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第一章 王子とロバ耳と国際交流と
2、ロバ耳が生えると帝国では斬首に値するらしい
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「あらま。可愛いロバ耳ね」
綺麗に手入れされている指でロバ耳をちょんっと摘み、ライモンド先生はにっこりと笑う。
だが、その笑顔を作る合間に「これは私の手に余るわ…」という困惑の表情を見せたのを僕は見逃さなかった。
「………ぐすっ」
「あらあらあらっ。大丈夫よ。みんな戻ったんだもの。ラニちゃんもすぐ戻るわっ」
「戻るかな…」
「そうね。大丈夫よ。……とりあえずは病院かしら。学園長にも報告を入れなければダメだし。後、ラニちゃんは留学生だから外務省にも一報入れて…」
大丈夫と言いつつ思った以上に大事になっている。
ロバの耳が生えた事は国に報告しなければいけない事らしい。
「大丈夫よ。ラニちゃんはいい子だからすぐ直るわ。そう深刻そうな顔しないで」
「…そうかな」
「私も急に身体が縮んだり、記憶喪失になったり、身体が入れ替わったりするけど大体一日で直ったわ。だから大丈夫」
「そうかな!?」
それは本当に大丈夫なの?
そう人智を超えた出来事を大丈夫の一言で片付けるライモンド先生の「大丈夫」に一抹の不安を感じつつ、その日は大事を取って寮に帰された。
次の日。
「ラニちゃんッ。今すぐ用意してッ!」
うとうとと船を漕ぎながら鏡の前に座るとそう叫んで正装に身を包んだライモンド先生と学長が勝手に部屋の鍵を開けた。
「ふぇ?」
「登城するわよ。ラニちゃんは学生だから制服で大丈夫ですよね?」
「おそらく、大丈夫な筈じゃ」
「…え?」
説明を求める暇なく、ぴょんぴょんと跳ねた髪を整えられ、学園から馬車で五分の王城まで連れてこられた。
移動の間も何も聞けなかった。
あまりに二人の顔が切羽詰まってて聞ける雰囲気じゃなかった。
二人に連れられて入った王城は物語に出てくるような華やかな感じではなく、お城の人がキビキビ働いていて会社みたいだった。
案内役の人もできる社会人みたいにシャキッとしていてちょっと怖い。
不安でライモンド先生の服の裾をシワにならないように握った。
気付いたライモンド先生が硬い表情を解き、「大丈夫よ」と手を握ってくれて、ちょっと安心する。
「こちらでございます」と案内人に案内された一つの部屋の前には騎士が部屋の中の人物を守るように立っていた。
どう考えてもお偉いさんの部屋だ。
学長が人の字を書いて飲む、あの緊張を和らげるおまじないっぽいのを必死にやってるもん。絶対、お偉いさんの部屋だ!!
僕も学長の真似して人の字をいっぱい書いて飲んだが…。
「皇帝の御前よ。失礼のないようにね」
「……え?」
ちょっと、待って。聞いてない。
いざ、入ろうとした瞬間のライモンド先生の忠告に一瞬、怒りを覚えた。そういうのはもっと早く言って!!
折角飲んだ人の字が極度の緊張で口から逃げ出していく。「待って!?」と追う余裕もなく、扉が空いた。
扉が空いた瞬間、翡翠の瞳と視線がかち合った。
その翡翠の瞳は流石皇帝!!っと言わんばかりの威厳の溢れる力強い光を宿していたが、目があった数秒で困惑の色が浮かんだ。
現実逃避をするようにスッと目を逸らすと、助けを求めるように隣に立っていた眼鏡をかけた厳しそうな人に視線を送った。
「サフィール…」
「陛下…。現実を受け止めましょう。私だって胃が痛い…」
サフィールと呼ばれた厳しそうな人は僕を見て胃をさすると、一段と険しい顔で眼鏡をクイッと上げてこちらを見た。
「君がラニ君ですね」
「ひゃ、ひゃいっ!!」
「君は平民の留学者として去年から帝都の学園に通っているモアナ王国のラニくん…で間違いないですか?」
「…はい」
「もう一度お聞きします。君は平民として去年から帝都の学園に留学しているモアナ王国のモアナ大王の孫のラニ様ですよね」
「え?そこまでご存知なんですね!!」
険しい顔に見つめられてライモンド先生の後ろに隠れながら受け答えしていた。
でも、サフィールさんみたいに地位の高そうな人がまさか僕の事を知ってるとは思わなくて、ちょっと嬉しくなってひょこっと顔を出した。
すると皇帝とサフィールさんは頭を抱えていた。
「君、王子ですよね…」
そのサフィールさんの一言に皇帝は執務机に顔を突っ伏し、学長とライモンド先生は真っ青な顔で僕を見た。
「ラニくんは…。王子だったの?」
王子の何が問題なのだろう?
こてんっと首を傾げつつ、頷くと学長が膝から崩れ落ちた。
「なんで王子だって言わないんじゃ!!今の状況、めっちゃ、国際問題ぢゃんッ!!ワシの…ワシの首が物理的に飛ぶッ!!?」
どうやらこの国では王子にロバの耳が生えたらギロチン行きらしい。
怖いね。帝国って。
綺麗に手入れされている指でロバ耳をちょんっと摘み、ライモンド先生はにっこりと笑う。
だが、その笑顔を作る合間に「これは私の手に余るわ…」という困惑の表情を見せたのを僕は見逃さなかった。
「………ぐすっ」
「あらあらあらっ。大丈夫よ。みんな戻ったんだもの。ラニちゃんもすぐ戻るわっ」
「戻るかな…」
「そうね。大丈夫よ。……とりあえずは病院かしら。学園長にも報告を入れなければダメだし。後、ラニちゃんは留学生だから外務省にも一報入れて…」
大丈夫と言いつつ思った以上に大事になっている。
ロバの耳が生えた事は国に報告しなければいけない事らしい。
「大丈夫よ。ラニちゃんはいい子だからすぐ直るわ。そう深刻そうな顔しないで」
「…そうかな」
「私も急に身体が縮んだり、記憶喪失になったり、身体が入れ替わったりするけど大体一日で直ったわ。だから大丈夫」
「そうかな!?」
それは本当に大丈夫なの?
そう人智を超えた出来事を大丈夫の一言で片付けるライモンド先生の「大丈夫」に一抹の不安を感じつつ、その日は大事を取って寮に帰された。
次の日。
「ラニちゃんッ。今すぐ用意してッ!」
うとうとと船を漕ぎながら鏡の前に座るとそう叫んで正装に身を包んだライモンド先生と学長が勝手に部屋の鍵を開けた。
「ふぇ?」
「登城するわよ。ラニちゃんは学生だから制服で大丈夫ですよね?」
「おそらく、大丈夫な筈じゃ」
「…え?」
説明を求める暇なく、ぴょんぴょんと跳ねた髪を整えられ、学園から馬車で五分の王城まで連れてこられた。
移動の間も何も聞けなかった。
あまりに二人の顔が切羽詰まってて聞ける雰囲気じゃなかった。
二人に連れられて入った王城は物語に出てくるような華やかな感じではなく、お城の人がキビキビ働いていて会社みたいだった。
案内役の人もできる社会人みたいにシャキッとしていてちょっと怖い。
不安でライモンド先生の服の裾をシワにならないように握った。
気付いたライモンド先生が硬い表情を解き、「大丈夫よ」と手を握ってくれて、ちょっと安心する。
「こちらでございます」と案内人に案内された一つの部屋の前には騎士が部屋の中の人物を守るように立っていた。
どう考えてもお偉いさんの部屋だ。
学長が人の字を書いて飲む、あの緊張を和らげるおまじないっぽいのを必死にやってるもん。絶対、お偉いさんの部屋だ!!
僕も学長の真似して人の字をいっぱい書いて飲んだが…。
「皇帝の御前よ。失礼のないようにね」
「……え?」
ちょっと、待って。聞いてない。
いざ、入ろうとした瞬間のライモンド先生の忠告に一瞬、怒りを覚えた。そういうのはもっと早く言って!!
折角飲んだ人の字が極度の緊張で口から逃げ出していく。「待って!?」と追う余裕もなく、扉が空いた。
扉が空いた瞬間、翡翠の瞳と視線がかち合った。
その翡翠の瞳は流石皇帝!!っと言わんばかりの威厳の溢れる力強い光を宿していたが、目があった数秒で困惑の色が浮かんだ。
現実逃避をするようにスッと目を逸らすと、助けを求めるように隣に立っていた眼鏡をかけた厳しそうな人に視線を送った。
「サフィール…」
「陛下…。現実を受け止めましょう。私だって胃が痛い…」
サフィールと呼ばれた厳しそうな人は僕を見て胃をさすると、一段と険しい顔で眼鏡をクイッと上げてこちらを見た。
「君がラニ君ですね」
「ひゃ、ひゃいっ!!」
「君は平民の留学者として去年から帝都の学園に通っているモアナ王国のラニくん…で間違いないですか?」
「…はい」
「もう一度お聞きします。君は平民として去年から帝都の学園に留学しているモアナ王国のモアナ大王の孫のラニ様ですよね」
「え?そこまでご存知なんですね!!」
険しい顔に見つめられてライモンド先生の後ろに隠れながら受け答えしていた。
でも、サフィールさんみたいに地位の高そうな人がまさか僕の事を知ってるとは思わなくて、ちょっと嬉しくなってひょこっと顔を出した。
すると皇帝とサフィールさんは頭を抱えていた。
「君、王子ですよね…」
そのサフィールさんの一言に皇帝は執務机に顔を突っ伏し、学長とライモンド先生は真っ青な顔で僕を見た。
「ラニくんは…。王子だったの?」
王子の何が問題なのだろう?
こてんっと首を傾げつつ、頷くと学長が膝から崩れ落ちた。
「なんで王子だって言わないんじゃ!!今の状況、めっちゃ、国際問題ぢゃんッ!!ワシの…ワシの首が物理的に飛ぶッ!!?」
どうやらこの国では王子にロバの耳が生えたらギロチン行きらしい。
怖いね。帝国って。
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