16 / 119
第一章 王子とロバ耳と国際交流と
16、狂気と好意は紙一重
しおりを挟む
近づいてその金色のものを手に取る。
それはシンプルだが見るからに上質そうな金色のロケット。シルビオが大切そうに見ていたロケットだ。
気を遣って相手を待たせないように手早く用意してたから落とした事にも気付かなかったんだろう。
大切そうにしてたから早く届けてあげようかとシルビオを追って足を向けようとして、はたと気づく。
あっ!
これ、エレンとくっつけるチャンス?
エレンにシルビオの落とし物だとそれとなく渡して貰えば距離は縮まるかな。
「んー?でも、ロケットって言えば中身の定番は想い人の写真だよね。中身はエレンだったりするのかな…」
もし中身がエレンでロケットを渡したエレンが中身を見てしまったとする。
BLゲームの世界観だったら「こんなに俺を思ってくれてるんだ。嬉しいっ…」って、なるのだろうか?
僕だったら自分の写真が友人に肌身離さず後生大事にされていたらその事実を受け入れられるか分からない。僕は友人とは適切な距離がいい。
人のものを勝手に覗いてはいけない。
そう良心が訴えるが、そこが心配で仕方がない。
家族やペットの写真であれ!と切に願って数センチだけ開けて…。
「………え?……は??」
混乱して、中身の写真を二度見した。
ロケットの中に入っていたのは少し古い写真。
その中では4、5歳くらいの少年が可愛いテディベアを抱っこしてる姿が映っている。
白黒で髪の色も目の色も分からない。
シルビオの弟さん?…とボケたい所だが、その少年の漂わせる雰囲気と面影を僕は知っている。
強気で眼力のある瞳。
口をへの字に結び、「俺は本当はこんな写真撮りたくないんだからな?」と言いたげな不機嫌な表情。
嫌々にしては何処かちょっと嬉しそうに少しだけ広角が上がっている。
「な、なんて分かり易い…」
小さい頃でも、写真の中でもツンデレ全開なその人を僕は知っている。
気付きたくなくても数ヶ月関わっただけで分かってしまう。
「なんで皇子の写真?」
止めとない困惑と素朴な疑問。
皇子は皇子だから騎士団長の息子であるシルビオが仕えるのが当たり前なのは王子(笑)の僕でも分かる。
シルビオ(ついでにリュビオも)がかなりの確率で皇子と一緒にいるのも未来の臣下だからだというのもなんとなく分かる。
だけど、なんで小さい頃の写真?
なんで自身の主人の写真を肌身離さず後生大事に持ってるの?
「なーにしてるのかな?ラニラニ」
そう背後から声がして、ビクリッと身体が跳ねる。
振り返るとそこにはさっき女の子たちとお茶に行った筈のシルビオが感情の一切読めない笑みをニコニコと浮かべていて、思わず顔が引き攣った。
「……ごめんなさい」
「なんで謝るの?ラニラニは謝らなければいけない事をやっちゃったのかなー?」
「落としたロケットの中身を勝手に見ました。ごめんなさい」
「そっかー。ラニラニは素直に謝ってエライねー。エライ、エライ」
にぃーっこり笑ったままシルビオが僕の頭を撫でる。
とぉーっても優しく笑顔で接しられてるのにロバ耳は緊張でピンッと張り詰め、苦笑いが止まらない。
「そっか。そっかー。見ちゃったかぁ。鍛錬の時もずっと茂みにいたよねー」
「あ、あはははっ。……ごめんなさい」
「いやー。気にしてないヨー。可愛い事してるなーって思っただけだよー」
「あはっ、あははは。……も、もうしません」
「いや、別に気にしてないから全然してもいいよー。ラニラニなら許しちゃう。ラニラニは特別だからねー」
見ていた事が最初からバレていた事で軽く頭がパニック状態。
シルビオはシルビオで言ってる事も表情も優しいのになんか怖い。理由は分からないけどなんか怖い。
引き攣った笑みのまま表情が固まる。
今すぐロケットを渡してこの場から戦略的撤退をしたいのに体がヘビに睨まれた蛙のように動かない。何故だ。口は動くのに…。
「と、特別…」
「うん。フィルっちの将来に欠かせない存在だからねー」
「はははっ…。ぼ、僕、王子だけど、将来漁師だよ?皇子の将来には役立てないと思うよ…」
「そんな事ないぢゃん。謙遜謙遜」
「ははははっ…。いやいやいやいや…。ほら、僕王族でも末端だから国をどうこうするようか発言力はないよ」
「そうだネ。直接的にはないかもね」
「ちょ、直接的にも間接的にもないから」
「あははっ!謙虚だねー、ラニラニは」
「あはっ、あはははっ……」
何故だろう。
今、恐ろしい程に重過ぎる何かを期待されている気がする。
あれ??何故、こうなった!?
エレンとシルビオをくっ付けよう作戦から何がどうなってこうなった?!!
にぃーっこり笑ったままシルビオは僕からロケットを受け取り、ロケットを持っていた僕の手を握る。
「さぁー、ラニラニはそろそろ教室に戻ろっかー。フィルっちが移動教室に行った後からラニラニが居ないって心配してたよー」
「へ、へぇー。そうなんだ。ちょっと今まで新聞部に捕まってて。…で、でも自分で帰れるよ?僕、自分で帰れるから!」
「そうだねー。でも、送るよ。俺、こんなんでも騎士の端くれだからね。要人をひとりにできないぢゃん」
「で、でも、女の子たちとの約束があるよね!!ほら、学園内なら何も危なくないから大丈夫!行ってきていいよっ」
「大丈夫っ!彼女達と俺は受講してる授業まで一時間くらい空きがあるから。それに彼女達は少し待たせたくらいでめくじら立てる子達じゃないからね。それに新聞部に捕まったんでしょ?秘密がある以上危なくは全くないよね?…さて、これで納得?」
「………うぅ。帰れるよぉ。帰れるって!」
最初から拒否権なんて存在しなかった。
全く振り解けない手と圧のあるニコニコ笑顔。
僕の意思は全く尊重されず、お子ちゃまみたいに御手手を繋いで誘導され、みんなに注目を受けながら自身の教室に戻る羽目になった。
「ラニラニは良い子だね。ラニラニはフィルっちのもう弟のようなものだからいっぱいフィルっちに甘えて良いんだよ?」
「いえ…。そんな事は…」
「ラニラニは俺にとっても可愛い弟みたいなもんぢゃん。…卒業してもずっとこの国に居てくれていいからね?帰っちゃうの寂しーしね」
「お家には帰してください。ボク、オ家大好キ」
強制送還の間も感情の読み取れない笑顔を浮かべながら側から見てると好意的な話題を振ってくるシルビオ。だが、その言葉の節節に全く好意的ではない何かを感じて僕はずっと顔が引き攣っていた。
「シルビオ様とラニ王子は仲がいいのね」
「お手を繋いで、まるで本当の兄弟みたいだ」
シルビオと僕が笑っているから雰囲気は一見和やかに周りには見えるらしい。
見守るような周囲の温かな眼差しはこの時の僕には辛かった。
「おいっ。どこに行っていた?…べ、別に心配してたんじゃないからな。心配して待ってた訳じゃわないからな?」
教室に着くと皇子がまだ居た。
シルビオに強制送還されてきた僕を見つけると、ホッとした表情を浮かべたかと思うとあからさまにツンッとした態度を取る。
そこでやっとシルビオの握っている手の力が緩み、何時もならちょっと面倒だなと思うツンデレ発言に安堵を覚えた。
「……な、なんで涙目なんだ」
「うぅ…。うわぁーんっ!」
「な、何故泣く!?ど、ど、ど、どうした?!」
「あー。ラニラニ、新聞部に捕まってたんだってサー」
「大問題じゃないか!!…余計な事言わなかったか?」
「笑顔が…。笑顔がッ!」
「え、笑顔がどうしたんだ??」
状況がいまいち飲み込めない皇子と、僕の涙をサラッと新聞部の所為にしつつ、報告もこなす抜け目のないシルビオ。
一見、面倒臭いツンデレだが、案外感情が分かり易い皇子と、笑顔なのに感情が読めず、本当は何を考えてるのか分からないシルビオ。
僕はシルビオから逃げるように皇子に飛びつき、泣きついた。
面倒臭いツンデレより感情が分からない方が厄介で怖いっ。裏がありそうな優しさより多少捻くれていても純粋なお節介の方がいい。
「な、な、な、な、な!!?ど、ど、ど、どどうしたッ!?!え?え???」
何故。シルビオが皇子の写真を肌身離さず後生大事に持ってたのかはわからない。
だけど、シルビオについて言える事は……。
「あははっ。フィルっち動揺し過ぎぢゃん。そーゆー時は泣き止むまでやさしく甘えさせてあげるのがオニーサンの役割だよー」
「こ…れは甘えてるのか?俺には怯えて目の前の藁に必死に縋っているようにしか見えないのだが…」
「それが頼られてるって事ぢゃん。ヨカッタね。オニーチャン」
「そうなのか?…ま、まぁ、やぶさかではないが」
案外、まともに状況把握をしていた皇子にシルビオが笑顔で余計な事を吹き込む。
皇子には普通のいつも通りの笑顔だったが、僕と目が合った瞬間、またあの感情の読めない笑顔で口に人差し指をつけた。
…シ、シルビオについて言える事は僕が関わっている攻略対象の中で一番怖いという事。
この怖い男の暴いてはいけない何かに僕は触れてしまったんだろう。
それだけはあの笑顔から分かりたくないけど分かる。
「なんで…。なんで、真っ当な攻略対象が居ないんだ!! 誰!?こんな狂ったキャラ設定ぶっ込んだのは?」
「な、なんの話だ??」
「うーん。さぁ?取り敢えず、お菓子でも与えとけば落ち着くんぢゃん?」
「な、成程!クッキーなら丁度、持ってるぞ!!」
絶対、この世界の作成者は狂っている。
どうやって、こんなのを攻略しろというんだ。
初っ端から出鼻をくじれて、心折れても、だけども甘いものは美味しい。
差し出されたランドグシャなるクッキーを泣きながらヤケクソに頬張った。
それはシンプルだが見るからに上質そうな金色のロケット。シルビオが大切そうに見ていたロケットだ。
気を遣って相手を待たせないように手早く用意してたから落とした事にも気付かなかったんだろう。
大切そうにしてたから早く届けてあげようかとシルビオを追って足を向けようとして、はたと気づく。
あっ!
これ、エレンとくっつけるチャンス?
エレンにシルビオの落とし物だとそれとなく渡して貰えば距離は縮まるかな。
「んー?でも、ロケットって言えば中身の定番は想い人の写真だよね。中身はエレンだったりするのかな…」
もし中身がエレンでロケットを渡したエレンが中身を見てしまったとする。
BLゲームの世界観だったら「こんなに俺を思ってくれてるんだ。嬉しいっ…」って、なるのだろうか?
僕だったら自分の写真が友人に肌身離さず後生大事にされていたらその事実を受け入れられるか分からない。僕は友人とは適切な距離がいい。
人のものを勝手に覗いてはいけない。
そう良心が訴えるが、そこが心配で仕方がない。
家族やペットの写真であれ!と切に願って数センチだけ開けて…。
「………え?……は??」
混乱して、中身の写真を二度見した。
ロケットの中に入っていたのは少し古い写真。
その中では4、5歳くらいの少年が可愛いテディベアを抱っこしてる姿が映っている。
白黒で髪の色も目の色も分からない。
シルビオの弟さん?…とボケたい所だが、その少年の漂わせる雰囲気と面影を僕は知っている。
強気で眼力のある瞳。
口をへの字に結び、「俺は本当はこんな写真撮りたくないんだからな?」と言いたげな不機嫌な表情。
嫌々にしては何処かちょっと嬉しそうに少しだけ広角が上がっている。
「な、なんて分かり易い…」
小さい頃でも、写真の中でもツンデレ全開なその人を僕は知っている。
気付きたくなくても数ヶ月関わっただけで分かってしまう。
「なんで皇子の写真?」
止めとない困惑と素朴な疑問。
皇子は皇子だから騎士団長の息子であるシルビオが仕えるのが当たり前なのは王子(笑)の僕でも分かる。
シルビオ(ついでにリュビオも)がかなりの確率で皇子と一緒にいるのも未来の臣下だからだというのもなんとなく分かる。
だけど、なんで小さい頃の写真?
