぱいの自由を謳歌しているのだろう。
それでベアトリーチェへのいじめが許されるわけではないが。
「……アンジェリカ」
ダンテはアンジェリカの頬に手を添え、うつむいていた彼女の顔を上向かせる。
アンジェリカの瞳にくすぶっているのは、憧憬と羨望。それからほんの少しの嫉妬であった。
「私が歩く時、その隣には貴女が居てほしいと思っています」
ふっと、小さな吐息がアンジェリカの口から洩れる。
ダンテのその言葉がどれほど難しいことか、きっと彼女とてよく分かっているはずだ。
地位、家格、財。どれを比べてもダンテとアンジェリカでは釣り合いが取れない。
貴族たちの結婚は愛ではなく、家の力を増すための手段なのだ。
しかし、それでもそれらに縛られないダンテの在り様に、アンジェリカは惹かれ、焦がれている様に見えた。
「……そ、それは……」
アンジェリカの赤い唇が、少しずつ言葉を紡ぎだしてゆく。
「私と……その……。ダ、ダンテ様からのプロポーズと受け取ってもよろしいのですか?」
ためらいがちに、恥じらいながら。
その態度は最初の頃とは大違いで、今のアンジェリカは誰が見ても恋する乙女であった。
「おや。私は初めからそう言っていますよ」
「それは……そうですけれど……」
今までの男たちは、みなブルームバーグ伯爵家という名前に恐れを抱き、あるいはへりくだり、ただうわべだけを取り繕ってアンジェリカを称賛していただけ。
アンジェリカに、ここまで情熱的に迫った男はダンテが初めてであった。
「感謝します、アンジェリカ」
「き、急になんですの?」
ダンテは顔に浮かべた表情を、真剣なものからとぼけたものに切り替え、人差し指を口の前で立てる。
「秘密は一度の出会いに一つまでですよ、アンジェリカ」
「――――っ」
アンジェリカは一瞬あっけにとられ、約束を思い出して納得したような顔になったかと思えば、唇を尖らせて不満そうな表情を作る。
彼女が何を想い、何を感じたのかはダンテに知る方法などない。
しかし、決して負の感情を抱いていないことだけは確かだった。
「それでは――」
音楽はまだ続いていたが、二人はとっくの昔に踊ることを止めている。
そもそもダンテの目的は踊ることではなく、アンジェリカの心を探ることなのだ。
もう十二分に確信を得たダンテは、アンジェリカから身を離した。
「今日もお別れの時間です」
「どうしてですの? これから晩餐がございますのに」
ダンスの後には豪華な食事が振る舞われ、それが終われば酒や甘い物と続く。
貴族にしか味わうことのできない贅沢三昧の時間が待っているのだが、今のダンテにはそれを享受することができない理由があった。
「実は……あなたに会うため忍び込んだので、長居をしてはテレジア候に迷惑をかけてしまいますからね」
まあ、とアンジェリカが避難がましい声を上げたのだが、その頬は緩んでいる。
自分の為だけに、という響きが気に入ったらしい。
「それに、愛らしいあなたの顔を、これ以上――」
衆目に晒したくはない。
そう続けようとして視線を男どもへ向け――ダンテは見つけてしまった。
流行を何周も遅れている様な古臭いドレスを着て、壁の花になっているベアトリーチェの姿を。
その合間をフルートが泳ぎ、時折シンバルやティンパニが跳ね回る。
全ての音が集い、たったひとつの荘厳な音楽となって世界を満たしていく。
「ダンテ様はダンスもお上手なのですね」
アンジェリカとダンテ。
ふたりは互いの体を寄せ合い、ゆっくりと揺蕩いながらお互いの瞳だけを見つめ続ける。
ダンスホールには多くの人が二人と同じくダンスに興じているのだが、今の二人の視界は相手だけで占められており、他人が入る余地は一切ない。
「君のパートナーを譲りたくはなかったのでね」
ダンテの口調は少し砕けたものに移っている。
もしダンテ以外の男がこんな口を聞けば、アンジェリカの不興を買ってしまうだろう。
ダンテは、ダンテだけが許された特権を手に入れつつあった。
「ふふっ、5曲以上は流石にマナー違反でしてよ」
舞踏会、特に若者たちが集う場合は結婚相手を見定める場でもある。
