アルカディア・クロノクル ゲーム世界に囚われた俺を救うのは、妹か、かつての仲間か

織部

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オークの森

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 島に戻ると、セレナとルナはどこか元気がなさそうだったが、21匹もの兎を獲ったことに喜び、川へ向かい、食材の加工に取り掛かった。

 アキラはその間、島の探索に時間を費やした。広大な島の各所を調べる中で、中央の平原がキャンプサイトのように整備されていることに気づいた。
 
 草が生い茂る中、石造りの炊事場や水場を見つけ、それに隣立するように、蔦の絡まった納屋がいくつか建っていた。

 そこには建材や建築器具、農具などが置かれている。

「ここに軍が駐留していたのかもしれないな…」

 周囲を見渡しながら、アキラは推測を巡らせたが、確かな手がかりは少なく、想像ばかりが膨らんでいく。

「答えを知ってしまうのも、つまらないか」そうつぶやくと、彼は古びた書斎へと足を向け、筆記用具を探し始めた。

 書斎には、かつてあった本や書類は全て持ち去られており、残されていたのは紙と古いペンだけだった。

 インクは固まってしまっているが、後で水を足して使えるかもしれない、と考えた。

 その時、ルナが器用に扉を押し開け、部屋に入ってきた。夕食の時間を知らせに来たのだろう。

 アキラはルナの頭を撫でながら、「大丈夫か?」と静かに声をかけた。

 夕食は兎肉の煮込み料理で、森で採れたハーブや木の実、きのこ、根菜、フルーツが使われていた。

「美味しいな。こんなにたくさんの食材が手に入るなんて、驚きだ。セレナ、本当に料理が上手だな」

 アキラは、料理の味に感心しながら、いつの間にか食べ過ぎていた。

「レシピが自然に浮かんでくるし、作っていると体が勝手に動くの!楽しい!」と、セレナは笑顔で言った。

 彼女は料理だけでなく、食材の下ごしらえや盛り付けの工夫、後片付け、キッチンの整理整頓まで、全てを手際よくこなしていた。

 干しているハーブもあるので、そのうちハーブティーを楽しむこともできそうだ。
 
 夕食後、セレナとルナは「やることがある」と言って部屋を出ていった。

 二人は食料倉庫を整理し、武器倉庫から農具を取り出し、かつて畑だった場所を再び開墾しようとしていた。

 アキラは監視塔に登り、静かな夜の風景を見渡した。足元では、セレナとルナが熱心に作業を続けている。

 森や平原は夜の闇に包まれ、辺りには深い静寂が漂っていた。

 アキラは今日歩いた道筋を思い返しながら、森の中に少しずつ隙間ができていることに気づいた。

 寝室に戻り、ベッドに横になると、ラピスと一日の反省をしているうちに、いつの間にか眠りに落ちていた。

※※

「なんだ、あの火柱は!」南西の森と山麓に住むオークたちがざわめいた。

 群れを好まないオークたちは、支配地である南西の森に、一匹または数匹の小さな群れで暮らしている。

 その数は数百、数千に及ぶが、正確な数字はわからない。山麓にはオークキングが住んでおり、数匹の幹部のオークが仕えている。

 森から雷鳴が響くと、しばらくして狼の遠吠えが聞こえた。そして、又、火柱が上がった。

「やつらは追い払ったはずだ。もう戻ってきたのか?」

 オークキングは不快そうに遠くの丘を見つめ、まず、斥候の派遣を決めた。狼達を、追い払ったのはほんの数年前である。

 狼の森と呼ばれていた森に住む狼の群れとの戦いに、オークキングの一人の力で勝利したのだ。狼の群れを蹂躙し、この地から追い払った。

 そして、森の中でも豊かな地は、彼らのものとなった。

 夕方になると、派遣した斥候が戻ってきた。

「狼と狼娘、それに人間の足跡と匂いがありましたが、姿は見つけられませんでした」

「やはり人間か。人間が魔術師で、惑わせの魔術を使っているのかもしれん。狼女が人間を誑かしたのだろう。わしが駆逐してやる!」

「それでは、私たちも?」戦いに乗り気でないオークたちの中で、1匹が声を上げた。

「要らん。お前だけ来い!」オークどもは群れでの行動が苦手で連携が取れないため、足手まといになると考えていた。

 戦闘能力の高さだけで王の座を勝ち取ったため、又、力を示さなければならないのだ。

「面倒な事になった。だが、魔法が使えるのが、自分達だけとは思わない事だ。」 

オークキングは、暗闇の中、斥候が足跡を見つけた川沿いの森迄移動を始めた。


 ルナは、一歩、魔物の森に踏み入れたとき、ここがかつて狼の森であったことに気づいた。

 しかし、新しい足跡や匂いがないため、今は狼たちがいないことも分かった。

 また、森の奥から漂う独特な匂いや耳にする物音から、オークが数多くいることも感じ取れた。

 しかし、森の奥深くに進むことは禁じられている。間違って進んでしまうと、神の声が聞こえてくる。セレナも同じ状況だった。

 丘に登り、声を上げて呼びかけてみたが、やはり反応はなかった。

 彼らは戦いに敗れ、この場所を捨てたのだろう。

 きっと、多くの仲間が亡くなったのだろうと推測される。声なき怨恨が、森の静寂の中でひそやかに響いている気がした。

「逆恨みだと理解している。力がすべてであること、同じ種族であっても無関係なこと、そして自分がまだ力不足であることも」

 それでも、故郷を追われ、滅亡した彼女たちにとって、理屈は無意味だった。

 彼女たちにとって重要なのは、失ったものへの復讐と、二度と失わないための力だけだった。

「わかってるよ、ルナ」

 セレナは、アキラのために朝食を準備し終えると、静かに扉を開けた。

 何も告げずに出かけるのは少し心苦しいが、外はまだ薄暗く、何よりも止められたくはないし、巻き込むわけにはいかない。

「行ってきます」



「アキラ、起きてください!」

 ラピスは、何度も声を大にして彼に呼びかけた。

「ラピちゃん、どうしたの?」

 彼は重いまぶたを開け、寝起きの頭で問いかけるが、緊迫した状況は彼女の表情と言動からすぐに理解できた。

 まだ夜明け前の薄暗い時間だった。

「セレナたちがオークキングと戦闘になります。至急、援軍を!」

 ラピスは、セレナやルナのためにアキラを起こすとは思っていなかった。

 彼女たちの行動は、行動原則に反している。

 神の声であるラピスの言葉は基本的に遵守しなければならないが、絶対的なルールではない。

「馬鹿な、狼どもが。まだ早いから禁止していたのに!」ラピスは怒りを感じた。

 完全なルールを設けてしまうと、このゲームの自由度や面白みが失われるからだ。

 その場合、神は罰を与えるか、見捨てるか、それとも……彼女は思わず声を上げた。

「アキラ、急いで!」
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