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第二章 ローレライとロバ耳王子と陰謀と
4、お祭り!
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「謎が増えた…」
何も疑問が解決されないまま更に増えた疑問を抱えたまま、結局、グルグル眼鏡先輩は見つからなかった。
謎に頭を悩ませ、夜には例の夢で飛び起き、散々な一日を過ごして迎えた次の日。
エリオットに「祭りに行こうぜ!」と誘われた、とても楽しみにしていた日なのに気持ちは晴れない。
原因は疑問と睡眠不足だけではないけどね…。
「ラニ様。もう少し深く帽子を被ってください」
そう平民風の格好の騎士のお兄さんが僕の浅く被っていたキャスケットを深く沈め、「これでよし」と満足げに頷く。
髪も全部キャスケットの中に押し込められて、ただでさえ、キャスケットの中はギュウギュウなのに深く被せられたら居場所のないロバ耳が折れ曲がって痛い。
「これでよしっ!」じゃないよっ!!
と、不満を募らせて、綿飴をパクリと戴くが、その美味しさも平民に変装した騎士3人に囲まれて、エリオット達と共有できない。
「ラニ様。他に御必要なものはありますか? 買って参ります」
「ラニ様。綿飴の棒を齧ってはいけません。破片が喉に刺さったら危険です」
「ラニ様ッ!また帽子を浅く被り直しましたね…。お忍びなのですから顔がバレぬよう深くお被りください」
「僕が…、僕が望んでいたのはこれじゃないッ」
スンッと鼻を鳴らして、僕のお世話を焼く騎士の合間から見えるエリオット達に助けを求める。
だが、エリオット達は肩をすくめて、苦笑いだ。
疑問や睡眠不足でも皇子に叩き起こされるなく、久々にゆっくりと出来た朝。
眠い目を擦って、やっとベッドから起き上がるともう既に侍女達がお忍びの服を用意して待っていた。
…まぁ、ここまでは見慣れたいつもの朝の光景ではある。
今日から首脳会議の間は皇子もシルビオもリュビオも公務で学園には居ないという事は昨日のうちに皇子から知らされていた。なので、皇子がいない事は分かっていた。
だから、朝は久々に僕一人かと思ったら、まさか、侍女は皇子の侍女なのに平常通り僕の支度をするなんて思ってはいなかったけど。
しかも、お忍びの服も皇子チョイス。
公務で忙しいのになんてマメなと、真面目過ぎる皇子に苦笑いを零したまでは良しとしよう。
準備を終え、部屋を出るとごく当たり前のように知らない騎士が3人、部屋の前で立つ姿を見た時は思わず、扉を閉めた。
なんでもこの3人はシルビオの指示を受け、僕のお忍びの護衛を今日一日やるそうだ。
ねぇ…。僕、とても軽い気持ちでお祭りに遊びに行こうとしてたんだけど…。
そもそも僕がお祭りに行くとお忍びなの? 騎士まで動くの??
お祭りは町中お花や同盟国の国旗で飾られて、華やかで美しい。
賑やかでみんな楽しそうで、僕もエリオット達と遊びたいんだけど、騎士のお兄さん達がとても近い距離で護衛して取り囲んでるので、遊ぶに遊べない。
「むぅ…」
なんか納得が行かなくて、やけ食いするように肉串に齧り付く。
…くそぅ。噛んだ瞬間、溢れ出した肉汁に香ばしいスパイスが合わさって美味しい。美味しくて勿体無くてやけ食いができないよっ!?