生涯のパートナーを見つけるために、なるべく多くの人同士が顔を合わせる必要があるのだ。
しかしダンテはそれすら許さないとばかりにアンジェリカとのダンスを続けた。
「……アンジェリカ、私は君に秘密を明かすと約束しました。今日は何が知りたいですか?」
ひとしきりむつみ合ってから、ダンテはようやく本題を切り出した。
狙いはむろん、情報を引き出すこと。
アンジェリカ自身のことや家のことまで、とにかくどんな些細な事でも彼女を攻略するためのカギになりうるからだ。
「私が知りたい事……、そうですわね」
アンジェリカがどこかイタズラをしかける少女めいた笑みを浮かべ、上目遣いでダンテのことを見つめる。
「あなたはいったいどなたですの? ダンテ・エドモン・ブラウン様?」
そう言われた瞬間、ダンテは表情や態度の変化を全力で押さえ込んだ。
ダンテは未だ名前しかアンジェリカに伝えてはいない。
もちろん、ブラウン家がダンテを養子に取ることは皇帝へも伝えてあるため、調べようと思えば調べられる。
しかし、ダンテの名前を知ってから数日でブラウン家にまでたどり着けたのは、ブルームバーグ伯爵家の力あってのものだろう。
「ブラウン家には子どもが居ないはずでしたのに、貴方はいったいどこから現れましたの?」
「…………」
どうやらかなり子細に調べられているらしかったが、それでもダンテの事を邪険に扱わないのは、ダンテ自身に興味があるからだろう。
ダンテは、アンジェリカ自身に興味があると言い続けた過去の言動に助けられた形になる。
「……私には、3人の父が居ます」
慎重に言葉を選びながら述懐する。
こう問いかけられた場合を想定して答えは既に用意していたものの、それがアンジェリカを納得させられるとは限らない。
ほんの少しでも彼女を失望させるようなことがあれば今まで積み上げてきたもの全てが崩れ去ってしまう。
ダンテは出来る限り自然に、それでいて自信に満ち溢れた表情を浮かべる。
「一人は私に貴族の血をくれた父。もう一人は私を商品として育てた父。そしてブラウンの名をくれた父です」
「そうなのですか……」
貴族だからこそ血を残さねばならないため、妻以外の女性と子をなすことがある。
時にそれが行き過ぎてしまった場合、平民との間にも産まれてしまうことがあった。
ダンテはそれに当てはまらないのだが、盗賊に誘拐され、そのまま育てられたなどと言えるはずがない。
庶子ということにした方が納得してもらえるという判断だった。
「ああ、商品と言いましたが、私も二番目の父を利用してこの場に戻って来たのですから、共犯の方が正しいかもしれませんね」
貴族の血を半分ひいているとはいえ、半分は平民の血が混じっている。
そのままでは表舞台に立つどころか疎まれて殺されることすらある。
この舞踏会でアンジェリカと顔を合わせているだけでも十分に優秀な証左と言えるのに、ダンテはさらにその上を行っているのだ。
それだけの実力を持ち合わせていて自分は操り人形ではないと、ダンテは言外に主張したのだった。
「…………」
アンジェリカの表情は変わらない――ように見えて少し影が差しこんでいる。
ダンテの話を聞いて、同情の念を抱いているのかもしれなかった。
だからダンテはそれらを吹き飛ばすために、わざと快活な笑みを浮かべ、両手に力を籠める。
「アンジェリカ。私はこの生を受けたことに、とても感謝したいのですよ」
「どうしてですか?」
これは紛れもない事実である。
ダンテは自身の数奇な人生に、心から感謝していた。
なぜなら――。
「私は私の足で立ち、どこへでも自由に歩るいていくことができる」
それこそがダンテが最も好むもの。
ダンテ自身を形作っているもの。
「自由。それは何ものにも勝る幸いなのです」
「……そう、ですか……」
アンジェリカには自由などない。
ずっと父親の決めた箱庭から出ることも叶わず、結婚相手すら自分で決めらない。
ブルームバーグ家の財をもっとも効率的に増やすための手段として使われる。
アンジェリカもその事をよく分かっていて、だからこそ自分のできる範囲で精いっぱいの自由を謳歌しているのだろう。
それでベアトリーチェへのいじめが許されるわけではないが。
