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罪人の町
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「シュネー。」
申し訳なさそうな苦しそうな表情が私を見つめる。その額には土下座で頭を地面に擦り付けた時に付着した土がしっかり残っている。
「……貴方は貴方なりに何とかしようとしてくれたのでしょ。覚悟を決めて自分で飲んだものを人の所為になんかしませんよ。」
「でも…。シュネーは。」
「恨んでも傷付いても……ないので、お願いしますからこれ以上……、これ以上思い出させないで。」
リヒトの指の感覚を思い出しそうになって、顔から火が出る。
……そういえば私のを見たって事は私の全く生える気配のないアソコを見られ…………。
考えるな…。
そもそも尻……。
だから思い出すなって!?
いっその事、ぶっ倒れたい。
そしてなかった事にしたい。
真っ赤になった顔を覆い、俯くと、「どぉどぉ。」とネズミが肩を叩こうとしたのでその前に手を鞘で叩き落としていた。
やはり、トラウマは健在だ。
私に触んじゃない!!
斬り落とすぞッ!!
「一旦ブレイクしんしゃい。シュネッち!! お茶でも飲んで。」
「何故、緑茶が…。そもそも服もお赤飯だって…。」
「ほうら!! 飲んで飲んでッ。そして楽しいトークタイム。君達ここの事知りたいっしょ? 」
ねぇねぇと人懐っこくネズミがグイグイくる。
いや、確かに情報は得たいが、この道化みたいな男の話が信用出来るのか? そもそも相手は罪人だ。
しかし、聞けるのならば聞いておきたい。
「対価は? 」
「若ぇのにしっかりしてるねぇシュネッちは。ただ程怖いものは無いってか? 」
ネズミが愉快そうに笑い茶化しながら、スッと私を指差す。
「戦力が欲しいねぇ。シュネッちのディーガに一杯食わせた機転とか、精神力とか腕とかオイラ達に欲しいかねぇ? 後、友達!! オイラ一人じゃ死んじゃう可愛い兎ちゃんだから二人ともお友達なってぇーよ。」
「兎は一羽でも生きていける。戦力の事は話を聞いてから考える。友達は知るか。」
「冷たいなぁー。リヒッちゃんも言ったってよ!! オイラ優良物件よ!? 」
「何で僕が…。」
「プンプン。」と拗ねたように頰を膨らませる。
そういう所だよ。
その度々演技がかった所が更に胡散臭いんだよ。関わりたくない。
モグモグと赤飯を食べながらテーブルに何処から取り出したか分からない木炭でネズミが何かを書く。
そこに書くの?
「えっとねぇ。この『刑受の森』には、まず町が二つあんよ。『刑受の森』に流刑になった罪人達の町で一つはディーガが治める『刑受の森』の右翼の町『レヒト』。っでもう一つ左翼の町『リンク』を治めるのはオイラ達のリーダー、クジャクってぇんだ。」
シュッシュッと説明しながら木炭を持つ手が動く。しかし木炭で書いているのは『刑受の森』の地図でも相関図でもなく、ニャンコの絵。
ただの落書き。
ホントに何がしたいんだコイツ。
「二人は音楽性の違いから対立してってな。」
「絶対違うでしょ。」
「夕陽の中で喧嘩をしたり、血みどろになるまでちょっと殴り合ったり、部下を使って嫌がらせしたり、しなかったり。」
「どういう関係か全然分からないよ。何故夕陽? 」
「まともに喋る気ないなコイツ。」
「まぁ、兎に角、二つの町があって、そこにはちょっと治安が悪うけど、普通の暮らしがあって。魔獣さんもちょくちょく強ぉのが現れるんでい!! 毎日が戦いの日々。果たして我々には平穏は訪れるのだろうか!? ……次号、『そしてネズミ様はやはりカッコいい』までお楽しみに!! 」
「随分長々と喋ったのに情報が頭に全然入ってこないよ…。」
リヒトが苦笑いを浮かべて困惑する。
信用できるかじゃなくって、そもそも、きちんと相手に伝わるように説明出来るかの問題だった。
コイツ、シュヴェルト側の人間だ。あっちは謎の効果音だけでもっと酷いけど。
「…つまり、強力な魔獣が幾度も出現するような『刑受の森』にはその魔獣達に対抗できる戦力が二つあり、その二つがそれぞれに町を作ってる。」
「そーゆう事。」
