王子様の耳はロバの耳 〜 留学先はblゲームの世界でした 〜

きっせつ

文字の大きさ
25 / 119
第一章 王子とロバ耳と国際交流と

28、私を置いて行くな!?

しおりを挟む

これは確実に何かある。
怖い。とにかく、なんとかしなければ!

そう思い立ち、休み時間を使い、僕は4年の教室に乗り込んだ。

「たのもーーっ!」

そう教室の入り口で叫ぶと教室の生徒がバッと僕を見て、死相を浮かべて机に突っ伏していたリュビオが眼鏡をずり落としながらも飛び起きた。

「何!?何です!!?」

「皇子には面と向かっては聞けない。シルビオは怖いからヤダ。そうなればリュビオしかいないんだよ」

「だから何が!?」

私は一体何に巻き込まれるんだと少し赤く充血している目を見開いて目に見えてリュビオは警戒する。


ついでに学園の休みの日の2日後のリュビオは何時もこんな感じで目を赤くして死相を浮かべている。
そして、学園は1週間のうち2日休みなのだけど、何故かリュビオだけ3日間休んでいる。


みんなと違い、3日も休んでいるのに誰よりも疲れてるリュビオ。
前に皇子達になんでリュビオは3日休みで、こんなに疲れてるのか聞いたらスッと目を逸らされ、何も答えてはくれなかった。

そうリュビオは何故か知らないけど疲れてる。
そんな相手にこれ以上の負担をかける程僕は鬼じゃない。だから…。


「皇子がここ2日、変なんだよ。何時もは早朝に僕を叩き起こすのに寝かせてくれるし。マナー講座もしないんだ」

用件だけちょっと聞いて帰ろう。
そう考えて一番気になるところだけ掻い摘んで伝えた。
そうするとリュビオは赤く腫れぼったい目で僕を見て…。

「諦めたんじゃないですか? やっても無駄だと思い至ったからやめただけでは?」

一切の容赦もなく、そう言い放った。

その言葉にぶわっと目から涙が飛び出た時は僕も驚いた。リュビオはリュビオで自分で言い放っておいて、ギョッとした顔で固まる。

「リュ、リュビオ様。そんな小さな子にそれは流石に…」

「ち、小さくなんかないですよ!?ラニ王子は14歳ですよ!」

「いや、14歳でも年下ですよ。泣かせちゃ駄目ですって!」

「…わた、私はただ可能性の一つを述べただけで」

リュビオのクラスメイト達からは非難の嵐。
リュビオは否定しつつも罪悪感があるのかオロオロしてる。

「ラ、ラニ王子。取り敢えず、お話を聞きますから場所を変えましょう」

「ぐすっ…。いいよ。分かったよ。なんとなく、そんな気もしてたよ」

「いやいやいや、あれはちょっとぽろっと出た個人的な意見で!!」

「ごめんね。体調悪いのに迷惑かけて。…大人しく教室に帰るよ」

「だから、待って!?…わ、分かりました。御免なさい。私が考え無しでしたッ。だからっ、だから、この状態のまま私を置いて帰るなっ!」

「リュビオ様。一番最後が本音ですよね…」

「最低です」

もう耐えられないとリュビオが教室から逃げるように僕に向かってくる。
腰を庇い、動く度に、「んっ…。ぁ」と変な声を出し羞恥に震えながら必死な形相で僕の手を掴んだ。

「だ、大丈夫だよ。身体辛いんでしょ?…なんか怖いし、もういいよ」

「分かりました。お菓子でも何でも奢りましょう。だから黙って着いてきなさいっ」

「…ううん。いいよ。なんか怖いからいい」

皇子は本人だから聞き辛い。
シルビオは皇子が絡むと怖いから聞けない。
消去法でリュビオを選んだのが間違いだったのかもしれない。皇子とは関係がなくても頼りになるライモンド先生に聞くべきだった。


リュビオの手を引き剥がし、待ちなさいと足を小鹿のようにプルプルと震わせて追おうとするリュビオを振り切った。




「やっぱり、お茶会が駄目だったのかな…」

まだポタポタと頬を伝い続ける雫を手で乱雑に拭う。

流石に泣き顔では教室には帰れず、人気のない校舎裏に逃げ込んだ。

校舎裏は狭く入り組んでいて薄暗い。だから、普段は絶対に立ち寄らない。
僕は人の声がいっぱいする明るい場所の方が落ち着くから、この校舎裏はちょっと苦手。

それでも流石に僕だって大勢の前で泣きじゃくって平静を保てる程、図太くない。僕だって男の子だもん。プライドくらいある。


「皇子怒ってたもんね。頭叩かれたし、頰つねられたし…」

怒ってた皇子を思い出して、次に気落ちしていた皇子の姿が頭に浮かんだ。あれはもしかしたら怒りを通り越して僕にガッカリしてたのかもしれない。

涙を止める為に校舎裏に逃げ込んだのに、更にボロボロと涙が溢れて、膝を抱えて蹲る。

ダメだ…。何度思い返してみてもマナー以外に何が悪かったのか分からない。理由が分からないんじゃ謝る事も出来ない。

スンッと鼻を鳴らしながら、もう一度何がダメだったか考えても分からない。


「どうしたんだい?」

ふと、そう声を掛けられて、涙でべちゃべちゃな顔を上げる。
すると、浅黒い肌をした少年が目の前に屈んでいて、鳶色の瞳がこちらを見ていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった

angel
BL
つまらないことで死んでしまったボクを不憫に思った神様が1つのゲームを持ちかけてきた。 『転生先で王様になれたら元の体に戻してあげる』と。 生まれ変わったボクは美貌の第一王子で兄弟もなく、将来王様になることが約束されていた。 「イージーゲームすぎね?」とは思ったが、この好条件をありがたく受け止め 現世に戻れるまでノラリクラリと王子様生活を楽しむはずだった…。 完結しました。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!

黒木  鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。 

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...