第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ

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新たな教育係?

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はたと目を覚ますと、眼下には侍女の格好をしたロランが跨り、何時の間にやらはだけた胸を撫でている。

「な、何やってんの、ロラン!! 」

「勿論。ツェーン様を襲ってるんだよ。……僕は全く、諦めてないからね。こうして愛しい愛しいお子様なツェーン様を愛でて、ゆっくり僕好みに育ててあげる。」

「……な、何やってんだ一号は!? なんで王宮の俺の部屋にすんなりロランが入り込めてんの?!? 」

「表向きは王太子の教育係。ついでに今日の授業内容は『突如、性的に襲われた時にどう対処するべきか? 』って、ツェーン様の侍従達には伝えてあるから邪魔は入らないから安心して。」

「安心出来るかっ。退けっ。ティモはどうした!? 一緒に寝てた筈だろ。」

バタバタと暴れて、なんとかロランの下から抜け出すと、「ホンット、お子様だね。対処としては落第点だよ。」と、呆れつつもロランは頰を染める。

そんなロランを無視して一緒に寝ていた筈のティモを探す。

すると、「ツェーンさ。もう食べられない。」という声が足元から聞こえて、視線を落とすと、すよすよと床で涎を垂らして気持ち良さそうにティモは寝ていた。

「まさか、ティモを突き落としたのか? 」

「まさか? 勝手に落ちたよ。……ムカつく程幸せそうにツェーン様にくっ付いてたから引っぺがしたらころころ…と。」

「突き落としてるじゃないか…。」

ジトッとした目で睨むと、いけしゃあしゃあとそう言って退ける。

ー やっぱ、処罰しておけばよかったか?

俺はロランに襲われ掛けた? 後、特に何もなかったし、本当に襲われた訳でもなかったので、処罰はしなかった。

三号は国王陛下に報告も入れて、きちんと処罰するべきだと、プンプンッと怒っていた。が、ロランの動機は王配になって贅沢したかったとの事だったので、俺は俺が国王になる気がない事を正直に話して、この件を終わりになった筈だ。

目的が王配になりたいという事なら王配になれる見込みがないと分かれば、もう俺に擦り寄ってくる事はない。そう踏んだからだ。

だが、何故だかロランはまだ俺を狙っている。
本当に訳が分からない。


「はぁ…。ティモ、大丈夫? 」

「ふゎ? ……ツェーン? ツェーンだぁ。」

床で転がるティモを抱き起こして声を掛けると、まだ夢現のティモはふにゃりと嬉しそうに笑い、ギュッと抱きついてくる。

ティモにギュッとされると心がふわふわして、癒される。
ホッとして、身をティモに預けるとふわりと石鹸の匂いがする。

ティモは石鹸で身体を洗うのが大好きでよくシャボン玉が浴室にふわふわと飛ぶ程、いっぱい泡立てる。

島では米とぎ水で頭を、身体は水で洗う程度だった為、擦ると泡が出るのが面白いとの事。だが、俺があげた石鹸が小さくなっていくたび、切なそうな顔になるんだよな…。

「ティモ…。石鹸足りてる? 」

「石鹸さ、いっぱいで楽し…。ふわわっ…。ツェーンもいっぱいで嬉しい。」

「俺は一人だよ、ティモ。」

とっても幸せそうにギュウギュウと俺を抱きしめて、夢の園へとまた旅立っていくティモ。
そんなティモを見ているとこっちまで幸せになれるような気がして、そのまま目を閉じて寝…。

「いや、朝だから。」

ベリッと十三歳とは思えない力でロランがティモから俺を剥がす。

「ホンット、お子様。恋仲同士でただくっ付いて寝るだけなんてありえない。」

「……俺達の勝手だろ。」

「周囲はそんな事思ってないけどね。」

そのロランの発言にブワッと顔が熱くなる。

ロランに指摘される前も、主に俺の身の回りの世話を担当している二号に「二人で寝てるのに何時もベッド綺麗ですね。」と言われた事があった。……あの時は何言われてるのか本気で分からなかった。

だが、今なら分かる。
事を言いたかったんだろ、二号。

それでも一緒に寝るのを続けているのはティモが寂しがるから。
それが分かってるから「じゃあ、一緒に寝るのやめよう。」なんて簡単に切り出せない。


でも、やっぱ、恥ずかしい。
寝るまでの時間、ティモと初夜を迎える可能性が頭から離れず、ひたすら意識がなくなるまで悶え続けてる。


真っ赤になった顔を見られたくなくて顔を背けると、長い溜息が聞こえて、スッと背けた顔の前に折り畳まれた一枚の紙が差し出された。

その紙には俺が欲している情報が書かれていた。
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