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サナトリウム
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その子の名前は、アマリ。
ネフェルの妹だ。年齢は、ノルドの少し下くらい。姉と同じ金髪の長い髪をしていて、花柄のロングスカートを身にまとっている。
アマリが抱きついていた体をぱっと離すと、目に溜まっていた涙が自然と溢れ落ちた。
「お姉ちゃんに、病気が、移っちゃう!」
「大丈夫だって、手紙に書いたでしょ」
ネフェルは、離れたアマリをもう一度抱きしめた。妹を安心させるため、その腕には迷いのない温かさが込められている。
二人の再会を待ち遠しく思っていたのだろう。その光景を邪魔しないよう、周囲からは人々が自然と距離を取っていた。
アマリの警備や付き添いのメイドたちも、ネフェルには見慣れた顔で、警戒する様子はない。
少し離れたところから、メイド長が代表して声をかけた。
「ネフェル様、お席をご用意しております。どうぞお座りになって、ゆっくりお話しください」
新しいテーブルと椅子を持って、庭に新たな席を準備した。
ちょっとした、お茶とナッツのクッキーも準備されている。
「そうね、ありがとう」
「ですが、ネフェル様……普通にお知らせいただければ、正門を開けましたのに」
少し叱るような口調が混じる。
「そうなの? アマリにグリフを見せたくてね、ははは」
ネフェルは照れくさそうに笑みを浮かべ、ばつが悪そうに視線を外した。
「それじゃ、ノルドも一緒に!」
彼女に促され、ノルドはアマリを紹介されながら席についた。なぜか気恥ずかしさを感じ、目を伏せる。
ネフェルはアマリの話す出来事に「うん、うん」と相槌を打ちながら、幸せそうに話を聞いている。
一方、ノルドはふとヴァルの姿を探した。すると、ヴァルとグリフィンが老人たちから餌をもらっているのが見えた。
「腹一杯喰え! 育ち盛りだからな!」
笑いながら餌を与える老人たちはどこか只者ではない。
魔物を全く恐れていないだけでなく、その動きには年齢を感じさせない軽快さがあった。
やがてグリフィンたちが食事に満足すると、老人たちはその背に飛び乗った。
ヴァルは乗りたくないらしく、ノルドの足元に逃げ帰り、座り込む。
「何してるの?」
突然、屋敷から白衣の女性が飛び出してきた。
「おい、まずいぞ、サルサ医師が来た!」
老人たちは慌てるどころか、グリフィンに「飛べ!」と命じられたのか、羽ばたか
せ、ゆっくりと空へ舞い上がる。
「こら、馬鹿ども! 子供じゃないんだから、早く降りてきなさい!」
サルサの大声もどこ吹く風。老人たちは奇声をあげながらグリフィンを駆り、空を縦横無尽に飛び回る。
「おーい! 上がもっと楽しいぞ!」
「どこまで行けるか試してみよう!」
よく見ると、老人の一人がグリフィンに僅かな魔力を注ぎ込んでいるのが分かる。
「もっと速くだ!」
「ほら、天を駆けろ!」
煽られたグリフィンは、さらに勢いを増して空を駆ける。
地上では、警備やメイドたちが心配そうに空を見上げている。
「おしまいよ」
ネフェルが手を挙げて指示を送ると、グリフィンたちは老人たちの指示を無視して降下を始めた。
「こらこら! これから島で一緒だろう!」
一時の楽しみを終えると、老人たちはネフェルに怒られるのを避けるように屋敷へ逃げていき、グリフィンは、寝ぐらに帰っていった。
彼らの使用人たちも跡を追って駆け出す。
「全く、どこが病気なんだか!」
サルサはため息交じりに呟きながら、ネフェルとノルドに近づいてきた。
ノルドは叱られるのではないかと身構えたが、サルサは微笑んで首を振った。
「騒がしくてごめんなさいね。あの方たち、一昔前は英雄と呼ばれていたんです」
「とっても楽しくて、優しいおじいちゃんたちだよ!」
アマリが笑顔で補足する。
「サルサ様、アマリがお世話になっています」ネフェルは立ち上がり、深々と会釈した。
ノルドも慌てて立ち上がり、ぎこちなく頭を下げた。
「サルサ様、少し、お時間を頂戴したいのですが」
ネフェルは、真剣な表情だった。
「良いでしょう。私の部屋でお話ししましょう」
サルサが歩き出そうとしたとき、妹が慌てて声を上げる。
「お姉ちゃん!」
一瞬立ち止まったサルサは、柔らかく微笑みながら振り返った。
「今日はここに泊まるつもりよ。後でゆっくり話しましょうね」
「ほんとう!?」
妹の顔がぱっと明るくなり、飛び跳ねるように喜ぶ。