「そしてその二つの戦力は対立していて、常に睨み合い状態で抗争にも発展する場合もある。」
「よくあんな説明でそこまで理解出来たね。シュネー。」
「シュネッち!! 一番大事な所抜けてんよ。オイラがカッコイイって所。」
ー そこが一番どうでもいい。
取り敢えず、面倒臭いネズミは一旦無視して考えをまとめる。
・『刑受の森』には罪人の町がある。
・魔獣に対抗できるだけの戦力が二つあり、その二つは対立し、それぞれの町を形成している。
・右翼、つまり『刑受の森』を右方の領土はディーガが支配する『レヒト』という町がある。おそらく私達が連行されたアジトは『レヒト』付近。
・左翼、つまり『刑受の森』の左方の領土はクジャクというネズミの頭が支配する『リンク』という町がある。おそらく今いるネズミの根城はこの『リンク』の付近。
・そして魔獣だか『レヒト』対策だかもしくは両方の理由で私を戦力に加えたい。
私とリヒトはディーガに目を付けられている。それを考えるとディーガと対立している『リンク』の支配者クジャクの傘下に下る方が良いような気がする。
しかし、クジャクという人物がどんな人物かはまだ分からない。
もしかしたらディーガのような奴の可能性もあるし、それ以上の場合もある。そもそも相手はここに流刑される程の罪人だ。それにネズミの話が全て嘘の可能性もある。
「まーあ、明日行ってみりゃー良いっしょ、『リンク』に。そん時にクジャクに合わせっから、話聞いてみてぇな。クジャクは結構話の分かる人だから一見してみるのも手よ? それからでも遅ーないよ。ただまぁ…。」
ネズミがチラリと私を見て、一考する。そして「きゃっ。」と口を手で隠し、身体をクネクネさせる。
「でもぉ、治っかねぇ? 明日までにシュネッちの脆い腰。治んなかったら姫抱きで市中引き回しかもよぉ。」
「……お前はどんだけ人をおちょくりたいんだ。」
申し訳なさそうな苦しそうな表情が私を見つめる。その額には土下座で頭を地面に擦り付けた時に付着した土がしっかり残っている。
「……貴方は貴方なりに何とかしようとしてくれたのでしょ。覚悟を決めて自分で飲んだものを人の所為になんかしませんよ。」
「でも…。シュネーは。」
「恨んでも傷付いても……ないので、お願いしますからこれ以上……、これ以上思い出させないで。」
リヒトの指の感覚を思い出しそうになって、顔から火が出る。
……そういえば私のを見たって事は私の全く生える気配のないアソコを見られ…………。
考えるな…。
そもそも尻……。
だから思い出すなって!?
いっその事、ぶっ倒れたい。
そしてなかった事にしたい。
真っ赤になった顔を覆い、俯くと、「どぉどぉ。」とネズミが肩を叩こうとしたのでその前に手を鞘で叩き落としていた。
やはり、トラウマは健在だ。
私に触んじゃない!!
斬り落とすぞッ!!
「一旦ブレイクしんしゃい。シュネッち!! お茶でも飲んで。」
「何故、緑茶が…。そもそも服もお赤飯だって…。」
「ほうら!! 飲んで飲んでッ。そして楽しいトークタイム。君達ここの事知りたいっしょ? 」
ねぇねぇと人懐っこくネズミがグイグイくる。
いや、確かに情報は得たいが、この道化みたいな男の話が信用出来るのか? そもそも相手は罪人だ。
しかし、聞けるのならば聞いておきたい。
「対価は? 」
「若ぇのにしっかりしてるねぇシュネッちは。ただ程怖いものは無いってか? 」
ネズミが愉快そうに笑い茶化しながら、スッと私を指差す。
「戦力が欲しいねぇ。シュネッちのディーガに一杯食わせた機転とか、精神力とか腕とかオイラ達に欲しいかねぇ? 後、友達!! オイラ一人じゃ死んじゃう可愛い兎ちゃんだから二人ともお友達なってぇーよ。」
「兎は一羽でも生きていける。戦力の事は話を聞いてから考える。友達は知るか。」
「冷たいなぁー。リヒッちゃんも言ったってよ!! オイラ優良物件よ!? 」
「何で僕が…。」
「プンプン。」と拗ねたように頰を膨らませる。
そういう所だよ。
その度々演技がかった所が更に胡散臭いんだよ。関わりたくない。
モグモグと赤飯を食べながらテーブルに何処から取り出したか分からない木炭でネズミが何かを書く。
そこに書くの?
