アルカディア・クロノクル ゲーム世界に囚われた俺を救うのは、妹か、かつての仲間か

織部

文字の大きさ
10 / 137

ルナ

しおりを挟む
日が沈むまでまだ時間があったので、沐浴も兼ねてウォータースライムを狩ることにした。

「セレナは泳げるかい?」アキラは尋ねた。

「うん、得意だよ!」とセレナは自慢げに答える。

「じゃあ、川に近づいて、川の中のスライムを探してくれるかな?」アキラが言うと、セレナは少し川を眺めてから、自信ありげに答えた。

「必要ないよ。ここからでも見える。少し川上の水中にまとまって漂ってる」

アキラはマップ機能を確認し、かなりの数の魔物反応が川上にあるのを確認した。

「本当だね、合ってる」

「当然、見たままを言っただけ」

「じゃあ、早速だけどウォータースライムを一緒に倒そう!」

「わかった!」そう言うとセレナは、疾風のごとく駆け出して行き、子犬も後を追っていった。

「セレナは狼族だから、索敵能力を潜在的に持っています。特に牙狼族の能力は高いんですよ」ラピスの言葉で、今までのセレナの勘の良さが理解できた。

 アキラも川に入り、ウォータースライムを狩り始めた。しかし、水中で短剣を使って泳ぎながら攻撃するのは難しく、思ったようには倒せなかった。

 水温が下がり始めたので、アキラは川から上がることにした。体力はまだ十分に残っていたが、溺れかけた過去があるので無理をしない事にした。

「セレナ、そろそろ上がろう!」と声を掛けたが、返事がない。アキラは周りを見渡すが、セレナも子犬も姿が見えない。

 どこに行ったんだろう?彼は不安を感じ、急いでマップ機能を確認した。

 すぐにセレナの居場所が分かった。少し下流の岩場で、そこには魔物の反応もある。

 アキラは裏道を通って岩場に近づいたが、セレナは即座に彼の気配に気づいた。彼女は無言で手を振り、ジェスチャーで何かを伝えてくる。

 リバーサーペントが岩場の窪みに同化して隠れていることを知らせているようだ。

 アキラがようやくセレナの側にたどり着き、小声で「セレナ、その蛇には」と言いかけると、セレナは笑って「毒があるよ、危険だよ」と答えた。

 探索でも知識でも、この小さな女の子に負けるのか……アキラはファイヤーボールを放った。

 攻撃は的中したが、相性が悪いのか、ほとんどダメージが与えられていないようだ。リバーサーペントは突然姿を現し、こちらに向かって襲いかかってきた。

 その瞬間、背後から子犬が蛇の首元に噛みつき、蛇の動きを一瞬止めた。その隙を見逃さず、セレナが投げたナイフが蛇の口の中を正確に貫いた。

 リバーサーペントは動きを止め、セレナは満足そうに微笑んだ。

 セレナは、リバーサーペントを倒した。

 セレナは、経験値5ポイント(アキラ2ポイント)を獲得しました。
25ゴールドを獲得しました。

 セレナはレベル3になりました。セレナはどんどんレベルが上がっていく。

「あー、疲れたけど楽しかった!」とセレナが満足そうに言う。子犬は、褒めて欲しそうに尻尾を振っている。

 アキラは複雑な気持ちを抑えながら、「着替えて、食事にしよう」と声をかけた。

 大型テントと中型のテントが並ぶベースキャンプに全員で戻ってきた。

「こっちがセレナのテントだよ。リュックと寝袋は中に入れてあるから」とアキラが説明した。セレナはリュックから下着を取り出し、その場で着替え始めた。

「テントの中で着替えなさい!」と、突然ラピスの声が響いた。

「アキラ、知らない声がして怖い」とセレナが不安そうに言った。

「怖がらなくていいよ。ラピさんの声だから」とアキラは答えたが、ラピスをどう説明するか考えているうちに、セレナとルナの動揺は収まった。

「私は神エリスの使いです。私の声に従いなさい!」と、ラピスがセレナとルナにだけ聞こえるように告げたからだ。

 アキラはなぜ動揺が収まったのか分からなかったが、状況が落ち着いたことに安堵していた。



