王子様の耳はロバの耳 〜 留学先はblゲームの世界でした 〜

きっせつ

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第一章 王子とロバ耳と国際交流と

14、シルビオ・カヴァリエーレ

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攻略対象シルビオ・カヴァリエーレ。

矢鱈チャラい口調とは裏腹に男の僕が見ても麗しい美男子で、剣の腕は学園トップ。ついでに勉強においても仕える皇子差し置いてトップという非の打ち所がない未来の騎士団長。

おまけに誰よりも気遣いが出来る男で、さり気ない動作で椅子を引いてくれたり、扉を開けてエスコートしてくれる完璧人間。

エレンとも唯一友人枠を獲得していて、彼の欠点は何処?と、問われれば、もう少し自重して皇子を立ててあげたら?って所である。



「まぁ、男だとしても惚れてもしょうがないよね。次があるよ、皇子」

グルグル眼鏡先輩の制止を掻い潜り、やって来たのは剣の訓練場。

暇な皇子とリュビオとは違い、昼休み以外は僕達の所に来ないシルビオは授業の合間を使って剣の鍛錬をしているらしい。


草陰からひょっこり覗くと汗を滴らせながらひとり、真剣に木剣を振るシルビオの姿があった。

本当に言葉と服装以外チャラさが一切無い。彼は努力家キャラのようだ。


剣を振った事がない僕でも分かる程、洗練された動き。
剣を振るたびに落ちる汗は陽光にキラキラと輝き、キリリと凛々しく前を見据える紫紺の瞳。
その姿はおとぎ話に出てくるような騎士様のよう。

そりゃあ、皇子もリュビオも負けるよ。
一人だけ少女漫画に出てくるヒーロー像そのものだもん。


これは負けてもしょうがない。
そう同情の念を2人に送りながら、さてどうエレンと距離を縮めるべきかと首を傾げる。
勢いでシルビオの所に来たけど、今思えばノープランだ。

あれかな?
ここにエレンを連れてくれば良いのかな?

どうしたもんかと首を捻っていると、シルビオが鍛錬を終えたようでベンチに置いてあるタオルで汗を拭いている。
汗を拭きながらタオルの上に置いてある金色のロケットを開けた。

シルビオは金色のロケットの中身を見て、フッと優しい微笑みを浮かべて、「さぁて、もう少し鍛錬しようかな」と剣を手に取る。

「あ、あの、シルビオ様」


シルビオが鍛錬に戻ろうとした時。
女の子たちが頰を赤らめながら話しかけて来た。

「なーに?俺になんかようカナ?」

「あ、あの、よろしければ、クッキーを作ってきたので…、その…」

「わー!美味しそうぢゃん。いーよ。みんなで一緒に食べよう。お茶は俺がとびっきり美味しいの奢っちゃうよ?」

「「は、はいっ!」」

ニコッと親しみの湧く笑顔を浮かべて、シルビオは二つ返事で女の子たちとのお茶を了承した。

「俺、今、鍛錬してて、汗臭いんだよね。汗臭くてごめんねー」

「い、いえ。そんな事」

「シルビオ様が臭いなんて有り得ませんわ。今だって、フローラルな良い香りがしてますものっ!」

「それは褒めすぎぢゃん。でも、ありがとうね」

チャラいのが少し気になるが驚く程の社交性の高さで女の子たちと会話を楽しみながらシルビオは律儀に剣を片付け、荷物を手早くまとめると女の子たちと去っていく。

「か、格差が酷い。攻略対象のポテンシャルの格差があり過ぎて目も当てられない…」

何故、作成者は同じ攻略対象にあるにも関わらず、シルビオばかりに才能を大量に与えたもうたのか。

作成者のシルビオ愛がハンパない。
シルビオばかりが優遇されている。


正直、皇子があんなに女の子に囲まれている所を僕は見た事ない。

その上、話しかけてきた女の子に対して毎回ツンデレが発動して、親しげに話している所を見た事も皆無。
しかも、ツンデレを発動してしまった後は目に見えて落ち込んでいる。

あれ?何故だろう。
目から汗が…。

鼻がツンッとなり、うるっとした視界に陽光を受けキラリと輝くものが入る。
さっきまでシルビオがいたベンチの下で金色のものが輝いていた。
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