美味しくて、共有したくて隣の騎士のお兄さんに肉串を差し出すと騎士のお兄さんは最初は躊躇った。
残念としゅんとする僕の顔を見て、「そんな…。そんな顔しないでください。食べますから」と最終的には食べてくれた。
「…美味しいです」と感想ももらって大満足。
嬉しくて鼻歌を歌いながら残りのお肉を食べていると、スッと追加の肉串を買ってきてくれた。それがまた嬉しくて、笑みが溢れる。
「なんだ。この可愛い生き物は」
「基本的に素直で単純とはシルビオから聞いていたが、これは…」
「あの気難しいフィルバート殿下が構い倒して可愛がってるって噂に聞きましたが、構い倒したい気持ちが、痛い程分かる…!…これも、これも食べますか?」
豆菓子に飴にフランクフルトに焼き菓子。
皇子から支給されたお金を使わなくても騎士のお兄さん達が支給してくれる。
「ナチュラルに貢がれてる…」
騎士のお兄さんの合間からケニーに引き攣った笑みが見える。
コンスタンチェは冷めた目で騎士達に向け、エリオットはアハハと苦笑いでポリポリと頰を掻いて、騎士のお兄さん達に苦言を呈した。
「先輩。誑し込まれないでください。後、折角、フィルバート殿下からラニが久々に返還されてるんでそろそろ遊びたいんですが…」
ついでにエリオットは騎士見習い。
この3人はエリオットの上司にあたるらしい。
「はーぁ、まさか、先輩達と祭りに行く事になるとは…」
騎士のお兄さん3人の間に無理矢理割って入り、エリオットがぼやく。
ケニーもコンスタンチェも同じように割って入り、ちゃっかり騎士達から僕への支給品のお菓子を食べ、エリオットの肩を慰めるように叩いた。
「まぁまぁ。撒けなかったんだからもういっそ財布として有効活用しよう」
「そうね。財布が3人居るって考えれば、上司とお祭り中々、乙ではなくて?」
ついでに貴族である彼等も護衛が今日付いてくる筈だったのだが、撒いてきた。特にコンスタンチェは第二皇子の婚約者だったらしく、いの一番に騎士のお兄さん達に怒られてた。
第二皇子の婚約者が護衛を撒くのは良くない事らしいんだ…。
大変だね。
僕の国じゃ大王にも護衛なんかついてない。
そもそも護衛の概念すらない。
なんせ、国の人はみんな友達みんな家族だからね!
モアナの国の事を思い出したら自然と鼻歌が溢れる。
留学中は…。
いや、なんかロバ耳が付いている間は国に帰るなオーラをサフィールさん(宰相)から感じるから帰れないけど、みんな元気かな?
僕のこのロバ耳はゲームの物語が終わったら無くなるのかな?
ロバ耳が一生付いたままだったら、もしや一生国に帰れないんじゃ……。
「いやいやいやいや!? 流石にそれは…っ」
「どした?」
「どうしたの。ラニ」
あり得そうで怖いなと思いつつも、その考えを頭を必死に振り、ふるい落とし、騎士のお兄さんに買ってもらった兎の飴細工をポリポリ食べる。
やー、楽しいなー。お祭り、タノシイナー。
全く音沙汰が無いけど、サフィールさん(宰相)達もきっとロバ耳を治そうと動いてくれている筈だよ。
僕は《イベント》の邪魔をしないように普通にお友達とお祭りをめいいっぱい楽しむんだ。
皇子達と行動してないからね。
記憶に新しいあの痛ましい事件《マリユスの悲劇》(マリユスがこっぴどくエレンに振られた件)のようにはならない筈。
あれは流石に僕も心が痛かった…。
「おっ、輪投げだ。ラニ、どっちが多く輪っかを掛けられるか競走しようぜ」
「えっ、やるやる!」
エリオットが見つけた輪投げ屋さんなる的屋が面白そうで、すぐ様マリユスの悲劇をポイッと意識の外に投げる。
「あら、このわたくしに勝負を仕掛けるおつもり?モップチャンバラで果たせなかった決着をつけて差し上げるわ」
「ここは学長も居ないし。この前みたいに拳骨も落とされる事も無いしねっ!」
ケニーもコンスタンチェも俄然やる気で腕まくりしてる。
騎士のお兄さん達にお金を出してもらって、いざ輪投げ勝負ッ!!
……と、意気込んだはいいが、突如響いた爆発音に騎士のお兄さんの後ろに隠れた。
「な、なに!?」
「何やってんだ、ラニ?」
「だって、何か爆発して!」
「あら、知りませんの? 花火よ」
スッとコンスタンチェが空を指差す。
するとコンスタンチェの差した青い空に光の花が咲き、散っていく。
「綺麗…」
「首脳会議前に王達の国民に向けての挨拶があるんだ。それの合図の花火」
「花火は火薬を空で爆ぜさせて、空に花を描く娯楽。夜空ではもっと鮮明色鮮やかで綺麗でしてよ」
「あー。そっか。去年は金策でアルバイト漬けだったからお前、誘っても来れなかったんだっけ」
「そんな事もありましたわね…」
「そんな金欠苦学生が南国の王子だったなんてサプライズにも程があったな…」
「「「「あはははは!!」」」」
それは笑い事で済ましていいのかと目で訴えてくる騎士のお兄さん達はさて置き。どうやら皇子も王族だから参加するその挨拶を見ようと、ちゃっちゃと輪投げを投げた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
明けましておめでとうございます。
コメディしつつも徐々に恋愛要素+R18要素もぶっ込んでいきますが、今年もよろしくお願いします。
byきっせつ
何も疑問が解決されないまま更に増えた疑問を抱えたまま、結局、グルグル眼鏡先輩は見つからなかった。
謎に頭を悩ませ、夜には例の夢で飛び起き、散々な一日を過ごして迎えた次の日。
エリオットに「祭りに行こうぜ!」と誘われた、とても楽しみにしていた日なのに気持ちは晴れない。
原因は疑問と睡眠不足だけではないけどね…。
「ラニ様。もう少し深く帽子を被ってください」
そう平民風の格好の騎士のお兄さんが僕の浅く被っていたキャスケットを深く沈め、「これでよし」と満足げに頷く。
髪も全部キャスケットの中に押し込められて、ただでさえ、キャスケットの中はギュウギュウなのに深く被せられたら居場所のないロバ耳が折れ曲がって痛い。
「これでよしっ!」じゃないよっ!!
