71 / 221
二部
シシルナ島新聞とマルカス診察所
しおりを挟む
ノルドは家にある魔物辞典で、その魔物を調べた。ヴァルやビュアンも一緒に覗きこんでいる。
ぺらぺらと魔物植物のページをめくると、似たような魔物を見つけた。名前は『バインドカズラ』——冬眠をする東方の魔物らしい。
幼体は普通の花と見分けがつきにくく、捕食的な行動は少ない。厄介な魔物だ。島に持ち込まれても気づかれないだろう。
それから数日後。ノルドの背中の火傷のような傷は痛まなくなり、再び森の探索に出かけることにした。
「気をつけてね」
「うん、気をつけるよ」
一匹だけ迷い込んでいたのか? それとも、まだ他にもいるのか?
ここは牙狼の森だ。勝手にはさせない。ノルドはこの森の管理者を自負していた。
セラは危険があろうと送り出す。それが彼女なりの教育方針だからだ。
「ビュアンちゃん、よろしくね!」
「セラ、心配は無用よ」
くるくると踊るようにセラの周りを回りながら、ビュアンは最後にノルドの肩に座った。
バインドカズラと遭遇した場所を中心に、周囲を調べた。木の根元や岩の隙間に隠れていたからだ。
春になり、小さな白い花が咲いている。
「それもあの魔物よ!」
ビュアンが敵意を剥き出しにし、ノルドの頭の後ろに隠れながら叫ぶ。
「ワオーン!」
ヴァルが鋭い爪で花を散らす。
「ヴァル、根元を掘らないとダメだ」
小狼が周りの土を掘り返し始めた。根が本体なのだ。
ノルドは毒ダーツを根に突き刺し、とどめをさした。
「困ったな、探し出すのも大変だ。かなり散らばっているみたいだなぁ」
魔物の森でのバインドカズラの捜索は難航しそうだったが、すぐに解決した。
「ノルド、私に任せておいて! 出てきなさい!」
ビュアンが声を張ると、精霊の子たちが現れた。
ぱらぱらと湧くように出てきて、やがて数えきれないほどの精霊がノルドたちを取り囲み、くるくると回り出した。
「みんなで、この花を探しに行きなさい!」
ビュアンの命令に従い、蜘蛛の子を散らすように四方へ飛び去っていく。
しばらくすると、花を見つけた精霊たちが知らせに戻ってきた。
「さあ、行きましょう! ノルド、忙しくなるわよ!」
バインドカズラは、広範囲に種子を散らしていたようだ。
その日、一日かけて、食肉植物の駆除を行った。
途中、エルフツリーの下で仲良く昼寝をした。
なぜか、ビュアンはノルドのお腹の上で寝てしまったので、寝返りをうたないように気をつけながら、ノルドは静かに息を吐いた。
「……仕方ないなぁ、潰さないようにしないと」
優しく彼女を見守っていたが、いつの間にか眠りについていた。
※
「困ったな。島主様に報告しに行こう!」
翌日、ノルドはヴァルとともに港町へ向かった。
「どうして、こんなところにいるの?」
町の中を観察しながらメモを取っているセイたちの姿があった。
「へっへっへ。実はね、引っ越したんだよ。みんなでヴァレンシア孤児院にお世話になってるんだ。ご飯は美味しいし、襲われる心配もないんだ」セイがにっこりと笑う。
「そうなんだ。それは安心だね。今は何をしてたんだい?」
ノルドが尋ねると、セイは少し誇らしげに答えた。
「地図を作っていたんだ。シシルナ新聞社は出版社でもあるんだよ。会社を見学するかい?」
セイに連れられ、彼の新しい仕事場へと足を運んだ。
その場所は繁華街から少し外れた裏道にある建物の二階だった。
「広いだろう? 驚いたかい? ここは家賃が安くてね。それに、うるさくしても大丈夫なんだ」セイが自信満々に言う。
「わざわざ場所を借りなくても……それに、危なくないかい?」
ノルドが心配そうに言うと、セイは笑って答えた。
「メグミさんもヴァレンシア孤児院の場所を貸してくれるって言ったんだけどね。でも、僕は大人になったらすぐに独立するつもりだから。夜はここにいないし、それに、ほら?」
セイが窓を指差した。向かいの建物には警備所が見える。
「違う、その上!」
ノルドが指摘すると、セイはにっこりと答えた。
「『マルカス診療所』だよ。病院の看板がかかってるだろ?」
ノルドは目を見開いた。まさか、あのマルカスさんが医者もできるのか?
「そうなんだ、マルカスさん凄いよね。安心だろう! それに、相談役には近くにいてもらわないとね。じゃあ、起こしに行こうか!」
セイは言った。
※※
魔物辞典
バインドカズラ 脅威度 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
分類: 食肉植物型魔物
生息地: 東方の湿地や森林の奥地。
サイズ: 大きさはまちまち。成長は早い。
特徴:花と香り: 花は甘い香りを放ち、魔物や動物を引き寄せる。
花粉の麻痺毒: 花粉を散布し、獲物を麻痺させて捕える。
地下の触手: 地下に広がる無数の触手が獲物を感知し、捕える。
習性:冬眠: 寒い季節には休眠し、地下でエネルギーを蓄える。
春の捕食: 春になると捕食活動を再開し、成長に必要な栄養を摂取する。
幼体:普通の花と見分けがつきにくく、捕食的な行動は少ない。
弱点:暑さに極めて弱い、火に極めて弱い。
特記事項 繁殖力が非常に高い。
過去に、幾多の魔物の森が崩壊した。見つけた場合は、徹底して処分すること。
種を食べた鳥や動物によって運ばれ、糞に紛れて別の魔物の森に移動する。
ぺらぺらと魔物植物のページをめくると、似たような魔物を見つけた。名前は『バインドカズラ』——冬眠をする東方の魔物らしい。
幼体は普通の花と見分けがつきにくく、捕食的な行動は少ない。厄介な魔物だ。島に持ち込まれても気づかれないだろう。
それから数日後。ノルドの背中の火傷のような傷は痛まなくなり、再び森の探索に出かけることにした。
「気をつけてね」
「うん、気をつけるよ」
一匹だけ迷い込んでいたのか? それとも、まだ他にもいるのか?
