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第一章 王子とロバ耳と国際交流と
3、モアナという自由人が住う国
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モアナ王国はレーヴ帝国のある大陸からずっと南に進んだ所にある島国。
人口9千人の小国でモアナ大王と呼ばれる爺ちゃんが納める南の島。
モアナ大王の子供は王子が11人、姫が1人。
孫が53人。
とても温厚で細かい事は気にしないおおらかな国民性で何か争い事があっても酒飲んで一緒に踊ればみんな友達。
そんなお国柄だから王位継承権がある王子が息子、孫合わせて64人居るが一切、王権争いは起こらない。みんな、「大王の次は第一王子が継ぐんだろうなー」と丸投げだ。
そして第一王子も……。
「ラニ。産まれたのが早いか遅いかで運命が決まるのは理不尽だと思うんだよなー」
自身が経営している商店をサボって幼い日の僕を釣りに連れ出した第一王子は夕日をバックにフッと憂いを纏った笑みを溢す。
「俺はな。優秀な奴が国を引っ張っていけばいいと思ってる。優秀な奴に年上も年下も関係ない。…そうだろ?」
カッコつけた顔のまま「うおっ!? 当たりだ!! こりゃ、大物ッ!!」と言いながらしなる竿を引く。しかし、糸はぷつりっと切れ、第一王子は寝転がり、顔を腕で隠した。
「ふっ。とんだピエロだ。そりゃあ、大物だよ。海底を釣り上げようとしてたんだもんな。…所詮、俺には無理なんだ。海底を釣る事も大王も…」
なんだか可哀想になり、第一王子が海底を釣り上げようと戦っている間に釣ったイシダイをソッと渡す。
すると「ありがとな」とフッと第一王子は笑った。
「ラニ。俺は帰ったら母ちゃんから説教だ。当たり前だな。仕事サボって釣りだもん。そりゃあ、怒るよ。…でもな、俺にだって、サボらなければいけなかった理由があるんだ」
「そうなの?伯父さん」
「ああ。とっても大切な事なんだ」
ポンッと頭を優しく撫で、第一王子が先程からやたらバックにしたがる夕日の色に青い瞳が染まる。
「働きたくないんだ。社会の歯車になりたくない」
第一王子は切なげな表情でやっと第一王子を見つけた母ちゃんこと第一王子の奥さんが鬼の形相で近づいてくるのを見やる。
「ラニ。俺は11番目の王子の息子で、孫の中でも一番年下な64番目の王子であるお前こそが大王に相応しいと信じている」
「やっと見つけた。このボンクラッ!!!今日のご飯は無しですからねッ」
「お前が俺の代わりに働いてくれっ…。後、母ちゃんにサボったのには理由があるって一緒に説得ッ。…ああ、母ちゃん待って。これ、母ちゃんにプレゼントのイシダイッ!! 拳骨はなしの方向でッ」
「どうせ、ラニちゃんが釣ったんでしょ!? ラニちゃん、こんなクズの言う事なんてすぐに忘れんさいなっ。お菓子あげるから」
母ちゃんから拳骨をくらい、グスグスと泣きながらズルズルと連れてかれる第一王子を見送りながら夕日の中、もらったお菓子を手に僕は思った。
「働くってなんだろう?」…と。
……と、まぁ、僕にとって…というか、あの国の王子にとって、自身が王子であるっていう自覚はない。
みんな、大王になる気がないし、みんな王族ではあるがそれぞれに職を持ち、平民と変わらない暮らしをしている。
あの国で王子とは名ばかりの敬称だった。
以上、ラニによりモアナ王国のお国事情でした!!
「つまり…。自身は64番目だから王子とは名ばかりの平民だと…そう言いたいのですか?」
僕の「モアナのお国事情!!」を聞き、ヒクヒクとサフィールさんが眉尻を痙攣させて、ズレたメガネをクイッと上げた。
「そうですね。貴方の国の中だったら通じるかもしれませんね。貴方の国の中だけならッ!!」
急に声を荒げるサフィールさんに驚き、「ピャッ!?」と奇声をあげて、ライモンド先生の後ろに隠れる。
「宰相…。ラニちゃんは何も知らなかったんですよ。責めるべきはラニちゃんを送り出す時に王族として留学手続きをしなかった大人たちです」
「分かってますよ、そんな事…。モアナ大王すら書状もなしに平民として、てらっとやって来ては、いきなり城で『いい酒あるから飲もうッ』と、酒盛りを始める御仁です。…私が…、私達がラニくんが留学した時に書類を見逃したのがいけない事くらい分かってますッ!!」
「……モアナから久々に留学生が来た事は知っていたが、それ以上は突き詰めなかったからな。第一王子の息子が留学してきた以降は来てなかったし…」
「そう言えば。アレも平民で来てましたね!? あの時は注意しましたが、『まぁまぁ、怒りなさんな。酒飲んで踊りましょう』って朝から晩まで酒飲まされて踊ってグロッキーになってる間にあの第一王子の息子…、国に帰りましたよね!?」
「そういや、第一王子もなんだかんだ言って…」
僕のロバ耳の事から始まって、出てくるわ。出てくるわ。モアナへの不満。
どうやら大王も第一王子達も相当やらかしているらしい。
何がいけないのかは分からないけど。
人口9千人の小国でモアナ大王と呼ばれる爺ちゃんが納める南の島。
モアナ大王の子供は王子が11人、姫が1人。
孫が53人。
とても温厚で細かい事は気にしないおおらかな国民性で何か争い事があっても酒飲んで一緒に踊ればみんな友達。
そんなお国柄だから王位継承権がある王子が息子、孫合わせて64人居るが一切、王権争いは起こらない。みんな、「大王の次は第一王子が継ぐんだろうなー」と丸投げだ。
そして第一王子も……。
「ラニ。産まれたのが早いか遅いかで運命が決まるのは理不尽だと思うんだよなー」
自身が経営している商店をサボって幼い日の僕を釣りに連れ出した第一王子は夕日をバックにフッと憂いを纏った笑みを溢す。
「俺はな。優秀な奴が国を引っ張っていけばいいと思ってる。優秀な奴に年上も年下も関係ない。…そうだろ?」
カッコつけた顔のまま「うおっ!? 当たりだ!! こりゃ、大物ッ!!」と言いながらしなる竿を引く。しかし、糸はぷつりっと切れ、第一王子は寝転がり、顔を腕で隠した。
「ふっ。とんだピエロだ。そりゃあ、大物だよ。海底を釣り上げようとしてたんだもんな。…所詮、俺には無理なんだ。海底を釣る事も大王も…」
なんだか可哀想になり、第一王子が海底を釣り上げようと戦っている間に釣ったイシダイをソッと渡す。
すると「ありがとな」とフッと第一王子は笑った。
「ラニ。俺は帰ったら母ちゃんから説教だ。当たり前だな。仕事サボって釣りだもん。そりゃあ、怒るよ。…でもな、俺にだって、サボらなければいけなかった理由があるんだ」
「そうなの?伯父さん」
「ああ。とっても大切な事なんだ」
ポンッと頭を優しく撫で、第一王子が先程からやたらバックにしたがる夕日の色に青い瞳が染まる。
「働きたくないんだ。社会の歯車になりたくない」
第一王子は切なげな表情でやっと第一王子を見つけた母ちゃんこと第一王子の奥さんが鬼の形相で近づいてくるのを見やる。
「ラニ。俺は11番目の王子の息子で、孫の中でも一番年下な64番目の王子であるお前こそが大王に相応しいと信じている」
「やっと見つけた。このボンクラッ!!!今日のご飯は無しですからねッ」
「お前が俺の代わりに働いてくれっ…。後、母ちゃんにサボったのには理由があるって一緒に説得ッ。…ああ、母ちゃん待って。これ、母ちゃんにプレゼントのイシダイッ!! 拳骨はなしの方向でッ」
「どうせ、ラニちゃんが釣ったんでしょ!? ラニちゃん、こんなクズの言う事なんてすぐに忘れんさいなっ。お菓子あげるから」
母ちゃんから拳骨をくらい、グスグスと泣きながらズルズルと連れてかれる第一王子を見送りながら夕日の中、もらったお菓子を手に僕は思った。
「働くってなんだろう?」…と。
……と、まぁ、僕にとって…というか、あの国の王子にとって、自身が王子であるっていう自覚はない。
みんな、大王になる気がないし、みんな王族ではあるがそれぞれに職を持ち、平民と変わらない暮らしをしている。
あの国で王子とは名ばかりの敬称だった。
以上、ラニによりモアナ王国のお国事情でした!!
「つまり…。自身は64番目だから王子とは名ばかりの平民だと…そう言いたいのですか?」
僕の「モアナのお国事情!!」を聞き、ヒクヒクとサフィールさんが眉尻を痙攣させて、ズレたメガネをクイッと上げた。
「そうですね。貴方の国の中だったら通じるかもしれませんね。貴方の国の中だけならッ!!」
急に声を荒げるサフィールさんに驚き、「ピャッ!?」と奇声をあげて、ライモンド先生の後ろに隠れる。
「宰相…。ラニちゃんは何も知らなかったんですよ。責めるべきはラニちゃんを送り出す時に王族として留学手続きをしなかった大人たちです」
「分かってますよ、そんな事…。モアナ大王すら書状もなしに平民として、てらっとやって来ては、いきなり城で『いい酒あるから飲もうッ』と、酒盛りを始める御仁です。…私が…、私達がラニくんが留学した時に書類を見逃したのがいけない事くらい分かってますッ!!」
「……モアナから久々に留学生が来た事は知っていたが、それ以上は突き詰めなかったからな。第一王子の息子が留学してきた以降は来てなかったし…」
「そう言えば。アレも平民で来てましたね!? あの時は注意しましたが、『まぁまぁ、怒りなさんな。酒飲んで踊りましょう』って朝から晩まで酒飲まされて踊ってグロッキーになってる間にあの第一王子の息子…、国に帰りましたよね!?」
「そういや、第一王子もなんだかんだ言って…」
僕のロバ耳の事から始まって、出てくるわ。出てくるわ。モアナへの不満。
どうやら大王も第一王子達も相当やらかしているらしい。
何がいけないのかは分からないけど。
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