なんで自身の主人の写真を肌身離さず後生大事に持ってるの?
「なーにしてるのかな?ラニラニ」
そう背後から声がして、ビクリッと身体が跳ねる。
振り返るとそこにはさっき女の子たちとお茶に行った筈のシルビオが感情の一切読めない笑みをニコニコと浮かべていて、思わず顔が引き攣った。
「……ごめんなさい」
「なんで謝るの?ラニラニは謝らなければいけない事をやっちゃったのかなー?」
「落としたロケットの中身を勝手に見ました。ごめんなさい」
「そっかー。ラニラニは素直に謝ってエライねー。エライ、エライ」
にぃーっこり笑ったままシルビオが僕の頭を撫でる。
とぉーっても優しく笑顔で接しられてるのにロバ耳は緊張でピンッと張り詰め、苦笑いが止まらない。
「そっか。そっかー。見ちゃったかぁ。鍛錬の時もずっと茂みにいたよねー」
「あ、あはははっ。……ごめんなさい」
「いやー。気にしてないヨー。可愛い事してるなーって思っただけだよー」
「あはっ、あははは。……も、もうしません」
「いや、別に気にしてないから全然してもいいよー。ラニラニなら許しちゃう。ラニラニは特別だからねー」
見ていた事が最初からバレていた事で軽く頭がパニック状態。
シルビオはシルビオで言ってる事も表情も優しいのになんか怖い。理由は分からないけどなんか怖い。
引き攣った笑みのまま表情が固まる。
今すぐロケットを渡してこの場から戦略的撤退をしたいのに体がヘビに睨まれた蛙のように動かない。何故だ。口は動くのに…。
「と、特別…」
「うん。フィルっちの将来に欠かせない存在だからねー」
「はははっ…。ぼ、僕、王子だけど、将来漁師だよ?皇子の将来には役立てないと思うよ…」
「そんな事ないぢゃん。謙遜謙遜」
「ははははっ…。いやいやいやいや…。ほら、僕王族でも末端だから国をどうこうするようか発言力はないよ」
「そうだネ。直接的にはないかもね」
「ちょ、直接的にも間接的にもないから」
「あははっ!謙虚だねー、ラニラニは」
「あはっ、あはははっ……」
何故だろう。
今、恐ろしい程に重過ぎる何かを期待されている気がする。
あれ??何故、こうなった!?
エレンとシルビオをくっ付けよう作戦から何がどうなってこうなった?!!
にぃーっこり笑ったままシルビオは僕からロケットを受け取り、ロケットを持っていた僕の手を握る。
「さぁー、ラニラニはそろそろ教室に戻ろっかー。フィルっちが移動教室に行った後からラニラニが居ないって心配してたよー」
「へ、へぇー。そうなんだ。ちょっと今まで新聞部に捕まってて。…で、でも自分で帰れるよ?僕、自分で帰れるから!」
「そうだねー。でも、送るよ。俺、こんなんでも騎士の端くれだからね。要人をひとりにできないぢゃん」
「で、でも、女の子たちとの約束があるよね!!ほら、学園内なら何も危なくないから大丈夫!行ってきていいよっ」
「大丈夫っ!彼女達と俺は受講してる授業まで一時間くらい空きがあるから。それに彼女達は少し待たせたくらいでめくじら立てる子達じゃないからね。それに新聞部に捕まったんでしょ?秘密がある以上危なくは全くないよね?…さて、これで納得?」
「………うぅ。帰れるよぉ。帰れるって!」
最初から拒否権なんて存在しなかった。
全く振り解けない手と圧のあるニコニコ笑顔。
僕の意思は全く尊重されず、お子ちゃまみたいに御手手を繋いで誘導され、みんなに注目を受けながら自身の教室に戻る羽目になった。
「ラニラニは良い子だね。ラニラニはフィルっちのもう弟のようなものだからいっぱいフィルっちに甘えて良いんだよ?」
「いえ…。そんな事は…」
「ラニラニは俺にとっても可愛い弟みたいなもんぢゃん。…卒業してもずっとこの国に居てくれていいからね?帰っちゃうの寂しーしね」
「お家には帰してください。ボク、オ家大好キ」
強制送還の間も感情の読み取れない笑顔を浮かべながら側から見てると好意的な話題を振ってくるシルビオ。だが、その言葉の節節に全く好意的ではない何かを感じて僕はずっと顔が引き攣っていた。
「シルビオ様とラニ王子は仲がいいのね」