「えっとねぇ。この『刑受の森』には、まず町が二つあんよ。『刑受の森』に流刑になった罪人達の町で一つはディーガが治める『刑受の森』の右翼の町『レヒト』。っでもう一つ左翼の町『リンク』を治めるのはオイラ達のリーダー、クジャクってぇんだ。」
シュッシュッと説明しながら木炭を持つ手が動く。しかし木炭で書いているのは『刑受の森』の地図でも相関図でもなく、ニャンコの絵。
ただの落書き。
ホントに何がしたいんだコイツ。
「二人は音楽性の違いから対立してってな。」
「絶対違うでしょ。」
「夕陽の中で喧嘩をしたり、血みどろになるまでちょっと殴り合ったり、部下を使って嫌がらせしたり、しなかったり。」
「どういう関係か全然分からないよ。何故夕陽? 」
「まともに喋る気ないなコイツ。」
「まぁ、兎に角、二つの町があって、そこにはちょっと治安が悪うけど、普通の暮らしがあって。魔獣さんもちょくちょく強ぉのが現れるんでい!! 毎日が戦いの日々。果たして我々には平穏は訪れるのだろうか!? ……次号、『そしてネズミ様はやはりカッコいい』までお楽しみに!! 」
「随分長々と喋ったのに情報が頭に全然入ってこないよ…。」
リヒトが苦笑いを浮かべて困惑する。
信用できるかじゃなくって、そもそも、きちんと相手に伝わるように説明出来るかの問題だった。
コイツ、シュヴェルト側の人間だ。あっちは謎の効果音だけでもっと酷いけど。
「…つまり、強力な魔獣が幾度も出現するような『刑受の森』にはその魔獣達に対抗できる戦力が二つあり、その二つがそれぞれに町を作ってる。」
「そーゆう事。」
「そしてその二つの戦力は対立していて、常に睨み合い状態で抗争にも発展する場合もある。」
「よくあんな説明でそこまで理解出来たね。シュネー。」
「シュネッち!! 一番大事な所抜けてんよ。オイラがカッコイイって所。」
ー そこが一番どうでもいい。
取り敢えず、面倒臭いネズミは一旦無視して考えをまとめる。
・『刑受の森』には罪人の町がある。
・魔獣に対抗できるだけの戦力が二つあり、その二つは対立し、それぞれの町を形成している。
・右翼、つまり『刑受の森』を右方の領土はディーガが支配する『レヒト』という町がある。おそらく私達が連行されたアジトは『レヒト』付近。
・左翼、つまり『刑受の森』の左方の領土はクジャクというネズミの頭が支配する『リンク』という町がある。おそらく今いるネズミの根城はこの『リンク』の付近。
・そして魔獣だか『レヒト』対策だかもしくは両方の理由で私を戦力に加えたい。
私とリヒトはディーガに目を付けられている。それを考えるとディーガと対立している『リンク』の支配者クジャクの傘下に下る方が良いような気がする。
しかし、クジャクという人物がどんな人物かはまだ分からない。
もしかしたらディーガのような奴の可能性もあるし、それ以上の場合もある。そもそも相手はここに流刑される程の罪人だ。それにネズミの話が全て嘘の可能性もある。
「まーあ、明日行ってみりゃー良いっしょ、『リンク』に。そん時にクジャクに合わせっから、話聞いてみてぇな。クジャクは結構話の分かる人だから一見してみるのも手よ? それからでも遅ーないよ。ただまぁ…。」
ネズミがチラリと私を見て、一考する。そして「きゃっ。」と口を手で隠し、身体をクネクネさせる。
「でもぉ、治っかねぇ? 明日までにシュネッちの脆い腰。治んなかったら姫抱きで市中引き回しかもよぉ。」
「……お前はどんだけ人をおちょくりたいんだ。」
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