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第一章 王子とロバ耳と国際交流と
22、一方、その頃(第三者視点)
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ラニが無駄な抵抗をしている頃。
春の花々が咲き乱れる公爵自慢の庭園ではもう既にお茶会が始まっていた。
庭園を彩る赤や白やピンクなどの可愛い花々はフィルバート皇子の叔母にあたる女公爵の趣味が反映されている。
可愛いもの好きの彼女の開くお茶会は可愛いに溢れていて、先に来ていた同盟国の王子達は若干居辛さを感じつつも交流を深めていた。
「紅茶の砂糖が金平糖……」
「こ、凝ってるなー。レディ達は大喜びですね」
「サンドイッチのパンがピンク…」
「ど、どうやってこんな愛らしい色出してるのでしょうか?やー、凝ってるなー」
「「「……………」」」
若干…所ではなく、途轍もなく居心地の悪い。
可愛いが溢れる会場で助けを求めるように王子達はクマさん型のチョコレートケーキをつつく、公爵子息を見た。その中には何故こんな茶会に俺たちを呼んだ!?という非難めいたものも含まれている。
しかし、公爵子息は動じない。
いや、動じないというより自身の母親の暴挙の所為で心が死んでいた。
「おいっ、ジェルマン!?ジェルマン!!?」
「ダメだ…。アイツ、心を閉ざしやがった」
「いや、閉ざすなよッ。お前の母親だろうがッ!?どうにかしろ!!」
王族の姫として箱入りで育てられ、お姫様気質が抜けきっていないラピュセル女公爵。
彼女はお茶会が好きでよく開催するが、当たり前のように自身の趣味嗜好を優先する。
その張本人は、にこにこと人好きな笑みを浮かべ、国防衛の要から《鉄血》と呼ばれている辺境伯と談笑している。
ガチムチマッチョの髭面で今年、還暦を迎える《鉄血》辺境伯が小さい可愛いうさぎさんのケーキをつつくという恐ろしい絵面を作っておきながら。
「こんな…、こんな混沌とした茶会は初めてだ…」
王子の一人が思わず本心を吐露し、ため息をつく。
その溜息は周囲に伝染し、このカオスな茶会に呼ばれた男性陣の心を一つにする。
『誰か。誰か。この状況をぶっ壊してくれ』…と。
「おい、ラニ。何時まで俺を盾にして歩いている!?」
「こ、これが闇の世界で戦場…。思ってたのと違ってファンシー…」
「緊張せずともちょっとした粗相ならこの茶会から問題にはならない」
「大丈夫だよ、ラニラニ。この茶会自体の印象が強過ぎて、どんな粗相しても一切記憶に残らないから」
そんな混沌とかした会場で、楽しげな会話を繰り広げながらやってくる一行。
こんな混沌とした茶会に招待されて何故、そんなに楽しそうなのか?
バッと同盟国の王子達は一行を見て、目を見張った。
彼らの目に映ったのは何時ものチャラさを捨て、騎士を全うするシルビオと正装に身を包んだフィルバート皇子にエスコートされるひとりの愛らしい姫君。
歩く度にモアナ伝統技法で織られたひらヴェールがひらひらと揺れ、そのヴェールの合間から覗く銀糸の髪は陽光を受け、キラキラと輝いている。
不安そうにフィルバート皇子を見上げるまだ幼さ残る深海色の瞳にはモアナ王族特有の《海の花》と呼ばれる銀の光彩が咲き誇っていた。
「モアナの姫君なんて留学してたっけ?」
思わず見惚れていた王子の一人がはたと思い出し、口を開く。
「……茶会の為に態々呼んだとか?」
「馬鹿言え。モアナが社交場クラッシャーなのを忘れたか? 幾ら、ラピュセル公爵でも呼ばんだろ」
「そうだな。一度、モアナ大王を呼んだ国の夜会が使用人達も巻き込んだ宴会と化した事件は記憶に新しい…」
「確か全員が二日酔いでダウンして一日、城の機能が停止したんだよな…」
モアナは社交場クラッシャー。
それは同盟国及び、同盟国外でも有名な話。モアナ大王を含め、モアナ王族を社交場に呼ぶと、良くも悪くも陽気な彼等に巻き込まれ、ただのお祭りと化す。
腹の探り合いも駆け引きも彼等が出てきた時点で彼等のペースに巻き込まれて出来ない。
なら、どうしてモアナの姫君が…と、考えて、王子の一人が「あっ」と、声を上げた。
「2学年でひとり、一般留学生にまぎれて留学してきたモアナの王子がいましたね」
「ああっ!!あの王子」
「平民にしれっと紛れ込んでたアレか!!」
「……2学年という事は14歳か? 14にしては幼くないか?」
眼下の少年は、喉仏も出てなければ、背も10歳と言われてもしょうがない程低く、ついでに声変わりもしていない。
本当に男か?と疑いつつも同盟国の王子達は初めて見る噂のモアナの王子に物珍しさと普段ならしない期待を向けていた。
『モアナの王族ならこのカオスな茶会をぶっ壊してくれる筈』…と…。
春の花々が咲き乱れる公爵自慢の庭園ではもう既にお茶会が始まっていた。
庭園を彩る赤や白やピンクなどの可愛い花々はフィルバート皇子の叔母にあたる女公爵の趣味が反映されている。
可愛いもの好きの彼女の開くお茶会は可愛いに溢れていて、先に来ていた同盟国の王子達は若干居辛さを感じつつも交流を深めていた。
「紅茶の砂糖が金平糖……」
「こ、凝ってるなー。レディ達は大喜びですね」
「サンドイッチのパンがピンク…」
「ど、どうやってこんな愛らしい色出してるのでしょうか?やー、凝ってるなー」
「「「……………」」」
若干…所ではなく、途轍もなく居心地の悪い。
可愛いが溢れる会場で助けを求めるように王子達はクマさん型のチョコレートケーキをつつく、公爵子息を見た。その中には何故こんな茶会に俺たちを呼んだ!?という非難めいたものも含まれている。
しかし、公爵子息は動じない。
いや、動じないというより自身の母親の暴挙の所為で心が死んでいた。
「おいっ、ジェルマン!?ジェルマン!!?」
「ダメだ…。アイツ、心を閉ざしやがった」
「いや、閉ざすなよッ。お前の母親だろうがッ!?どうにかしろ!!」
王族の姫として箱入りで育てられ、お姫様気質が抜けきっていないラピュセル女公爵。
彼女はお茶会が好きでよく開催するが、当たり前のように自身の趣味嗜好を優先する。
その張本人は、にこにこと人好きな笑みを浮かべ、国防衛の要から《鉄血》と呼ばれている辺境伯と談笑している。
ガチムチマッチョの髭面で今年、還暦を迎える《鉄血》辺境伯が小さい可愛いうさぎさんのケーキをつつくという恐ろしい絵面を作っておきながら。
「こんな…、こんな混沌とした茶会は初めてだ…」
王子の一人が思わず本心を吐露し、ため息をつく。
その溜息は周囲に伝染し、このカオスな茶会に呼ばれた男性陣の心を一つにする。
『誰か。誰か。この状況をぶっ壊してくれ』…と。
「おい、ラニ。何時まで俺を盾にして歩いている!?」
「こ、これが闇の世界で戦場…。思ってたのと違ってファンシー…」
「緊張せずともちょっとした粗相ならこの茶会から問題にはならない」
「大丈夫だよ、ラニラニ。この茶会自体の印象が強過ぎて、どんな粗相しても一切記憶に残らないから」
そんな混沌とかした会場で、楽しげな会話を繰り広げながらやってくる一行。
こんな混沌とした茶会に招待されて何故、そんなに楽しそうなのか?
バッと同盟国の王子達は一行を見て、目を見張った。
彼らの目に映ったのは何時ものチャラさを捨て、騎士を全うするシルビオと正装に身を包んだフィルバート皇子にエスコートされるひとりの愛らしい姫君。
歩く度にモアナ伝統技法で織られたひらヴェールがひらひらと揺れ、そのヴェールの合間から覗く銀糸の髪は陽光を受け、キラキラと輝いている。
不安そうにフィルバート皇子を見上げるまだ幼さ残る深海色の瞳にはモアナ王族特有の《海の花》と呼ばれる銀の光彩が咲き誇っていた。
「モアナの姫君なんて留学してたっけ?」
思わず見惚れていた王子の一人がはたと思い出し、口を開く。
「……茶会の為に態々呼んだとか?」
「馬鹿言え。モアナが社交場クラッシャーなのを忘れたか? 幾ら、ラピュセル公爵でも呼ばんだろ」
「そうだな。一度、モアナ大王を呼んだ国の夜会が使用人達も巻き込んだ宴会と化した事件は記憶に新しい…」
「確か全員が二日酔いでダウンして一日、城の機能が停止したんだよな…」
モアナは社交場クラッシャー。
それは同盟国及び、同盟国外でも有名な話。モアナ大王を含め、モアナ王族を社交場に呼ぶと、良くも悪くも陽気な彼等に巻き込まれ、ただのお祭りと化す。
腹の探り合いも駆け引きも彼等が出てきた時点で彼等のペースに巻き込まれて出来ない。
なら、どうしてモアナの姫君が…と、考えて、王子の一人が「あっ」と、声を上げた。
「2学年でひとり、一般留学生にまぎれて留学してきたモアナの王子がいましたね」
「ああっ!!あの王子」
「平民にしれっと紛れ込んでたアレか!!」
「……2学年という事は14歳か? 14にしては幼くないか?」
眼下の少年は、喉仏も出てなければ、背も10歳と言われてもしょうがない程低く、ついでに声変わりもしていない。
本当に男か?と疑いつつも同盟国の王子達は初めて見る噂のモアナの王子に物珍しさと普段ならしない期待を向けていた。
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