ここは牙狼の森だ。勝手にはさせない。ノルドはこの森の管理者を自負していた。
セラは危険があろうと送り出す。それが彼女なりの教育方針だからだ。
「ビュアンちゃん、よろしくね!」
「セラ、心配は無用よ」
くるくると踊るようにセラの周りを回りながら、ビュアンは最後にノルドの肩に座った。
バインドカズラと遭遇した場所を中心に、周囲を調べた。木の根元や岩の隙間に隠れていたからだ。
春になり、小さな白い花が咲いている。
「それもあの魔物よ!」
ビュアンが敵意を剥き出しにし、ノルドの頭の後ろに隠れながら叫ぶ。
「ワオーン!」
ヴァルが鋭い爪で花を散らす。
「ヴァル、根元を掘らないとダメだ」
小狼が周りの土を掘り返し始めた。根が本体なのだ。
ノルドは毒ダーツを根に突き刺し、とどめをさした。
「困ったな、探し出すのも大変だ。かなり散らばっているみたいだなぁ」
魔物の森でのバインドカズラの捜索は難航しそうだったが、すぐに解決した。
「ノルド、私に任せておいて! 出てきなさい!」
ビュアンが声を張ると、精霊の子たちが現れた。
ぱらぱらと湧くように出てきて、やがて数えきれないほどの精霊がノルドたちを取り囲み、くるくると回り出した。
「みんなで、この花を探しに行きなさい!」
ビュアンの命令に従い、蜘蛛の子を散らすように四方へ飛び去っていく。
しばらくすると、花を見つけた精霊たちが知らせに戻ってきた。
「さあ、行きましょう! ノルド、忙しくなるわよ!」
バインドカズラは、広範囲に種子を散らしていたようだ。
その日、一日かけて、食肉植物の駆除を行った。
途中、エルフツリーの下で仲良く昼寝をした。
なぜか、ビュアンはノルドのお腹の上で寝てしまったので、寝返りをうたないように気をつけながら、ノルドは静かに息を吐いた。
「……仕方ないなぁ、潰さないようにしないと」
優しく彼女を見守っていたが、いつの間にか眠りについていた。
※
「困ったな。島主様に報告しに行こう!」
翌日、ノルドはヴァルとともに港町へ向かった。
「どうして、こんなところにいるの?」
町の中を観察しながらメモを取っているセイたちの姿があった。
「へっへっへ。実はね、引っ越したんだよ。みんなでヴァレンシア孤児院にお世話になってるんだ。ご飯は美味しいし、襲われる心配もないんだ」セイがにっこりと笑う。
「そうなんだ。それは安心だね。今は何をしてたんだい?」
ノルドが尋ねると、セイは少し誇らしげに答えた。
「地図を作っていたんだ。シシルナ新聞社は出版社でもあるんだよ。会社を見学するかい?」
セイに連れられ、彼の新しい仕事場へと足を運んだ。
その場所は繁華街から少し外れた裏道にある建物の二階だった。
「広いだろう? 驚いたかい? ここは家賃が安くてね。それに、うるさくしても大丈夫なんだ」セイが自信満々に言う。
「わざわざ場所を借りなくても……それに、危なくないかい?」
ノルドが心配そうに言うと、セイは笑って答えた。
「メグミさんもヴァレンシア孤児院の場所を貸してくれるって言ったんだけどね。でも、僕は大人になったらすぐに独立するつもりだから。夜はここにいないし、それに、ほら?」
セイが窓を指差した。向かいの建物には警備所が見える。
「違う、その上!」
ノルドが指摘すると、セイはにっこりと答えた。
「『マルカス診療所』だよ。病院の看板がかかってるだろ?」
ノルドは目を見開いた。まさか、あのマルカスさんが医者もできるのか?
「そうなんだ、マルカスさん凄いよね。安心だろう! それに、相談役には近くにいてもらわないとね。じゃあ、起こしに行こうか!」
セイは言った。
※※
魔物辞典
バインドカズラ 脅威度 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
分類: 食肉植物型魔物
生息地: 東方の湿地や森林の奥地。
サイズ: 大きさはまちまち。成長は早い。
特徴:花と香り: 花は甘い香りを放ち、魔物や動物を引き寄せる。
花粉の麻痺毒: 花粉を散布し、獲物を麻痺させて捕える。
地下の触手: 地下に広がる無数の触手が獲物を感知し、捕える。
習性:冬眠: 寒い季節には休眠し、地下でエネルギーを蓄える。
春の捕食: 春になると捕食活動を再開し、成長に必要な栄養を摂取する。
幼体:普通の花と見分けがつきにくく、捕食的な行動は少ない。
弱点:暑さに極めて弱い、火に極めて弱い。
特記事項 繁殖力が非常に高い。
過去に、幾多の魔物の森が崩壊した。見つけた場合は、徹底して処分すること。
種を食べた鳥や動物によって運ばれ、糞に紛れて別の魔物の森に移動する。
6
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
本条蒼依
ファンタジー
氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる