王子様の耳はロバの耳 〜 留学先はblゲームの世界でした 〜

きっせつ

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第一章 王子とロバ耳と国際交流と

4、厄介なロバ耳

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「ラニくんッ!!」

話を黙って聞いていると、いつの間にかにサフィールさんが回り込み、ガッと肩を掴まれた。

逃がさないと言わんばかりに肩を掴んだ手に力が入り、慌ててライモンド先生が割って入る。

「落ち着いてちょうだいッ。宰相!!?」

「ラニくんッ。君の国で君が一般人だとしてもこの国で君は要人です。要人って意味は理解出来ます?」

「は、はい。重要人物って事ですッ」

「そうです。その重要人物が国にいる間に何かあったらどうなりますか?」

「国の問題になる?」

「そうです。なりますね。ウチは同盟国の王子達を同盟意識強化の為に留学生として迎えてますからね。では、今の状況は?」

「重要人物に原因不明のロバ耳が生えて困ってる?」

「そうですね!?困りますね!!預かっている同盟国の王子の身に何かあった場合、責任を取るのは身柄を預かっている私達です。何より同盟は帝国が主体のもの。預かっている王子に何かあれば帝国への不信にも繋がります」

「宰相!?胸ぐらに手が伸びてますよ!!?ダメでしょ。胸ぐらは掴んではダメです!!」

「だから…、だから、あれ程、王族として来いって何度も言ってるんですッ。王族として来てくれるなら、こっちも何かあった際にすぐ対応できるって言ってんだろッ。あんの大王ッ。話を…話を聞け…」

「……ごめんなさい」

「だから宰相…。それをラニちゃんに怒ったってしょうがないですよ」

「…すみません、ラニくん。ですが、君だけでも覚えて帰って次に繋げてください」

半ば胸ぐらに掴みかかりそうだったサフィールさんは疲れきった笑顔でそう締めくくった。

その笑顔がどれだけモアナのゆるい国民性に振り回されてきたか物語っていた。

なんだろう。なんでかな?
目から汗がッ…。


「…いや、帰る以前の問題だろ」

執務机に突っ伏していた皇帝が脱線しつつあった話題を戻し、翡翠の瞳で僕の頭を忌々しげにジッと見た。頭に巻いたスカーフの下でぴょこぴょこと耳が挙動不審に動く。

「そもそも治る見込みはあるのか、それは!?」

「確かにッ」

「それは病気なのか? それとも呪術か何かか? 学園は度々そういう事が起こるというのは余達の時代からだが、皆、一日で戻ったぞ!?」

「そもそも、学園の七不思議…なんて言って何10年もなんで私達は放って来たのでしょう?」

「ワシは…ワシの首はどうなりますか!? 今まで国が放って置いたならワシだけの所為じゃないよね!!?」


大の大人達が揃いも揃って頭を抱える。
その光景に改めてことの重大さをひしひしと感じて、ブワッと涙腺が緩む。

僕は一生ロバ耳なのですか?


そんなの嫌だとグズっているとラベンダーの香りのハンカチが涙を拭い、綺麗に整えられた手が優しく肩に置かれた。

「ラニちゃんは今、2年生。学園は6年制。ラニちゃんが国に帰るまで4年の猶予があります。先の事より今の事を考えませんか?」
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