「……アンジェリカ」
ダンテはアンジェリカの頬に手を添え、うつむいていた彼女の顔を上向かせる。
アンジェリカの瞳にくすぶっているのは、憧憬と羨望。それからほんの少しの嫉妬であった。
「私が歩く時、その隣には貴女が居てほしいと思っています」
ふっと、小さな吐息がアンジェリカの口から洩れる。
ダンテのその言葉がどれほど難しいことか、きっと彼女とてよく分かっているはずだ。
地位、家格、財。どれを比べてもダンテとアンジェリカでは釣り合いが取れない。
貴族たちの結婚は愛ではなく、家の力を増すための手段なのだ。
しかし、それでもそれらに縛られないダンテの在り様に、アンジェリカは惹かれ、焦がれている様に見えた。
「……そ、それは……」
アンジェリカの赤い唇が、少しずつ言葉を紡ぎだしてゆく。
「私と……その……。ダ、ダンテ様からのプロポーズと受け取ってもよろしいのですか?」
ためらいがちに、恥じらいながら。
その態度は最初の頃とは大違いで、今のアンジェリカは誰が見ても恋する乙女であった。
「おや。私は初めからそう言っていますよ」
「それは……そうですけれど……」
今までの男たちは、みなブルームバーグ伯爵家という名前に恐れを抱き、あるいはへりくだり、ただうわべだけを取り繕ってアンジェリカを称賛していただけ。
アンジェリカに、ここまで情熱的に迫った男はダンテが初めてであった。
「感謝します、アンジェリカ」
「き、急になんですの?」
ダンテは顔に浮かべた表情を、真剣なものからとぼけたものに切り替え、人差し指を口の前で立てる。
「秘密は一度の出会いに一つまでですよ、アンジェリカ」
「――――っ」
アンジェリカは一瞬あっけにとられ、約束を思い出して納得したような顔になったかと思えば、唇を尖らせて不満そうな表情を作る。
彼女が何を想い、何を感じたのかはダンテに知る方法などない。
しかし、決して負の感情を抱いていないことだけは確かだった。
「それでは――」
音楽はまだ続いていたが、二人はとっくの昔に踊ることを止めている。
そもそもダンテの目的は踊ることではなく、アンジェリカの心を探ることなのだ。
もう十二分に確信を得たダンテは、アンジェリカから身を離した。
「今日もお別れの時間です」
「どうしてですの? これから晩餐がございますのに」
ダンスの後には豪華な食事が振る舞われ、それが終われば酒や甘い物と続く。
貴族にしか味わうことのできない贅沢三昧の時間が待っているのだが、今のダンテにはそれを享受することができない理由があった。
「実は……あなたに会うため忍び込んだので、長居をしてはテレジア候に迷惑をかけてしまいますからね」
まあ、とアンジェリカが避難がましい声を上げたのだが、その頬は緩んでいる。
自分の為だけに、という響きが気に入ったらしい。
「それに、愛らしいあなたの顔を、これ以上――」
衆目に晒したくはない。
そう続けようとして視線を男どもへ向け――ダンテは見つけてしまった。
流行を何周も遅れている様な古臭いドレスを着て、壁の花になっているベアトリーチェの姿を。
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。
桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。
「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」
「はい、喜んで!」
……えっ? 喜んじゃうの?
※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。
※1ページの文字数は少な目です。
☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」
セルビオとミュリアの出会いの物語。
※10/1から連載し、10/7に完結します。
※1日おきの更新です。
※1ページの文字数は少な目です。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる