転 神 ~ 人類の系譜・日本神話 編 ~

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第 弐十壱 話 再 臨 詔

 八州神乃邑智と名乗る八岐蟒蛇の声が俺達に届いてきたのは俺や大地が冬のサッカー大会地区予選の試合のためフィールドに立ってプレー中、相棒からパスを受け取った時の事だった。
 その声に戸惑いその場に立ち尽くす敵味方の選手、それと試合を見に来てくれている観客たちは言い知れない恐怖に騒ぎ立てていた。
 俺は大地から受け取ったボールをドリブルしながら相棒の居る所まで走っていた。
「オイッ、大地!」
「チッ、やっぱ復活しやがりましたねぇ。蟒蛇の野郎は!これからどうすんだ?俺様たちは」
 大地の言葉の後、急に地面が揺れ始め、その振動は次第に強くなり人が立てない程の地震となっていた。更に地割れがおき、遠くを見ると爆音と共に幾つもの巨大な火の柱が天上に向かって突き上げていた。それはまるで蟒蛇の咆哮の様なものだった。そして、地割れに飲み込まれ、飛来してくる巨大な火の粉に撃たれ、俺達の目の前で、俺達が何も出来ないまま多くの人の命が瞬時に消え去ってゆく。
 俺達の知らない場所でも大きな被害が出ていた。日本全土を揺るがす大地震、活、休、死火山までもが八岐蟒蛇の甦りを祝福するように大噴火で復活を祝う狼煙を上げていた。
「くそおぉーーーっ、なんでいまごろになって!一体どうしろっていうんだ、武甕槌!」
「児屋根、俺様たちの力で可能な限りここに居る連中どっかに移動させるぞっ!」
 俺も大地も内なる天国津にそう呼びかけた時のことだった。
『妾は天照を取り込みし、我は大国主の継承者。天国津、我々が同胞たちよ。我(妾)の前へ急ぎ参じられたまえ』
 詠華さんと琢磨さんの声が俺達に直接届き、聞えてきた。それに従うようにその声に導かれて俺達は呼び主の元へ神速移動していた。
 二人の所に到着すると既に他の皆は集まっていた。
「キミ達よ、聴きなさい。我々が避けるべき事態が矢張り起こってしまった。日本六ヶ所に蟒蛇の力の具現と思われる巨大な化け物が姿を見せた・・・」
 琢磨さんが少しの間、今の事態を伝え後に続くように詠華さんが言葉をくれていた。
「先ほども出雲琢磨さんがお言葉にした通り、災害から人々を護る役目は彼等に任せて武さん、貴方達は八岐蟒蛇の討伐に向かってください。・・・、わたくし、詠華も一緒に参ります。・・・・・・それではこの時代に再び降り立った私達の使命を遂げるために皆さんに天照としてお伝えします。私達の力を持って最後の戦いに臨み行きましょう」
「力のある我等が同胞よ、この国のため天照にその力を」
「我等、再び一つに成りて我等が主神天照と大国主のみことのりのままに」
 俺達一同は同じ言葉を同時に詠華さんと琢磨さんに向けていた。俺、経司、大地、照神先輩、美姫姉ちゃん、諏訪兄妹、八幡七星、それと詠華さんは蟒蛇自身が現れた場所へと向かおうとした。そして、その時に俺達の集まっていた場所に・・・。
「おいしょっ、と・・・、何とか間に合ったようじゃな」
「爺ちゃん!」
「双樹お爺様っ!どうして?どうしてこの場所へ?どうして飛ぶ事が出来てるの?」
「まったく持ってワシの孫二人に・・・、ワシのご先祖様は国津の者じゃよ、その血を色濃く残したな・・・・・・・・・・・・。武には相反していたそれが降りて居ようとは・・・。まあ、美姫の場合、櫛名田が戻ってきたというべきかじゃ・・・、武・・・、それと武甕槌。聞えるのワシの声が?おぬし等にこれを持ってきてやったのじゃぞ」
「何だよ、じいちゃんいきなり現れて?それになんだ、それは?ただの柄じゃねえか。刀身がなくてどうすんだよ」
〈まさか、武の祖父の双樹が足名椎あしなづち?・・・・・・、しかし何故、それを?それは私が天孫降臨の際手にしていた十握剣。そして失くしてしまった物。・・・、いまだこの世に残っていたのか?〉
「これはな、ワシのご先祖様が神社を司っていた時の御神体だったそうじゃな。まあ、今さっきワシが目覚めた時これがなんなのか直ぐに分かったんで持ってきてやったんじゃよ。ほらぁ~~~、受け取れ武!勝ってみんなと元気に戻ってくるんじゃぞ。そして、その元気な顔を爺ちゃんに見せておくれ」
「双樹爺ちゃん・・・・・・・・・、ウン分かったぜ!絶対勝って戻ってくる。だから爺ちゃんは縁側で茶でも啜ってのんびりまってろ」
「双樹お爺様、武の事は心配要りません。私がちゃんと護ってあげますから」
「美姫、あんまし武を甘やかすでないぞじゃ・・・、気をつけていってまえれ。伊勢野詠華殿、我が孫を頼んじゃよ」
 最後になって俺は武甕槌の言う媒体を双樹爺ちゃんから手渡された。それを握った時の感覚、ちゃんとした表現はできないけど、兎に角すごい力を感じた。
「詠華さん、手間取らせてしまったっす。行きましょうぜ!」
 俺の言葉に動きを止めていた詠華さんは爺ちゃんに笑顔で挨拶を交わすと八岐蟒蛇と戦う者、俺を含めた全員を連れその場所へと導いてくれた。そして、その場所で俺達が目にしたものは・・・。


~ 宇羅靖神社・境内 ~

「矢張り私の鬼眼が見たあれは嘘ではなくなってしまったのですね・・・。紘治さん、愛美さん、動きます。私の封印を・・・・・・」
「良いのかお前が動いて?・・・温羅王として?」
「ええ、あれが甦ってしまえば私がここでじっとしている訳にはいきません。・・・だから、私も戦う事に決意しました、天国津様の皆さまと共に」
「賢治さん、それではその封印を解きますよ。紘治さんも準備してください」
「ちゃんとその力制御しろよ、賢治」
「ええ勿論です。そのためにも紘治さんも愛美さんも私の傍からお離れしないでくださいね」
 愛美と紘治は地面に座っている賢治を囲み両手をかざし、開封の儀を行い始めた。その儀式の段階は二十四。それをし終えるのに最低でも三日は掛かってしまう。
 その開封の儀式を遣り遂げ温羅王と呼ばれる鬼神の最高位のその人物は天国津達の助けに成りえるのだろうか?・・・、それは・・・・・・、今分かる事ではない。
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