アルカディア・クロノクル ゲーム世界に囚われた俺を救うのは、妹か、かつての仲間か

織部

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ノワール パワーレベリング ※

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 魔物の森――今では牙狼の森と呼ばれつつある西南の森に、足を踏み入れる。

 ルナが高速で進み、その後にセレナ、アキラ、ノクスが続く。アリアが余裕を持って遅れることなく同行していたことに、アキラはとても驚いた。

「セレナ、何か問題あるか?」

「特にない。オーガやオークの匂いはするけど、今はいない。あいつら、コソコソしてるだけ。」

 アキラはマップ機能で周囲を確認するが、強敵はいない。

「森の湖まで行って、昼寝して帰ろう。あと、ノワールにできるだけトドメを任せるようにしよう」

 川を越え、森の入り口近くに差し掛かる。ここは魔物の数が減っているため、すぐに移動を再開。

 「今日は南側を探索するぞ!」とアキラは声を掛け、北に広がる大河を避けて反対の方へと足を進めた。

 ステラがエコーロケーションで見つけた蛇の尾に、遠くから矢が放たれる。ルナは瞬時に攻撃の位置を取ると、ノワールが短い鞭で魔蛇を一撃、トドメを刺した。

 ウッドサーペントは、毒を避ければ手頃な経験値を得られる魔物だ。ルナは一匹の魔兎を見つけたが、過去にノワールの鞭で潰れてしまったことを思い出し、それ以降は魔兎の少ない道を選ぶようにしていた。

 アキラは魔蜘蛛を見つけると風魔法で蜘蛛の巣を吹き飛ばし、ノワールがタイミング良く鞭で攻撃。もし失敗しても、ルナが素早く対処してくれるから安心出来る。

「アリアさん、ノワール、頑張ってますよ!」とアキラが声を掛ける。

「その調子! 森の奥は、珍しい草花が多いね。セレナ、あ、そこの木の下に生えてる草も採って!」

 アリアは空返事をして、自分の作業の指示を出す。

「はーい」

 アリアとセレナはノワールの戦闘に背を向け、丹念に薬草や野菜とキノコを探し回る。二人は夢中になり、探索の本来の目的を忘れてしまったようだ。

 一時間ほど南へ進んだところで、アキラは引き返すことにした。レベルアップにより、マップ機能にウォッチやナビが追加され、行動の管理がしやすくなったが、どこか息苦しさも感じる。

「セレナ、この先はどうなってる?」

「小さな川があって、その向こうは野原と腐った森が広がってる。」

「行ったことある?」

「ない!行く価値もない」とセレナは即答した。

 彼らは湖を目指し、引き返し始める。湖に到着すると、水は透き通り、周囲には魔物の気配が薄れていた。湖畔には薬草が群生し、果樹も豊富に実っている。

「すごい!」アリアは歓喜し、まるで少女のようにくるくると回る。

「お姉さん、こっちは真剣にやってんのに!」と、ノワールは少し怒ったが、怒る姿は子供、微笑ましいほど可愛い。

 湖に着くと、ノワールとノクスは楽しげに水浴びを始めた。アキラは湖の砂地にテントを張り、ヴァイオレットから借りたテーブルを出して焚き火を起こす。

 セレナにせがまれて、小麦粉、砂糖、蜂蜜を取り出し、簡易クレープを作る準備を始めた。「町に行ったら、牛乳と卵を買い足さなきゃ」

 自生している果物を剥いてクレープを仕上げると、香ばしい香りが辺りに漂い始めた。

「島の薬草園や畑に植えるものは、アキラに保管してもらう方がいいよ」セレナがアリアに助言し、アリアは根付きの薬草を袋に包んで湖の水を加えた。

「この水は……」アリアが言いかけると、アキラが興味を示した。

「この水、癒しの効果があるんですよ!」彼はラピスから教わった知識を披露した。

「それだけじゃない。魔除けの効果もある。…これは聖水じゃない?」アリアが驚いた声を上げる。

「聖水?」アキラは首をかしげた。

「ええ、まあ、聖水は…聖水よ」アリアも詳しくは説明できなさそうだった。

 アキラは聖水の正体がわからず困惑したが、ラピスに後で聞くことにして、今はおやつを楽しむことにした。

 その後、セレナたちが昼寝をする間、アキラは見張りという名のリラックスタイムを過ごした。

 アキラは作業をしているアリアに声をかけた。

「アリアさん、一人で森に来れるほど強いんじゃないですか?」

「普通の森ならね。でも、この魔物の大森林は別よ」

「アリアさんのレベルは?」

「それは秘密」とアリアは微笑んで答えた。

「どうやって強くなったのですか?」

「ダンジョンも潜ったし、アステリア様と一緒に魔物と戦ったこともあるの。私とフェニックスはね」アリアは意味深に笑みを浮かべた。 

 ノワール

 •レベル: 3
 •HP: 20/20
 •MP: 6/6
EXP:41/47

※※※

 山吹はバイクを走らせていた。湖のほとりを滑るように進み、やがて高速へと乗る。

 目的地は、本土を横断した先にある半島の突端。その途中、半島の入り口を過ぎた先の海沿いに広がる温泉地で一泊するつもりだった。

 宿は、サービスエリアで宿泊予約サイトを眺めているときに見つけた。本日限定、格安――その文字に惹かれ、即座に予約を入れる。

「急ぐ旅でもないし、たまにはのんびりしよう」

 それに、持ち出したノートのことも気になっていた。

 高速を降り、寂れた温泉街の入口に掲げられた「歓迎」のゲートをくぐる。だが、街にはほとんど人影がない。奥へ進むにつれ、さらにひっそりとしていく。

 やがて、目的の宿に辿り着いた。サイトの写真で見た以上に古びた木造の二階建て。幽霊が出ると言われても疑わないような佇まいだった。

 駐輪場にバイクを停め、荷物を下ろして軽く伸びをする。

「すいません、予約した山吹です」

 しばらくして、中年の番頭が姿を現した。

「いらっしゃい、お待たせしました」

 どうやらこの宿は、湯治客向けの長期滞在型らしい。

「食事はありでよろしいですね?」

「ええ、お願いします」

 長期滞在者向けに自炊施設もあり、食事を自分で用意する客も多いらしい。しかし、山吹は宿の食事が美味しいというコメントと写真を見て、ここを選んだのだ。

 山吹は瀬戸内海に近い四国の有名な温泉地の出身だ。兄も、そして赤目も同じだった。子供の頃から、兄に連れられて温泉――というより銭湯へ行くのが、彼女の楽しみの一つだった。

 部屋に案内された後、夕食の時間を確認し、外へ散策に出る。

 日本海に太陽が沈んでいく。潮の香りが漂う。空を真っ赤に染める、美しい夕焼けだ。

 海沿いの遊歩道を歩いていると、湾の向こうに大きな島が見える。そこには橋が架かっていた。
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