アルカディア・クロノクル ゲーム世界に囚われた俺を救うのは、妹か、かつての仲間か

織部

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アーセノノル

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 主要道路を、西方のウエストグレンへ向かって歩いていた。途中、荷車を使う案が出たが、ルナが猛反発し、その計画はすぐに頓挫した。

 旅商人の荷車がアキラたちを見て速度を落とす。狼に乗る子供、狼人族、エルフ、人間という珍しい組み合わせに、商人は少し戸惑った様子だ。しばらく見つめた後、急いで去っていった。

 主要道路には一定の間隔ごとに休憩所が設けられているらしい。水場の近くにあり、旅人が自由に休憩したり宿泊したりできるという。大きな休憩所では、食事を提供する宿もあるようだ。

 やがて、大きな休憩所が視界に入った。ここは峠に向かう手前で、これからは山道が続くようだ。

「アキラ!何か良い匂いがするよ。お店がいくつかあるみたい!」セレナとノワールを乗せたルナが、楽しげに駆け出した。

「アキラさん、あちらに見えるのが、海というものですか?」

「そうだよ。今度は絶対に行こう」アキラも海を見て、旅の目的地に思いを馳せた。

 セレナたちが戻ってきて、彼女たちが選んだ店を得意げに教えてくれた。「早く来て!」という催促がうるさいが、アキラも笑いながら彼女たちについていくことにした。

「ここだよ、間違いない!この匂い、すごくいい!」キッチン付きの宿を抜けて、裏通りにある古びた食堂へと向かう。そこには「ホワィティ・ハウル」と書かれた看板が掛かっていた。

 扉を開けると、揚げ物の香ばしい匂いとジュワジュワとした音が広がる。先ほどすれ違った旅商人が、すでに客として席についていた。こういった旅慣れた人々が集まる店は、美味しいに違いない。

 壁には「星喰の書 ⭐︎⭐︎」と、荷車のタイヤの透かし絵の上に飾られた賞状が掲げられている。

「ああ、先ほどは失礼しました。あなた方もこの店が目的だったんですね!ここは、ラシュラン二つ星です」と旅商人が申し訳なさそうに近づいてきた。

「お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

「冒険者パーティ、アーセノノルです」

「アーセノノルさんですね。覚えておきます。目的地はウエストグレンですか?」
「はい、その通りです」

「我が商会にもぜひお立ち寄りください」ケイオスと名乗る商人と軽く挨拶を交わした。

 店内は自由に席を選べるようで、アキラたちは広いテーブル席に座った。

「おすすめは、数量限定のフィッシュアンドチップスです。」犬人族の少女が、少しルナを警戒しながら注文を取りに来た。

「ルナは大丈夫だよ。良い子だからね」ノワールが笑顔で犬人の少女にチップを渡すと、少女の顔に安堵の笑みが広がる。

「じゃあ、五人分。それとパンは四人分。飲み物はレモネードで」ノワールが注文を手際よくまとめた。

「はい、少々お待ちください!」犬人の少女は軽やかに足を運び、注文を厨房に通しに行った。

「もっと食べたいなぁ」

「足りなかったらお代わりしてもいいよ。」アキラが微笑んで答えると、セレナは嬉しそうに目を輝かせた。

出てきた料理は、白身魚がふっくらとしており、自家製のタルタルソースとモルトビネガーが絶妙にマッチしている。

魚はセーヴァスで釣られた新鮮なものを、わざわざ空間魔法で運んできたという。セレナもその美味しさに舌鼓を打ちつつ、料理研究の意欲を燃やしているようだ。

「すみません、フィッシュアンドチップスは売り切れてしまいました。次は数量限定のローストビーフがおすすめです」

「じゃあ、それを五人分お願いします」

「これじゃ飯テロだ!」とラピスの心の声が聞こえた。



 アキラはついつい食べ過ぎて動けなくなり、無料のテントサイトに二つのテントを建て、昼寝をすることにした。

「アキラ、アキラ!」外の騒音が気になっていたが、セレナの声で目が覚めた。

 テントの外に出ると、多くの馬や馬車、そして騎士たちが忙しそうに動き回っていた。その姿には緊張感が漂っている。

「あれは、王国第二騎士団だ。」とノワールがすぐに答え、彼女の視線は騎士たちに鋭く向けられている。

 セレナは耳を澄まし、騎士たちの焦った声を拾った。

「王女たち、休憩所には立ち寄っていない。セーヴァスに向かったか?」

「いや、アズーリア村の方かもしれんが、倒木で道が塞がっているはずだ」

「それに、ゴブリンの足跡と矢が見つかった。王女たちが攫われた可能性も考えられる」

 セレナの表情は険しく、声をひそめて彼らの会話を繋ぎ合わせる。

「だが、動きが早すぎる。王女が逃亡したその日の夜、もしくは翌朝にはすでに追跡を始めている計算になる」とノワールが低い声でつぶやく。

「王女の我儘の旅は珍しくないのに、これほど迅速に追われるとは……何か裏があるに違いない」

 アキラの胸中には、騎士団の異様な動きが怪しく映った。

 そのとき、騎士たちが険しい表情で近づき、周囲を取り囲んだ。

「お前ら、テントの中を調べさせてもらう。いいな」

 騎士たちは無遠慮にテントの中を物色したが、何も怪しいものは見つけられなかった。

「中には、エルフの子供と狼だけです」と一人の騎士が報告し、ノクスが不機嫌そうなルナを宥めているのが見えた。

「代表はお前か?ここで何をしている?」副長らしき男がアキラに問い詰める。

「冒険者パーティ『アーセノノル』です。ウエストグレンに向かう途中です」とアキラが答えると、騎士たちは嘲笑を浮かべた。

「おい、魔物の大森林にでも行く気か?」

「それともハーレムパーティを楽しんでるのか?」

「違うよ、黒服の小さい子が彼女だぜ!」

「お前ら、いい加減にしろ!」副長が鋭く叱りつける。そして再びアキラに向き直った。

「それで、ウエストグレンに何の用だ?」

「冒険者ギルドとネグラロサ商会で買い出しを頼まれまして」

「……誰の指示だ?」

「エリス神です」

 副長の顔色が瞬時に変わり、騎士たちも一斉に顔を見合わせた。

「エ、エリス神だと……?」副長は言葉を失い、まるで自分に言い聞かせるかのように立ち尽くした。神託とは、この世界の人々、彼らにとって非常に重いものである。簡単に口にできないことでもある。

「はい!」

 その瞬間、副長の顔は青ざめ、騎士たちは不安そうに互いに目を合わせながら後退した。

「……失礼した。引き留めてしまって悪かった……」副長はたどたどしく言葉を続け、恐れを帯びた目でアキラを見つめた。

 関わりたくないようで、騎士たちは蜘蛛の子を散らすように一気にその場を離れ、周囲には静寂だけが残った。


 アキラが驚いたのは、セレナの剣とラピスの声が出なかった事だ。

「弱すぎて相手にできない」セレナは笑った。

「危機でもない。神の声を聞かせるまでもない」しかし、ラピスの声には怒りがこもっていた。

「アキラ、アーセノノルって」次の瞬間、ラピスは大笑いした。
 
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