と、不満を募らせて、綿飴をパクリと戴くが、その美味しさも平民に変装した騎士3人に囲まれて、エリオット達と共有できない。
「ラニ様。他に御必要なものはありますか? 買って参ります」
「ラニ様。綿飴の棒を齧ってはいけません。破片が喉に刺さったら危険です」
「ラニ様ッ!また帽子を浅く被り直しましたね…。お忍びなのですから顔がバレぬよう深くお被りください」
「僕が…、僕が望んでいたのはこれじゃないッ」
スンッと鼻を鳴らして、僕のお世話を焼く騎士の合間から見えるエリオット達に助けを求める。
だが、エリオット達は肩をすくめて、苦笑いだ。
疑問や睡眠不足でも皇子に叩き起こされるなく、久々にゆっくりと出来た朝。
眠い目を擦って、やっとベッドから起き上がるともう既に侍女達がお忍びの服を用意して待っていた。
…まぁ、ここまでは見慣れたいつもの朝の光景ではある。
今日から首脳会議の間は皇子もシルビオもリュビオも公務で学園には居ないという事は昨日のうちに皇子から知らされていた。なので、皇子がいない事は分かっていた。
だから、朝は久々に僕一人かと思ったら、まさか、侍女は皇子の侍女なのに平常通り僕の支度をするなんて思ってはいなかったけど。
しかも、お忍びの服も皇子チョイス。
公務で忙しいのになんてマメなと、真面目過ぎる皇子に苦笑いを零したまでは良しとしよう。
準備を終え、部屋を出るとごく当たり前のように知らない騎士が3人、部屋の前で立つ姿を見た時は思わず、扉を閉めた。
なんでもこの3人はシルビオの指示を受け、僕のお忍びの護衛を今日一日やるそうだ。
ねぇ…。僕、とても軽い気持ちでお祭りに遊びに行こうとしてたんだけど…。
そもそも僕がお祭りに行くとお忍びなの? 騎士まで動くの??
お祭りは町中お花や同盟国の国旗で飾られて、華やかで美しい。
賑やかでみんな楽しそうで、僕もエリオット達と遊びたいんだけど、騎士のお兄さん達がとても近い距離で護衛して取り囲んでるので、遊ぶに遊べない。
「むぅ…」
なんか納得が行かなくて、やけ食いするように肉串に齧り付く。
…くそぅ。噛んだ瞬間、溢れ出した肉汁に香ばしいスパイスが合わさって美味しい。美味しくて勿体無くてやけ食いができないよっ!?
