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Tire93 行方不明届け
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丈人先輩が学校の先生に向いているかどうかはともかく、僕達は広崎さんの体を使って通り魔事件を起こしたマイグレーターと思われる細目の男性が他の映像にも映っていないか調べることになった。
画像検索を使うことで、あれだけ苦労した作業が嘘のように細目の男性が映っている映像が次から次へと見つかっていく。
「なんか、こんなに簡単にたくさん見つかると、この前に頑張ってたアタシ達がバカみたいに感じちゃうな~」
自分達の苦労を文明の利器に嘲笑われていると感じたのか、美結さんが愚痴をこぼす。
「まぁ、そう言わないの。この前に頑張ったから今があると思えばいいんだよ」
「う~ん……そう言われると、少しはあの苦労も納得できますね」
丈人先輩のポジティブシンキングに影響されて、美結さんはちょっと前向きな姿勢になる。
「いや、前回の作業は無駄骨でしかありませんでしたよ。最初からこのやり方で取り組んでいれば、目に疲労だけ蓄積させる無意味な時間を何時間も過ごすことはありませんでしたからね」
水を差すどころか、氷水をマノ君は遠慮なく差してきた。
マノ君が言っていることは何一つとして間違ってはいないのだが、それを明確に口にはして欲しくはなかったと僕の臭い物に蓋をする精神が叫んでいる。
とことんリアリストなマノ君はどこ吹く風だ。
「なんでアンタはすぐにそういうことを言うのよ! せっかく、丈人先輩のおかげで少しは気が楽になったのに! そんなにアタシがポジティブ思考になることが気に食わないの!?」
「いや、そんなことは……あるな。ポジティブな如月を想像するとちょっと気持ち悪いな。お前は能天気なのが唯一の取り柄だろ?」
「なッ! 日菜っち、聞いた!? アイツ、とうとうアタシにとんでもないこと言ったよ! ひどくない!?」
マノ君に反撃するために市川さんに加勢を求めた美結さんが椅子のキャスターを転がして市川さんの元へ滑って行く。
「うん、ひどいね。美結の取り柄は他にもいっぱいあるのにね」
「でしょっ! アタシには取り柄が他にもいっぱいあるんだから!」
犯人はお前だというようにマノ君へ美結さんはビシッと決める。
「え? 他にも?」
「あ、皆! ちょっと、これ見てくれない?」
一拍おいて、美結さんが気づいてはいけない部分に気づき始めてしまった。
それを見て瞬時に分が悪いと判断した市川さんは話をそらすために僕達を巻き込む。
「なんだ?」
市川さんの策に真っ先に食いついたのはマノ君だった。
理由は明白、マノ君も話をそらすことで美結さんから解放されたかったからだ。
つまり、二人の目的は合致している。
ならば、乗らない選択肢はないというのがマノ君の判断だった。
「この細目の人、ネットで検索かけたらツイッターのアカウントがヒットしたんだけどね」
「ちょっと待て。お前、まだツイッターって呼んでんのか?」
「たぶん私、法律で禁止でもされない限りは一生ツイッターって呼び続けると思うよ」
「お前は昔から妙なとこで頑固だよな」
「そうかな? それよりも、そのツイッターアカウントのプロフィール欄に彼の名前が記載されてあったの」
「ねぇ、他にもってどういうこと? アタシって能天気……なの?」
「もしかして、それが本名だったりする?」
会話の内容に重要性を感じたのか丈人先輩も市川さんのところにやって来る。
そして、美結さんの声は無残にもかき消されていった。
「そうなんです。私も半信半疑で警察情報システムに検索をかけたら、ちょうど事件があった時期に行方不明届けが埼玉県警の浦和西警察署から出されていました。写真も確認したので、この細目の人と同一人物で間違いないと思います」