「お手を繋いで、まるで本当の兄弟みたいだ」
シルビオと僕が笑っているから雰囲気は一見和やかに周りには見えるらしい。
見守るような周囲の温かな眼差しはこの時の僕には辛かった。
「おいっ。どこに行っていた?…べ、別に心配してたんじゃないからな。心配して待ってた訳じゃわないからな?」
教室に着くと皇子がまだ居た。
シルビオに強制送還されてきた僕を見つけると、ホッとした表情を浮かべたかと思うとあからさまにツンッとした態度を取る。
そこでやっとシルビオの握っている手の力が緩み、何時もならちょっと面倒だなと思うツンデレ発言に安堵を覚えた。
「……な、なんで涙目なんだ」
「うぅ…。うわぁーんっ!」
「な、何故泣く!?ど、ど、ど、どうした?!」
「あー。ラニラニ、新聞部に捕まってたんだってサー」
「大問題じゃないか!!…余計な事言わなかったか?」
「笑顔が…。笑顔がッ!」
「え、笑顔がどうしたんだ??」
状況がいまいち飲み込めない皇子と、僕の涙をサラッと新聞部の所為にしつつ、報告もこなす抜け目のないシルビオ。
一見、面倒臭いツンデレだが、案外感情が分かり易い皇子と、笑顔なのに感情が読めず、本当は何を考えてるのか分からないシルビオ。
僕はシルビオから逃げるように皇子に飛びつき、泣きついた。
面倒臭いツンデレより感情が分からない方が厄介で怖いっ。裏がありそうな優しさより多少捻くれていても純粋なお節介の方がいい。
「な、な、な、な、な!!?ど、ど、ど、どどうしたッ!?!え?え???」
何故。シルビオが皇子の写真を肌身離さず後生大事に持ってたのかはわからない。
だけど、シルビオについて言える事は……。
「あははっ。フィルっち動揺し過ぎぢゃん。そーゆー時は泣き止むまでやさしく甘えさせてあげるのがオニーサンの役割だよー」
「こ…れは甘えてるのか?俺には怯えて目の前の藁に必死に縋っているようにしか見えないのだが…」
「それが頼られてるって事ぢゃん。ヨカッタね。オニーチャン」
「そうなのか?…ま、まぁ、やぶさかではないが」
案外、まともに状況把握をしていた皇子にシルビオが笑顔で余計な事を吹き込む。
皇子には普通のいつも通りの笑顔だったが、僕と目が合った瞬間、またあの感情の読めない笑顔で口に人差し指をつけた。
…シ、シルビオについて言える事は僕が関わっている攻略対象の中で一番怖いという事。
この怖い男の暴いてはいけない何かに僕は触れてしまったんだろう。
それだけはあの笑顔から分かりたくないけど分かる。
「なんで…。なんで、真っ当な攻略対象が居ないんだ!! 誰!?こんな狂ったキャラ設定ぶっ込んだのは?」
「な、なんの話だ??」
「うーん。さぁ?取り敢えず、お菓子でも与えとけば落ち着くんぢゃん?」
「な、成程!クッキーなら丁度、持ってるぞ!!」
絶対、この世界の作成者は狂っている。
どうやって、こんなのを攻略しろというんだ。
初っ端から出鼻をくじれて、心折れても、だけども甘いものは美味しい。
差し出されたランドグシャなるクッキーを泣きながらヤケクソに頬張った。
30
あなたにおすすめの小説
転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった
angel
BL
つまらないことで死んでしまったボクを不憫に思った神様が1つのゲームを持ちかけてきた。
『転生先で王様になれたら元の体に戻してあげる』と。
生まれ変わったボクは美貌の第一王子で兄弟もなく、将来王様になることが約束されていた。
「イージーゲームすぎね?」とは思ったが、この好条件をありがたく受け止め
現世に戻れるまでノラリクラリと王子様生活を楽しむはずだった…。
完結しました。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!
黒木 鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。
篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる