アルカディア・クロノクル ゲーム世界に囚われた俺を救うのは、妹か、かつての仲間か

織部

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武器庫設置

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「じゃあ、ダリオスさんとアリアさんにも事情を話します。構いませんか?」
「ええ、それは構いませんよ。アゼリアをよろしくお願いします」

 ヴァイオレットは、勝手に話を進めてしまう。
 後ろでは、うつむき気味の聖戦士がどんよりとした目で立っていた。その横で、鞭を巻いたメイドが楽しげに笑っている。どう見ても、立ち位置が逆だ。

 アキラはギルドホールへ向かい、アリアを訪ねた。
「おーい、頼んだもの、あったかい?」
 アリアは薬草を刻みながらアキラに気づき、声をかけてくる。
「はい、ありました。こちらです」

 アキラは空間から袋を取り出し、アリアに差し出した。
「なんと、あったのか!……よし、間違いなさそうだな」
 アリアは目を細め、大事そうにそれをどこかへ仕舞い込んだ。
 アキラは旅の道中で起きたことを手短に語った。

「図書館、楽しみだね。アストリアがどんな本を集めてたのか、すごく気になる。薬のことなら私の方が詳しいと思うけど……司書、やってもいいよ?」

「ぜひお願いします。それで、この状況、どう思いますか?」
「うーん、複雑だよね。でも一つ確かなのは――アキラがもっと強くなること。いや、アキラの仲間たちも含めて」

「それが、今やるべきこと?」
「ああ。力のない正義がどれほど脆いか、私は知ってるつもり。村の雑事は、ダリオスやフェニックス、それに私たちに任せて。いまは魔物たちの動きが活発になってる時期かもしれない」

「魔物の侵攻期……ですか?」
「可能性の話ね。詳しくは……少し時間をくれる? アストリアの蔵書の中に、何かあるはずだから」
「わかりました。それでは後ほど、図書館で」
「うん、楽しみにしてる」



 ちょうどダリオスも自室にいたので、アキラは事情を説明した。
「そうですか。状況は逐一、ライオスたちに報告させましょう。それと……私の事情も、お話ししておきます」
 ダリオスの語りは静かだったが、芯の通った強さがあった。

「私を襲ったのは、マリスティア侯爵家の手先です」
「なぜ襲われたのですか?」
「理由は明確ではありません。ただ、町を手に入れるため、有力者を排除しようとしているのではと考えています。最初は嫌がらせや中傷でした。だが効果がなかった。それで、手段を変えてきたのでしょう」

 ダリオスの目に、微かだが怒りが宿っていた。
「町長のもとにも、暗殺者が送り込まれたと聞いています」
「……ウエストグレンは鉱山の町ですよね。その権利は、ネグラロサ商会が持っていると聞きましたが」

「その通りです」ダリオスは頷き、すぐにきっぱりと言葉を重ねた。
「ですが、それを『不当』だと考えるのは間違いです」
「どうしてですか? 町の資源なら、町のものではないのですか?」

「違います。ネグラロサ商会こそが、この町を築いたのです。鉱山も、彼らが莫大な資金を投じて掘り当てたもの。もともと、この地には何もなかった」
「なるほど……。それで、その鉱山では、どんな鉱物が採れるんですか?」

「魔石です。珍しくはないが、ウエストグレンの魔石は特別です。すでに魔力がこもっている」
「魔石は、以前、飛行船で使われているのを見ました。でも他には?」
「ランプや武器の動力源としても使われています。扱える者なら、誰でも魔力を補充できます」
「僕でも?」
「もちろん。今度、やり方を教えましょう」
 アキラが頷くと、ダリオスは小さく微笑み、話を戻した。

「今のウエストグレンは王国の直轄領ですが、もともとはアストリア様の私領でした。彼女がネグラロサ商会に町づくりを命じたのです」
「アストリア様が……?」
 アキラは顔をわずかにしかめた。ダリオスは静かに語り続けた。
「アストリア王女は、十数年前に亡くなっています。しかし生前、この地を魔物討伐の拠点とするよう命じました。当時は、マリスティア侯爵家も盟約を交わし、町の発展を支えていた」

 アキラの目が見開かれた。
「じゃあ、今は……?」
「ここ数ヶ月で、その盟約は崩れたようです。マリスティア侯爵家には代替わりの噂がありますが、発表も式典もない。侯爵家としては、あまりにも異常です」



 島の船着場近くには武器庫を建てる適地が見つからず、島の中央に広がる野原が選ばれた。そこに石造りの武器庫を設け、その隣へ、老朽化した倉庫を移設することが決まった。

 内部の物資は整理され、新たな施設へと運び込まれる予定だ。
 ヴァイオレットたちのほか、ダリオスやドワーフたちも加わり、準備は着々と進められていた。 

「では、入りましょうか」
 アキラが倉庫の扉に手をかける。錆びた蝶番が重たげに軋み、内部が現れた。以前と変わらぬその空間には、船の部品や荷車、奇妙な形の武器、そして製造機器が隙間なく並んでいる。

「これは……すごい。こんなものまで作っていたとは」
 フェニックスが感嘆の声を上げた。その目は驚きに見開かれ、息を呑むように空気を吸い込んでいる。アキラも思わず目を細めた。

 精巧な仕組みの武器が並ぶ。大型の矢や槍を発射する機構を備えた弓、投石機。それらの間には、錆びた歯車と鋳型のついた製造機器が鎮座していた。

「興味深いな……専門ではないが、わしらに任せてもらえんか? 修理や調整が要るだろうしな」

 ドワーフの頭領ストーンファイアが前のめりに言う。目を輝かせる様は、まるで宝物を見つけた子どものようだった。
「ヴァイオレットさん、よろしいでしょうか?」
 アキラが問いかけると、ヴァイオレットは荷車に刻まれたアストリアの紋章を指先で撫でながら、穏やかに答えた。

「アキラさんにお任せした以上、確認はいりません。それに、フェニックスもこういう分野には詳しいでしょう? 手伝ってあげてください」

「それでは、ストーンファイアさん。正式に依頼します。フェニックスさんは、ダリオスさんと連携を取ってください」
「ああ、ありがたい! よし、燃えてきたぞ。さっそく武器庫に運び込もう!」

 ストーンファイアが部下たちに指示を出すと、ドワーフたちは声を弾ませて動き出す。空気が一気に活気づき、作業場は明るい熱気に包まれていった。

 ギフトによってもたらされた石造りの武器庫は、防災対策も施されており、非常時には避難所としての役割も果たす。

 防御と備蓄、そして製造。その全てが、この一角に集約されつつあった。

(フェニックスには島と村の守りを。ストーンファイアたちには武器の整備を。ダリオスには資金と資源の管理を――)

 アリアと語り合った理想の形が、ようやく地に足をつけはじめている。

「では、後はよろしくお願いします」
 アキラは現場を託し、ヴァイオレットたちと共に、次なる設営地点へと歩を進めた。
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