シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部

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二部

シシルナ島新聞とマルカス診察所

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 ノルドは家にある魔物辞典で、その魔物を調べた。ヴァルやビュアンも一緒に覗きこんでいる。

 ぺらぺらと魔物植物のページをめくると、似たような魔物を見つけた。名前は『バインドカズラ』——冬眠をする東方の魔物らしい。

 幼体は普通の花と見分けがつきにくく、捕食的な行動は少ない。厄介な魔物だ。島に持ち込まれても気づかれないだろう。

 それから数日後。ノルドの背中の火傷のような傷は痛まなくなり、再び森の探索に出かけることにした。

「気をつけてね」
「うん、気をつけるよ」
 一匹だけ迷い込んでいたのか? それとも、まだ他にもいるのか?

 ここは牙狼の森だ。勝手にはさせない。ノルドはこの森の管理者を自負していた。

 セラは危険があろうと送り出す。それが彼女なりの教育方針だからだ。

「ビュアンちゃん、よろしくね!」
「セラ、心配は無用よ」
 くるくると踊るようにセラの周りを回りながら、ビュアンは最後にノルドの肩に座った。

 バインドカズラと遭遇した場所を中心に、周囲を調べた。木の根元や岩の隙間に隠れていたからだ。
 春になり、小さな白い花が咲いている。

「それもあの魔物よ!」
 ビュアンが敵意を剥き出しにし、ノルドの頭の後ろに隠れながら叫ぶ。
「ワオーン!」
 ヴァルが鋭い爪で花を散らす。
「ヴァル、根元を掘らないとダメだ」
 小狼が周りの土を掘り返し始めた。根が本体なのだ。

 ノルドは毒ダーツを根に突き刺し、とどめをさした。

「困ったな、探し出すのも大変だ。かなり散らばっているみたいだなぁ」
 魔物の森でのバインドカズラの捜索は難航しそうだったが、すぐに解決した。

「ノルド、私に任せておいて! 出てきなさい!」

 ビュアンが声を張ると、精霊の子たちが現れた。
ぱらぱらと湧くように出てきて、やがて数えきれないほどの精霊がノルドたちを取り囲み、くるくると回り出した。

「みんなで、この花を探しに行きなさい!」
 ビュアンの命令に従い、蜘蛛の子を散らすように四方へ飛び去っていく。

 しばらくすると、花を見つけた精霊たちが知らせに戻ってきた。

「さあ、行きましょう! ノルド、忙しくなるわよ!」

 バインドカズラは、広範囲に種子を散らしていたようだ。

 その日、一日かけて、食肉植物の駆除を行った。
 途中、エルフツリーの下で仲良く昼寝をした。

 なぜか、ビュアンはノルドのお腹の上で寝てしまったので、寝返りをうたないように気をつけながら、ノルドは静かに息を吐いた。

「……仕方ないなぁ、潰さないようにしないと」
 優しく彼女を見守っていたが、いつの間にか眠りについていた。


「困ったな。島主様に報告しに行こう!」
 翌日、ノルドはヴァルとともに港町へ向かった。
「どうして、こんなところにいるの?」
 町の中を観察しながらメモを取っているセイたちの姿があった。

「へっへっへ。実はね、引っ越したんだよ。みんなでヴァレンシア孤児院にお世話になってるんだ。ご飯は美味しいし、襲われる心配もないんだ」セイがにっこりと笑う。

「そうなんだ。それは安心だね。今は何をしてたんだい?」
 ノルドが尋ねると、セイは少し誇らしげに答えた。
「地図を作っていたんだ。シシルナ新聞社は出版社でもあるんだよ。会社を見学するかい?」

 セイに連れられ、彼の新しい仕事場へと足を運んだ。
 その場所は繁華街から少し外れた裏道にある建物の二階だった。

「広いだろう? 驚いたかい? ここは家賃が安くてね。それに、うるさくしても大丈夫なんだ」セイが自信満々に言う。

「わざわざ場所を借りなくても……それに、危なくないかい?」

 ノルドが心配そうに言うと、セイは笑って答えた。
「メグミさんもヴァレンシア孤児院の場所を貸してくれるって言ったんだけどね。でも、僕は大人になったらすぐに独立するつもりだから。夜はここにいないし、それに、ほら?」

 セイが窓を指差した。向かいの建物には警備所が見える。

「違う、その上!」
 ノルドが指摘すると、セイはにっこりと答えた。
「『マルカス診療所』だよ。病院の看板がかかってるだろ?」

 ノルドは目を見開いた。まさか、あのマルカスさんが医者もできるのか?

「そうなんだ、マルカスさん凄いよね。安心だろう! それに、相談役には近くにいてもらわないとね。じゃあ、起こしに行こうか!」

 セイは言った。

※※
 魔物辞典

 バインドカズラ 脅威度 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
 分類: 食肉植物型魔物
 生息地: 東方の湿地や森林の奥地。
 サイズ: 大きさはまちまち。成長は早い。
 特徴:花と香り: 花は甘い香りを放ち、魔物や動物を引き寄せる。
 花粉の麻痺毒: 花粉を散布し、獲物を麻痺させて捕える。
 地下の触手: 地下に広がる無数の触手が獲物を感知し、捕える。
 習性:冬眠: 寒い季節には休眠し、地下でエネルギーを蓄える。
 春の捕食: 春になると捕食活動を再開し、成長に必要な栄養を摂取する。
 幼体:普通の花と見分けがつきにくく、捕食的な行動は少ない。
 弱点:暑さに極めて弱い、火に極めて弱い。
 特記事項 繁殖力が非常に高い。
 過去に、幾多の魔物の森が崩壊した。見つけた場合は、徹底して処分すること。
 種を食べた鳥や動物によって運ばれ、糞に紛れて別の魔物の森に移動する。
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