マイグレーション ~現実世界に入れ替え現象を設定してみた~

気の言

文字の大きさ
11 / 169

Layer11 意図

しおりを挟む
……え?
八雲は今なんて言ったんだ?
立花が正解?
そしたら俺も八雲も二人仲良く料理の練習をするはめになってしまうじゃないか!
まさか八雲は純粋に問題を出しているだけだというのか!?
ペナルティを回避するためではなく?

「本当に立花が正解でいいのか? 」

俺は祈るように八雲に聞いた。

「? あぁ、それで問題ないがどうした? たしかに100%の解答はありとあらゆる複雑な感情を持っているという解答だ。動物にだって一定の感情はあるからな。複雑という言葉がないと違いにはならない。だが、一番近い解答という条件だったからな。立花後輩が一番適切だと考えたんだが何かおかしかったか? 」

駄目だ、完全にペナルティのことを考えていない。

「いや……そうだな、立花で俺もいいと思うぞ。なんか悪いな変なこと聞いて」

「そうか、問題ないならそれでいいんだ。もちろん玉宮香六の解答も姫石華の解答もけして間違っているわけじゃない。ただ、あんたらの解答はどちらかというと複雑な感情からなる副産物的な側面があるというだけだ。だからその根幹である複雑な感情に近かった立花後輩が適切だったというわけだ。ま、これはあくまで持論だがな」

どうやら八雲は科学以外のことに関してはポンコツなようだ。
ポンコツなんて言葉久しぶりに使ったな。

「なに? 玉宮はそんなに自分が合ってると思ってたの? それで歩乃架ちゃんが合ってるって聞いて驚いちゃったのか。そっか! そっか! 残念だったね~でも、大丈夫! あたしは玉宮のそういうところ大好きだよ! もう、なんていうかいろいろ最高! あ、けど料理の練習はやるからね」

こいつは俺が何に驚いているかも知らないでよくも煽り倒してくれるな!
この問題の仕組みをわかってないからそういうことを言えるんだよ!
そして、その解釈だと俺はだいぶ痛い奴になるからやめてくれ!

「何も大丈夫じゃないからな! あと、俺はそんなに自意識過剰じゃない! 自分ではなく立花が合っていたことにとやかく言うつもりはない! ただ……ちょっと変な勘違いをしてまっただけだから」

「そんなに言い訳しなくてもいいんだよ。素直になりなよ」

駄目だ。
姫石の奴、完全に勘違いしてやがる。

「いや、だからな……」

そう言いかけたとき立花が姫石に何か耳打ちした。

「え? そういうことだったの? 」

立花は俺が考えていた問題の抜け道に気づいていたようだ。
どうりで余裕があるように見えたわけだ。

「うっわ玉宮……姑息」

あれ?
もしかしてバレてなかった時の反応の方が良かった感じ?

「いや、違う! 断じて違うぞ! 俺は姑息なんじゃない! あの~あれだ……そう、策士なんだよ! だからけして姑息なんかじゃないんだ! 変な言い方はやめてくれ」

「どっちでもいいけど、策士のくせに負けたってわけね。あれ? 策士ってどういう意味だっけ? 」

……
姫石はこういうとき痛いところをついてくるんだよな。
で、こっちが何も言い返せないのを見て面白がりやがる。
やっぱりバレなきゃ良かった……

「とにかく! 本来は上手くいくはずだったんだ! ただ八雲に俺の意図が伝わっていなかった。だから上手くいかなかっただけだ。これは俺もミスったと思ってる」

「? 玉宮香六は何か別の意図があって問題を答えていたのか? 」

いまだに俺の意図が伝わっていない八雲が聞いてきた。

「そりゃあもちろんあったよ。俺は問題を正解するよりもペナルティを回避したかったからな」

「それなら正解するしかないんじゃないか? 」

やはり八雲は科学以外の事となるとてんでダメらしい。
こういった駆け引きのようなことをする発想もないぽっいしな。

「先輩、玉宮先輩が言いたいのは……」

そう言って立花が八雲に俺が何を考えていたのかを説明した。

「なるほど。そういうことか。たしかにそれなら私も玉宮香六もペナルティを受けずに済むな。すまない、私は科学以外の事となるとからっきしダメでな」

うん、知ってる

「まぁ俺も八雲にしっかりと意図を伝えるべきだったから、そう謝らないでくれ」

正直、八雲が問題の穴に気づいている前提で出題していると思っていたんだが、これは俺の考えがあまかったのかもしれない。

「けど、よくこのことに気づいたね! 歩乃架ちゃん! 」

「それほどのことでは無いですよ。先に気づいたのは玉宮先輩ですし。私は玉宮先輩の反応を見て気づいたぐらいですから」

え?
俺そんなに顔に出てたのか……

「ちょっと待ってくれ。なら立花は気づいてた上で何もしなかったのか? 今回はたまたま八雲と俺の連携が上手く取れていなかったおかげで立花が正解になったわけなんだぞ。もし上手く連携が取れていたらそのまま俺達がペナルティを回避するだけだったんだぞ」

気づいた上で何もしなかったということは立花は俺達がペナルティを受けないように目をつぶったということなのか?
だが、料理の練習をするというペナルティを提案したのは立花自身だぞ?
その可能性は低いだろう。

「それは先輩なら純粋に問題を出して、合っていたら正解ってだけかなって思ったんです。もちろん玉宮先輩と何か連携を取っている素振りがあったら私も何かしら対応したと思います。けど、そういう素振りがなかったので何もしなかったんです。それに先輩は科学以外何もできませんから」

なるほど、そういうことだったのか。
元々、八雲を紹介したのは立花だったんだ。
八雲がどんな奴なのかはこの中では一番立花が熟知している。
だからこそ何もしなくても勝つ自信があったってことか。
あと科学以外何もできないは言い過ぎじゃない?

「だとしても、よく正解がわかったな。あの問題だと正解ぽい答えはいくらでもあっただろ」

「それは先輩がよく口癖で、感情こそが人間を人間たらしめるって言ってるからです」

そんなことを口癖で言っているならどうしてあんな問題を出したんだ! と思いながら八雲に視線を向けると八雲はすぐに目をそらした。
本当に科学以外何もできないのかよ。


「歩乃架ちゃんは八雲君のことよくわかってるんだね」

「え!? いや、別にそんなにはわかっているわけじゃ……ないです。何かと接する機会が多くてたまたま知ってたってだけです」

立花は焦りながら言い訳をしているが、一瞬顔を少し赤らめたのが見えた時点でその言い訳には何の説得力もない。

「そうなんだ。それもそうだよね。相手のことをよくわかっているなんてことは恋人関係とかそういう時だけだもんね」

こいつは立花の気持ちに気づいてないのかよ!
だからってそんなオーバーキルするような発言をよく言えるな!
見ろ!
若干、立花の顔がひきつっているじゃないか!
どうすんだよ!

そう思って姫石に目配せをすると、姫石のきょとんとした顔が返ってきた。
きょとん? じゃねぇよ!

八雲といい姫石といい、なぜ俺の意思がこうも上手く伝わらないのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

学校1のイケメン♀️から逃げ出した先には地獄しかありませんでした

山田空
ライト文芸
ハーレムを目指していた主人公は転校してきたイケメンによってその計画を壊される。 そして、イケメンが実は女の子でありヤンデレであったことを知り逃げる。 逃げた途中でむかし付き合った彼女たちとの過去を思い出していく。 それは忘れたくても忘れられない悲しき記憶 この物語はヒロインと出会いそして別れるを繰り返す出会いと別れの物語だ。 そして、旅の最後に見つける大切で当たり前なものとは

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...