アルカディア・クロノクル ゲーム世界に囚われた俺を救うのは、妹か、かつての仲間か

織部

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オーク達の移動 ※山吹の移動

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 オークのドルムとバルムは、アズーリア村へ移動を始めた。ドルムは最低限の兵だけを連れて行きたかったが、バルムが大々的に情報を吹聴したため、オーガ領の半数以上が集まってしまった。

 彼らはオーガとの諍いに嫌気が差していたのだ。
 普段は集団行動を嫌うオークたちも、新しい土地への移動となると自然とまとまって動く。とはいえ、それはあくまで緩やかなもので、陣形と呼べるものではなかったが。

 そんな様子を、オーガたちは驚きの目で眺めていた。

 半日も経つと、領域を分ける小川を渡り、ついに新天地に到着した。森は豊かで、オークたちは喜び勇んでいた。この土地なら生きられる――そう確信するほどの恵みがあった。

「よし、ここで解散だ。できるだけ、あちこちにばらけろ。悪いが、食料は少しでも構わんから、献上しに来い。それと、人間の気配を感じたら、すぐに逃げろ!」ドルムが厳しい声で指示を出す。

 言われるまでもなく、彼らは思い思いの方向へ、食料と寝床を求めて散っていった。限られた者だけがドルムの周囲に残った。

「兄者、せっかく集めたのに」バルムは不満を漏らす。
「どうせ、戦力にはならん。弱きを挫き、強きを避ける。これは我らの遺伝子に組み込まれているんだ」
「これからどうするつもりですか?」
「アズーリア村に向かう。誰かがいなければ、オーガも納得しないだろう。お前も好きなところへ行け」

 バルムは一瞬、迷うような素振りを見せた。これまでの戦いでは、ドルムに従うばかりだった。だが、今回は違う。

「いえ。言い出したのは私ですから」
 その言葉に、ドルムは小さく頷いた。
 アズーリア村に着くと、荒れた景色が目に映った。廃墟のような村の姿であった。

「それでは、砦作りを始めようか」ドルムは残った者たちに号令を下した。
 彼の胸には、これから起きる戦の高揚感があった。戦好きかもしれんな。ドルムは、意外な自分の性格に気づきながら、これからの運命に思いを馳せた。



 ガルムは、狼討伐隊を編成しようと多くのオークに声をかけたが、思うようには集まらなかった。

「お前、あの狼と戦ったことあるか? オラは追いかけられて、死ぬかと思ったぞ」
「どうやって勝つつもりだ?教えてくれ!」
「あのオーク王ですら勝てなかったんだ。お前、そんなに強いのか?」

 話を聞こうとしない者たちばかりで、ガルムは腹立たしく思った。特に年寄りたちの無力さには、吐き気すら覚えた。

「奴らは、俺たちが森を取り戻しても、森には入れさせない!」
 ガルムは、彼と同世代の若者たちを中心に、高待遇を約束してなんとか数を集めた。

「弟よ、策はあるのか?」ザルムがやってきて尋ねた。
「ふん、策なんて臆病者のやることだ」

「お前ならそう言うと思ったよ。差し入れだ。せっかく準備したんだ、持っていってくれ」

「まあ、もらっておこう」ガルムは荷車に積まれた荷物を確認して、にやりと笑った。

「ザルム兄貴も一緒に来てくれよ!」

「いや、ドルム兄さんの言いつけがある。それに、まだ傷が痛むんだ」

 そう言って、ザルムは自分の傷跡を見せた。
「そうか……」ガルムは残念そうに下を向いた。兄の不在が不安なのは隠せなかった。

「それと、渡し船も準備してある。使ってくれ」

「どこで手に入れたんだ?」

「オーガたちに譲ってもらったよ。泳ぐよりは早く渡れる」

「ありがとう。じゃあ、行ってくる」

 ガルムを見送った後、突然オーガの軍師が不意に現れた。匂いや気配に全く気づけず、ザルムは背筋に冷たいものを感じた。

「ザルム殿、行かないのですか?」
「聞いてた通りです。この前、牙狼にやられて、死に物狂いで逃げました」

 ザルムは偵察中にルナに捕まり、切り刻まれた。身体を丸め、かろうじて命を繋いだ。ルナが別の獲物を見つけ去らなければ、今ここにいなかっただろう。

 あの恐怖は――。

「反戦を訴えていたのはそのせいですか?」
「いえ、ただ事実を伝えただけだ。それでも、賛同する者は多い。オークの戦士は勇敢ですよ」
「勇敢ね……だが、それが蛮勇に過ぎないと知ってるだろう? 我らですら……」

 軍師の口調に冷ややかなものが混じった。
 ザルムは、戦いの勝利より、ガルムの無事を願った。

※※※

 彼女の寝ている部屋に朝の光が差し込む。その眩しさに、意識が覚醒する。

「まあ、わからないものは仕方がない。動かないと始まらない」

 これが、山吹の行動原理である。彼女は、自分が兄や赤目のような天才ではないことを知っている。恐ろしいのは、兄たちはさらに、行動力まで兼ね備えていることなのだが……

 朝風呂を済ませ、簡単な朝食をとると、着替える。

「ゆっくり二度寝とか、最高なんだけど……」

 未練がましく呟きつつも、山吹は諦めて目的地へ向かうことにした。宿に小さな鞄を預ける。その前に、いつも使っている携帯を鞄に入れ、代わりに新しい携帯を取り出す。

「これは?」
 宿の人間が不思議そうに眉をひそめる。預ける荷物にしては、あまりにも小さいからだ。

「夕方までには取りに来ます。バイクも」
 目的地は、半島の先にある小さな町。彼女はリュックを背負い、駅へ向かった。

「面倒だけど、仕方ない」
 そう呟いて、歩き出す。駅に着くと、現金で切符を買った。

 携帯は、きっと監視されている。赤目から昔渡されたものだ。バイクも……。慎重に行動する必要がある。そして、出来るだけ、監視カメラの無い場所を通る。

 白と青のシンプルな車両がホームに滑り込む。座席は空いており、窓際の席に座った。

 車窓からは穏やかな海が広がり、やがて景色は田園風景へと移り変わり、稲穂が風に揺れ黒瓦の家々が点在する集落を通り過た。

 電車の終着駅で、バスに乗り継いで一時間。やっと、失踪、いや消えてしまったあの子の実家に着いた。

「こんにちは!」山吹は勇気を出して声を出した。
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