アルカディア・クロノクル ゲーム世界に囚われた俺を救うのは、妹か、かつての仲間か

織部

文字の大きさ
42 / 138

ドラゴニア金貨

しおりを挟む
アズーリア村に到着した時には、すでに日は沈んでいた。村の建物はすべて破壊され、何かを探し回った跡があったが、人影はどこにも見当たらなかった。

「これは大変だ。一体何があったんだろう? 村人たちは無事なのか」

 ハートフェルトは、村用に買ってきた商品が無駄になったこと以上に、村人たちの安全を心配していた。

「オーガの襲撃のようですね」

「魔物が人の村を襲うとは、大問題だ。私が小さい頃に起きた事件以来、こんなことはなかった」

「実は、ここだけの話にしてほしいのですが、村人の何人かは安全な場所で保護しています」

 アキラの言葉には、嘘は感じられなかった。
「それは良かった。しかし、魔物襲来の話を公にしてもいいですか?」

 ハートフェルトは、子供の頃に起きた魔物の大襲来で両親を亡くしているだけに、この問題に敏感だった。

「はい、構いません。私たちでは信頼が足りないので」アキラが言った。

 アキラの「信頼が足りない」という言葉に、ハートフェルトは、あれほど強いパーティが国家レベルの仕事をしており、表立って動けないのだろうと勝手に解釈した。

 アキラはマップ機能で周囲に問題がないことを確認すると、村人が書いた村の地図と回収希望品リストを取り出した。

「セレナとノクスは、地図に丸を付けた家でリストの品があれば優先的に集めてください。他にも、使える衣類、毛布、食品、キッチン道具も集めてください。ルナは周辺の人の捜索をお願いします」

 アキラは指示を出し終わると、ハートフェルトに言った。

「村の人たちへの販売予定の商品はすべて私が買い取ります。支払いが可能であれば、ですが」

「確か、かなりのゴールドが溜まっていたはずです」

 その時、アキラの服のポケットからコインが落ちた。

「これは、ドラゴニア金貨!」商人は思わず声を上げた。師匠からの餞別としてもらった金貨と同じ、信頼性の高い希少な金貨だ。

「ご存知ですか?」アキラは尋ねる。ラピスがわざと落としたのだ。



「もちろん。商人としての常識です。もしよろしければ、その一枚分だけでも助かります」

 師匠からもらった退職金で実物を見たことを、師匠に感謝している。

「わかりました。ちなみに、荷馬車の荷物で、どれくらいの金額になりますか?」

「4枚、いや、3枚と少しです」利益がほとんど出ないので、できれば4枚で買ってもらえると助かると、ハートフェルトは考えた。

 商人はアキラたちに対して借りがある。この世界では、助けた際にかかった費用や労力は請求されないというルールがある。

 しかし、今回与えられた高級ポーションは、一生かかっても払えない金額のものである。助けたことによる借りは返さなくとも、恩は何らかの形で返さなければならない。

「そうですか。それでは、5枚で全て買い取ります。また、色々と買ってきてほしい物があるので、別に金貨10枚をお渡しします」

「……」

「少ないでしょうか?」アキラは商人の利益を上乗せしたつもりだったので、ハートフェルトの反応に驚いた。

「いえ、十分です。それで、荷物はどこに運べばいいのでしょうか?」商人は、どこに運ばされるのかと戦々恐々としながら尋ねた。

「この場で大丈夫です。これから収納魔法を使いますが、他言厳禁ですからね」

「アキラ、いろいろ持ってきたよ」山のように積み上げられた雑貨や衣服、保存食料を見て、アキラが集めたものをしまう準備を始めた。

「じゃあ、しまいますね」そう言うと、集めた村の物と荷馬車の荷物が一瞬で消えた。
 ハートフェルトは商人であり、商人の固有スキルとして収納魔法を取得している者もいる。しかし、これほど大きく、一瞬で消えるのは見たことがなかった。

 やはり、ただ者ではない。ハートフェルトは緊張しながら質問を続けた。

「何をご用意しましょうか?大したものは準備できないかと……」彼は自分の力の無さを恥じながらも、何とかしようと考えた。

「今日買ったものとほぼ同じものです。小麦、豆類、トウモロコシ、芋、干し肉、チーズ、衣類、金具、釘、タオル、調理道具、皿、野菜の種、苗、灯油、調味料、香辛料、お茶は必ずお願いします。鶏や牛は難しいかもしれませんが、それらも欲しいです。ここら辺はその次でいいですが、建築資材も必要です……」

 どんどんと要望が溢れ、本当に何が必要かわからない気もした。

「みんな、欲しいものがないのか?」アキラが聞くと、要望が上がった。

「よく切れるナイフと美味しいパン!あと、ルナには美味しい干し肉を。苗は町に行った時に自分で見る」

「矢と弓弦。できるだけ良いものを。それと、寝衣」

「寝衣ですか? 準備しましょう。可愛いのを。アキラを誘惑するようなのは駄目です」

 なぜかラピスが反応している。聞こえているはずのセレナは知らんぷりをしている。

「わかりました。それでは、5日後、お昼過ぎにここでよろしいでしょうか?」

「いえ、森は危険なので。こちらが町に取りに行きます。どちらに行けばよろしいですか?」

「ウエストグレンの冒険者ギルドでお待ちしております」

「では、いろいろ増えたので、ドラゴニア金貨だけで悪いのですが、とりあえず105枚渡しておきます」

 ハートフェルトの半年分の商売が一瞬で決まった。嬉しいはずのハートフェルトの顔は、なぜか青ざめていた。



アキラ  魔術師 レベル10
セレナ 魔法剣士 レベル10          ノクス 魔法射手 レベル6

ゴールド: 11,165
保護時間: 5日
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

処理中です...