「では、お泊まりの準備をいたします」
「お願いね」
サルサは歩き出し、妹は嬉しそうにその背中を見送った。
※
みんなが去ると、ノルドとアマリ、それに給仕のメイドだけが残された。
「……」
「……」
天使の通りすがるような時間が流れる。
ヴァルがアマリの足元に静かに移動すると、アマリは恐る恐る手を伸ばした。
「触ってもいい?」
「大丈夫だよ。優しい子だよ」
ヴァルのもふもふした毛並みにアマリは驚き、慎重に手を伸ばして撫でる。
「わぁ、柔らかい…」
「毎日ブラッシングしてるんだ。それと、冬になるから、冬毛なんだ」
ヴァルは自慢げに尾をふる。
ノルドが袋を開け、蜂蜜飴を取り出した。
「これ、蜂蜜飴だ。食べてみるか?」
アマリは興味津々で袋を覗き込む。
「蜂蜜飴?」
ノルドが飴を差し出すと、すぐにメイドが近づき、それを受け取った。
「サルサ様からの指示で、毒味をします」
メイドが飴を舐め、数秒後に安心した様子で言う。
「問題ありません。とても美味しいですよ」
「ほんとう?」アマリが不安そうに聞くと、メイドが微笑んで答える。
「ええ。少し疲れが取れた感じもします」
「ネフェルもさっき舐めてたよ。はい、どうぞ」
アマリは勇気を出して飴を舐め、その甘さに驚く。
「わぁ、美味しい!」
次に、ノルドは保湿クリームを手に取り、アマリに見せた。
「これは肌に塗る保湿クリームだ。かなり良い香りだぞ」
アマリが少し不安そうに見つめると、ノルドは自分の手にクリームを塗ってみせた。
「見て、こんな感じで塗るんだ」
メイドが代わりに手にクリームを少し塗り、アマリに見せる。
「ほら、すごくしっとりしますよ」
アマリも少し手に取って塗ってみる。
「わぁ、すごくいい香り…しっとりして気持ちいい」
メイドがクリームを見つめながら言う。
「この陶器の柄、ヴァレンシア孤児院で売っているものですか? とても人気があって、なかなか手に入らないものですが?」
「へ?」どうやら、やり手のニコラさんが、販路を広げているようだ。
「そうかも……今度また持ってくるよ」
ノルドは微笑みながら答える。
その時、ネフェルが嬉しそうな顔をして戻ってきた。
「アマリ、寒くなってきたから部屋に入りましょう。ノルド帰れる? グリフ呼ぼうか?」
ノルド達の顔が引き攣る。
「いや、門さえ開けてくれれば、歩いて帰れるよ」
ノルドとヴァルは立ち上がり、「じゃあ、またね」とアマリに手を振りながら庭を後にした。
「また、必ず来てね!」
アマリの見送りにヴァルが尾を振りながらに応えた。
【後がき】
お時間を頂き、読んで頂き有難うございます。♡等で応援頂きますと、今後も励みになります。又、ご感想やレビュー等も一行でも頂けますと、飛び上がって喜びます。 引き続きよろしくお願いします! 織部
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「大丈夫だって、手紙に書いたでしょ」
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二人の再会を待ち遠しく思っていたのだろう。その光景を邪魔しないよう、周囲からは人々が自然と距離を取っていた。
アマリの警備や付き添いのメイドたちも、ネフェルには見慣れた顔で、警戒する様子はない。
少し離れたところから、メイド長が代表して声をかけた。
「ネフェル様、お席をご用意しております。どうぞお座りになって、ゆっくりお話しください」
新しいテーブルと椅子を持って、庭に新たな席を準備した。
ちょっとした、お茶とナッツのクッキーも準備されている。
「そうね、ありがとう」
「ですが、ネフェル様……普通にお知らせいただければ、正門を開けましたのに」
少し叱るような口調が混じる。
「そうなの? アマリにグリフを見せたくてね、ははは」
ネフェルは照れくさそうに笑みを浮かべ、ばつが悪そうに視線を外した。
「それじゃ、ノルドも一緒に!」
彼女に促され、ノルドはアマリを紹介されながら席についた。なぜか気恥ずかしさを感じ、目を伏せる。
ネフェルはアマリの話す出来事に「うん、うん」と相槌を打ちながら、幸せそうに話を聞いている。
一方、ノルドはふとヴァルの姿を探した。すると、ヴァルとグリフィンが老人たちから餌をもらっているのが見えた。
「腹一杯喰え! 育ち盛りだからな!」
笑いながら餌を与える老人たちはどこか只者ではない。
魔物を全く恐れていないだけでなく、その動きには年齢を感じさせない軽快さがあった。
やがてグリフィンたちが食事に満足すると、老人たちはその背に飛び乗った。
ヴァルは乗りたくないらしく、ノルドの足元に逃げ帰り、座り込む。
「何してるの?」
突然、屋敷から白衣の女性が飛び出してきた。
「おい、まずいぞ、サルサ医師が来た!」
老人たちは慌てるどころか、グリフィンに「飛べ!」と命じられたのか、羽ばたか
せ、ゆっくりと空へ舞い上がる。
「こら、馬鹿ども! 子供じゃないんだから、早く降りてきなさい!」
サルサの大声もどこ吹く風。老人たちは奇声をあげながらグリフィンを駆り、空を縦横無尽に飛び回る。
「おーい! 上がもっと楽しいぞ!」
「どこまで行けるか試してみよう!」
よく見ると、老人の一人がグリフィンに僅かな魔力を注ぎ込んでいるのが分かる。
「もっと速くだ!」
「ほら、天を駆けろ!」
煽られたグリフィンは、さらに勢いを増して空を駆ける。
地上では、警備やメイドたちが心配そうに空を見上げている。
「おしまいよ」
ネフェルが手を挙げて指示を送ると、グリフィンたちは老人たちの指示を無視して降下を始めた。
「こらこら! これから島で一緒だろう!」
一時の楽しみを終えると、老人たちはネフェルに怒られるのを避けるように屋敷へ逃げていき、グリフィンは、寝ぐらに帰っていった。
彼らの使用人たちも跡を追って駆け出す。
「全く、どこが病気なんだか!」
サルサはため息交じりに呟きながら、ネフェルとノルドに近づいてきた。
ノルドは叱られるのではないかと身構えたが、サルサは微笑んで首を振った。
「騒がしくてごめんなさいね。あの方たち、一昔前は英雄と呼ばれていたんです」
「とっても楽しくて、優しいおじいちゃんたちだよ!」
アマリが笑顔で補足する。
「サルサ様、アマリがお世話になっています」ネフェルは立ち上がり、深々と会釈した。
ノルドも慌てて立ち上がり、ぎこちなく頭を下げた。
「サルサ様、少し、お時間を頂戴したいのですが」
ネフェルは、真剣な表情だった。
「良いでしょう。私の部屋でお話ししましょう」
サルサが歩き出そうとしたとき、妹が慌てて声を上げる。
「お姉ちゃん!」
一瞬立ち止まったサルサは、柔らかく微笑みながら振り返った。
「今日はここに泊まるつもりよ。後でゆっくり話しましょうね」
「ほんとう!?」
妹の顔がぱっと明るくなり、飛び跳ねるように喜ぶ。
「では、お泊まりの準備をいたします」
「お願いね」
サルサは歩き出し、妹は嬉しそうにその背中を見送った。
※
みんなが去ると、ノルドとアマリ、それに給仕のメイドだけが残された。
「……」
「……」
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ヴァルがアマリの足元に静かに移動すると、アマリは恐る恐る手を伸ばした。
「触ってもいい?」
「大丈夫だよ。優しい子だよ」
ヴァルのもふもふした毛並みにアマリは驚き、慎重に手を伸ばして撫でる。
「わぁ、柔らかい…」
「毎日ブラッシングしてるんだ。それと、冬になるから、冬毛なんだ」
ヴァルは自慢げに尾をふる。
ノルドが袋を開け、蜂蜜飴を取り出した。
「これ、蜂蜜飴だ。食べてみるか?」
アマリは興味津々で袋を覗き込む。
「蜂蜜飴?」
ノルドが飴を差し出すと、すぐにメイドが近づき、それを受け取った。
「サルサ様からの指示で、毒味をします」
メイドが飴を舐め、数秒後に安心した様子で言う。
「問題ありません。とても美味しいですよ」
「ほんとう?」アマリが不安そうに聞くと、メイドが微笑んで答える。
「ええ。少し疲れが取れた感じもします」
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アマリは勇気を出して飴を舐め、その甘さに驚く。
「わぁ、美味しい!」
次に、ノルドは保湿クリームを手に取り、アマリに見せた。
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アマリが少し不安そうに見つめると、ノルドは自分の手にクリームを塗ってみせた。
「見て、こんな感じで塗るんだ」
メイドが代わりに手にクリームを少し塗り、アマリに見せる。
「ほら、すごくしっとりしますよ」
アマリも少し手に取って塗ってみる。
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ノルド達の顔が引き攣る。
「いや、門さえ開けてくれれば、歩いて帰れるよ」
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