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第一章 王子とロバ耳と国際交流と
7、仲良し包囲網
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珊瑚が砕かれてできた白い砂浜。
エメラルドに輝く海。
ヤシの木に身を預けて、一日中、うとうとと釣り糸を垂らしていたあの頃。
さざなみの音は子守唄。
太陽の日差しを日差し避けのヴェールの合間から受け、熱いと汗を滴らせていた。
お祭りが大好きで王族一人一人の誕生日が祝日になるあの国ではゆっくりと時間が流れていて、せかせか働いたりしている人なんて居なかった。
「モアナに帰りたいっ…」
ぐすぐすと泣きながらスプーンを握る。
「おい…。スプーンの持ち方がおかしい」
「フィル。好きにさせてあげなさい。今、国に帰られて困るのは私達です」
皇子はプリンを突く僕からスプーンを取り上げようとしたが、リュビオにたしなめられてグッと未練たらたらスプーンを取り上げようとした手を引っ込める。
スプーンの持ち方がおかしくて悪かったね!!
この持ち方は前世からだよ。
やはり、昼食もテーブルマナー講座を開催しようとしていた皇子。
お肉の切り分け方とか。スープの飲み方とか。教えるつもりだったようで昼食メニューも事前に予約していた。
だが、リュビオが全て却下して昼食は全部僕の好物へと変更になった。
ついでに僕は昼食のリクエストを一切していない。頼んだのはリュビオだ。
何故、僕の好物を全部把握している??
「いいですか、フィル。今、大切なのは逃さない事です。父上は4年間、不祥事がバレないようにサポートをしろと言っていましたが、手ぬるいッ。これはチャンスなのです」
「リュビオ…。本人の前であんまりそういう事は…」
「上手く手懐けて、同盟国の中である意味一番厄介なモアナとの橋渡しを作る。この歳ならまだ刷り込みは間に合うッ」
「ぐすっ…。やっぱり、モアナに帰りたい…」
「ど、どうして、そんな事言うんですか!?お菓子もいっぱいありますよ。ほら、泣かないでッ」
「お前が思ってる事を全て口に出すからだろう…」
やはり、穏やかでのんびりしていたモアナと違い、ここはセカセカシャキシャキの上、怖い。
リュビオは厳しそうな顔のサフィールさんとは少し違い、顔も立ち振る舞いも優しそうなのにガッツリ思惑満載だ。
そして一番、怖いのが…。
「二人とも。ラニラニが怖がってるぢゃん。俺たち、ラニラニよりオニーサンなんだからちゃーんと優しくしなきゃダメでしょ?」
そう2人をたしなめて、「ほっぺにカスタード付いてるよ」と、僕とリュビオの間に割って入ったその人は動く度に耳のピアスがジャラリッと揺れる。
見た目は清楚系なリュビオ。
眼力は強いが見た目はガッツリ王子様なフィルバート。
そして、ピアスやらウルフカットの金髪で確実にチャラ男枠確定なその人の名は…。
「おいっ、シルビオ。それは俺も入ってるのか!?お、俺は悪くないんだからなッ」
「あったりまえぢゃん。フィルっちが最初に怖がらせたんでしょ。そうやって、ツンツンして迫るから怖がらせちゃうんぢゃん?ツンデレも大概にしないとエレンにも嫌われちゃうよ?」
「ゔっ…」
そう嗜める姿はそのチャラい喋り口調に似合わず麗しく、ため息を一つで隣の席に座っていた令嬢が顔を薔薇色に染めてぶっ倒れた。
彼の名はシルビオ・カヴァリエーレ。
二年下の僕ですら知っている程の男女問わずモテモテな騎士団長の息子で、下手すりゃ皇子よりも華がある。
もしかしたら皇子を差し置いてメインヒーローなのかもしれない男。
関わりたくなかった最重要人物の一人。
攻略対象に囲まれた僕は今、まさに四面楚歌。
今僕はシナリオに片足…じゃなく、両足突っ込んでいるのかもしれない。どうやって、逃げよう!?
「わ、私はフィルのフォローをしただけですよ!?」
「リュビちゃんはフォローするふりして自分の野望を叶えたいだけぢゃん。思った事をすぐ口に出しちゃうおっちょこちょいなリュビちゃんには無理だから諦めなよ。そーゆートコがエレンに嫌がられてるんでしょ?」
「ゔっ…」
逃げる算段をしつつもチャラいのに言ってる事がマトモなシルビオに興味がいってしまう。
おそらく、先程からシルビオの口から出る《エレン》はあの男爵令息の名前。
どうやら、二人ともエレンが好きなのにアプローチが空回っているみたい。
思い返してみれば、この前見た皇子の壁ドンもエレンは迷惑そうだった気がする。切ない…。
「頑張れ!!きっと、いつかは報われるよ」と心の中でエールを送りながら気配を消し、三人が揉めている中をそろっと抜け出そうとしたが…。
「おいっ。何処へ行くつもりだ。きちんと座ってろ」
皇子に首根っこ掴まれて戻された。
「ほら、俺のプリンもやるから」
「………なんで?」
「フィルっちはラニラニを構いたいんだよネ。陛下からラニラニを任された時はルンルンだったんダヨ?フィルっち、末っ子だから弟ができたみたいで本当は嬉しかったんだねー」
「ち、ち、ち、違うッ。煩いぞ、シルビオッ。か、勘違いするなよっ。これはお前が食べてる間は大人しいからあげるだけで。決して食べてる姿が愛らしかったからじゃないからな!!」
「本音がダダ漏れですよ…」
「フィルっちもリュビちゃんには言われたくないと思うナー」
「「うるさいッ。シルビオ!!」」
「ひどいナー。酷いと思わない?ラニラニ」
逃げようと思ったのに仲良し三人組の輪に入れられて、三人がニコニコとこちらを見てくる。気の所為かな?その笑顔には「逃さない」と書いてある気がした…。
エメラルドに輝く海。
ヤシの木に身を預けて、一日中、うとうとと釣り糸を垂らしていたあの頃。
さざなみの音は子守唄。
太陽の日差しを日差し避けのヴェールの合間から受け、熱いと汗を滴らせていた。
お祭りが大好きで王族一人一人の誕生日が祝日になるあの国ではゆっくりと時間が流れていて、せかせか働いたりしている人なんて居なかった。
「モアナに帰りたいっ…」
ぐすぐすと泣きながらスプーンを握る。
「おい…。スプーンの持ち方がおかしい」
「フィル。好きにさせてあげなさい。今、国に帰られて困るのは私達です」
皇子はプリンを突く僕からスプーンを取り上げようとしたが、リュビオにたしなめられてグッと未練たらたらスプーンを取り上げようとした手を引っ込める。
スプーンの持ち方がおかしくて悪かったね!!