美味しくて、共有したくて隣の騎士のお兄さんに肉串を差し出すと騎士のお兄さんは最初は躊躇った。
残念としゅんとする僕の顔を見て、「そんな…。そんな顔しないでください。食べますから」と最終的には食べてくれた。
「…美味しいです」と感想ももらって大満足。
嬉しくて鼻歌を歌いながら残りのお肉を食べていると、スッと追加の肉串を買ってきてくれた。それがまた嬉しくて、笑みが溢れる。
「なんだ。この可愛い生き物は」
「基本的に素直で単純とはシルビオから聞いていたが、これは…」
「あの気難しいフィルバート殿下が構い倒して可愛がってるって噂に聞きましたが、構い倒したい気持ちが、痛い程分かる…!…これも、これも食べますか?」
豆菓子に飴にフランクフルトに焼き菓子。
皇子から支給されたお金を使わなくても騎士のお兄さん達が支給してくれる。
「ナチュラルに貢がれてる…」
騎士のお兄さんの合間からケニーに引き攣った笑みが見える。
コンスタンチェは冷めた目で騎士達に向け、エリオットはアハハと苦笑いでポリポリと頰を掻いて、騎士のお兄さん達に苦言を呈した。
「先輩。誑し込まれないでください。後、折角、フィルバート殿下からラニが久々に返還されてるんでそろそろ遊びたいんですが…」
ついでにエリオットは騎士見習い。
この3人はエリオットの上司にあたるらしい。
「はーぁ、まさか、先輩達と祭りに行く事になるとは…」
騎士のお兄さん3人の間に無理矢理割って入り、エリオットがぼやく。
ケニーもコンスタンチェも同じように割って入り、ちゃっかり騎士達から僕への支給品のお菓子を食べ、エリオットの肩を慰めるように叩いた。
「まぁまぁ。撒けなかったんだからもういっそ財布として有効活用しよう」
「そうね。財布が3人居るって考えれば、上司とお祭り中々、乙ではなくて?」
ついでに貴族である彼等も護衛が今日付いてくる筈だったのだが、撒いてきた。特にコンスタンチェは第二皇子の婚約者だったらしく、いの一番に騎士のお兄さん達に怒られてた。
第二皇子の婚約者が護衛を撒くのは良くない事らしいんだ…。
大変だね。
僕の国じゃ大王にも護衛なんかついてない。
そもそも護衛の概念すらない。
なんせ、国の人はみんな友達みんな家族だからね!
モアナの国の事を思い出したら自然と鼻歌が溢れる。
留学中は…。
いや、なんかロバ耳が付いている間は国に帰るなオーラをサフィールさん(宰相)から感じるから帰れないけど、みんな元気かな?
僕のこのロバ耳はゲームの物語が終わったら無くなるのかな?
ロバ耳が一生付いたままだったら、もしや一生国に帰れないんじゃ……。
「いやいやいやいや!? 流石にそれは…っ」
「どした?」
「どうしたの。ラニ」
あり得そうで怖いなと思いつつも、その考えを頭を必死に振り、ふるい落とし、騎士のお兄さんに買ってもらった兎の飴細工をポリポリ食べる。
やー、楽しいなー。お祭り、タノシイナー。
全く音沙汰が無いけど、サフィールさん(宰相)達もきっとロバ耳を治そうと動いてくれている筈だよ。
僕は《イベント》の邪魔をしないように普通にお友達とお祭りをめいいっぱい楽しむんだ。
皇子達と行動してないからね。
記憶に新しいあの痛ましい事件《マリユスの悲劇》(マリユスがこっぴどくエレンに振られた件)のようにはならない筈。
あれは流石に僕も心が痛かった…。
「おっ、輪投げだ。ラニ、どっちが多く輪っかを掛けられるか競走しようぜ」
「えっ、やるやる!」
エリオットが見つけた輪投げ屋さんなる的屋が面白そうで、すぐ様マリユスの悲劇をポイッと意識の外に投げる。
「あら、このわたくしに勝負を仕掛けるおつもり?モップチャンバラで果たせなかった決着をつけて差し上げるわ」
「ここは学長も居ないし。この前みたいに拳骨も落とされる事も無いしねっ!」
ケニーもコンスタンチェも俄然やる気で腕まくりしてる。
騎士のお兄さん達にお金を出してもらって、いざ輪投げ勝負ッ!!
……と、意気込んだはいいが、突如響いた爆発音に騎士のお兄さんの後ろに隠れた。
「な、なに!?」
「何やってんだ、ラニ?」
「だって、何か爆発して!」
「あら、知りませんの? 花火よ」
スッとコンスタンチェが空を指差す。
するとコンスタンチェの差した青い空に光の花が咲き、散っていく。
「綺麗…」
「首脳会議前に王達の国民に向けての挨拶があるんだ。それの合図の花火」
「花火は火薬を空で爆ぜさせて、空に花を描く娯楽。夜空ではもっと鮮明色鮮やかで綺麗でしてよ」
「あー。そっか。去年は金策でアルバイト漬けだったからお前、誘っても来れなかったんだっけ」
「そんな事もありましたわね…」
「そんな金欠苦学生が南国の王子だったなんてサプライズにも程があったな…」
「「「「あはははは!!」」」」
それは笑い事で済ましていいのかと目で訴えてくる騎士のお兄さん達はさて置き。どうやら皇子も王族だから参加するその挨拶を見ようと、ちゃっちゃと輪投げを投げた。
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明けましておめでとうございます。
コメディしつつも徐々に恋愛要素+R18要素もぶっ込んでいきますが、今年もよろしくお願いします。
byきっせつ
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