 夕飯は、セレナが調理した魔物兎の肉とパンだった。

「アキラ、これ食べる?」セレナが林の中で捕まえた兎肉とキノコの串焼きを差し出してきた。

 焚き火の火でじっくりと焼かれた串からは、芳ばしい香りが漂っている。

 ルナは無言で兎肉を味わっていたが、その瞳は輝いていた。アキラも恐る恐る兎肉を焼いて口に運んでみたが、意外なほど美味しかった。

「美味しい……」パンと干し肉以外の食事は初めてだったが、調味料がなくても素朴な味わいを存分に楽しめた。

 セレナが丁寧に下処理をしてくれたおかげだろう。

 少しあっさりしていたので、「グリルミートチーズサンド」に続き、焼いた兎肉を薄くスライスし、溶けたチーズをのせた「ラビットミートチーズサンド」を作って食べた。

「私も食べる!」と、セレナが興味津々でアキラの調理法を真似し、自分も作って食べていた。一方、ルナは相変わらず兎肉だけを静かに食べ続けていた。

 やがて彼女たちは満腹になり、1日の疲れもあって、うとうとし始めた。

「もう寝よ、ルナ。おやすみ、アキラ」とセレナはアキラから寝袋を受け取り、ルナを連れてテントに入っていった。

「すごい子だな」とアキラは素直に感心した。

 アキラは一人残り、焚き火を眺めながら夜の静寂に心を委ねていた。それでも昨夜のようなことが起きないよう警戒しつつ、テントに入りシュラフに包まると、ラピスを呼び出した。

 ラピスが秘密を漏らさないと分かっているアキラは、主に戦闘の反省を話し始めた。

 その日はアキラが普段以上に饒舌で、話し終えると、話疲れてそのまま眠りに落ちた。

「全く、もう」と彼女はアキラの話に相槌を打ちながら、翌日の配布物の準備をしていた。

 アキラの話は上手で、スライム1匹倒すのもスペクタクルな活劇のようになり、聞いていて面白い。

 それが単なる話であり、実際には非常に冷静に分析しているのが分かる。さすがアキラだ。

 ガチャの結果が狼娘だったのは少し残念だが、仕方がない。他の2人のようなタンク職ではないし、バトルジャンキーな部分もあるが、戦闘力はフェンリルもいるため、実質的には2倍以上の効果が期待できる。

 アキラは庇護欲が強く、神経質になることもあるが、精神的には安定しているようだ。それが彼女に向けられていないのは残念だが、今は我慢しよう。

 彼女もベッドに横たわると、昨日の寝不足もあり、すぐに寝入ってしまった。


 
 夜が深まり、アキラとセレナはぐっすりと眠っている。闇は深く、月だけが光を地上に届けていた。月光は、ルナにとって太陽のようなものである。

 ルナは、セレナのテントを抜け出し、焚き火の残り火をちらりと見てから月を見上げた。

 川向こうの森のざわめきに気づき、警戒しながら辺りを見回したが、この野原までは影響がなさそうだ。

 ルナは歩きながら、今日の奇妙な出来事を思い返していた。朝起きると、セレナと共に見知らぬ場所にいた。

 しかも、二人とも以前の姿とはまるで違う幼い子供の姿だった。特にルナの場合、かつての力には程遠かった。

 さらに、セレナは記憶が曖昧になっているのか、いくつかの部分を思い出せないようだった。

 しかし、その分、彼女の本質とも言える明るさが戻っており、ルナは内心嬉しく思っていた。

 セレナは驚異的な成長速度で、元の体と力を、いや、それ以上の力さえも取り戻しつつあり、記憶も次第に蘇っているようだ。眷属としてのルナも同様である。

 しかし、何が起こっているのだろう? アキラという異質な存在は、一体何者なのか。それでも、ルナにやるべきことは一つしかない。

「私は、フェンリル、牙狼族の神。託された愛し子、セレナを守る」

 そう決意し、ルナは一声だけ遠吠えをあげた。

 いなくなった一族に届くように。

 野原を一周し、何事もなかったかのように、セレナのテントに戻り、静かに眠りについた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

処理中です...