この持ち方は前世からだよ。
やはり、昼食もテーブルマナー講座を開催しようとしていた皇子。
お肉の切り分け方とか。スープの飲み方とか。教えるつもりだったようで昼食メニューも事前に予約していた。
だが、リュビオが全て却下して昼食は全部僕の好物へと変更になった。
ついでに僕は昼食のリクエストを一切していない。頼んだのはリュビオだ。
何故、僕の好物を全部把握している??
「いいですか、フィル。今、大切なのは逃さない事です。父上は4年間、不祥事がバレないようにサポートをしろと言っていましたが、手ぬるいッ。これはチャンスなのです」
「リュビオ…。本人の前であんまりそういう事は…」
「上手く手懐けて、同盟国の中である意味一番厄介なモアナとの橋渡しを作る。この歳ならまだ刷り込みは間に合うッ」
「ぐすっ…。やっぱり、モアナに帰りたい…」
「ど、どうして、そんな事言うんですか!?お菓子もいっぱいありますよ。ほら、泣かないでッ」
「お前が思ってる事を全て口に出すからだろう…」
やはり、穏やかでのんびりしていたモアナと違い、ここはセカセカシャキシャキの上、怖い。
リュビオは厳しそうな顔のサフィールさんとは少し違い、顔も立ち振る舞いも優しそうなのにガッツリ思惑満載だ。
そして一番、怖いのが…。
「二人とも。ラニラニが怖がってるぢゃん。俺たち、ラニラニよりオニーサンなんだからちゃーんと優しくしなきゃダメでしょ?」
そう2人をたしなめて、「ほっぺにカスタード付いてるよ」と、僕とリュビオの間に割って入ったその人は動く度に耳のピアスがジャラリッと揺れる。
見た目は清楚系なリュビオ。
眼力は強いが見た目はガッツリ王子様なフィルバート。
そして、ピアスやらウルフカットの金髪で確実にチャラ男枠確定なその人の名は…。
「おいっ、シルビオ。それは俺も入ってるのか!?お、俺は悪くないんだからなッ」
「あったりまえぢゃん。フィルっちが最初に怖がらせたんでしょ。そうやって、ツンツンして迫るから怖がらせちゃうんぢゃん?ツンデレも大概にしないとエレンにも嫌われちゃうよ?」
「ゔっ…」
そう嗜める姿はそのチャラい喋り口調に似合わず麗しく、ため息を一つで隣の席に座っていた令嬢が顔を薔薇色に染めてぶっ倒れた。
彼の名はシルビオ・カヴァリエーレ。
二年下の僕ですら知っている程の男女問わずモテモテな騎士団長の息子で、下手すりゃ皇子よりも華がある。
もしかしたら皇子を差し置いてメインヒーローなのかもしれない男。
関わりたくなかった最重要人物の一人。
攻略対象に囲まれた僕は今、まさに四面楚歌。
今僕はシナリオに片足…じゃなく、両足突っ込んでいるのかもしれない。どうやって、逃げよう!?
「わ、私はフィルのフォローをしただけですよ!?」
「リュビちゃんはフォローするふりして自分の野望を叶えたいだけぢゃん。思った事をすぐ口に出しちゃうおっちょこちょいなリュビちゃんには無理だから諦めなよ。そーゆートコがエレンに嫌がられてるんでしょ?」
「ゔっ…」
逃げる算段をしつつもチャラいのに言ってる事がマトモなシルビオに興味がいってしまう。
おそらく、先程からシルビオの口から出る《エレン》はあの男爵令息の名前。
どうやら、二人ともエレンが好きなのにアプローチが空回っているみたい。
思い返してみれば、この前見た皇子の壁ドンもエレンは迷惑そうだった気がする。切ない…。
「頑張れ!!きっと、いつかは報われるよ」と心の中でエールを送りながら気配を消し、三人が揉めている中をそろっと抜け出そうとしたが…。
「おいっ。何処へ行くつもりだ。きちんと座ってろ」
皇子に首根っこ掴まれて戻された。
「ほら、俺のプリンもやるから」
「………なんで?」
「フィルっちはラニラニを構いたいんだよネ。陛下からラニラニを任された時はルンルンだったんダヨ?フィルっち、末っ子だから弟ができたみたいで本当は嬉しかったんだねー」
「ち、ち、ち、違うッ。煩いぞ、シルビオッ。か、勘違いするなよっ。これはお前が食べてる間は大人しいからあげるだけで。決して食べてる姿が愛らしかったからじゃないからな!!」
「本音がダダ漏れですよ…」
「フィルっちもリュビちゃんには言われたくないと思うナー」
「「うるさいッ。シルビオ!!」」
「ひどいナー。酷いと思わない?ラニラニ」
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