市川さんが表示した画面には受理番号や警察署の名前、住所、職業、生年月日、性別、届け出時の年齢、ふりがな付きで名前などが書かれている。
この細目の男性の名前は三木庸介さんというらしい。
年齢は27歳と書かれていて、職業欄には株式会社ユー・アイ・エヌシステムの会社員と記載されている。
会社名を検索してみると、SIer事業を展開するIT企業のようだ。
「マジで本名なのかよ。ネットに本名載せるとか馬鹿だろコイツ」
「彼の……三木さんの行方不明届けは誰が出しているの?」
「えっと、ですね……」
市川さんは行方不明者との関係が記載されている欄がよく見えるように拡大する。
「続柄は……親子……名前からみるに母親だと思います」
「母親か……うん? どうしたの、伊瀬君? 変な顔して」
「えっ? 変な顔……ですか? 僕、今変な顔なんてしてました?」
変な顔をなんかしてなかったと思うんだけどな……
不安になって、僕は自分の顔を手のひらでペタペタと触ってみる。
触ったところで、自分が今どんな顔をしているのかすらわからなかった。
何してんだろ僕……
「変な顔っていうか、見たこともないような顔をしてた気がするんだけどな……俺の見間違いだったのかな? マノ君は気付かなかった?」
「伊瀬が変顔ですか?」
マノ君は僕の顔をまじまじと見る。
「見てませんし、コイツの変顔とか想像できませんね。お前らは気づいたか?」
美結さんや市川さんにも話を振るマノ君。
あんまり僕が変な顔をしていたかどうかの話題を広げられるのはやめて欲しいです……
「伊瀬っちの顔? 特段、気にしてたわけじゃないけど普段通りだったと思うよ。日菜っちは?」
「私は画面の方ばかり見てたせいで、皆の顔は見れてないからわかんないかな。ごめんね」
「そっか~。じゃあ、俺の見間違いだったのかな。ごめんな、伊瀬君。変なこと言って」
「いえ、気にしないで下さい。丈人先輩の角度からだとそう見えたかもしれませんし」
真摯に謝ってきた丈人先輩が気負わないように僕は問題ないことをアピールする。
「あれ? ねぇ、那須先輩は?」
市川さんの一言に僕達は六課を見渡す。
だけど、どこにも那須先輩の姿はなかった。
画像検索を使うことで、あれだけ苦労した作業が嘘のように細目の男性が映っている映像が次から次へと見つかっていく。
「なんか、こんなに簡単にたくさん見つかると、この前に頑張ってたアタシ達がバカみたいに感じちゃうな~」
自分達の苦労を文明の利器に嘲笑われていると感じたのか、美結さんが愚痴をこぼす。
「まぁ、そう言わないの。この前に頑張ったから今があると思えばいいんだよ」
「う~ん……そう言われると、少しはあの苦労も納得できますね」
丈人先輩のポジティブシンキングに影響されて、美結さんはちょっと前向きな姿勢になる。
「いや、前回の作業は無駄骨でしかありませんでしたよ。最初からこのやり方で取り組んでいれば、目に疲労だけ蓄積させる無意味な時間を何時間も過ごすことはありませんでしたからね」
水を差すどころか、氷水をマノ君は遠慮なく差してきた。
マノ君が言っていることは何一つとして間違ってはいないのだが、それを明確に口にはして欲しくはなかったと僕の臭い物に蓋をする精神が叫んでいる。
とことんリアリストなマノ君はどこ吹く風だ。
「なんでアンタはすぐにそういうことを言うのよ! せっかく、丈人先輩のおかげで少しは気が楽になったのに! そんなにアタシがポジティブ思考になることが気に食わないの!?」
「いや、そんなことは……あるな。ポジティブな如月を想像するとちょっと気持ち悪いな。お前は能天気なのが唯一の取り柄だろ?」
「なッ! 日菜っち、聞いた!? アイツ、とうとうアタシにとんでもないこと言ったよ! ひどくない!?」
マノ君に反撃するために市川さんに加勢を求めた美結さんが椅子のキャスターを転がして市川さんの元へ滑って行く。
「うん、ひどいね。美結の取り柄は他にもいっぱいあるのにね」
「でしょっ! アタシには取り柄が他にもいっぱいあるんだから!」
犯人はお前だというようにマノ君へ美結さんはビシッと決める。
「え? 他にも?」
「あ、皆! ちょっと、これ見てくれない?」
一拍おいて、美結さんが気づいてはいけない部分に気づき始めてしまった。
それを見て瞬時に分が悪いと判断した市川さんは話をそらすために僕達を巻き込む。
「なんだ?」
市川さんの策に真っ先に食いついたのはマノ君だった。
理由は明白、マノ君も話をそらすことで美結さんから解放されたかったからだ。
つまり、二人の目的は合致している。
ならば、乗らない選択肢はないというのがマノ君の判断だった。
「この細目の人、ネットで検索かけたらツイッターのアカウントがヒットしたんだけどね」
「ちょっと待て。お前、まだツイッターって呼んでんのか?」
「たぶん私、法律で禁止でもされない限りは一生ツイッターって呼び続けると思うよ」
「お前は昔から妙なとこで頑固だよな」
「そうかな? それよりも、そのツイッターアカウントのプロフィール欄に彼の名前が記載されてあったの」
「ねぇ、他にもってどういうこと? アタシって能天気……なの?」
「もしかして、それが本名だったりする?」
会話の内容に重要性を感じたのか丈人先輩も市川さんのところにやって来る。
そして、美結さんの声は無残にもかき消されていった。
「そうなんです。私も半信半疑で警察情報システムに検索をかけたら、ちょうど事件があった時期に行方不明届けが埼玉県警の浦和西警察署から出されていました。写真も確認したので、この細目の人と同一人物で間違いないと思います」
市川さんが表示した画面には受理番号や警察署の名前、住所、職業、生年月日、性別、届け出時の年齢、ふりがな付きで名前などが書かれている。
この細目の男性の名前は三木庸介さんというらしい。
年齢は27歳と書かれていて、職業欄には株式会社ユー・アイ・エヌシステムの会社員と記載されている。
会社名を検索してみると、SIer事業を展開するIT企業のようだ。
「マジで本名なのかよ。ネットに本名載せるとか馬鹿だろコイツ」
「彼の……三木さんの行方不明届けは誰が出しているの?」
「えっと、ですね……」
市川さんは行方不明者との関係が記載されている欄がよく見えるように拡大する。
「続柄は……親子……名前からみるに母親だと思います」
「母親か……うん? どうしたの、伊瀬君? 変な顔して」
「えっ? 変な顔……ですか? 僕、今変な顔なんてしてました?」
変な顔をなんかしてなかったと思うんだけどな……
不安になって、僕は自分の顔を手のひらでペタペタと触ってみる。
触ったところで、自分が今どんな顔をしているのかすらわからなかった。
何してんだろ僕……
「変な顔っていうか、見たこともないような顔をしてた気がするんだけどな……俺の見間違いだったのかな? マノ君は気付かなかった?」
「伊瀬が変顔ですか?」
マノ君は僕の顔をまじまじと見る。
「見てませんし、コイツの変顔とか想像できませんね。お前らは気づいたか?」
美結さんや市川さんにも話を振るマノ君。
あんまり僕が変な顔をしていたかどうかの話題を広げられるのはやめて欲しいです……
「伊瀬っちの顔? 特段、気にしてたわけじゃないけど普段通りだったと思うよ。日菜っちは?」
「私は画面の方ばかり見てたせいで、皆の顔は見れてないからわかんないかな。ごめんね」
「そっか~。じゃあ、俺の見間違いだったのかな。ごめんな、伊瀬君。変なこと言って」
「いえ、気にしないで下さい。丈人先輩の角度からだとそう見えたかもしれませんし」
真摯に謝ってきた丈人先輩が気負わないように僕は問題ないことをアピールする。
「あれ? ねぇ、那須先輩は?」
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だけど、どこにも那須先輩の姿はなかった。
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