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Tier29 ため口
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「ところでなんですけど、マイグレーションに対する抵抗力ってマイグレーターではない一般人でも身に付けることって出来るんですか?」
「残念だが、それは不可能だ。マイグレーションに対する抵抗力はマイグレーターのみが持っている。マイグレーターでもない一般人が抵抗力を持つにはマイグレーターになるしかない。だから、一般人はマイグレーターに対しては一方的にやられるだけで無力だ」
マノ君は間髪入れずにそう断言した。
その言葉を聞いて僕は以前に榊原大臣が言っていた「目には目を歯には歯をマイグレーターにはマイグレーターを」という言葉を思い出してしまった。
結局のところ、毒をもって毒を制すしかないのかもしれない。
「そうなんだ……じゃあ、抵抗力以外に一般人がマイグレーションに対抗する手段は無いの?」
「無い。……なぁ伊瀬。さっきからそうだったが、俺に対して敬語なのかため口なのかはっきりしてくれ。敬語かと思えば、ため口になったりで滅茶苦茶だぞ」
「え!?」
僕はマノ君に指摘されるまで気付かなかった。
そういえば確かに、マノ君に敬語で話していたのかため口で話していたのか分からない。
「なんか気持ち悪いからやめてくれ。どちらかに統一しろ。そうでないと、どうも喋りづらい」
「あっ、ごめん。えっと……じゃあ……」
そこまで言って僕は迷ってしまった。
敬語で話した方が良い気もするし、マノ君のキャラクターを見るとため口の方が良いような気もする。
そんな考えが僕の頭の中で行ったり来たりしていて中々結論を出すことが出来ない。
「あのなぁ、伊瀬。そもそも敬語なんてものは日本に根深く残った年功序列の化石みたいなものなんだよ。赤子だろうと百歳を超えた老人だろうと同じ人間だ。同じ人間なんだからお互いに平等だ。だから、敬語なんてものは本来必要無いんだ。それに俺とお前は同い年だ。ここのどこにお前が俺にため口で喋ってはいけないなんていう理由がある?」
僕が迷っていたのを見かねてマノ君はきっぱりと言った。
マノ君のように僕にため口で話てくれて良いよと言ってくれた人はたくさんいた。
それこそ、転校して来た日に清水さんも言ってくれた。
けれど、僕はどこかでため口ではなく敬語で話さなければいけないのではないかという負い目を感じていた。
その負い目のせいで他の人との距離は縮まることはなく、友達とも友達ではないとも言えない微妙な距離感でずっと人と接してきた。
当然、本当の友達と呼べる存在は今まで生きてきて一人もいない。
でも、なぜかマノ君からはその負い目を感じることはなかった。
ため口で良いと言っていることは他の人と同じはずなのに、マノ君の言葉は純粋に受け止めることが出来た。
敬語かどうかなんて気にせずに、気兼ねなくマノ君と話したいと思ってしまった。
「……うん、わかった。マノ君がそう言ってくれるなら、そうするよ」
「あぁ、それが良い。そっちの方がこっちもやりやすい」
マノ君はなんとなくだが満足気だった。
「私も伊瀬君とはため口で話したいな」
「アタシも! 敬語なんてよそよそしく感じちゃうからさ」
市川さんと美結さんもここぞとばかりに言ってきた。
二人とも同い年の僕の敬語に違和感を抱いていたようだ。
「あ、ありがとうございます……あっじゃなくて、ありがとう」
「俺にもため口が良いなと言おうとしたけど、その様子だと先輩の俺には難しそうだね。伊瀬君の話しやすい方で良いよ」
丈人先輩が咄嗟に敬語を使ってしまった僕を見て言った。
「なんか、すみません」
「んむんんんむんん」
口を塞がれたままの那須先輩が僕に何かを伝えようとしてきた。
「気にしないでってさ」
すると丈人先輩が那須先輩の通訳をした。
「どうして那須先輩が何を言ったのか分かったんですか!?」
僕には那須先輩が何を言っているのか全く分からなかったのに丈人先輩はどうということはないかのように分かっていた。
これには驚きを隠せない。
「どうしてって言われてもなぁ……なんとなく?」
「なんとなくって……普通それじゃ分かりませんよ」
「そう?」
丈人先輩は面白そうに笑った。
「あの~那須先輩の口を塞いでいるテープそろそろ外してあげても良いんじゃないですか?」
那須先輩の口はまだバッテンにマスキングテープで塞がれていた。
「う~ん、もう少し波瑠見ちゃんにはお灸を添えておこうかな。それに波瑠見ちゃんが本当に嫌がっていたら、とっくに自分で外しているよ。手を縛っているわけではないからね。外さないってことは自分でも反省しているってことだと思うよ」
「なるほど……そうみたいですね」
那須先輩が僕にウインクをしてきたので僕は納得せざるを得なかった。
「というか、し……マノだって敬語は必要無いとか言っておきながら手塚課長とか姫石さんとかに敬語を使っているじゃない」
言われてみれば美結さんの言う通り、マノ君は目上の人というか自分よりも立場が上の人に対しては敬語を使っている。
「そ、それは臨機応変、処世術だ。そうした方が上手く物事が運ぶこともあるんだよ」
「なんて言い訳しちゃって。本当はただ伊瀬っちにため口で話して欲しいだけなんでしょう?」
美結さんがマノ君にちょっとした意地悪をした。
「そんなわけないだろう……はぁ~もう、それでいい」
否定しても美結さんからの意地悪がなくなりそうにないと思ったマノ君は渋々諦めた。
あれ?
でも、学校で清水さんが僕にため口で良いって言ってくれた時にマノ君は自然と敬語を使わなくなるのを待てば良いみたいなことを言っていた気がする。
まぁ、どっちでも良いよね。
僕がこれからマノ君と気兼ねなくため口で話すことに変わりはないしね。
「残念だが、それは不可能だ。マイグレーションに対する抵抗力はマイグレーターのみが持っている。マイグレーターでもない一般人が抵抗力を持つにはマイグレーターになるしかない。だから、一般人はマイグレーターに対しては一方的にやられるだけで無力だ」
マノ君は間髪入れずにそう断言した。
その言葉を聞いて僕は以前に榊原大臣が言っていた「目には目を歯には歯をマイグレーターにはマイグレーターを」という言葉を思い出してしまった。
結局のところ、毒をもって毒を制すしかないのかもしれない。
「そうなんだ……じゃあ、抵抗力以外に一般人がマイグレーションに対抗する手段は無いの?」
「無い。……なぁ伊瀬。さっきからそうだったが、俺に対して敬語なのかため口なのかはっきりしてくれ。敬語かと思えば、ため口になったりで滅茶苦茶だぞ」
「え!?」
僕はマノ君に指摘されるまで気付かなかった。
そういえば確かに、マノ君に敬語で話していたのかため口で話していたのか分からない。
「なんか気持ち悪いからやめてくれ。どちらかに統一しろ。そうでないと、どうも喋りづらい」
「あっ、ごめん。えっと……じゃあ……」
そこまで言って僕は迷ってしまった。
敬語で話した方が良い気もするし、マノ君のキャラクターを見るとため口の方が良いような気もする。
そんな考えが僕の頭の中で行ったり来たりしていて中々結論を出すことが出来ない。
「あのなぁ、伊瀬。そもそも敬語なんてものは日本に根深く残った年功序列の化石みたいなものなんだよ。赤子だろうと百歳を超えた老人だろうと同じ人間だ。同じ人間なんだからお互いに平等だ。だから、敬語なんてものは本来必要無いんだ。それに俺とお前は同い年だ。ここのどこにお前が俺にため口で喋ってはいけないなんていう理由がある?」
僕が迷っていたのを見かねてマノ君はきっぱりと言った。
マノ君のように僕にため口で話てくれて良いよと言ってくれた人はたくさんいた。
それこそ、転校して来た日に清水さんも言ってくれた。
けれど、僕はどこかでため口ではなく敬語で話さなければいけないのではないかという負い目を感じていた。
その負い目のせいで他の人との距離は縮まることはなく、友達とも友達ではないとも言えない微妙な距離感でずっと人と接してきた。
当然、本当の友達と呼べる存在は今まで生きてきて一人もいない。
でも、なぜかマノ君からはその負い目を感じることはなかった。
ため口で良いと言っていることは他の人と同じはずなのに、マノ君の言葉は純粋に受け止めることが出来た。
敬語かどうかなんて気にせずに、気兼ねなくマノ君と話したいと思ってしまった。
「……うん、わかった。マノ君がそう言ってくれるなら、そうするよ」
「あぁ、それが良い。そっちの方がこっちもやりやすい」
マノ君はなんとなくだが満足気だった。
「私も伊瀬君とはため口で話したいな」
「アタシも! 敬語なんてよそよそしく感じちゃうからさ」
市川さんと美結さんもここぞとばかりに言ってきた。
二人とも同い年の僕の敬語に違和感を抱いていたようだ。
「あ、ありがとうございます……あっじゃなくて、ありがとう」
「俺にもため口が良いなと言おうとしたけど、その様子だと先輩の俺には難しそうだね。伊瀬君の話しやすい方で良いよ」
丈人先輩が咄嗟に敬語を使ってしまった僕を見て言った。
「なんか、すみません」
「んむんんんむんん」
口を塞がれたままの那須先輩が僕に何かを伝えようとしてきた。
「気にしないでってさ」
すると丈人先輩が那須先輩の通訳をした。
「どうして那須先輩が何を言ったのか分かったんですか!?」
僕には那須先輩が何を言っているのか全く分からなかったのに丈人先輩はどうということはないかのように分かっていた。
これには驚きを隠せない。
「どうしてって言われてもなぁ……なんとなく?」
「なんとなくって……普通それじゃ分かりませんよ」
「そう?」
丈人先輩は面白そうに笑った。
「あの~那須先輩の口を塞いでいるテープそろそろ外してあげても良いんじゃないですか?」
那須先輩の口はまだバッテンにマスキングテープで塞がれていた。
「う~ん、もう少し波瑠見ちゃんにはお灸を添えておこうかな。それに波瑠見ちゃんが本当に嫌がっていたら、とっくに自分で外しているよ。手を縛っているわけではないからね。外さないってことは自分でも反省しているってことだと思うよ」
「なるほど……そうみたいですね」
那須先輩が僕にウインクをしてきたので僕は納得せざるを得なかった。
「というか、し……マノだって敬語は必要無いとか言っておきながら手塚課長とか姫石さんとかに敬語を使っているじゃない」
言われてみれば美結さんの言う通り、マノ君は目上の人というか自分よりも立場が上の人に対しては敬語を使っている。
「そ、それは臨機応変、処世術だ。そうした方が上手く物事が運ぶこともあるんだよ」
「なんて言い訳しちゃって。本当はただ伊瀬っちにため口で話して欲しいだけなんでしょう?」
美結さんがマノ君にちょっとした意地悪をした。
「そんなわけないだろう……はぁ~もう、それでいい」
否定しても美結さんからの意地悪がなくなりそうにないと思ったマノ君は渋々諦めた。
あれ?
でも、学校で清水さんが僕にため口で良いって言ってくれた時にマノ君は自然と敬語を使わなくなるのを待てば良いみたいなことを言っていた気がする。
まぁ、どっちでも良いよね。
僕がこれからマノ君と気兼ねなくため口で話すことに変わりはないしね。
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